コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。
これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜ かぜ(感冒) かぜ(感冒)は、鼻、副鼻腔、のどの粘膜に起こる ウイルス感染症です。 様々なウイルスがかぜの原因となります。 通常、かぜは感染者の鼻の分泌物に手が触れることでうつります。 初期にのどのいがらっぽさや痛み、または鼻の不快感が生じることが多く、続いてくしゃみや鼻水、せき、全身のだるさが生じます。 診断は症状に基づいて下されます。 さらに読む の症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。
しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能性があり、最近では、死に至ることもある肺炎の大規模な集団発生を引き起こしています。
SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2) COVID-19 COVID-19(コビッド・ナインティーン)は、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名されたコロナウイルスによって引き起こされ、重症化する可能性がある急性呼吸器疾患です。 COVID-19の症状はとても多彩です。 COVID-19の診断には、2種類の検査法が用いられます。... さらに読む は、新しいコロナウイルス感染症(COVID-19[コビット・ナインティーン])の原因として2019年末に中国の武漢で初めて特定され、世界中に広まった新型コロナウイルスです。
MERSコロナウイルス(MERS-CoV) 中東呼吸器症候群(MERS) コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。 しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能... さらに読む は、2012年に中東呼吸器症候群(MERS)の原因として特定されました。
SARSコロナウイルス(SARS-CoV) 重症急性呼吸器症候群(SARS) コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。 しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能... さらに読む は、2002年の終わりごろに始まった重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生の原因として、2003年に特定されました。
重度の呼吸器感染症を引き起こすこれらのコロナウイルスは、動物から人間に感染します(人畜共通感染症病原体)。
中東呼吸器症候群(MERS)
中東呼吸器症候群(MERS)の原因 ウイルス ウイルス感染症の概要 ウイルスは核酸( DNAかRNAのどちらか一方)で構成されており、タンパク質の膜で覆われています。ウイルスが増殖するには生きている細胞が必要です。ウイルス感染症は、無症状(明らかな症状はない)から重度の病態にいたるまで、幅広い症状を引き起こします。 ウイルス感染症は、ウイルスを飲み込んだり、吸い込んだり、虫に刺されたり、性的接触を通じて感... さらに読む は、 重症急性呼吸器症候群 重症急性呼吸器症候群(SARS) コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。 しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能... さらに読む (SARS)を引き起こすウイルスに似た別の種類のコロナウイルスです。
MERSウイルスは、2012年にヨルダンとサウジアラビアで初めて検出されました。2018年初頭の時点で、MERSと確定された症例数は2220例で、そのうち790人が死亡しました。大半がサウジアラビアで発生したもので、同国では現在も新たな症例の発生が続いています。フランス、ドイツ、イタリア、チュニジア、英国などの中東以外の国でも、旅行や仕事で中東に滞在していた人々の間で症例が発生しています。
韓国では、中東から1人の韓国人男性が帰国した後、2015年5月から7月にかけてMERSコロナウイルスの集団発生が起きました。この集団発生では、180例以上の症例と36人の死亡が確認されました。人から人への感染拡大は大半が医療施設で発生しました。
2014年5月には、米国で2例の症例が確認されました。どちらも、ペルシャ湾岸地域から帰国して間のない医療従事者でした。2014年5月以降、米国ではMERSの症例は発生していません。
いくつかの国(エジプト、オマーン、カタール、サウジアラビアなど)では、ヒトコブラクダが人間への主な感染源であると疑われていますが、ウイルスがどのようにしてラクダから人間に感染するのかは分かっていません。
この感染症は男性に多くみられ、高齢の人や糖尿病、心臓病、腎臓病などの慢性疾患を抱えている人では、症状が重くなります。約3分の1の感染者が死亡しています。
MERSウイルスは、MERS患者との濃厚接触によって、もしくは感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して広がります。症状が現れる前の人からは感染は起きないと考えられています。人から人への感染の大半は、感染者のケアを担当する医療従事者で発生しています。
通常は感染からおよそ5日後に(ただし2~14日後の期間中であれば常に可能性があります)症状が現れます。ほとんどの場合、発熱、悪寒、筋肉痛、せきがみられます。およそ3分の1の人では、下痢、嘔吐、腹痛がみられます。
MERSの診断
気道から採取した体液の検査
血液検査
下気道感染症がみられ、このウイルスにさらされる可能性がある地域に旅行したか居住している人、また、MERSであった可能性がある人と最近濃厚接触があった人では、MERSが疑われます。
MERSと診断するには、医師が気道の数カ所から複数の時点で体液のサンプルを採取して、MERSウイルスの検査を行います。また、ウイルスやそれに対する抗体を検出する血液検査も行います。MERSの可能性がある人と濃厚接触があった人には、必ず血液検査が行われます。
MERSの治療
発熱と筋肉痛を緩和する薬
隔離
MERSに対する特別な治療法はありません。発熱と筋肉痛を和らげるためにアセトアミノフェン、またはイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与します。
ウイルスの感染拡大を予防するための対策を講じます。例えば、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋で感染者を隔離します。その部屋に入る人は全員が特殊なマスク、眼の防護具、ガウン、帽子、手袋を身に付けます。部屋につながる扉は人が出入りする場合を除き閉じたままにしておき、人の出入りの回数をできるだけ少なくするべきです。
中東に旅行する人は世界保健機関(WHO)のウェブサイトで旅行者向けのアドバイスを確認してください (WHOのMERS-CoVに関する巡礼者向け世界旅行アドバイス[WHO World-travel advice on MERS-CoV for pilgrimages]を参照) 。
重症急性呼吸器症候群(SARS)
2004年以降、症例は報告されていません。
SARSの症状は、呼吸器に起こる他の一般的なウイルス感染症と似ていますが(発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛など)、より重度です。
医師は患者に感染者との接触の可能性がある場合に限り、SARSを疑います。
SARSが疑われる患者は、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋に隔離されます。
(ウイルス感染症の概要 ウイルス感染症の概要 ウイルスは核酸( DNAかRNAのどちらか一方)で構成されており、タンパク質の膜で覆われています。ウイルスが増殖するには生きている細胞が必要です。ウイルス感染症は、無症状(明らかな症状はない)から重度の病態にいたるまで、幅広い症状を引き起こします。 ウイルス感染症は、ウイルスを飲み込んだり、吸い込んだり、虫に刺されたり、性的接触を通じて感... さらに読む も参照のこと。)
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2002年後半に中国で初めて発見されました。世界的な流行が起こり、2003年半ばまでに、カナダや米国を含む世界の国々で8000例以上の症例と800人を超える死者が出ました。2004年以降は症例の報告がなく、SARSは(ウイルスとしてではなく、病気として)根絶されたとみなされています。
直接の感染源は、生きた動物を売買する市場で珍味として販売されていた、ネコに似た哺乳類であるジャコウネコだったと推定されています。ジャコウネコがどのように感染するのかは分かっていませんが、自然界でSARSウイルスを常時保有している生物はコウモリであると考えられています。
SARSはコロナウイルスの一種によって引き起こされます。ほとんどのコロナウイルス感染症では、かぜのような症状しかみられないのが通常ですが、SARSはそうした感染症よりはるかに重い病気です。ただし、 中東呼吸器症候群 中東呼吸器症候群(MERS) コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。 しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能... さらに読む (MERS)もまた症状の重いコロナウイルス感染症です。
SARSは、感染者との濃厚接触によって、もしくは感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して人から人へと広がります。
SARSの症状
SARSの症状は、呼吸器に起こる他の一般的なウイルス感染症と似ていますが、より重度です。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛の後に空せきが出て、ときに呼吸困難になることもあります。
大半の患者は1~2週間以内に回復しました。しかし、約10%の患者で重度の呼吸困難が生じます。
SARSの診断
医師による評価
ウイルスを特定する検査
SARSが疑われるのは、感染者と接触した可能性があり、その上で発熱に加えてせきや呼吸困難がみられる場合のみです。
このウイルスを特定する検査を行うことがあります。
SARSの治療
隔離
必要な場合は、酸素の投与
ときに、呼吸を補助する人工呼吸器の使用
SARSが疑われる患者は、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋に隔離されます。最初にして唯一のSARSの流行時には、そうした隔離がウイルスの感染拡大を防ぎ、最終的にウイルスを排除することができました。
症状が軽い患者には特別な治療は必要ありません。中等度の呼吸困難が生じた患者には、酸素投与が必要になる場合があります。重度の呼吸困難が生じている患者では、人工呼吸器による呼吸補助が必要なことがあります。