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コレラ

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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コレラは、コレラ菌 Vibrio choleraeというグラム陰性細菌によって引き起こされる重篤な腸の感染症で、重度の下痢がみられ、治療を行わないと死に至る可能性があります。

  • 汚染された食べもの(海産物が多い)や水によって感染が起こります。

  • 衛生状態が不十分な地域以外でコレラが起こることはまれです。

  • 水様性下痢と嘔吐が生じますが、発熱は起こらないのが通常です。

  • 便のサンプル中でこの細菌が特定されれば、診断が確定します。

  • 失われた水分の補給と抗菌薬の投与が効果的です。

細菌の概要も参照のこと。)

ビブリオ属 Vibrioのいくつかの細菌は下痢を引き起こします( 胃腸炎の原因となる微生物)。最も重篤な病気であるコレラは、コレラ菌 Vibrio choleraeによって引き起こされます。コレラは大流行することがあります。

コレラ菌 Vibrio choleraeは平常時は沿岸の水生の環境に存在し、人が汚染された水や海産物などの食べものを摂取することで感染します。いったん感染すると、便中に細菌が排泄されるようになります。そのため、感染が急速に拡大する可能性があり、人の排泄物の処理が行われていない地域では特に問題となります。

かつてコレラは世界各地で発生していましたが、現在は熱帯や亜熱帯の発展途上国にほぼ限られています。アジア、中東、アフリカ、中南米でも風土病としてみられます。小規模な流行は欧州、日本、オーストラリアでも起こったことがあります。米国では、メキシコ湾沿岸地域でコレラが発生することがあります。

貧困があり、清潔な飲用水がなく、人の排泄物が衛生的に処理されていない状況では、コレラの大規模な集団発生が起こり続けます。2010年に地震が起きたハイチでは、その後に深刻なコレラの流行が発生して、2017年まで続きました。この集団発生では、70万人がコレラにかかり、9000人が死亡しました。イエメンでの集団発生は2016年に始まり、まだ終息していません。この集団発生はさらに大きな影響をもたらしています。イエメンでは100万人以上の人々がコレラにかかり、2000人以上が死亡しています。これは現代史上最も規模が大きく、最も急速に拡大しているコレラの集団発生と考えられています。

コレラが風土病になっている地域では、通常は戦争や暴動によって公的な衛生サービスが機能しなくなった際に集団発生が起こります。感染は温暖な時期に小児で最もよくみられます。一方で新たな流行地域では、季節を問わず集団発生が起こり、どの年齢でも等しく感染します。

多量の細菌が体内に取り込まれなければ、感染症は発生しません。胃酸で死滅しないほど大量に細菌を取り込むと、そのうちの一部が小腸に達して増殖を開始し、毒素を作ります。毒素の作用により、小腸から大量の塩分と水が分泌されます。その液体は水様性の下痢として体から失われます。こうして水分と塩分が失われる結果として死に至ります。この細菌は小腸にとどまり、組織に侵入することはありません。

胃酸には殺菌効果があるため、胃酸の分泌が少ない人はコレラにかかる可能性が高くなります。次の人が該当します。

  • 幼児

  • 高齢者

  • プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾールなど)やヒスタミンH2受容体拮抗薬(ラニチジンなど)の作用で胃酸が減少している人

コレラの流行地域に住む人には、徐々に免疫ができてきます。

知っていますか?

  • 治療を受けないと、重度のコレラにかかった人の半数以上が死亡します。

症状

ほとんどの感染者では、症状がまったく出ません。

コレラの症状が現れる際には、接触後1~3日後に症状が始まり、通常は痛みを伴わない水様性の下痢と嘔吐が突然起こります。通常は発熱はありません。

軽度から重度の下痢と嘔吐がみられます。感染症が重症の場合は、下痢によって1時間に約1リットル以上の水分と塩分が失われます。便は灰色で、粘液による斑点がみられます。これは米のとぎ汁様の便と呼ばれます。数時間で重度の脱水になり、強いのどの渇き、強い痛みを伴う筋肉のけいれん、筋力低下の症状が現れます。尿量は非常に少なくなります。眼がくぼみ、指の皮膚がシワシワになることがあります。脱水を治療せず放置すると、水分と塩分の喪失によって、腎不全ショック状態、昏睡が生じ、死に至ることもあります。

生き延びた場合には、コレラの症状は通常は3~6日で治まります。ほとんどの場合、原因菌は2週間で体内から完全に排除されます。まれにコレラ菌が症状を引き起こさずに体内にずっと残ることがあります。このような状態の人はキャリア(保菌者)と呼ばれます。

診断

  • 便サンプルの培養検査

医師は便のサンプルを採取するか、直腸から綿棒でサンプルを採取します。サンプルは検査室に送られ、サンプル中のコレラ菌を増殖させる検査(培養検査)が行われます。サンプル中でコレラ菌 Vibrio choleraeが特定されれば、診断が確定します。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて細菌の遺伝物質(DNA)の量を増やすことで、迅速に細菌を検出することのできる検査を行うこともあります。

脱水状態と腎機能を調べるために血液と尿の検査が行われます。

予防

コレラ予防には以下の対策が欠かせません。

  • 飲料水の浄化

  • 排泄物の適切な処理

コレラの発生地で行えるその他の予防策としては、以下のものがあります。

  • 沸騰させた水や塩素処理された水を使用する

  • 生野菜や加熱調理が不十分な魚介類を避ける

貝や甲殻類の体には、ビブリオ属 Vibrioの別の細菌が生息していることもあります。

ワクチン

米国では、コレラの発生地域に旅行する18~64歳の人はコレラワクチンの接種を受けられます。接種は1回の服用で済みます。ただし、このワクチンの効果が3~6カ月以上続くかどうかは分かっていません。

米国では使用できませんが、ほかにも2種類のコレラワクチンがあります。それらのワクチンは、接種を受けた人の約60~85%で最大5年間効果が続きます。いずれも経口で2回投与されます。コレラにかかるリスクが引き続きある人には、2年後に追加接種を受けることが推奨されます。

治療

  • 塩分を含む輸液

  • 抗菌薬

失われた水分と塩分の補給

失われた水分と塩分を速やかに補うことが命を救うことにつながります。たいていの患者は、経口での水分補給で効果的に治療できます。この輸液は失われた体液を補給する目的に合わせて調製されています。

重度の脱水状態で口から水分をとれない人には、食塩水を静脈から投与します。

流行中に静脈内投与ができない場合は、口から、あるいは必要なら鼻から胃に入れたチューブを介して、食塩水を投与します。十分に体液が補充されて症状が緩和した後も、下痢や嘔吐で失われた体液を回復するために、食塩水を十分に摂取する必要があります。

患者は飲みたいと思う限り多くの水を飲むよう促されます。嘔吐が止まり、食欲が戻ったら、固形物を食べてもかまいません。

治療を受けないと、重度のコレラにかかった人の50%以上が死亡します。すぐに十分な水分補給を行えば、死亡する人は1%以下です。

抗菌薬

抗菌薬が通常は投与され、下痢を緩和し、早期に止めます。また抗菌薬によって、コレラの流行中にその感染拡大をわずかながら抑えることもできます。

使用される抗菌薬としては、ドキシサイクリン、アジスロマイシン、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、シプロフロキサシンなどがあります。いずれも経口の抗菌薬です。医師は、地域内でコレラを引き起こしている細菌に対して効果的であることが分かっている抗菌薬を選択します。ドキシサイクリンは8歳未満の小児の歯を変色させることがあるため、この年齢の小児には代わりにアジスロマイシンまたはトリメトプリム-スルファメトキサゾールが使用されます。

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