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コロナウイルスと急性呼吸器症候群(COVID-19、MERS、SARS)

執筆者:

Brenda L. Tesini

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2020年 5月
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本ページのリソース

コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。

コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。

これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。

しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能性があり、最近では、死に至ることもある肺炎の大規模な集団発生を引き起こしています。

  • SARSコロナウイルス2(SARS-CoV2)は、新しいコロナウイルス感染症(COVID-19[コビッド・ナインティーン])の原因として2019年末に中国の武漢で初めて特定され、世界中に広まった新型コロナウイルスです。

  • MERSコロナウイルス(MERS-CoV)は、2012年に中東呼吸器症候群(MERS)の原因として特定されました。

  • SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は、2002年の終わりごろに始まった重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生の原因として、2003年に特定されました。

重度の呼吸器感染症を引き起こすこれらのコロナウイルスは、動物から人間に感染します(人畜共通感染症病原体)。

COVID-19

COVID-19(コビッド・ナインティーン)は、正式にはSARSコロナウイルス2(SARS-CoV2)と命名された新型コロナウイルスによって引き起こされ、重症化する可能性がある急性呼吸器疾患です。

COVID-19は、2019年末に中国の武漢で初めて報告され、その後中国全土、さらには世界中に広く拡大しました。現在の症例数と死者数については、「米国疾病予防管理センター:新型コロナウイルス(Centers for Disease Control and Prevention: 2019 Novel Coronavirus)」と世界保健機関の新型コロナウイルス感染症(COVID-2019)状況報告書(World Health Organization's Novel Coronavirus (COVID-2019) situation reports)を参照してください。

COVID-19の初期の症例には、中国の武漢にある生きた動物を売買する生鮮市場との関連が認められ、このウイルスが最初は動物からヒトに感染したことが示唆されています。COVID-19は主に、感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して、人から人へと広がります。COVID-19は、ウイルスの付着した物に触れた手で自分の口、鼻、目を触れることで感染することもあります。このウイルスは通常、この病気の症状がある人によって広がりますが、 症状が現れる前の感染者や、さらには発症することのない感染者によっても感染が広がる可能性があります。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスは、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV2)と呼ばれているものの、SARSを引き起こすコロナウイルスとは少し異なります。

症状

COVID-19のウイルスに感染した人のほとんどは、全く症状がみられないか、軽い症状が出るだけで済みますが、なかには重症化して死亡する人もいます。以下のような症状がみられます。

  • 発熱

  • せき

  • 息切れまたは呼吸困難

  • 悪寒または繰り返す悪寒戦慄

  • 疲労

  • 【参照不可】筋肉痛

  • 頭痛

  • のどの痛み

  • 臭いや味を感じなくなる

  • 吐き気、嘔吐、下痢

通常は感染からおよそ2~14日後に症状が現れます。

COVID-19の感染者における重篤化および死亡のリスクは、年齢とともに高まるほか、心臓、肺、腎臓、肝臓の病気や糖尿病、肥満、免疫不全症などの重篤な病気をもっている人でも高くなります。

重症化して死に至る可能性もある呼吸器疾患に加えて、以下の合併が発生する可能性があります。

Pediatric multi-system inflammatory syndrome(PMISまたはMIS-C)と呼ばれるまれな合併症が小児で報告されていて、COVID-19との関連が指摘されています。その症状は、まれな病気である川崎病と似ていて、具体的には発熱、腹痛、発疹などがみられます。

診断

  • ウイルスを特定する検査

インフルエンザに似た症状がみられ、このウイルスにさらされる可能性がある地域に旅行したか居住している人では、またCOVID-19であった可能性のある人と最近濃厚接触があった人では、COVID-19が疑われます。米国のすべての州および世界中で感染が報告されているため、どこにも旅行していない場合でも医師は感染を疑う場合があります。COVID-19に感染している疑いがある人は、適切な予防策を講じられるように、診療所に向かう前にまず主治医に連絡してください。

ウイルスを特定するために、上気道や下気道の分泌物を採取し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法などの検査を行います。検査が容易に利用できない場合、または症状が軽度の場合には、追加の検査を行わずに臨床的に診断が下される場合もあります。

予防

感染拡大を防ぐために、このウイルスの感染者と接触があった人と、ウイルス検査で陽性と判定された人は隔離されています。

感染を予防する最善の方法は、ウイルスにさらされないようにすることですが、自分が感染していることを知らない感染者もいますので、こうした対策は困難である可能性があります。米国では、可能な限りの外出自粛と必須ではない商業活動の停止からなる政策が全国規模で導入されましたが、現在では各州で運用されています。CDCは、呼吸器系ウイルスの感染拡大を防ぐ対策として、以下の日常的な行動を推奨しています(CDC's Prevention and Treatment[CDCの予防および治療]を参照)。

  • 年齢に関係なく、人との距離を保つ(「社会的距離の確保[ソーシャルディスタンシング]」と呼ばれる)

  • 石けんと水で頻繁に20秒以上かけて手を洗う(特にトイレに行った後、食事の前、鼻をかんだ後、せきやくしゃみをした後)

  • 石けんと水が手元にない場合は、アルコール濃度が60%以上の手指消毒液を使用する

  • 手が目に見えて汚れている場合は、必ず石けんと水で手を洗う

  • 洗っていない手で眼、鼻、口を触らないようにする

  • 体調が悪い人との接触を避ける

  • 体調が悪いときは外出を控える

  • せきやくしゃみをするときは口をティッシュで覆い、そのティッシュはゴミ箱に捨てる

  • 病気の人や他の人が周りにいる場合、または病気の人の世話をするときにはマスクを着用する

  • 症状がなく健康な人が、社会的距離を確保することが困難な公共の場(例えば、食料品店や薬局など)に出かける場合、特にその地域にかなりの感染がみられる場合には、布製のフェイスカバーを着用する。布製のフェイスカバーは、家庭でよく使用するものを流用したり、すぐ手に入る材料で作ることができる(CDC's Use of Cloth Face Coverings to Help Slow the Spread of COVID-19[CDCの「COVID-19の感染拡大を鈍化させるための布製フェイスカバーの使用」]を参照)

  • 一般的な家庭用の消毒スプレーやウエットティッシュを使用して、頻繁に触れる物や表面を清掃および消毒する

治療

  • 発熱と筋肉痛を緩和する薬

現時点でCOVID-19に対するワクチン、抗ウイルス薬、特異的な治療はありません。多くの薬が臨床試験で評価されています。

発熱と筋肉痛を軽減するために、アセトアミノフェンかイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が投与されることがあります。初期の症例報告でNSAIDはCOVID-19を悪化させるという懸念が指摘されましたが、この説を裏付ける科学的証拠はありません。

病状が悪くなり、呼吸を助けるために人工呼吸器による治療が必要になる人もいます。

さらなる情報

中東呼吸器症候群(MERS)

中東呼吸器症候群は、重度のインフルエンザに似た症状を引き起こすコロナウイルス感染症です。

中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスは、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすウイルスに似た別の種類のコロナウイルスです。

MERSウイルスは、2012年にヨルダンとサウジアラビアで初めて検出されました。2018年初頭の時点で、MERSと確定された症例数は2220例で、そのうち790人が死亡しました。大半がサウジアラビアで発生したもので、同国では現在も新たな症例の発生が続いています。フランス、ドイツ、イタリア、チュニジア、英国などの中東以外の国でも、旅行や仕事で中東に滞在していた人々の間で症例が発生しています。

韓国では、中東から1人の韓国人男性が帰国した後、2015年5月から7月にかけてMERSコロナウイルスの集団発生が起きました。この集団発生では、180例以上の症例と36人の死亡が確認されました。人から人への感染拡大は大半が医療施設で発生しました。

2014年5月には、米国で2例の症例が確認されました。どちらも、ペルシャ湾岸地域から帰国して間のない医療従事者でした。2014年5月以降、米国ではMERSの症例は発生していません。

いくつかの国(エジプト、オマーン、カタール、サウジアラビアなど)では、ヒトコブラクダが人間への主な感染源であると疑われていますが、ウイルスがどのようにしてラクダから人間に感染するのかはわかっていません。

この感染症は男性に多くみられ、高齢の人や糖尿病、心臓病、腎臓病などの慢性疾患を抱えている人では、症状が重くなります。約3分の1の感染者が死亡しています。

MERSウイルスは、MERS患者との濃厚接触によって、もしくは感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して広がります。症状が現れる前の人からは感染は起きないと考えられています。人から人への感染の大半は、感染者のケアにあたる医療従事者に発生しています。

通常は感染からおよそ5日後に(ただし2~14日後の期間中であれば常に可能性があります)症状が現れます。ほとんどの場合、発熱、悪寒、筋肉痛、せきがみられます。およそ3分の1の人では、下痢、嘔吐、腹痛がみられます。

診断

  • 気道から採取した体液の検査

  • 血液検査

下気道感染症がみられ、このウイルスにさらされる可能性がある地域に旅行したか居住している人、また、MERSであった可能性がある人と最近濃厚接触があった人では、MERSが疑われます。

MERSと診断するには、医師が気道の数カ所から複数の時点で体液のサンプルを採取して、MERSウイルスの検査を行います。また、ウイルスやそれに対する抗体を検出する血液検査も行います。MERSの可能性がある人と濃厚接触があった人には、必ず血液検査が行われます。

治療

  • 発熱と筋肉痛を緩和する薬

  • 隔離

MERSに対する特別な治療法はありません。発熱と筋肉痛を和らげるためにアセトアミノフェン、またはイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与します。

ウイルスの感染拡大を予防するための対策を講じます。例えば、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋で感染者を隔離します。その部屋に入る人は全員が特殊なマスク、眼の防護具、ガウン、帽子、手袋を身に付けます。部屋につながる扉は人が出入りする場合を除き閉じたままにしておき、人の出入りの回数をできるだけ少なくするべきです。

中東に旅行する人は世界保健機関(WHO)のウェブサイトで旅行者向けのアドバイスを確認してください(WHO World-travel advice on MERS-CoV for pilgrimages[WHOのMERS-CoVに関する巡礼者向け世界旅行アドバイス]を参照)。

重症急性呼吸器症候群(SARS)

重症急性呼吸器症候群(SARS)は、インフルエンザに似た症状を引き起こすコロナウイルス感染症です。

  • 2004年以降、症例は報告されていません。

  • SARSの症状は、呼吸器に起こる他の一般的なウイルス感染症と似ていますが(発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛など)、より重度です。

  • 医師は患者に感染者との接触の可能性がある場合に限り、SARSを疑います。

  • SARSが疑われる患者は、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋に隔離されます。

ウイルス感染症の概要も参照のこと。)

重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2002年後半に中国で初めて発見されました。世界的な流行が起こり、2003年半ばまでに、カナダや米国を含む世界の国々で8000例以上の症例と800人を超える死者が出ました。2004年以降は症例の報告がなく、SARSは(ウイルスとしてではなく、病気として)根絶されたとみなされています。

直接の感染源は、生きた動物を売買する市場で珍味として販売されていた、ネコに似た哺乳類であるジャコウネコだったと推定されています。ジャコウネコがどのように感染するのかはわかっていませんが、自然界でSARSウイルスを常時保有している生物はコウモリであると考えられています。

SARSはコロナウイルスの一種によって引き起こされます。ほとんどのコロナウイルス感染症では、かぜのような症状しかみられないのが通常ですが、SARSはそうした感染症よりはるかに重い病気です。ただし、中東呼吸器症候群 (MERS)もまた症状の重いコロナウイルス感染症です。

SARSは、感染者との濃厚接触によって、もしくは感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して人から人へと広がります。

症状

SARSの症状は、呼吸器に起こる他の一般的なウイルス感染症と似ていますが、より重度です。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛の後に乾いたせきが生じ、呼吸困難に陥ることがあります。

大半の患者は1~2週間以内に回復しました。しかし、約10%の患者で重度の呼吸困難が生じます。

診断

  • 医師による評価

  • ウイルスを特定する検査

SARSが疑われるのは、感染者と接触した可能性があり、その上で発熱に加えてせきや呼吸困難がみられる場合のみです。

このウイルスを特定する検査を行うことがあります。

治療

  • 隔離

  • 必要な場合は、酸素の投与

  • ときに、呼吸を補助する人工呼吸器の使用

SARSが疑われる患者は、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋に隔離されます。最初にして唯一のSARSの流行時には、そうした隔離がウイルスの感染拡大を防ぎ、最終的にウイルスを排除することができました。

症状が軽い患者には特別な治療は必要ありません。中等度の呼吸困難が生じた患者には、酸素投与が必要になる場合があります。重度の呼吸困難が生じている患者では、人工呼吸器による呼吸補助が必要なことがあります。

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