予防接種(ワクチン接種)は、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気から体を守る助けとなります。
免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)には、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じるものと、ワクチン接種を受けることで人為的に得られるものがあります。ある病気に対してワクチンを接種すると、その病気にかからなくなるか、かかったとしても軽症で済みます。しかし、ワクチンの効果は絶対ではないため、予防接種を受けていても、その病気にかかる可能性があります。
これまでにワクチンは、世界中で重篤な病気の予防と健康状態の改善に大きな効果を発揮してきました。ワクチンの使用が普及している地域や国々では、かつて頻発していた病気や多くの患者が死亡していた病気(ポリオ アルボウイルス アルボウイルス、アレナウイルス、フィロウイルスは、動物から人に(一部は人から人に)広がるウイルスです。関与する動物はウイルスの種類によって異なります。 これらの感染症の多くは症状を引き起こしません。これらの感染症の症状の多くは、あっても通常は軽度で漠然としたものであり、 インフルエンザの症状に似ています。感染症が進行すると、リンパ節の腫れ... さらに読む 、 ジフテリア ジフテリア ジフテリアは、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)呼ばれる棒状の グラム陽性細菌(図「 細菌の形状」を参照)による上気道の感染症で、死に至ることもある病気です。一部の種類のジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)は、強力な毒素を出して心臓、腎臓、神... さらに読む など)の多くが現在ではまれになり、制圧されています。例えば、 天然痘 天然痘 天然痘は、天然痘ウイルスが引き起こす、感染性、致死性ともに非常に高い病気です。この病気は現在では根絶されています。 1977年以来、天然痘は発生していません。 感染者が呼吸やせきで排出した空気を吸い込むことで感染します。 発熱、頭痛、背部痛、発疹、またときには重度の腹痛が生じ、非常に体調が悪くなります。... さらに読む という病気は予防接種により撲滅されました。
しかしその一方で、ほとんどの性感染症(HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む 、 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。... さらに読む 、 淋菌感染症 淋菌感染症 淋菌感染症(淋病)は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌によって引き起こされる性感染症で、尿道、子宮頸部、直腸、のどの粘膜や、眼の前部を覆う膜(結膜と角膜)を侵します。 通常は性的接触により感染します。 通常は、陰茎や腟から分泌物が生じたり、頻尿になったり、急に尿意を催したりします。... さらに読む 、 クラミジア感染症 クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症 クラミジアによる感染症としては、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌によって引き起こされる尿道、子宮頸部、直腸の性感染症などがあります。この種の細菌は、白眼の部分を覆う膜(結膜)やのどにも感染することがあります。ウレアプラズマ属(Ureaplasma)やマイコプラズマ... さらに読む )、ダニによって引き起こされる感染症(ライム病 ライム病 ライム病は、ボレリア属(Borrelia)の細菌によって引き起こされ、マダニが媒介する感染症(ダニ媒介性感染症)で、米国でみられるボレリア属細菌は主にライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ときにボレリア・マヨニイ(Borrelia... さらに読む など)、様々な熱帯病(チクングニア熱 アルボウイルス、アレナウイルス、フィロウイルス感染症の概要 アルボウイルス、アレナウイルス、フィロウイルスは、動物から人に(一部は人から人に)広がるウイルスです。関与する動物はウイルスの種類によって異なります。 これらの感染症の多くは症状を引き起こしません。これらの感染症の症状の多くは、あっても通常は軽度で漠然としたものであり、 インフルエンザの症状に似ています。感染症が進行すると、リンパ節の腫れ... さらに読む など)をはじめとする、数多くの重大な感染症には、まだ効果的なワクチンがありません。
2021年、世界保健機関(WHO)は、サハラ以南アフリカをはじめとする、熱帯熱マラリア原虫 Plasmodium falciparum による マラリア マラリア マラリアは、5種のマラリア原虫(Plasmodium)のいずれかによって引き起こされる赤血球の感染症です。マラリアは発熱、悪寒、発汗、全身のだるさ(けん怠感)のほか、ときに下痢、腹痛、呼吸窮迫、錯乱、けいれん発作を引き起こします。その他の所見としては、脾臓の腫大や貧血(感染した赤血球が破壊されるのが原因です)のほか、ときに心... さらに読む の感染率が中程度から高い水準にある地域の小児に対して、RTS,S/AS01(RTS,S)マラリアワクチンの広範な使用を推奨すると発表しました。これは、アフリカの小児を中心に毎年数十万人の死者を出しているマラリアを予防するための重要な新しい介入でした。(WHOが感染リスクのある小児に対して画期的マラリアワクチンを推奨[WHO recommends groundbreaking malaria vaccine for children at risk]を参照のこと。)
以下では、自身の健康を保ち、家族や地域の人々の健康を守る上で非常に重要な、予防接種に関する推奨事項について説明します。ワクチンで予防できる病気の多くは、容易に人から人へと広がります。その多くは現在も米国内でみられ、世界の他の地域でも一般的にみられます。そうした病気が少ない地域に住んでいても、誰でも簡単に旅行できるようになった現在では、ワクチン接種を受けていない小児の間で感染が急速に広まる可能性があります。
現在使用されているワクチンは非常に効果的で、副反応がみられる人はまれです。
予防接種の種類
予防接種には次の2種類があります。
能動免疫
受動免疫
能動免疫
能動免疫では、ワクチンを用いて体がもともと備えている防御機構(免疫系 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む )を刺激します。ワクチンとは、以下のいずれかを含有する製剤です。
感染力をもたない細菌やウイルスの断片
細菌が作り出す本来は有害な物質(毒素)を無毒化した物質(トキソイドと呼ばれます)
弱毒化されて病気を引き起こさなくなった、生きた微生物そのもの
ワクチンを接種すると、体の免疫システム(免疫系)が反応し、ワクチンに含まれている特定の細菌やウイルスを識別して攻撃する物質(抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲... さらに読む や 白血球 白血球 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む など)を作り出します。それ以降、接種を受けた人がその細菌やウイルスにさらされるたびに、体が自動的に抗体などを作り、病気の予防や軽減を図ります。ワクチンを投与(接種)する行為は、そのままワクチン接種ということもありますが、感染症を予防するという意味を込めて予防接種ともいいます。
弱毒化された生きた微生物を含有するワクチンとしては、次のものがあります。
受動免疫
受動免疫は、特定の感染性微生物(または微生物によって作られる毒素)に対する抗体を直接注射する方法です。このような抗体は以下のようないくつかの原料から得られます。
特定の微生物や毒素にさらすことで人為的に免疫を作らせた動物(通常はウマ)の血液(血清)。
保存ヒト免疫グロブリンと呼ばれる、多数の人から集められた血液。
特定の病気に対する抗体をもつことが明らかな人々(つまり免疫をもっている人や病気から回復しつつある人)の血液。このような人は血液中に高レベルの抗体をもっており、このように作られるものを高力価免疫グロブリンと呼びます。
研究室で増殖させた、抗体を作る細胞(通常はマウスから採取される)。
受動免疫は、感染に対して免疫系が十分に反応しない人や、ワクチン接種前に感染してしまった場合(例えば、狂犬病にかかっている動物に咬まれた後)などに行われます。
また、感染する可能性が高く、一連の予防接種を受ける時間がない場合に、病気を予防するために行うこともあります。例えば、免疫をもたない妊婦がこのウイルスにさらされた場合には、 水痘ウイルス 水痘(水ぼうそう) 水痘とは、水痘帯状疱疹ウイルスによる、感染力が非常に強い ウイルス感染症で、かゆみのある特徴的な発疹が現れます。発疹は小さな斑点で、盛り上がったり、水疱(水ぶくれ)を形成したり、かさぶたができたりします。 水痘はほとんどが小児に起こりますが、水痘ワクチンのおかげで発生数は大幅に減少しています。... さらに読む に有効なガンマグロブリンを含有する溶液を投与します。水痘ウイルスは胎児に有害であり、妊婦にも重篤な合併症(肺炎など)を引き起こします。
受動免疫の効力が持続するのは数週間で、注入した抗体はやがて体から排除されます。
ワクチンの接種
ワクチンや抗体は通常、筋肉内または皮膚の下(皮下注射)への注射によって接種します。抗体は静脈内に注射する場合もあります(静脈内注射)。ある種のインフルエンザワクチンは鼻の中にスプレーすることで接種します。
一度に複数のワクチンを接種する場合もあり、その場合は、混合ワクチンとして1回で接種したり、違う部位に別々に注射したりします(複数のワクチンの同時接種 複数のワクチンの同時接種 米国ではワクチンの安全性を確保するための強固な制度が整備されているにもかかわらず、一部の親たちは依然として、小児へのワクチンの使用や スケジュールについて懸念を抱いています。そうした懸念が一部の親たちの間でワクチン忌避につながる可能性があります。ワクチン忌避とは、ワクチンが利用可能であるにもかかわらず、親が推奨されているワクチンの一部また... さらに読む を参照)。
ワクチンの中には定期的に接種するものがあります。例えば破傷風トキソイドは、成人に対して10年に1度の追加接種が勧められます。小児に対して基本的に一律で接種(定期接種)されるワクチンもあります(図「乳児、小児、青年のための定期予防接種 乳児、小児、青年のための定期予防接種 」を参照)。
それ以外のワクチンは通常、特定の集団に接種されます。例えば、 黄熱ワクチン 黄熱 黄熱は蚊が媒介するウイルス性疾患で、主に熱帯地域でみられます。 黄熱は、中央アフリカの熱帯地域、パナマ南部、および南米にのみみられます。 黄熱患者の中には症状がないか、あっても軽度にとどまる人もいれば、黄疸(皮膚が黄色くなる)、発熱、頭痛、筋肉痛、出血などのより重度の症状を呈する人もいます。... さらに読む はアフリカや南米の特定の地域に旅行する人にだけ接種されます。さらに、特定の感染症にかかるおそれのある事態が発生した後に接種するものもあります。例えば、イヌや狂犬病に感染しているかもしれない動物に咬まれた人に 狂犬病ワクチン 予防 狂犬病は、動物によって媒介されるウイルス感染症で、脳と脊髄に炎症を引き起こします。狂犬病ウイルスが脊髄や脳に達すると、ほぼ必ず死に至ります。 このウイルスは通常、人が感染した動物に咬まれることで人に感染しますが、米国ではコウモリに咬まれることで感染するのが多いのに対し、イヌに対する狂犬病ワクチンの接種が義務化されていない国では、イヌが感染... さらに読む を接種する場合などです。
予防接種の制約と予防
多くのワクチンで、接種を行わない理由は次の1つしかありません。
卵アレルギーは米国でよくみられます。卵アレルギーの人の多くは、 インフルエンザワクチン インフルエンザワクチン インフルエンザウイルスワクチンは インフルエンザの予防に役立ちます。米国では、A型とB型の2種類のインフルエンザウイルスが定期的にインフルエンザの季節的流行を引き起こしています。どちらの種類にも、多くのウイルス株が存在します。インフルエンザの大流行を引き起こすウイルス株は毎年変わります。このため、毎年新しいワクチンが必要になります。それぞ... さらに読む など、ごく微量の卵由来成分を含むワクチンを安全に接種できます。卵アレルギーのある人にそのようなワクチンを使用することに対しては懸念がもたれていますが、米国疾病予防管理センター(CDC)によると、軽度の反応が起こることはあるものの、重度のアレルギー反応(アナフィラキシー アナフィラキシー反応 アナフィラキシー反応は急に発症して広い範囲にわたり、生命を脅かすほど重症化することがあるアレルギー反応です。 アナフィラキシー反応の初期症状には不安感が多く、次いでピリピリした感じと、めまいが起こります。 症状がみるみる悪化して、全身にかゆみやじんま疹、腫れが出たり、喘鳴や呼吸困難が起きたり、失神したりします。これ以外のアレルギー症状が出... さらに読む )が起こる可能性は低いとされています。
インフルエンザワクチンが推奨されるかどうかは、卵とワクチンに対するアレルギー反応の重症度によって異なります。
インフルエンザワクチンの接種後や卵の摂取後に生命を脅かす重度のアレルギー反応を起こしたことがある人は、インフルエンザワクチンの接種を受けてはいけません。
顔の腫れ、呼吸困難、めまい、アドレナリンの注射やその他の緊急治療を必要とする反応などの重篤な反応を起こしたことがある人は、重度のアレルギー反応の診断と管理に長けた医師が監督する医療施設でワクチンを接種するべきです。
卵の摂取後やワクチンの接種後にみられた症状が発疹のみであれば、ワクチン接種を受けてもよいでしょう。
一般に専門家は、このようなCDCの勧告はインフルエンザワクチン以外の卵由来ワクチンについても適切なものであると考えています。
生きた微生物を含有するワクチンは、次の条件に当てはまる人には接種しないか、接種を遅らせる必要があります。
コルチコステロイドや化学療法薬などの 免疫機能を抑制する薬 免疫不全を引き起こす可能性がある主な薬剤 (免疫抑制剤)を使用している
エイズなど、 免疫機能を低下させる病気 免疫不全を起こす可能性のある病気 がある
妊娠している
前回のワクチン接種後6週間以内にギラン-バレー症候群を発症した
免疫機能が低下している人に感染が広がらないようにするために、同居している人も生きた微生物を含有するワクチンを接種してはいけない場合もあります。
免疫機能を抑制する薬の使用が終了した人や、低下していた免疫機能が正常に回復した人には、生きたウイルスを含有するワクチンを接種しても安全であると考えられます。
小児を対象とする一般的な予防接種
米国では通常、小児に対しては、標準的な予防接種スケジュールに従っていくつかのワクチンを接種します(図「 乳児、小児、青年のための定期予防接種 乳児、小児、青年のための定期予防接種 」と「米国疾病予防管理センター:18歳以下を対象とした小児および青年のための推奨予防接種スケジュール、米国、2021年[Centers for Disease Control and Prevention: Recommended Child and Adolescent Immunization Schedule for ages 18 years or younger, United States, 2021]」を参照)。計画通りにワクチンを接種できなくても、ほとんどの場合、接種の遅れを取り戻すためのスケジュールに従って、後から接種することが可能です。
成人を対象とする一般的な予防接種
成人にも、特定のワクチン接種が勧められることがあります(米国疾病予防管理センター:19歳以上を対象とした成人のための推奨予防接種スケジュール、米国、2022年[Centers for Disease Control and Prevention: Recommended Adult Immunization Schedule for ages 19 years or older, United States, 2022]も参照)。その際、医師は年齢、病歴、小児期に受けた予防接種、職業、住んでいる場所、旅行の予定などの要因を考慮します。
ワクチンの安全性
米国では、米国疾病予防管理センター(CDC)がワクチンの安全性を監視しています。医師は定期予防接種の後に発生した問題をCDCのワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System[VAERS])とワクチン安全性データリンク(Vaccine Safety Datalink[VSD])に報告する必要があります。予防接種後に健康上の問題が発生した場合、誰でも(医師、看護師、一般の人など)VAERSに報告書を提出することができます。ただし、VAERSの報告書から、その問題がワクチンによって引き起こされたものかどうかを判断することはできません。
ワクチン接種によって、注射部位が痛んだり赤くなったりするなどの軽い副反応が生じることがありますが、基本的に問題が起こることはありません。親たちが 小児用ワクチンの安全性 ワクチンの安全性 ワクチンの接種によって多くの感染症から小児を守ることができます。ワクチンには、細菌やウイルスの感染力のない成分が入っているか、感染症を引き起こさないように弱毒化された細菌やウイルスそのものが入っています。ワクチンを(通常は注射で)接種すると、体の免疫系が刺激されて、対象の感染症に抵抗するようになります。ワクチン接種は、免疫をつけて病気を予... さらに読む について懸念を抱くこともあります。
麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチン 麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン 麻疹・ムンプス・風疹(MMR)混合ワクチンは、この3種の重篤なウイルス感染症を予防するためのワクチンです。このワクチンには、麻疹(はしか)、ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)、風疹の生きたウイルスが弱毒化されて含まれています。これらのいずれかの病気に対する予防が必要な人は、他の2つに対する予防も必要になることから、この混合ワクチンが... さらに読む やチメロサール(水銀ベースの防腐剤)を含有するワクチンが小児の 自閉症 自閉スペクトラム症 自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害とも呼ばれます)は、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、限定的な行動または反復行動がみられる病気です。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手です。... さらに読む のリスクを高めるのではないかというのが親たちの主な懸念の1つです。
多くの科学者グループがこのような懸念に関する研究を行いましたが、かつて疑われていたワクチンと自閉症の関係は、現在では完全に否定されています(本マニュアルの 小児期の予防接種における懸念 小児期の予防接種に関する懸念 米国ではワクチンの安全性を確保するための強固な制度が整備されているにもかかわらず、一部の親たちは依然として、小児へのワクチンの使用や スケジュールについて懸念を抱いています。そうした懸念が一部の親たちの間でワクチン忌避につながる可能性があります。ワクチン忌避とは、ワクチンが利用可能であるにもかかわらず、親が推奨されているワクチンの一部また... さらに読む とCDCウェブサイトの「ワクチンの安全性に関するよくある質問[FAQs About Vaccine Safety]」を参照)。
それでも、ほとんどの製薬会社はチメロサールを含まない乳児用および成人用ワクチンを開発しました。現時点で少量のチメロサールを含有するワクチンに関する情報は、米国食品医薬品局のウェブサイト(チメロサールとワクチン[Thimerosal and Vaccines])で入手できます。
外国への渡航前に必要な予防接種
米国の居住者は、国内では通常みられない感染症の発生地域に旅行する場合、その前に特定の予防接種を受けるよう求められることがあります(表「 外国旅行のためのワクチン接種 外国旅行のためのワクチン接種*,†,‡ 」を参照)。必要な予防接種は病気の流行状況によって頻繁に変わります。
必要な予防接種に関する最新情報がCDCの「旅行者の健康(Travelers’ Health)」セクションで提供されています。また、CDCは24時間対応の電話による情報提供サービスを開設しています(1-800-232-4636[CDC-INFO]、米国のみ)。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC):18歳以下を対象とした小児および青年のための推奨予防接種スケジュール、2022年(Child and adolescent immunization schedule for ages 18 years or younger, 2022)
CDC:19歳以上を対象とした成人のための推奨予防接種スケジュール、2022年(Adult immunization schedule for ages 19 years and older, 2022)
CDC:親と介護者に向けたワクチンの安全性に関するよくある質問(FAQs about vaccine safety for parents and caregivers)
CDC:旅行者の健康:旅行者の健康に関する注意事項や旅行先に応じた接種すべきワクチンに関する情報(Travelers’ Health: Information about travel health notices and about what vaccines to get depending on destination)
米国食品医薬品局(Food and Drug Administration (FDA)):チメロサールとワクチン:チメロサールに関する包括的情報:チメロサールとは何か、なぜワクチンに使用されるのか、なぜ安全なのか、現在チメロサールを使わずに製造されているワクチンの数(Thimerosal and Vaccines: Comprehensive information about thimerosal—what it is, why it is used in vaccines, why it is safe, and how many vaccines are now made without it)
ワクチン有害事象報告システム(VAERS):ワクチン副反応の報告先と報告方法(Where and how to report side effects of vaccines)
ワクチン安全性データリンク(VSD):ワクチンの安全性をモニタリングして評価する共同組織(A collaborative organization that monitors and evaluates the safety of vaccines)
フィラデルフィア小児病院(Children's Hospital of Philadelphia):ワクチン教育センター(Vaccine Education Center)
世界保健機関(WHO):WHO、危険にさらされている子どもたちに画期的なマラリアワクチンの接種を推奨(WHO recommends groundbreaking malaria vaccine for children at risk)
欧州疾病予防管理センター(ECDC):欧州/欧州経済領域の全ての国におけるワクチン接種スケジュール(Vaccine schedules in all countries in the EU/EEA)