クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症

執筆者:Sheldon R. Morris, MD, MPH, University of California San Diego
レビュー/改訂 2021年 1月
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やさしくわかる病気事典

クラミジアによる感染症としては、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌によって引き起こされる尿道、子宮頸部、直腸の性感染症などがあります。この種の細菌は、白眼の部分を覆う膜(結膜)やのどにも感染することがあります。ウレアプラズマ属(Ureaplasma)やマイコプラズマ属(Mycoplasma)などの他の細菌が尿道の感染症を引き起こすこともあります。

  • 症状には、陰茎や腟からの分泌物、排尿時の痛みや頻尿などがあります。

  • 女性が感染に気づかないか気づいても治療を受けずにいると、不妊症や流産に至ったり異所性(子宮外)妊娠のリスクが高まったりすることがあります。

  • 分泌物や尿のDNA検査で、クラミジア感染症を発見できます。

  • 抗菌薬により根治可能であり、セックスパートナーも同時に治療を受ける必要があります。

性感染症の概要も参照のこと。)

クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ウレアプラズマ(Ureaplasma)、マイコプラズマ(Mycoplasma)など、いくつかの細菌が同様の病気を引き起こし、そのいずれも淋菌感染症という性感染症(STI)に似ています。クラミジアは検査室で特定できますが、その他の細菌は特定が困難であるため、これらはときに非淋菌感染症と呼ばれます。

クラミジア感染症は最も報告の多い性感染症です。米国では、2018年に180万例以上の症例が報告されました。この感染症では症状が出ないことも多いため、クラミジアに感染している人の実数は、報告数の2倍にのぼる可能性があります。

クラミジア感染症と淋菌感染症は同様の症状を引き起こします。どちらも男性では尿道の感染症(尿道炎)を、女性では膿を伴う子宮頸部の感染症(子宮頸管炎)を引き起こすことがあります(クラミジア感染症とマイコプラズマ属も参照)。

ときに、淋菌とクラミジアに同時に感染することもあります。

症状

男性では、クラミジア尿道炎の症状は性交による感染の7~28日後に現れます。一般に、排尿時に尿道に軽い灼熱感を覚え、陰茎から透明または濁った分泌物が出ることがあります。この分泌物は通常、淋菌感染症で生じるものよりサラサラしています。分泌物の量が少なく、症状が軽いこともあります。それでも朝起きたときに陰茎の開口部が赤くなり、乾いた分泌物でくっついたような状態になっていることがよくあります。また、もっと劇的な症状で始まる場合もあります。この場合、頻繁に尿意が生じ、排尿時に痛みがあり、尿道から膿が出てきます。

クラミジア子宮頸管炎にかかった女性の多くは、症状がほとんどないか、あってもごくわずかです。しかし頻繁に尿意が生じたり、排尿時に痛みを覚えたり、腟から黄色い粘液や膿が出ることがあります。性交時に痛みが生じることもあります。

直腸の感染症では、直腸が痛んだり、押すと痛みが感じられたり、直腸から黄色い膿や粘液が出ます。

クラミジア感染症はオーラルセックスで感染することもあり、この場合はのどに感染が起こります。のどに起きるクラミジア感染では、症状がみられないのが通常です。

治療を行わなくても、約3分の2の人では4週間以内に症状が軽快します。しかし、たとえ症状がないか軽度のものであっても、クラミジア感染症は女性には深刻な長期的影響を与える可能性があります。そのため、たとえ症状がなくても、女性の感染は見つけて治療することが重要です。

知っていますか?

  • クラミジア感染症は、最も多い性感染症です。

合併症

女性のクラミジア感染症の合併症としては以下のものがあります。

  • 卵管の瘢痕化

  • 卵管の感染症(卵管炎)

  • 骨盤と腹腔の内側を覆う膜の感染症(腹膜炎)

  • 肝臓の周囲の感染症

感染が生殖器を通って広がり、卵巣と子宮をつなぐ管(卵管)に及ぶことがあります。この感染症は卵管炎と呼ばれ、下腹部に強い痛みを引き起こします。一部の女性では、骨盤や腹腔の内側を覆う膜(腹膜)に感染が広がり、腹膜炎が起こることもあります。腹膜炎では下腹部にさらに激しい痛みが生じます。このような感染症は骨盤内炎症性疾患とみなされます。感染が右上腹部に位置する肝臓周辺に集中して、痛みや発熱、嘔吐を引き起こすことがあります。この感染症はフィッツ-ヒュー-カーティス症候群と呼ばれます。

合併症には、慢性腹痛や卵管の瘢痕(はんこん)化などがあります。この瘢痕が不妊症や異所性(子宮外)妊娠の原因となることがあります。

男性のクラミジア感染症の合併症としては以下のものがあります。

  • 精巣上体の感染症

  • 尿道の狭窄

クラミジア感染症は精巣上体の感染症(精巣上体炎)を引き起こすことがあります。精巣上体とは、左右の精巣の上にあるコイル状の管です(図「陰茎から精巣上体への経路」を参照)。この感染症にかかると、片方または両方の陰嚢が腫れて痛みます。この感染症では、瘢痕化により陰茎内部の尿の通り道(尿道)が狭くなることがあります。

男女共通のクラミジア感染症の合併症としては以下のものがあります。

  • 白眼を覆う膜の感染症(結膜炎)

  • 反応性関節炎

クラミジア性器感染症は、反応性関節炎と呼ばれる(以前はライター症候群と呼ばれていました)関節の炎症を引き起こすことがあります。典型的な反応性関節炎では、一度に1つまたは少数の関節だけが侵されます。最もよくみられるのは膝などの脚の関節です。この炎症は、感染症が関節に広がったものではなく、性器の感染症に対する免疫反応と考えられます。症状は通常、最初にクラミジアに感染した後1~3週間で現れます。反応性関節炎に伴って、足の皮膚の変化、眼の異常、尿道の炎症といったその他の問題がみられることがあります。

新生児のクラミジア感染症の合併症としては以下のものがあります。

  • 結膜炎

  • 肺炎

母親に子宮頸部のクラミジア感染症がある場合、新生児は分娩中にクラミジア (Chlamydia)に感染するおそれがあります。新生児では、感染により肺炎または結膜炎(新生児結膜炎)が生じる可能性があります。

陰茎いんけいから精巣上体せいそうじょうたいへの経路けいろ

男性だんせいではときに、微生物びせいぶつ尿道にょうどうをさかのぼって精巣せいそうから精子せいしおくるためのくだ精管せいかん)をとおり、精巣せいそううえほうにある精巣上体せいそうじょうたい感染かんせんすることがあります。

診断

  • 通常は子宮頸部、陰茎、のど、直腸からの分泌物や尿のサンプルを用いた検査

陰茎や子宮頸部から分泌物が出るなどの症状に基づいて、クラミジア、ウレアプラズマ、マイコプラズマ感染症が疑われます。

たいていは、クラミジアに特有の遺伝物質(DNA)を検出する検査を行い、クラミジア感染症の診断を下します。検査には通常、陰茎や子宮頸部の分泌物を使用します。ときに、女性には綿棒を使用して腟からサンプルを採取するように求められることがあります。このような検査の中には、尿サンプルを使用できるものもあります。尿のサンプルを使用できる場合、サンプル採取のために陰茎に綿棒を挿入したり、婦人科内診を受けたりする煩わしさを回避することができます。

医師がのどまたは直腸の感染を疑った場合、それらの部位から採取されたサンプルが検査されることがあります。

よく同時に感染がみられる淋菌感染症も、同じサンプルで診断することができます。通常はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症梅毒の有無を調べる血液検査も行われます。

スクリーニング

クラミジア感染症は非常によくみられる病気で、また感染した女性の多くで症状がみられないため、性的に活動的な女性と男性には、クラミジア感染症と他の性感染症に対するスクリーニング検査が推奨されます。

妊娠していない女性(女性と性行為をする女性を含む)は、感染リスクを高める以下の条件に当てはまる場合に毎年スクリーニング検査を受けます。

  • 性的に活動的で25歳以下である

  • 過去に性感染症になったことがある

  • 危険な性行為をしている(セックスパートナーが何人もいる、普段からコンドームを使用していない、性風俗の仕事に従事しているなど)

  • 危険な性行為を行っているまたは性感染症をもつパートナーがいる

妊婦は最初の妊婦健診の際にスクリーニングを受けます。以下の妊婦は、第3トリメスター【訳注:日本でいう妊娠後期にほぼ相当】に再度検査を受けます。

  • 25歳以下の全員

  • 感染症のリスクが高い25歳以上の人

妊婦にクラミジア感染症がある場合は治療します。このような女性は3カ月以内にさらにもう一度検査を受けます。

性的に活動的な異性愛者の男性は、定期的にスクリーニングを受ける必要はありませんが、クラミジア感染症のリスクが高い場合(複数のセックスパートナーがいる場合、青年クリニックや性感染症クリニックに通っている場合、または刑務所などの矯正施設に収容される場合など)にはスクリーニングを受けます。

男性と性行為をする男性は、以下の場合にスクリーニングを受けます。

  • 性的に活動的な場合:少なくとも年1回

  • リスクが高い場合(HIV感染者である、複数のセックスパートナーがいる、パートナーに複数のパートナーがいる):3~6カ月毎

このような男性には、コンドームを使用しているかどうかに関係なくスクリーニングが行われます。検査は、直腸、尿道、またはオーラルセックスをしている場合、のどから採取したサンプルを使用して行われます。

予防

クラミジア感染症(やその他の性感染症)の予防には、以下の一般的な対策が役立ちます。

  • コンドームを常に正しく使用する

  • セックスパートナーを頻繁に変えたり、売春婦と性交したり、他のセックスパートナーがいる相手と性交したりするといった安全でない性行為を避ける

  • 感染症の迅速な診断と治療(感染の拡大を防ぐため)

  • 感染者の性的接触を把握し、それらの接触に対するカウンセリングや治療を行う

最も確実な性感染症の予防方法は、性行為(肛門性交、腟性交、オーラルセックス)を行わないことですが、これは往々にして非現実的です。

治療

  • 抗菌薬

  • 同時にセックスパートナーの治療を行う

クラミジア、ウレアプラズマ、マイコプラズマ感染は、次のいずれかの抗菌薬で治療されます。

  • アジスロマイシンの経口単回投与

  • ドキシサイクリン、エリスロマイシン、レボフロキサシン、またはオフロキサシンの7日間経口投与

妊婦はアジスロマイシンで治療されます。

淋菌感染症の可能性がある場合、その治療のためにセフトリアキソンなどの抗菌薬の筋肉内注射が同時に行われます。このような治療が必要とされるのは、この2つの感染症の症状が似ているためで、また両方の感染症に同時にかかっている人が多いためでもあります。

次のいずれかの理由により、症状が続いたり再発したりする場合があります。

  • 併存する他の感染症が症状を引き起こしている

  • 再び感染した

  • 感染したクラミジアが抗菌薬に耐性をもっている

そのような場合、クラミジア感染症と淋菌感染症の検査が再度行われ、ときには他の感染症の検査も行われます。そして、アジスロマイシン、またはアジスロマイシンを以前に使用したときに効果がなかった場合はモキシフロキサシンが投与されます。

できればセックスパートナーも同時に治療を受けるべきです。感染者とセックスパートナーは、治療を1週間以上続けるまで性交を控えるべきです。

3~4カ月以内にクラミジアをはじめとする性感染症に再び感染するリスクが高いため、その時期に再度スクリーニング検査を受ける必要があります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国疾病予防管理センター:クラミジア(Centers for Disease Control and Prevention: Chlamydia

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