軟性下疳

執筆者:Sheldon R. Morris, MD, MPH, University of California San Diego
レビュー/改訂 2021年 1月
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軟性下疳(げかん)は、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)という細菌が引き起こす性感染症で、陰部に痛みのある潰瘍ができます。

軟性下疳は、先進国ではまれな病気です。2018年に米国で報告された症例は3例だけでした。しかし、多くの発展途上国では、陰部にできる潰瘍の一般的な原因の1つになっています。軟性下疳は陰部に潰瘍を生じさせるため、患者はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したり、HIVを他者に広めたりする可能性が高くなります。

性感染症の概要も参照のこと。)

軟性下疳の症状

症状は感染後3~7日で現れます。痛みを伴う小さな水疱が性器や肛門付近にでき、すぐに破れて、縁がぎざぎざの浅い潰瘍を生じます。このような潰瘍が広がって合体することもあります。ときに、これらの潰瘍が深くなり、他の組織を傷つけることがあります。

鼠径部(そけいぶ)のリンパ節が、押すと痛むようになり、大きくなっていくつもつながり、横痃(よこね)と呼ばれる膿がたまった空洞(膿瘍[のうよう])ができることがあります。膿瘍の表面の皮膚は赤くなり、つやを帯び、これが破れて、リンパ節の膿が皮膚上に出てくることもあります。潰瘍が皮膚の他の部位にできることもあります。

軟性下疳の診断

  • 医師による評価

  • 膿や体液のサンプルの培養検査

医師は、明らかな原因がない状況で陰部に痛みを伴うただれ(潰瘍)がみられる場合、軟性下疳を疑いますが、その人がこの感染症の流行地域にいたことがある場合には、特にその疑いを強めます。

通常は、この感染症を診断するために、膿や体液を採取して検査室に送り、細菌を増殖させる検査(培養検査)を行います。しかし、軟性下疳菌を培養し特定することは困難であるため、診断の際は症状やこの菌にさらされる可能性の方が重視されます。

軟性下疳に対する特別な検査は容易には利用できませんが、ほかに考えられる原因(梅毒HIV感染症など)を否定するために血液検査を行う場合があります。

軟性下疳の予防

軟性下疳(やその他の性感染症)の予防には、以下の一般的な対策が役立ちます。

  • コンドームを常に正しく使用する

  • セックスパートナーを頻繁に変えたり、売春婦と性交したり、他のセックスパートナーがいる相手と性交したりするといった安全でない性行為を避ける

  • 感染症の迅速な診断と治療(感染の拡大を防ぐため)

  • 感染者の性的接触を把握し、それらの接触に対するカウンセリングや治療を行う

最も確実な性感染症の予防方法は、性行為(肛門性交、腟性交、オーラルセックス)を行わないことですが、これは往々にして非現実的です。

軟性下疳の治療

  • 抗菌薬

軟性下疳には数種類の抗菌薬が効果的です。使用される抗菌薬には以下のものがあります。

  • セフトリアキソンの筋肉内注射を1回

  • アジスロマイシンの経口投与を1回

  • シプロフロキサシンの経口投与を3日間

  • エリスロマイシンの経口投与を7日間

横痃(よこね)によって不快感が生じている場合は、医師が切開して膿を排出します。この治療は、患者が抗菌薬を使用して感染症を抑えている場合にのみ行われます。

軟性下疳があるものの、梅毒とHIV感染症の最初の検査で陰性と判定された人には、3カ月後に再び受診して梅毒とHIV感染症の再検査を受けることが推奨されます。

感染者の症状が始まる前の10日間にセックスパートナーが感染者と性的接触をした場合、軟性下疳の症状があるかどうかにかかわらずパートナーにも検査と治療が行われます。

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