Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

読み込んでいます

予防接種の概要

執筆者:

Margot L. Savoy

, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University

最終査読/改訂年月 2018年 7月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
本ページのリソース

予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができると、その病気にかからなくなるか、かかったとしても軽症で済みます。しかし、ワクチンの効果は絶対ではないため、予防接種を受けていても、その病気にかかる可能性があります。

ワクチンの使用が普及している地域や国では、かつて頻発していた病気や多くの患者が死亡していた病気(ポリオ麻疹ジフテリアなど)の多くが現在ではまれになり、制圧されています。例えば、天然痘という病気は予防接種により撲滅されました。これまでにワクチンは、世界中で重篤な病気の予防と健康状態の改善に大きな効果を発揮してきました。しかしその一方で、エボラウイルス感染症、ほとんどの性感染症(HIV感染症梅毒淋菌感染症クラミジア感染症)、様々な熱帯病(マラリアなど)といった数多くの重大な感染症には、まだ効果的なワクチンがありません。

以下では、自身の健康を保ち、家族や地域の人々の健康を守る上で非常に重要な、予防接種に関する推奨事項について説明します。ワクチンで予防できる病気の多くは、容易に人から人へと広がります。その多くは現在も米国内でみられ、世界の他の地域でも一般的にみられます。そうした病気が少ない地域に住んでいても、誰でも簡単に旅行できるようになった現在では、ワクチン接種を受けていない小児の間で感染が急速に広まる可能性があります。

現在使用されているワクチンは信頼性が高く、ほとんどの人にとって十分耐えられるものです。副反応が起こることはめったにありません。

予防接種の種類

予防接種には次の2種類があります。

  • 能動免疫

  • 受動免疫

能動免疫

能動免疫では、ワクチンを用いて体がもともと備えている防御機構(免疫系)を刺激します。ワクチンとは、以下のいずれかを含有する製剤です。

  • 感染力をもたない細菌やウイルスの断片

  • 細菌が作り出す本来は有害な物質(毒素)を無毒化した物質(トキソイドと呼ばれます)

  • 弱毒化されて病気を引き起こさなくなった生きた微生物そのもの

ワクチンを接種すると、体の免疫システム(免疫系)が反応し、ワクチンに含まれている特定の細菌やウイルスを識別して攻撃する物質(抗体白血球など)を作り出します。それ以降、接種を受けた人がその細菌やウイルスにさらされるたびに、体が自動的に抗体などを作り、病気の予防や軽減を図ります。ワクチンを投与(接種)する行為は、そのままワクチン接種ということもありますが、感染症を予防するという意味を込めて予防接種ともいいます。

弱毒化された生きたウイルスを含有するワクチンとしては、次のものがあります。

知っていますか?

  • ワクチンの中には、予防対象の微生物が生きたまま弱毒化されて入っているものがあります。

受動免疫

受動免疫は、特定の感染性微生物に対する抗体を直接注射する方法です。このような抗体は以下のようないくつかの原料から得られます。

  • 特定の微生物や毒素にさらすことで人為的に免疫を作らせた動物(通常はウマ)の血液(血清)。

  • 保存ヒト免疫グロブリンと呼ばれる、多数の人から集められた血液。

  • 特定の病気に対する抗体をもつことが明らかな人々(つまり免疫をもっている人や病気から回復しつつある人)の血液。このような人は血液中に高レベルの抗体をもっており、このように作られるものを高力価免疫グロブリンと呼びます。

  • 研究室で増殖させた、抗体を作る細胞(通常はマウスから採取される)。

受動免疫は、感染に対して免疫系が十分に反応しない人や、ワクチン接種前に感染してしまった場合(例えば、狂犬病にかかっている動物に咬まれた後)などに行われます。

また、感染する可能性が高く、一連の予防接種を受ける時間がない場合に、病気を予防するために行うこともあります。例えば、免疫をもたない妊婦がこのウイルスにさらされた場合には、水痘ウイルスに有効なガンマグロブリンを含有する溶液を投与します。水痘ウイルスは胎児に有害であり、妊婦にも重篤な合併症(肺炎など)を引き起こします。

受動免疫の効力が持続するのは数週間で、注入した抗体はやがて体から排除されます。

ワクチンの接種

ワクチンや抗体は通常、筋肉内または皮膚の下(皮下注射)への注射によって接種します。抗体は静脈内に注射する場合もあります(静脈内注射)。ある種のインフルエンザワクチンは鼻の中にスプレーすることで接種します。

一度に複数のワクチンを接種する場合もあり、その場合は、混合ワクチンとして1回で接種したり、違う部位に別々に注射したりします(複数のワクチンの同時接種を参照)。

ワクチンの中には定期的に接種するものがあります。例えば破傷風トキソイドは、成人に対して10年に1度の追加接種が勧められます。小児に対して基本的に一律で接種(定期接種)されるワクチンもあります(図「乳児と小児の予防接種」を参照)。

それ以外のワクチンは通常、特定の集団に接種されます。例えば、黄熱ワクチンはアフリカや南米の特定の地域に旅行する人にだけ接種されます。さらに、特定の感染症にかかるおそれのある事態が発生した後に接種するものもあります。例えば、犬に咬まれた人に狂犬病ワクチンを接種する場合などです。

予防接種の制約と予防

多くのワクチンで、接種を行わない理由は次の1つしかありません。

卵アレルギーは米国でよくみられますが、ほとんどのインフルエンザワクチンをはじめとして、ワクチンの中には卵を原料とする物質がごく少量含まれているものがあります。そのため、卵アレルギーのある人にそのようなワクチンが使用されることに懸念がもたれています。しかし、米国疾病予防管理センター(CDC)によると、軽度の反応が起こることはあるものの、重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる可能性は低いとされています。インフルエンザワクチンが推奨されるかどうかは、卵とワクチンに対するアレルギー反応の重症度によって異なります。インフルエンザワクチンの接種後や卵の摂取後に生命を脅かす重度のアレルギー反応を起こしたことがある人は、インフルエンザワクチンの接種を受けてはいけません。卵の摂取後やワクチンの接種後にみられた症状が発疹のみであれば、ワクチン接種を受けてもよいでしょう。顔のむくみ、呼吸困難、めまいなどのより重篤な反応があった人は、そのような反応を治療できる医療施設でワクチン接種を受けるべきです。

生きた微生物を含有するワクチンは、次の条件に当てはまる人には接種しないか、接種を遅らせる必要があります。

免疫機能を抑制する薬の使用が終了した人や、低下していた免疫機能が正常に回復した人には、生きたウイルスを含有するワクチンを接種しても安全な場合があります。

小児を対象とする一般的な予防接種

一般的には、小児には標準的な予防接種スケジュールに従っていくつかのワクチンを接種します(図「乳児と小児の予防接種」と「米国疾病予防管理センター[Centers for Disease Control and Prevention]:予防接種スケジュール[Immunization Schedules]」を参照)。計画通りにワクチンを接種できなくても、ほとんどの場合、接種の遅れを取り戻すためのスケジュールに従って接種できます。

icon

小児へのワクチン接種

病名

予防接種の一般的な開始時期

水痘(水ぼうそう)

生後12~15カ月

生後2カ月(米国の場合)

生後2カ月

生後12~23カ月

出生時

11~12歳

生後6カ月

生後12~15カ月

11~12歳(米国の場合)

高リスクの小児については生後2カ月(米国の場合)

ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)

生後12~15カ月

生後2カ月(米国の場合)

生後2カ月

生後2カ月(米国の場合)

生後2カ月

生後12~15カ月

生後2カ月(米国の場合)

成人を対象とする一般的な予防接種

成人にも、特定のワクチン接種が勧められることがあります(米国疾病予防管理センター[Centers for Disease Control and Prevention]:成人の予防接種スケジュール[Immunization Schedules for Adults]も参照)。その際、医師は年齢、病歴、小児期に受けた予防接種、職業、住んでいる場所、旅行の予定などの要因を考慮します。

icon

成人へのワクチン接種

病気*

ワクチン接種の対象者

以下のような、炭疽菌にさらされた可能性のある人

  • 一部の軍人

  • 一部の検査室職員

水痘(水ぼうそう)

ワクチンの接種経験がない、またはこの病気にかかったことのないすべての成人

すべての成人

  • 破傷風および百日ぜきとの混合ワクチン(Tdap;それまでに未接種の場合)

  • 10年毎に破傷風との混合ワクチンの追加接種

ワクチン接種を受けていない、以下のような高リスクの成人

  • 脾臓の機能が低下している人

  • 免疫機能が低下している人(エイズ患者など)

  • がんの治療で化学療法を受けた人

  • 幹細胞移植を受けた人

ワクチン接種を受けていない、以下のような高リスクの成人

  • この感染症の流行地域への旅行者

  • 違法薬物を注射している人

  • 男性と性行為を行う男性

  • 慢性肝疾患または血液凝固障害の患者

  • 最近A型肝炎ウイルスにさらされた健康な成人

  • A型肝炎の流行地域から米国に養子に来た小児と入国後60日以内に濃厚に接触することが予想される人

ワクチン接種を受けていない、以下のような高リスクの成人

  • 医療従事者

  • この感染症の流行地域への旅行者

  • 慢性肝疾患または血液凝固障害の患者

  • 腎不全を患っている人(透析を受けている人を含む)

  • 違法薬物を注射している人

  • 複数のセックスパートナーがいる人

  • 性感染症の評価または治療が必要な人

  • 男性と性行為を行う男性

  • セックスパートナーや家族がB型肝炎のキャリアである人

  • HIV感染症の人

  • 60歳未満で糖尿病の人

  • 矯正施設またはB型肝炎のリスクが高い人にサービスを提供する施設(性感染症またはHIV感染者を治療する施設など)で過ごした人(患者、入居者、従業員など)

ヒトパピローマウイルス(HPV)(米国の場合)

11~26歳のすべての女性

11~21歳のすべての男性

22~26歳の男性のうち、予防接種を受けたことがなく、以下のいずれかがある人

  • 男性との性行為

  • HIV感染症

  • 免疫機能を低下させる別の病気

生後6カ月以上のすべての人

1957年以降に生まれたすべての成人(麻疹・ムンプス・風疹[MMR]ワクチンの接種記録が1回でもある場合と臨床検査で麻疹に対する免疫があることを示す証拠が認められた場合を除く)

臨床検査で麻疹に対する免疫をもつことを示す証拠が認められない医療従事者

常にムンプスおよび風疹との混合ワクチンとして接種される(単独のワクチンとしては入手できない)

以下のような高リスクの成人

  • 脾臓の機能が低下している人

  • HIVに感染している人

  • 特定の免疫不全疾患の患者

  • エクリズマブ(補体系を阻害する薬)を服用している人

  • 日常的に細菌を扱っている微生物研究者

  • 青年(未接種の場合)

  • 学生寮で生活している大学1年生

  • 軍隊の新兵

  • この病気の流行地域への旅行者と流行地域の居住者

ムンプス(おたふくかぜ)

1957年以降に生まれたすべての成人(MMRワクチンの接種記録が1回でもある場合と臨床検査でムンプスに対する免疫があることを示す証拠が認められた場合を除く)

臨床検査でムンプスに対する免疫をもつことを示す証拠が認められない医療従事者

常に麻疹および風疹との混合ワクチンとして接種される(単独のワクチンとしては入手できない)

このワクチンの接種を受けていないすべての成人(通常は破傷風とジフテリアとの混合ワクチン[Tdap]として接種)

妊婦(1回の妊娠につき1回)

肺炎球菌感染症(髄膜炎や肺炎など)

以下のような高リスクの成人

  • 65歳以上の人

  • 心臓、肺(喘息気腫など)、または肝臓に慢性疾患を抱えている人

  • 糖尿病患者

  • 髄液の漏出がみられる人

  • 免疫機能が低下している人

  • 脾臓の機能が低下している人

  • 人工内耳が埋め込まれている人

  • アルコール依存症患者

  • 喫煙者

高リスクの成人、例えばポリオの流行地域への旅行者や、仕事でポリオウイルスを扱っている研究所職員など

特定の動物に噛まれた人

感染した動物と接触する可能性のある人(獣医など)

1957年以降に生まれたすべての成人(MMRワクチンの接種記録が1回でもある場合と臨床検査で風疹に対する免疫があることを示す証拠が認められた場合を除く)

臨床検査で風疹に対する免疫をもつことを示す証拠が認められない医療従事者

妊娠を計画しており、風疹に対する免疫をもたない女性

常に麻疹およびムンプスとの混合ワクチンとして接種される(単独のワクチンとしては入手できない)

50歳以上の人

天然痘ウイルスや関連物質を直接扱う研究室職員など、このウイルスにさらされるリスクの高い人を除き、現在のところ推奨されていない

すべての成人(初回の一連のワクチン接種後[通常は小児期にジフテリアおよび百日ぜきとの混合ワクチンとして行う]、10年毎に追加接種を行う)

この感染症の流行地域への旅行者

腸チフス保菌者との濃厚な接触がある人

腸チフスの原因菌を取り扱う研究所の職員

この感染症がよくみられるアフリカや南米の特定地域への旅行者

*これらの病気について、米国ではワクチンが利用できます。

HIV = ヒト免疫不全ウイルス。

ワクチンの安全性

米国では、米国疾病予防管理センター(CDC)がワクチンの安全性を監視しています。医師は定期予防接種の後に発生した問題をCDCのワクチン副反応報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System[VAERS])とワクチン安全性データリンク(Vaccine Safety Datalink[VSD])に報告する必要があります。予防接種後に健康上の問題が発生した場合、誰でも(医師、看護師、一般の人など)VAERSに報告書を提出することができます。ただし、VAERSの報告書から、その問題がワクチンによって引き起こされたものかどうかを判断することはできません。

個々のワクチンの安全性に関する詳細な情報については、CDCウェブサイトの「ワクチンの安全性(Vaccine Safety)」を参照してください。

ワクチン接種によって、注射部位が痛んだり赤くなったりするなどの軽い副反応が生じることがありますが、基本的に問題が起こることはありません。にもかかわらず、多くの親が小児用ワクチンの安全性とその副作用について心配しています。

親が特に懸念していたのが以下のことです。

いくつもの科学者のグループがこれらの懸念に関する研究を行いましたが、かつて疑われていたワクチンと自閉症の関係は完全に否定されています(本マニュアル予防接種における懸念とCDCウェブサイトの[ワクチンの安全性に関するFAQ[FAQs About Vaccine Safety]]を参照)。

それでも、ほとんどの製薬会社はチメロサールを含まない乳児用および成人用ワクチンを開発しました。現時点で少量の水銀またはチメロサールを含有するワクチンに関する情報は、ワクチン安全性研究所(Institute for Vaccine Safety)のウェブサイトで入手できます。

外国への渡航前に必要な予防接種

米国の居住者は、国内では通常みられない感染症の発生地域に旅行する場合、その前に特定の予防接種を受けるよう求められることがあります(表「外国旅行のためのワクチン接種」を参照)。必要な予防接種は病気の流行状況によって頻繁に変わります。

必要な予防接種に関する最新情報がCDCのTravelers’ Health(旅行者の健康)セクションで提供されています。また、CDCは24時間対応の電話による情報提供サービスを開設しています(1-800-232-4636[CDC-INFO]、米国のみ)。

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP