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腸チフス

(チフス)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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腸チフスは、グラム陰性細菌であるサルモネラ属 Salmonella細菌の特定の菌種によって引き起こされます。一般的には、高熱と腹痛が現れます。

  • 腸チフスは、感染者の便や尿で汚染された食べものや水を飲食することで感染します。

  • インフルエンザ様の症状が起こり、その後にせん妄、せき、極度の疲労、ときに発疹、下痢が起こることがあります。

  • 血液、便、他の体液、または組織のサンプルを検査室に送り、細菌を増殖させる検査(培養検査)を行います。

  • 感染を予防するために、腸チフスが存在する地域へ旅行する場合はワクチン接種を行い、現地では特定の食べものを避けて、ボトル入り以外の水を飲まないようにしてください。

  • 症状があってもなくても、感染した人には抗菌薬が使用されます。

細菌の概要サルモネラ感染症も参照のこと。)

腸チフスはサルモネラ属 Salmonellaの細菌によって引き起こされる感染症の1つです。サルモネラ属 Salmonellaには多くの種類がありますが、腸チフスの大半はチフス菌 Salmonella Typhiによって引き起こされています。

腸チフスは衛生状況の悪い発展途上国(特に南アジア)で多くみられます。米国で発生する症例のほとんどは、この感染症が流行している国への旅行中に感染したものです。

知っていますか?

  • 20世紀のはじめ、1人の女性料理人から大勢の人に腸チフスが伝染しました。

感染経路

チフス菌 Salmonella Typhiは人間にのみ感染します。

感染者の便中に細菌が排泄され、まれに尿中にも排泄されます。少数ですが、胆嚢や尿路に慢性の感染が発生することがあります。こうなると、症状がなくなっても、引き続き便や尿に細菌が排泄されます。このような状態の人はキャリア(保菌者)と呼ばれます。症状がないため、キャリアは自分が感染を拡大させる可能性があるとは思っていません。20世紀初頭、そうしたキャリアだったメアリー・マローンという調理人の女性から、多くの人に腸チフスが感染する事件があり、彼女は「チフスのメアリー」として知られるようになりました。

排便や排尿の後に手洗いが不十分だと、その後に扱った食べものや飲みものがチフス菌 Salmonella Typhiで汚染されることがあります。また、汚水の管理が不十分で飲料水が汚染されたり、ハエが便から食べものに細菌を直接移したりする場合もあります。

ときには、遊んでいる小児や、肛門と口を接触させる性交を行う成人の間で、直接の接触を通じて腸チフスが広がります。

サルモネラ属 Salmonellaの細菌全体にいえることですが、免疫機能が低下している人や胃酸が欠乏している人を除いて、細菌を多量に取り込まなければ感染は起こりません。サルモネラ属 Salmonellaの細菌は、胃酸によって死滅する傾向があります。

血流を介した拡大

この細菌は消化管から血流に広がり(菌血症を引き起こします)、以下のような離れた臓器に感染する可能性があります。

これらの感染症は主に治療を受けていない人や治療が遅れた人に発生します。

症状

典型的には、インフルエンザに似た症状が感染の8~14日後(30日以内)に始まります。腸チフスの症状は徐々に現れます。発熱、頭痛、のどの痛み、筋肉痛や関節痛、腹痛、乾いたせきが生じたり、食欲が低下したりすることがあります。

数日後には体温が39~40℃に達し、そこから10~14日にわたって高熱が続いた後、発症から4週目に平熱に下がります。心拍が遅くなることが多く、患者は強い疲労を感じます。感染症が重症の場合は、せん妄状態に陥ることがあります。

2週間目には、感染者の10~20%で胸部や腹部にバラ色の平坦な斑点状の発疹が現れます。

最初は便秘になりますが、2週間後に下痢が起こる場合があります。1~2%の感染者では、腸の損傷(穿孔)や出血がみられます。少数の人では重度の出血が起こり、生命が脅かされることもあります。

感染が他の臓器に広がると、そこでも症状が引き起こされます。

8~10%の患者では、発熱が治まってから2週間ほどで症状が再発します。

治療しなければ、12%の患者が死亡します。死亡者のほとんどは、栄養失調の人、乳幼児、高齢者です。昏迷(強い刺激を与えないと目覚めないほどの無反応状態)、昏睡、ショック状態は重症の徴候で、予後(経過の見通し)が悪いことを示す徴候でもあります。

診断

  • 血液、便、その他の体液または組織のサンプルを観察して培養する検査

腸チフスの診断を確定するには、血液、便、尿、その他の体液や組織のサンプルを採取して検査室に送り、サンプル中の細菌を増殖させる検査(培養検査)を行います。サンプルを検査して、サルモネラ属 Salmonella細菌の有無を明らかにします。

効果的である可能性が高い抗菌薬を判断するための検査(感受性試験)が行われます。

予防

腸チフスが発生している地域へ旅行する場合は、生野菜や常温で用意または保存された食べものを避けるようにしてください。

一般に、以下のものは食べても問題ありません。

  • 調理後すぐに温かい状態で出された食べもの

  • 密封されたボトルまたは缶入りの飲料水

  • 熱いお茶やコーヒー

  • 自分で皮を剥いた果物

氷や水(煮沸や塩素処理されていない場合)は安全でないと考えるべきです。歯磨きには、密封されたボトル入りの飲料水を使用してください。

ワクチン接種

経口ワクチンや多糖体ワクチンの注射は、腸チフスの予防に役立ちます。どちらのワクチンにも、ほとんど副作用はありません。

ワクチン接種は次の人に推奨されます。

  • 腸チフスの流行地域への旅行者

  • キャリアと同居している人、またはキャリアと濃厚な接触がある人

  • この細菌を取り扱う研究所の職員

通常、注射用ワクチンによる予防接種は最低2年間、経口ワクチンによる予防接種は最低5年間有効です。ただし、多数の細菌を取り込むと感染する可能性もあります。

米国で発生する腸チフスの80%は、腸チフスの流行地域に旅行した人に発生しています。これらのケースのほとんどは、ワクチンを接種していれば予防できていたと考えられます。

治療

  • 抗菌薬

  • 重度の感染症には、コルチコステロイド

抗菌薬を使用すると、通常3~4週間続く発熱がわずか3~5日で治まり、死亡のリスクは1%未満に下がります。完全な回復には、数週間から数カ月を要します。

よく使用される抗菌薬としては以下のものがあります。

  • セフトリアキソンの注射剤

  • フルオロキノロン系薬剤(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシンなど)の経口または注射剤

  • アジスロマイシンの経口剤

腸チフスが流行している地域では、抗菌薬の耐性菌がよくみられ、現在も増加しています。米国でも、これらの地域で感染した旅行者が帰国することで耐性菌が増加しています。

クロラムフェニコールという抗菌薬は世界中で使用されていますが、この薬は血球(血液の細胞)を作る骨髄の細胞を傷つける可能性があります。加えて、チフス菌 Salmonella Typhi が次第に耐性を獲得しつつあります。

感染症が重症の場合、特にせん妄や昏睡状態の患者やショックを起こしている患者には、コルチコステロイドも投与します。

発熱がみられる患者は、横になって安静にするよう指示されます。下痢を最小限に抑えるには、清澄流動食(澄んだスープやジュースなど)の摂取が助けになります。アスピリン、下剤、浣腸は使用すべきではありません。

抗菌薬を投与された患者の15~20%では、通常は治療が終わって約1週間の時点で感染症が再発します。この場合の症状は最初の病状より軽く、同じ治療が行われます。

キャリアの治療

キャリア(保菌者)を診察した医師は地域の保健局に報告することになっており、またキャリアの人は、細菌が体から完全にいなくなったことが検査で証明されるまで、食品の取扱い作業に従事することが禁止されます。多くのキャリアでは、4~6週間の抗菌薬の投与で細菌が根絶されます。

キャリアの胆嚢が感染している場合は、胆嚢を切除する手術が効果的なことがあります。とはいえ、そうした手術で必ず細菌を根絶できるとは限りません。

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