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クリプトスポリジウム症

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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クリプトスポリジウム症は、クリプトスポリジウム Cryptosporidiumという原虫によって引き起こされる腸管感染症です。主な症状は腹部けいれんと下痢です。

  • 汚染された水や食べものを摂取したり、感染した人や動物に接触することで感染します。

  • 腹部けいれんと水様性下痢が急に始まり、ときに吐き気、嘔吐、発熱、筋力低下を伴います。

  • この感染症の診断は、便のサンプルを調べて寄生虫の徴候を探す検査によって下されます。

  • 十分な公衆衛生と手洗いによって感染の拡大を予防でき、飲料水の煮沸も有効です。

  • 健康な人は多くの場合、自然に回復しますが、抗寄生虫薬による治療が必要なこともあります。

  • エイズの人や免疫機能が低下している人では、抗寄生虫薬による治療を行っても下痢が続きます。

寄生虫感染症の概要も参照のこと。)

寄生虫のクリプトスポリジウム Cryptosporidiumは世界中で様々な動物と人間に感染する原虫です。

クリプトスポリジウム症は以下の経路で発生します。

  • クリプトスポリジウム Cryptosporidiumの虫卵を含んだ人間の便や動物の糞で汚染された水や食べものを摂取する

  • 寄生虫に汚染された土または物を触る

  • 感染した人または動物と接触する

クリプトスポリジウム Cryptosporidiumの虫卵は殻が厚く非常に頑丈で、世界中のプール、浴槽、親水公園、湖、河川によくみられます。この寄生虫は冷凍しても死なず、プールや飲み水の消毒に使用される通常の濃度の塩素でも死にません。

虫卵を飲み込むと、腸まで移動した虫卵から寄生虫の幼虫が放出され、これが腸の粘膜を構成する細胞の中に侵入します。寄生虫はそこで成熟して増殖し、産卵します。そして、便の中に虫卵が排出されます。クリプトスポリジウム Cryptosporidiumの虫卵は、わずかな数でも感染を引き起こします。

クリプトスポリジウム症は、衛生状態の悪い開発途上地域では小児の下痢の一般的な原因の1つとなっています。こうした地域を旅行した人に感染が起こることもあります。クリプトスポリジウム症は、米国でも下痢の流行を引き起こしています。2013年にはオレゴン州のベイカーシティで、市の水道がクリプトスポリジウム Cryptosporidiumで汚染された際に、2780人が感染しました。ほかの市でも流行は起きていて、デイケア施設での集団発生もみられます。

免疫機能が低下している人、特にエイズ患者はクリプトスポリジウム症にかかりやすく、重症化かつ長期化しがちです。

知っていますか?

  • 免疫機能が正常であれば、クリプトスポリジウム症の治療は不要な場合があります。

症状

クリプトスポリジウム症の症状は感染から7日ほど後に急に現れ、主に腹部けいれんやおびただしい量の水様性下痢が生じます。吐き気、嘔吐、食欲不振、発熱、筋力低下も起こります。症状は1~2週間続いた後、治まります。症状が消失してからも数週間は、便中に虫卵が排出されることがあります。

免疫機能が低下している人では、クリプトスポリジウム症の症状はゆっくりと始まり、下痢の状態は軽度から重度まで様々で(エイズ患者では、1日に約11~15リットルもの水様性便が出ます)、長期にわたって続く場合もあります。

診断

  • 便検査

クリプトスポリジウム症の診断を下すため、医師は便のサンプルを採取し、寄生虫から放出されるタンパクまたは寄生虫の遺伝物質(DNA)の検査を行います(抗原検査)。

別の手法としては、顕微鏡下で便を観察し、クリプトスポリジウム Cryptosporidiumの虫卵の有無を調べる検査がありますが、感度が低く、寄生虫を発見するまでに複数の便サンプルが必要になります。特殊な技術を用いると、虫卵を特定できる可能性を高めることができます。

内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を使用して、小腸の最初の部分(十二指腸)を含めた消化管の上部を調べることもあります。その際に、検査と分析のために組織サンプルを採取することもあります(生検)。クリプトスポリジウム Cryptosporidiumがいれば、腸管の生検用のサンプル中に虫体が認められます。

予防

十分な公衆衛生を維持し、手洗いを励行することがクリプトスポリジウム症の予防につながります。特に医療施設やデイケア施設において、あるいは土や動物を触ったり、感染者と接触したりした後には、しっかり手を洗うことが重要です。プール、河川、親水公園、湖、衛生状態の悪い地域の水など、汚染されている可能性がある水を飲んだり、飲み込んだりしてはいけません。

地域で集団感染が起こった場合、公衆衛生当局により、次のような指導が行われます。

  • 飲み水は(歯磨きや食材を洗う水も)沸騰させてから使うこと

  • 加熱調理されたもの以外は食べないこと

  • 無殺菌の牛乳やジュースは飲まないこと

逆浸透膜フィルターを使用している浄水器や、1マイクロメートルの粒子を除去できることが明記されているか、シスト除去レベルが全米科学財団の定めるNSF/ANSI規格No.53またはNo.58を満たしていることが明記されている浄水器は効果的です。それ以外のフィルターは安全でない可能性があります。

治療

  • 下痢が続く人には、ニタゾキサニド

  • エイズ患者には、HIV感染症の治療

  • 下痢が重度の場合は、水分補給と下痢止め薬

免疫機能が正常な人は、自然に治ります。そうした人で下痢が続いている場合は、ニタゾキサニド(抗寄生虫薬)を使用することで、回復が早まる可能性があります。

エイズを発症している人では抗レトロウイルス薬によるHIV感染症の治療が最も重要になります。そうした治療によって免疫系の機能が強化されれば、下痢は通常軽くなります。免疫不全状態の人でニタゾキサニドがどの程度有効であるかはよくわかっていません。免疫系の問題が解決しない限り、下痢は生涯続く可能性があります。

激しい下痢がある場合は、経口または静脈内投与による水分補給や、ロペラミドなどの下痢止め薬による治療が必要になります。ただし、ロペラミドはエイズ患者に効果的でないこともあります。

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