ネコひっかき病の患者には、ひっかかれた部位に赤い隆起ができ、発熱、頭痛、食欲不振、リンパ節の腫れがみられることもあります。
免疫機能が低下している人では、感染が全身に広がり、治療しなければ死亡することもあります。
医師は血液や体液の検査を行って、この細菌の有無について調べます。
通常は感染した部位を温め、鎮痛薬を使用することで十分ですが、免疫機能が低下している人には抗菌薬が投与されます。
(細菌の概要 細菌の概要 細菌は、顕微鏡でようやく見える程度の単細胞生物です。この地球上で最も初期の段階から存在する生命体の1つです。数千種類の細菌が存在し、世界中のあらゆる環境に生息しています。土壌、海水、地中深くはもちろん、放射性廃棄物の中で生きている細菌すら報告されています。多くの細菌が、宿主に害を与えずに、人間や動物の皮膚、気道、口の中、消化管、尿路や生殖... さらに読む も参照のこと。)
世界中のほとんどの飼いネコが感染していますが、病気の徴候が現れることはまれです。バルトネラ Bartonellaはノミを介してネコからネコに伝染します。人はネコに咬まれたり、ひっかかれたりして感染しますが、ひどい傷でなくても感染が成立します。
症状
咬まれたりひっかかれたりしたところが、約3~10日以内に赤く隆起します。この隆起は通常は痂皮(かひ)を伴い、中に膿を含むこともあります。2週間以内に(ひっかき傷が治っていても)、付近のリンパ節が腫れて圧痛を生じ、膿で満たされます。場合によっては、発熱、頭痛、食欲不振などの症状が起こります。腫れたリンパ節から膿が出ることもあります。
通常、他の症状はみられず、自然にネコひっかき病は治まります。しかし、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症やエイズなど、免疫機能を低下させる病気がある人では、感染が全身に広がることがあり、治療しなければ死に至る可能性もあります。
診断
血液検査
ときに血液培養検査
ときにリンパ節の穿刺または生検
ネコひっかき病を診断するには、血液を検査して、この細菌に対する抗体を測定します。(抗体 抗体 体の防御線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっており、白血球は血流に乗って体内を巡り、組織に入り込んで微生物などの異物を見つけ出し、攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防御は以下の2つの部分に分かれています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識したときに始まります。そして、獲... さらに読む とは、ネコひっかき病の原因菌のような、特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)非常に重い病気の人または免疫機能が低下している人の場合は、血液サンプルを採取して検査室に送り、細菌を増殖させて種類を特定する検査(培養検査)を行うこともあります。あるいは、医師が感染したリンパ節に針を刺して体液のサンプルを採取することもあります。そして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いてサンプルに含まれる細菌のDNAの量を増やし、そうすることで、より早く細菌を検出することが可能になります。
診断がはっきりしない場合、特にがんが疑われる場合は、腫れたリンパ節から組織のサンプルを採取して分析することもあります(リンパ節生検)。
治療
加温と鎮痛薬
ときに抗菌薬
免疫系が健康な場合は、感染した部位を温め、鎮痛薬を使用すれば通常は十分です。
リンパ節の腫れを抑え、病気の拡大を防ぐために、アジスロマイシンなどの抗菌薬を投与することもあります。
免疫機能が低下している人(特にHIV感染症またはエイズの人)で感染が全身に広がった場合は、抗菌薬が必要になります。シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、ドキシサイクリンなどの抗菌薬が使用されます。数週間から数カ月継続する必要があります。
免疫機能が低下している人は、感染しないように飼いネコとの接触を避けるとよいでしょう。
さらなる情報
米国疾病予防管理センター:ネコひっかき病(Centers for Disease Control and Prevention: Cat-Scratch Disease)