(細菌の概要も参照のこと。)
インフルエンザ菌はヘモフィルス属 Haemophilusというグループに属していますが、ヘモフィルス属の細菌の多くは、小児や成人の上気道に存在し、まれに感染症を引き起こします。性感染症である軟性下疳(なんせいげかん)を引き起こすものもあります。その他、心臓弁の感染症(心内膜炎)の原因となるものもあり、まれに脳、肺、肝臓に膿が蓄積します(膿瘍)。ヘモフィルス属細菌による感染症の原因菌で最も多いのがインフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeです。
インフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeは小児のほか、ときに成人にも感染することがあります。
インフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeに感染するリスクが高いのは以下のような人です。
この感染症はくしゃみ、せき、感染者への接触によって広がります。
b型と呼ばれる種のインフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeは、より重篤な感染症を引き起こす傾向にあります。
小児において、インフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型(Hib)は血流によって拡散し(菌血症)、関節、骨、肺、顔面や首の皮膚、眼、尿路、その他の臓器に感染します。
この細菌は次の2種類の重症感染症を引き起こす場合があり、しばしば死に至ります。
症状は感染部位によって異なります。
診断
予防
小児にはインフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型に対するワクチン接種を定期的に行います({blank} 乳児と小児のための定期予防接種)。このワクチンにより、髄膜炎、喉頭蓋炎、菌血症などの重篤なインフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型感染症の数は大幅に減少しました。
重篤なインフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型の感染症が発生した家庭に、インフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型に対する十分な免疫のない4歳未満の小児がいる場合、その小児にワクチン接種を行うことが推奨されます。また感染を予防するために、妊婦を除いた家族全員に抗菌薬であるリファンピシンを投与することも必要です。
1カ所の保育所または託児所で、60日以内に2人以上の小児がインフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型感染症を発症した場合は、それらの小児に接触した成人と小児に抗菌薬を投与する必要があります。
治療
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)感染症は抗菌薬で治療します。どの抗菌薬を使用するかは、感染症の重症度と感受性試験の結果に基づいて決定します。
重篤な感染症を患っている乳児は、抗菌薬の投与開始から24時間は隔離されます(空気感染隔離)。これは汚染された飛沫が空気中に飛び散って他の人に感染するのを防ぐためです。
髄膜炎は、できるだけ速やかに治療する必要があります。抗菌薬(通常はセフトリアキソンまたはセフォタキシム)が静脈から投与されます。コルチコステロイドが脳の損傷を予防するために役立つ可能性があります。
喉頭蓋炎の治療も、できるだけ速やかに開始する必要があります。呼吸の補助が必要になる場合もあります。気道を確保するため、呼吸用のチューブなどが挿入されるほか、まれに気管を切開する場合もあります(気管切開と呼ばれる)。セフトリアキソン、セフォタキシム、セフロキシムなどの抗菌薬を投与します。