米国では、天然痘が根絶されたため、天然痘ワクチンの定期予防接種は1972年に中止されました。世界で最後に確認された症例は1977年に発生したもので、1980年には、世界中で定期予防接種が中止されました。ワクチンの効果が持続する期間は約10年ですので、現在はほとんどの人が 天然痘 天然痘 天然痘は、天然痘ウイルスが引き起こす、感染性、致死性ともに非常に高い病気です。この病気は現在では根絶されています。 1977年以来、天然痘は発生していません。 感染者が呼吸やせきで排出した空気を吸い込むことで感染します。 発熱、頭痛、背部痛、発疹、またときには重度の腹痛が生じ、非常に体調が悪くなります。 診断の確定は、発疹から採取したサンプル中にウイルスを確認することで行います。 さらに読む に対する免疫をもっていません。
ウイルスのサンプルが保存されているため、天然痘がテロリストに 生物兵器 生物兵器 生物戦とは、病原微生物を兵器として使用することです。そのような使用は国際法に反しており、20世紀に生物剤の大規模な製造および備蓄が行われたにもかかわらず、近代史において正式な戦争中に使用された例はほとんどありません。 ( 集団殺傷兵器による災害の概要も参照のこと) 生物兵器はテロリストにとっては理想的な兵器であるという見方もされています。こっそり散布でき、効果が現れるまでに時間がかかるため、実行犯が捕まりにくいからです。... さらに読む として利用されるのではないかと恐れる人もいます。しかし、一般市民の間で集団発生が起こるまでは、天然痘ワクチンの接種は、天然痘ウイルスや関連物質を扱う検査室職員や医療従事者などの曝露のリスクが高い人にのみ推奨されます。
必要になれば米国人全員に接種できるだけのワクチンが製造済みです。
天然痘ワクチンは生きたワクシニアウイルスを含有していますが、これは天然痘ウイルスに近いウイルスであり、接種することで天然痘に対する免疫が得られます。
このワクチンは、病原体にさらされる前に接種すると最も効果的です。しかし、4日以内であれば曝露後に接種しても有益な場合があり、発症予防や重症度の低下に役立つ可能性があります。
詳細については、米国疾病予防管理センター(CDC)の「天然痘:予防と治療に関する声明(Smallpox: Prevention and Treatment statement)」を参照してください。
天然痘ワクチンの接種
天然痘ワクチンの接種では、医師がワクチンに浸した専用の針で、狭い範囲をすばやく15回突きます。その後、ワクチンのウイルスが他の部位や他の人に広がらないよう、接種した部位をドレッシング材で覆います。
ワクチン接種の7日ほど後に小さな水疱ができれば、予防接種は成功したとみなされます。水疱が出なければ、再び接種します。
予防接種も一部の人々にとっては危険なことがあり、特に免疫機能が低下している人(エイズ患者や免疫系を抑制する薬を使用している人など)、皮膚疾患(特に湿疹)のある人、眼の炎症がある人、妊娠している人は注意が必要です。
天然痘ワクチンの副反応
ワクチン接種後は1週間にわたり、発熱、全身のだるさ(けん怠感)、筋肉痛がよくみられます。
初めて接種を受けた人では、10,000人に約1人の割合で重篤な副反応が起き、100万人に1~2人が死亡します。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC):天然痘ワクチンと天然痘の治療に使用される抗ウイルス薬に関する情報(Information about the smallpox vaccine and about antiviral drugs used to treat smallpox)