グラム陽性細菌という分類は、グラム染色と呼ばれる化学的処理の適用後に細菌が何色に染色されるに基づくものです。グラム陽性細菌はこの手法により青く染まります。赤色に染まる細菌は、グラム陰性細菌といいます。グラム陽性細菌とグラム陰性細菌は、その細胞壁の違いから異なる色で染色されます。それらの菌の種類によって、生じる感染症の種類も異なり、また効果的な抗菌薬の種類も異なります。
細菌は基本的な形状によっても分類され、その形状として球形状(球菌)、棒状(桿菌[かんきん])、らせん状(スピロヘータ ベジェル、イチゴ腫、ピンタ ベジェル、イチゴ腫(フランベジア)、ピンタは、トレポネーマ属 Treponema(スピロヘータと呼ばれるらせん状の細菌の一属)の細菌(図「 主な細菌の形」を参照)による感染症です。 これらの感染症は、感染者の皮膚に密に接触することで広がり、通常は衛生状態の不良な環境に住む小児の間で広がります。... さらに読む )の3種類があります。グラム陽性細菌は球菌または桿菌です。(図「 主な細菌の形 主な細菌の形
」を参照のこと。)
グラム陽性細菌の中には病気を引き起こすものもあれば、体の特定の部位(皮膚など)に常在するものもあります。後者の細菌は 常在菌叢 常在菌叢 健康な人は、皮膚、鼻、口、のど、大腸、腟など、体の非無菌状態の部位に生息している(コロニーを作っている)微生物の大半とうまく共存しています。常に体内の決まった部位に集団で存在している微生物を「常在菌叢(じょうざいきんそう)」と呼びます。常在菌叢にいる細菌の数は、人の体を構成するすべての細胞の数の10倍に上ります。人体には数時間から数週間し... さらに読む と呼ばれ、通常は病気を引き起こしません。
グラム陽性桿菌は、以下のような特定の感染症を引き起こします。
グラム陽性球菌は、以下のような特定の感染症を引き起こします。
グラム陽性細菌は抗菌薬への耐性をますます強めています。例えば、 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus (MRSA) 黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureusは多くの一般的なブドウ球菌の中で最も危険とされています。この グラム陽性の球状細菌(球菌)(図「 主な細菌の形」を参照)は、しばしば皮膚感染症を引き起こしますが、肺炎、心臓弁の感染症、骨の感染症を引き起こすこともあります。... さらに読む という細菌は、ペニシリンに関連する抗菌薬のほとんどに耐性をもっています。メチシリンとは、 ペニシリン系薬剤 ペニシリン系 ペニシリン系は、ベータラクタム系 抗菌薬(ベータラクタム環と呼ばれる化学構造をもつ抗菌薬)のサブクラスです。 カルバペネム系、 セファロスポリン系、および モノバクタム系もベータラクタム系の抗菌薬です。 ペニシリン系薬剤は、 グラム陽性細菌による感染症( レンサ球菌感染症など)と一部の... さらに読む の一種です。MRSA株は、一般に医療施設での感染症に関与していますが、医療施設外での感染症(市中感染症)の原因となることもあります。
(細菌の概要 細菌の概要 細菌は、顕微鏡でようやく見える程度の単細胞生物です。この地球上で最も初期の段階から存在する生命体の1つです。数千種類の細菌が存在し、世界中のあらゆる環境に生息しています。土壌、海水、地中深くはもちろん、放射性廃棄物の中で生きている細菌すら報告されています。多くの細菌が、宿主に害を与えずに、人間や動物の皮膚、気道、口の中、消化管、尿路や生殖... さらに読む も参照のこと。)