インフルエンザ (流感)
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ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。
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まず悪寒が生じ、続いて発熱、筋肉痛、頭痛、のどの痛み、せき、鼻水、全身のだるさが生じます。
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インフルエンザは多くの場合、症状に基づいて診断されます。
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最善の予防法は、インフルエンザの予防接種を毎年受けることです。
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安静、十分な水分補給、激しい活動を控えることが回復の助けになり、さらに鎮痛薬、鼻閉改善薬、ときには抗ウイルス薬の服用も役立ちます。
インフルエンザはかぜ(感冒)とは明確に異なります。インフルエンザの原因はかぜとは異なるウイルスで、症状もかぜより重くなります。また、インフルエンザウイルスは気道のはるか奥の細胞にまで影響を及ぼします。
インフルエンザの伝播
インフルエンザの型と株
インフルエンザウイルスには3つの型があります。
A型とB型のインフルエンザウイルスには多くの株がありますが、いずれも類似した病気を引き起こします。様々な株のウイルスによって、インフルエンザの季節性の流行が定期的に起きています。C型は典型的なインフルエンザの症状を引き起こしません。
A型は、インフルエンザの症例の大半の原因であり(通常、典型的な季節で70%以上)、それ以外の大部分はB型が原因です。C型インフルエンザは発生数が少なく、主に小児にみられます。
流行を引き起こすインフルエンザウイルスの株は絶えず少しずつ変化していて、毎年、前年とは多少異なるインフルエンザウイルスが出現しています。そうした変化が頻繁に起こるため、以前に効果的だったワクチンが効かなくなります。
A型インフルエンザの株は、ウイルスの表面に存在する2種類のタンパクのタイプに基づいて名付けられます。そのタンパクとは、H(ヘマグルチニン)とN(ノイラミニダーゼ)です。Hタンパクには18のタイプがあり、Nタンパクには11のタイプがあります。そのため、個々の株は「インフルエンザA型、H1N1」のように名付けられています。H1N1株の1つは、2009〜2010年のいわゆるブタインフルエンザのパンデミックの原因でした。(パンデミックとは世界的な大流行のことです。)より近年では、H3N2株が米国における感染症の大半を引き起こしています。
多くの場合、ウイルス株の名前は、そのタイプや最初に見つかった地域(「香港かぜ」など)、ウイルスが検出された動物(「ブタインフルエンザ」など)や年からつけられます。
インフルエンザの流行とパンデミック
インフルエンザの流行が起こると、ごく短期間のうちに多くの人が発病します。毎年、世界各地でインフルエンザの流行が発生し、温帯地域では毎年晩秋から初冬にかけて起こります(季節的流行)。インフルエンザの流行には、以下の2つの波がみられることがあります。
通常、流行は単一のインフルエンザウイルス株によって引き起こされます。
インフルエンザのパンデミックとは、広い地域全体に感染が広がる大流行のことで、典型的には大陸間で、ときには世界中に広がることもあります。1889年以来、大きなインフルエンザのパンデミックは6回しか起きていません。インフルエンザのパンデミックは、インフルエンザウイルスの株に通常より大きな変化が生じた場合にしか普通は発生しないため、厄介な問題です。大きく変化したインフルエンザの株は、より多くの人に感染し、より重い症状を引き起こす可能性があります。死亡のリスクも高まります。確かなことは不明ですが、科学者たちによると、1918年に起きたインフルエンザのパンデミックでは、世界中で3000万~5000万人、米国ではおよそ67万5000人の死者が出たと考えられています。
症状
インフルエンザの症状は感染後1~4日に、突然生じます。悪寒やゾクゾクする感じがしばしば最初の症状として現れます。最初の数日間に発熱が生じることが多く、約39℃に達することもあります。多くの場合、体調がかなり悪くなり、脱力感や疲れを感じるため、数日間は床につくことになります。全身、特に背部と脚にうずきや痛みが生じます。頭痛もひどくなることが多く、眼の周囲や奥が痛みます。明るい光で頭痛が悪化することもあります。
呼吸器症状は最初のうちは比較的軽く、のどのいがらっぽさや痛み、胸の灼熱感、空せき、鼻水などがみられます。その後、たんの絡んだ深いせきが出ることがあります。
皮膚(特に顔)が熱く、紅潮することがあります。口の中やのども赤くなり、眼は潤んで充血することがあります。吐き気や嘔吐が生じることもあり、特に小児に多くみられます。少数の人は、数日から数週間にわたって匂いを感じなくなり、まれに元に戻らないこともあります。
症状の大半は2~3日で治まります。しかし、発熱は5日目まで続くことがあります。せき、脱力、発汗、疲労感が数日間、ときには数週間続きます。気道に軽い刺激を感じ、激しい運動や長い運動ができなくなることがあり、軽い喘鳴(ぜんめい)が完全に消失するまで6~8週間かかることがあります。
合併症
診断
インフルエンザの症状はよく知られており、またインフルエンザは流行して発生するため、患者本人やその家族が適切に診断できることも多々あります。症状の重さと高熱や全身の痛みの存在が、インフルエンザとかぜを見分ける手がかりになり、インフルエンザの流行時にはこの差が特に参考になります。流行が起きていない時期に症状だけからインフルエンザを正しく特定するのは、より困難になります。
呼吸器の分泌物のサンプルを検査し、インフルエンザウイルスを確認することができます(訳注:現在日本では迅速診断キットが広く使用されています)。血液検査は、感染症の重症度の判定に役立つことがあります。このような検査は、主に患者の病状が重く見える場合や、医師が症状について別の原因を疑っている場合に行われます。いくつかの検査は、医師の診療所で受けることができます。
肺炎の発生が疑われる場合は、胸部X線検査を行い、指に付けるセンサーを使用して血液中の酸素レベルを測定します(この測定法はパルスオキシメトリーと呼ばれます)。
予防
インフルエンザのワクチン
インフルエンザワクチンの予防接種を毎年受けることが最良の予防法です。
インフルエンザワクチンには次の2種類があります。
注射で使用する不活化ワクチンは、妊娠中の女性も含めて、生後6カ月以上のすべての人が接種を受けることができます。高用量の不活化インフルエンザワクチンは65歳以上の人に使用できます。不活化ワクチンは以下の人には接種できません。
吸入式の生ウイルスワクチンは、2~49歳の健康な人にのみ接種されます。次の人には接種されません。
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以前にインフルエンザワクチンやそのいずれかの成分に対し、重いアレルギー反応が出たことのある人
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妊婦
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免疫系の機能が低下している人(エイズ患者や免疫機能を抑制する薬を使用している人など)と、場合によってはそうした人と同居している人
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アスピリンを長期服用している小児または青年
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喘息があるか、または12カ月以内に喘鳴または喘息発作を起こした2〜4歳の小児
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2日以内にインフルエンザに対する抗ウイルス薬を服用した人
吸入式の生ウイルスワクチンは、不活化ワクチンほど効果的ではないという懸念があったことから、2016〜2017年および2017〜2018年のインフルエンザシーズンには推奨されませんでした。しかし、吸入式の生ウイルスワクチンは新しい製剤に作り変えられ、現在では不活化ワクチンと等しく推奨されるようになっています。一部の専門家は、小児には新しい生ウイルスワクチンの研究がさらに進むまで不活化ワクチンを使用することを推奨しています。
接種時に具合が悪い人に対しては、基本的にいずれのワクチンの接種も延期されます。
1976年のブタインフルエンザの流行後、インフルエンザワクチンの接種を受けた数百万人の間で、通常よりも多くの人にギラン-バレー症候群という神経の病気が発生しました。このとき、医師たちはワクチンがギラン-バレー症候群を誘発したと考えましたが、それ以降に明らかになった科学的根拠から、その関連性は明確ではないことが分かりました。しかし現在でも、過去にインフルエンザワクチンの接種を受けてから6週間以内にギラン-バレー症候群を発症したことがある人に再びインフルエンザワクチンの接種を行う際には、医師は念のため注意を払います。このようなケースでは、医師と接種を受ける人とが、インフルエンザにかかるリスクとギラン-バレー症候群を発症するかもしれないリスクとを比較して検討します。
インフルエンザワクチンは卵の中で増殖させたウイルスから作られるため、重度の卵アレルギーがある人は、インフルエンザワクチンに対してアレルギー反応を起こす可能性があります。そのため、卵アレルギーのある人にインフルエンザワクチンを接種する場合、医師は以下の指針に従います。
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卵に対する反応が発疹(じんま疹)のみの場合は、インフルエンザワクチンを接種することができる。
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卵に対して重度の反応(じんま疹以外の症状)を起こしたことのある人の場合は、医療機関(診療所、病院、クリニックなど)において、重度のアレルギー反応を検出して管理できる医療従事者の監督下で、インフルエンザワクチンを接種することができる。卵に対するアレルギー反応としては、皮下の腫れ(血管浮腫)、呼吸困難(呼吸窮迫)、ふらつき、繰り返す嘔吐のほか、アドレナリン注射などの緊急治療を要する反応などがある。
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インフルエンザワクチンの接種後に重度のアレルギー反応(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある人には、インフルエンザワクチンを再び摂取しない。
また,卵の成分を含まないワクチンも2つあり、1つは18歳以上の人に、もう1つは4歳以上の人に使用できます。
インフルエンザワクチンは通常、3つまたは4つのウイルス株に有効です。インフルエンザの流行を引き起こすウイルス株は毎年変わっています。そうしたウイルスの変化に対応すべく、毎年異なるワクチンが開発されています。専門家は、前のインフルエンザ流行期に流行した株や、世界の他の地域で病気を発生させている株に基づいて、その年に流行しそうな株の予測に努めています。ワクチンに含まれるHタンパクとNタンパクが、その年の流行を起こすインフルエンザ株の両方のタンパクに一致すると、そのワクチンを接種した健康な成人の感染率が70~90%低下します。
長期療養施設に入所している高齢者の場合は、ワクチンを接種してもそこまでの予防効果は見込めませんが、肺炎や死亡の可能性は低下します。免疫機能は年齢とともに低下していくため、65歳以上の人向けに高用量のインフルエンザワクチンが開発されています。この高用量ワクチンは、高齢者の体内でより強力な免疫応答を刺激することができます。
ときおり注射した部位に痛みが出ることや、吸入式のワクチンで鼻水が出ること以外に、ワクチンによる副反応が起こることはまれです。
米国では、インフルエンザの流行がピークとなる11月から3月に抗体のレベルが最高となるよう、秋にワクチン接種を行います。ほとんどの場合、ワクチン接種の予防効果が得られるまでに、約2週間かかります。初めてインフルエンザワクチンの接種を受ける生後6カ月から8歳までの小児には、4週間以上の間隔をあけて2回接種する必要があります。
抗ウイルス薬
望ましい予防法はワクチン接種ですが、特定の人には、インフルエンザウイルス感染の予防法として、数種類の抗ウイルス薬が利用できます。
インフルエンザの流行中は、ワクチン接種後2週間以内の人には抗ウイルス薬が投与されます(ワクチンが効果を発揮するまでに2週間かかるため)。ワクチン接種後2週間が経過したら、使用を中止します。抗ウイルス薬は、ワクチンを接種しても効果がない人やワクチン接種が危険な人にも投与されます。
オセルタミビルまたはザナミビルが使用されることもあります。オセルタミビルは副作用がほとんどない薬です。ザナミビルは肺を刺激することがあり、喘息のある人では喘鳴(ぜんめい)が起こる場合があります。
治療
インフルエンザの治療では、主に安静にして水分を十分に摂取し、激しい活動を避けるようにします。平熱に戻ってから24~48時間で普段通りの生活に戻ることができる場合もありますが、ほとんどの人は回復するまでにさらに数日かかります。
熱や痛みに対して、アスピリンまたはイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンを使用する場合もあります。ライ症候群のリスクがあるため、小児と青年(18歳以下)にはアスピリンを使用すべきではありません。アセトアミノフェンとイブプロフェンは、必要であれば小児にも使用できます。鼻閉改善薬や蒸気の吸入など、かぜの項で挙げた対症療法も、症状の緩和に役立ちます。
感染の予防に用いられるオセルタミビル、ザナミビル、バロキサビルなどの抗ウイルス薬 は、インフルエンザの治療にも役立ちます。ただし、発症後1~2日以内に服用しないと効果がなく、その効果も、症状を軽減し、発熱が続く期間と日常活動に復帰できるまでの期間を1日程度短くするだけです。それでも、一部の患者には非常に効果的です。
感染症を引き起こしているインフルエンザウイルスによって、使用する薬は異なります。オセルタミビルとバロキサビルの内服薬とザナミビルの吸入薬は、A型とB型のインフルエンザの両方に対して効果的です。オセルタミビルは1歳以上の小児に使用できます。ザナミビルは成人と7歳以上の小児に使用でき、バロキサビルは成人と12歳以上の小児に使用できます。
細菌感染症が起こった場合は、抗菌薬が追加されます。
