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アフリカ睡眠病

(アフリカトリパノソーマ症)

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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アフリカ睡眠病は、ガンビアトリパノソーマ Trypanosoma brucei gambiense またはローデシアトリパノソーマ Trypanosoma brucei rhodesienseという原虫によって引き起こされる感染症です。ツェツェバエに刺されることで感染します。

  • 睡眠病はアフリカの赤道付近でのみ発生します。

  • ハエに刺された部位に痛みのある隆起や潰瘍が生じることがあり、続いて発熱、悪寒、頭痛、リンパ節の腫れ、ときに発疹がみられ、やがて眠気や歩行障害をきたし、治療しなければ昏睡や死に至ります。

  • 通常は血液、リンパ節から採取した体液、脳脊髄液(髄液)のサンプルに含まれる原虫を特定し、診断を確定します。

  • すべての感染者に対して、トリパノソーマ属 Trypanosoma原虫に効果的な薬のいずれかを用いて治療を行う必要があります。

睡眠病は、アフリカの赤道付近でツェツェバエが生息している地域でのみ発生します。睡眠病には2つの病型があります。それぞれ、異なる種のトリパノソーマ属 Trypanosoma原虫によって引き起こされます。一方(ガンビアトリパノソーマ Trypanosoma brucei gambienseが原因のもの)は西アフリカと中央アフリカで発生し、もう一方(ローデシアトリパノソーマ Trypanosoma brucei rhodesienseが原因のもの)は東アフリカで発生しています。ウガンダでは両方が発生しています。アフリカ睡眠病の感染を予防する取り組みが進んだことで、新たな症例の数は2009年の9,878例から2015年には2,804例まで減少しました。

感染経路

ガンビアトリパノソーマ Trypanosoma brucei gambiense とローデシアトリパノソーマ Trypanosoma brucei rhodesienseは通常、ツェツェバエが人を刺した際に、これらの原虫が皮膚の中に注入されることによって感染します。原虫はリンパ系や血流中に移動し、そこで増殖します。さらに全身の臓器や組織を巡って、やがては脳に到達します。感染した人や動物をハエが刺した後に、別の人を刺すことで感染が広がります。

妊娠中や分娩時に、感染した母親から胎児に原虫が移動することがあります。まれに輸血を介して感染することもあります。理論上は感染者から提供を受けた臓器の移植で感染する可能性もあります。

症状

アフリカ睡眠病では、以下の順序で体内の各部が侵されていきます。

  • 皮膚

  • 血管とリンパ節

  • 脳と髄液(脳と脊髄の周囲を流れている液体)

感染がどのくらいの速度で進行し、どんな症状が引き起こされるかは、原因となる寄生虫の種類によって異なります。

皮膚

ツェツェバエに刺されると、数日から2週間以内に刺された箇所に隆起ができることがあります。その部分が暗い赤色になり、痛みがでる場合や腫れて潰瘍化する場合があります。

血管とリンパ節

数週間から数カ月のうちに、感染は血液やリンパに広がります。その後、発熱が生じたり治まったりし、悪寒、頭痛、筋肉痛や関節痛が現れます。一時的に顔にむくみがみられることがあります。人によっては発疹が出て、首の後ろに沿ってリンパ節が腫れます。貧血が起こることもあります。

脳と髄液

脳や髄液に感染が及ぶと、持続的な頭痛が生じます。患者は眠気を感じ、集中力を欠いて、平衡感覚や歩行に障害が生じる場合もあります。眠気がひどくなり、活動の途中で寝てしまう場合があります。

治療をしなければ脳の損傷が進行し、昏睡や死亡につながります。原因となった寄生虫の種類に応じて、発症後数カ月から2~3年以内に死亡します。ときに、低栄養や他の感染症が死因になることもあります。

診断

  • 血液またはリンパ節から採取した体液のサンプルを用いた検査

  • 腰椎穿刺と髄液の分析

医師は血液またはリンパ節から採取した体液のサンプルを検査し、その中に原虫を確認した場合に、アフリカ睡眠病と診断します。骨髄または潰瘍から採取した体液のサンプルを検査して、原虫の有無を調べることもあります。

アフリカ睡眠病の診断が下されたら、感染が髄液(脳と脊髄の周囲を流れている液体)や脳に広がっているないかどうかを判断するために、腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む 腰椎穿刺 を行って髄液のサンプルを採取します。また、体液のサンプル中に原虫が存在しないか、他の感染症の徴候がないかも確認します。そのような徴候としては、髄液の圧力の上昇や髄液中の白血球数の増加などがあります。

予防

次に示す注意によって、ツェツェバエに刺される機会を減らすことができます。

  • ツェツェバエがはびこっている地域を避ける。アフリカのツェツェバエ生息地域に旅行する人は、現地在住者にハエを避けることができる場所を尋ねるとよいでしょう。

  • 厚手で長袖の上着と長ズボンを着用する。ツェツェバエは薄い生地の上から刺すことがあります。

  • 環境内に溶け込みやすい中間色の衣服を着用する。ツェツェバエは明るい色や暗い色に誘われてやってきます。

  • 必要に応じて防虫剤を使用する。ただし、ツェツェバエには効かないこともあります。

治療

  • 原因となる原虫に効果的な薬

アフリカ睡眠病は、この種の感染症に有効な薬を用いて、できるだけ早く治療する必要があります。しかし、一部の薬には重篤な副作用があります。

感染症を引き起こしている原虫の種類(ガンビアトリパノソーマ gambienseまたはローデシアトリパノソーマ rhodesiense)と感染症が脳や髄液に広がっているかどうかにより、使用する薬が異なります。

感染症が脳や髄液に広がっていない場合は、以下の薬が効果的です。

  • スラミン(Suramin)(ローデシアトリパノソーマに有効)

  • ペンタミジン(ガンビアトリパノソーマ gambienseに有効)

  • エフロルニチン(eflornithine)(ガンビアトリパノソーマ gambienseにのみであるが、入手が容易ではない)

これらの薬は静脈から投与します(静脈内投与)。ペンタミジンは筋肉内注射でも投与されます。

感染症が脳や髄液に広がっている場合は、以下の薬が効果的です。

  • メラルソプロール(melarsoprol)

  • エフロルニチン(eflornithine)(ガンビアトリパノソーマ gambienseのみ)

これらの薬は静脈から投与します。

メラルソプロール(melarsoprol)には、ときに生命を脅かす重篤な副作用がありますが、アフリカの多くの国では、脳に広がった睡眠病の治療薬として、この薬しか入手できないことが少なくありません。いくつかの副作用のリスクを抑えるために、コルチコステロイドを投与することもあります。

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