抗菌薬の概要

執筆者:Brian J. Werth, PharmD, University of Washington School of Pharmacy
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2024年 5月 | 修正済み 2025年 7月
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抗菌薬は細菌感染症の治療に用いられる薬剤です。ウイルス感染や他のほとんどの感染症に対しては効果がありません。抗菌薬は細菌を殺すか、その増殖を止めることによって、人体のもつ自然の防御機構が細菌を排除するのを助けます。

  • 医師は特定の細菌感染症に効果がある抗菌薬を使用しようと試みますが、ときには細菌の種類を特定する検査の結果を待つ間、多くの細菌感染症を治療できる抗菌薬を使用することもあります。

  • 抗菌薬は、特定の感染症を治療するのに最も効果が出るように処方された用量、頻度、日数を守って服用することが重要です。

  • 抗菌薬を指示通りに服用しない場合、細菌が抗菌薬に対する耐性を獲得することがあります。

  • 抗菌薬には、胃のむかつき、下痢、そして女性においては膣カンジダ症などの副作用があります。

  • 特定の抗菌薬に対してアレルギーがみられる場合もあります。

抗菌薬は、化学構造に基づいてそれぞれのクラスに分類されます。しかし、各クラスの抗菌薬も体に異なる影響を及ぼすことが多く、異なる細菌に効果を示すことがあります。

抗菌薬の分類例:

カルバペネム系、セファロスポリン系、モノバクタム系、およびペニシリン系は、ベータラクタム系抗菌薬のサブクラスに該当します。ベータラクタム系抗菌薬は、ベータラクタム環と呼ばれる化学構造を特徴とする抗菌薬のクラスです。

上の分類に該当しないその他の抗菌薬にはクロラムフェニコールクリンダマイシンダプトマイシンホスホマイシンレファムリンメトロニダゾールムピロシンニトロフラントインチゲサイクリンなどがあります

抗菌薬の選び方

抗菌薬はそれぞれ、特定の種類の細菌にしか効果を発揮しません。したがって、感染症の治療に使用する抗菌薬を選択するにあたって、医師はまず、病原菌が何であるかを推測します。たとえば、特定の種類の細菌のみが引き起こす感染症があります。ときに、感染症を引き起こしている可能性が最も高いと考えられる細菌すべてに対して、1つの抗菌薬が効果を示すと予測される場合は、それ以上の検査は不要となります。

複数の種類の細菌によって引き起こされたと思われる感染症、あるいは抗菌薬に対する感受性が不明な細菌による感染症の場合は、患者から血液、尿、組織などのサンプルを採取し、検査室で感染菌の特定を行う必要があります(「感染症の診断」を参照)。その後、その病原菌がもつ様々な抗菌薬に対する感受性を調べます。この検査は結果が出るまでに1~2日かかるため、感染症をすぐに治療する必要がある場合、抗菌薬の初期選択の段階で検査結果を参考にすることはできません。このような場合には、感染症を引き起こしている可能性が最も高い細菌に対して効果的な抗菌薬による治療を開始します。検査結果が出れば、必要に応じて抗菌薬を変更します。

検査室で効果を示した抗菌薬が、人体にも必ず効果を発揮するとは限りません。治療の有効性は、以下の要因に左右されます。

このような要因は人によって異なり、使用中の他の薬剤や現在かかっている他の病気、年齢が影響を与えます。

抗菌薬を選択する際には、医師は以下の点も考慮します。

  • 感染症の性質と重篤さ

  • 患者の免疫系の状態(感染症に対する抗菌薬による治療をどの程度後押しできるか)

  • 抗菌薬の副作用の可能性

  • 抗菌薬に対するアレルギーや他の重篤な反応が現れる可能性

  • 抗菌薬の価格

医師は、抗菌薬を処方された期間中に継続して服用し、最後まできちんと服用し終えることがどの程度難しいかについても検討します。抗菌薬を頻繁に服用しなければならない場合や、特定の時間(食前、食事中、食後など)にのみ服用しなければならない場合、最後まで服用し続けるのがより困難になることがあります。

以下のような場合、複数の抗菌薬の併用が必要なことがあります。

  • 重度の感染症で、特に感染してから日が浅く、抗菌薬に対する細菌の感受性が不明な場合

  • 1つの抗菌薬のみでは、その薬剤に対する耐性を即座に獲得してしまう細菌が原因である場合

  • 複数の細菌を原因とする感染症で、それぞれの細菌が異なる抗菌薬に対して感受性を示す場合

抗菌薬に対する耐性

細菌はすべての生物と同じく、環境の変化にさらされると、それに合わせて少しずつ変化していきます。一方で、誤用(例えば、処方通りに服用されない場合)も含めて抗菌薬の使用が広く普及したことにより、細菌は頻繁に抗菌薬にさらされるようになっています。多くの細菌は抗菌薬にさらされると死滅しますが、抗菌薬を適切に服用しない場合、一部の細菌が生き延びて、抗菌薬の効果に対する耐性を獲得してしまいます。例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(皮膚感染症の一般的な原因)には、かつてはペニシリンが非常に有効でした。しかし、次第にこの菌の一部の菌(菌株)がペニシリンを分解する酵素を作り出すようになり、ペニシリンの効果が失われました。そこで今度は、その酵素では分解されない改良型ペニシリン系抗菌薬が開発されましたが、黄色ブドウ球菌は数年後にはこれにも適応し、改良型ペニシリンに対する耐性を獲得しました。他の細菌も、抗菌薬への耐性をもつように進化しています。

こうした状況の中で、このような細菌に対抗するための抗菌薬の研究が続けられています。しかし、以下のことによって、一般の人でも耐性菌発生の阻止に貢献することができます。

  • 抗菌薬はウイルス感染症(かぜやインフルエンザなど)ではなく細菌感染症の治療に使用する薬であるということ、また、医師はこれらのウイルス感染症に対して抗菌薬を処方しないということを理解する

  • 正しい用量、1日の服用回数、および服用する日数を含めて、指示通りにきちんと抗菌薬を服用する(たとえ体調が回復したとしても、抗菌薬は処方された日数分すべて服用することが重要)

知っていますか?

  • ウイルスが感染症の原因である場合、抗菌薬を使用することに意味はなく、逆に細菌の耐性獲得を促すことになります。

抗菌薬の使用

重症の細菌感染症や、食事や液体を摂取できない場合、最初は抗菌薬を注射(普通は静脈内、時として筋肉に注射)で投与します。そして感染症をある程度抑えられたら、抗菌薬を内服で使用できるようになります

それほど重症でない場合には、初期段階から内服薬による治療が行われることもあります。

加齢に伴い腎臓の機能が低下する傾向があるため、高齢者に抗菌薬を処方する際には通常よりも少ない用量が選択されます。高齢者の場合は、腎臓が効果的に体内から抗菌薬を除去することができず、副作用のリスクが増します。(「加齢および薬剤」も参照。)

次のような点にも考慮します。

  • 他にどのような薬を使用しているか(高齢者は多くの薬を使用している可能性が高く、薬剤間の相互作用が起こるリスクがあるため)

  • 抗菌薬の服薬指示が複雑で遵守するのが難しくはないか

  • 処方通りの抗菌薬の使用を手助けできる家族や介護者がいるかどうか

抗菌薬は、感染菌が体からすっかり排除されるまで使用する必要があり、そうなるには症状が消えてから何日もかかることがあります。服用を途中でやめると、感染症のぶり返しにつながります。

処方された抗菌薬の服用方法や副作用については、医師、看護師、薬剤師に説明を求めるとよいでしょう。抗菌薬の中には空腹時に服用するものもあれば 食後に服用するものもあります。メトロニダゾールというよく使われる抗菌薬は、アルコールと一緒に服用すると不快な反応を引き起こします。ある種の抗菌薬では、別の薬剤を服用中に使用すると、その薬剤と相互作用を起こすことで、どちらかの有効性が低下したり、副作用が増強したりします。また、服用すると皮膚が太陽光に過敏になるような抗菌薬もあります。

感染症を予防するための抗菌薬の使用

抗菌薬は、感染を防ぐ目的で使われることもあります(予防投与)。たとえば、以下の場合に抗菌薬の予防投与を行うことがあります。

  • 髄膜炎の患者と接触した人

  • 心臓弁に障害がある人や人工弁を装着している人が、歯科や外科治療を受ける前(このような処置によって細菌が体内に取り込まれる可能性があり、心臓弁への細菌感染を予防するため)

  • 感染症が発生するリスクが高い手術(整形外科手術や腸の手術など)を受ける人

細菌の抗菌薬耐性化や副作用の発現を避けるため、予防投与は通常、短期間に限定されて行われます。

白血病患者や、がんに対する化学療法を受けている患者、HIV感染症/エイズ患者など、免疫機能が低下している人にも(重篤な感染症を起こす可能性が特に高いことから)抗菌薬が投与されることがあります。このような場合には、おそらく長期投与が必要になります。

妊娠中や授乳期間中の抗菌薬の使用

一般に妊娠中は、治療による利益がリスクを上回る場合にのみ抗菌薬を使用します。比較的安全な抗菌薬もあります。ペニシリンセファロスポリンエリスロマイシンは、妊娠中に使用できる最も安全な抗菌薬です。(妊娠中の薬剤の安全性も参照のこと。)

ほとんどの抗菌薬は、乳児に影響を及ぼしうるほどの量が母乳に移行するため、授乳期間中の女性では使用できない場合があります。ときに、授乳を中止するか、抗菌薬を使用しないことにするか、決定しなければなりません。

妊娠中または授乳中に感染症を発症した場合、治療による効果とリスクについて主治医に相談するべきです。(授乳期間中の薬剤および物質の使用も参照のこと。)

自宅での抗菌薬治療

通常、病院外で服用する抗菌薬は経口で投与されます。しかし、骨(骨髄炎)や心臓の感染症(心内膜炎)など一部の感染症では、4~6週間にわたって抗菌薬の静脈内投与が必要となる場合があります。入院して治療すべき疾患が他になく、全身状態が比較的良い場合は、在宅で静脈内投与による治療を受けることができます。

長期間の静脈内投与の場合には、腕や手の細い静脈に挿入する短い静脈カテーテル(多くの病院で広く使用されているもの)が望ましくないこともあります。このようなカテーテルは最長で3日間しか使用できないためです。代わりに、特殊なタイプの静脈カテーテルを使用します。以下のいずれかの方法で挿入します。

  • 太い中心静脈(通常は首や胸にある)に直接挿入する(中心静脈カテーテルと呼ばれます)

  • 腕の細い静脈に挿入し太い中心静脈まで進める(末梢挿入型中心静脈カテーテル[PICC]と呼ばれます)

抗菌薬を静脈投与する装置には、患者や家族が自分で操作を覚えられる簡単な種類のものがあります。また、訪問看護師に投与してもらうこともできます。どちらの場合でも、注意深い監督の下で抗菌薬が正しく使用されていることを確認すると共に、合併症や副作用にも注意する必要があります。

自宅での静脈カテーテルを介した抗菌薬による治療では、どうしてもカテーテル挿入部や血液に感染するリスクが高くなります。以下のものがみられる場合は、カテーテルからの感染を疑います。

  • カテーテルを挿入した部分の痛みや発赤、膿

  • 発熱や悪寒(挿入部に問題がない場合でも)

抗菌薬の副作用

よくみられる抗菌薬の副作用としては以下のものがあります。

さらに場合によっては、腎臓、肝臓、骨髄などの臓器の機能障害につながる重い副作用を起こすこともあります。これらの臓器に影響が現れていないか判断するため、血液検査が行われることがあります。

大腸炎(大腸の炎症)が、抗菌薬、特にセファロスポリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、またはペニシリンを使用することによって発症することがあります。このような大腸炎はクロストリジオイデス・ディフィシル腸炎と呼ばれ、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)という細菌が作る毒素によって起こります。この細菌は、複数の抗菌薬に対する耐性をもっており、腸の常在菌が抗菌薬によって死滅することで、抑制されずに増殖するようになります。クロストリジオイデス・ディフィシル腸炎は治療が難しく、特に高齢者では生命を脅かす可能性があります。

抗菌薬に対するアレルギー反応

抗菌薬がアレルギー反応を起こすこともあります。軽度のアレルギー反応としては、かゆみのある発疹や軽い喘鳴(ぜんめい)などがあります。重度のアレルギー反応であるアナフィラキシーは、生命を脅かす可能性があり、のどの腫れ、呼吸困難、血圧低下などを起こします。

特定の抗菌薬にアレルギーがある場合は、そのことを医療専門職に伝えて、過去にその抗菌薬を使用したときに起きた反応について説明することが重要です。抗菌薬を服用すると多くの人に副作用がみられますが、それらの副作用はアレルギーと関係のないものである場合もあります(「薬物アレルギー」を参照)。この区別は重要で、ある抗菌薬に対してアレルギーがある人は、その薬だけでなく、それとよく似た抗菌薬も使用すべきではありません アレルギー反応が生命を脅かす可能性があるためです。一方、軽い副作用が出ただけならば、類似した抗菌薬を使うことができるだけでなく、副作用を引き起こした抗菌薬を使い続けることができる場合もあります。抗菌薬を服用して不快な症状が出た場合は、医療従事者の診察を受け、その症状が重大かどうかを確認してもらうようにしてください。

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