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ウイルス感染症の概要

執筆者:

Laura D Kramer

, PhD, Wadsworth Center, NYSDOH

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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本ページのリソース
  • ウイルス感染症は、ウイルスを飲み込んだり、吸い込んだり、虫に刺されたり、性的接触を通じて感染することがあります。

  • ウイルス感染症で最もよくみられるのは、鼻、のど、上気道に生じるものです。

  • 診断は、症状、血液検査と培養検査、感染組織の検査に基づいて下されます。

  • 抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を妨いだり、ウイルス感染症に対する免疫反応を強化するものです。

ウイルスは真菌や細菌よりはるかに小さく、生きた細胞に侵入しないと増殖(複製)できない感染性微生物です。ウイルスは細胞(宿主細胞と呼ばれる)に付着して細胞内に侵入し、細胞内で自身のDNAやRNAを放出します。このDNAやRNAは、ウイルス自身を複製するために必要な情報を含む遺伝物質です。ウイルスの遺伝物質は細胞を支配し、強制的にウイルスを複製させます。ウイルスに感染した細胞は、ウイルスによって正常に機能できなくなるため、通常は死にます。細胞が死ぬと、その細胞から新しいウイルスが放出され、他の細胞に感染します。

ウイルスは、複製にDNAとRNAのどちらを利用するかによって、DNAウイルスかRNAウイルスに分類されます。RNAウイルスには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)などのレトロウイルスがあります。RNAウイルス、特にレトロウイルスは突然変異しやすい傾向があります。

ウイルスの種類によっては、感染した細胞を殺さずにその機能を変えてしまうものがあります。あるものは細胞に感染して、正常な細胞分裂ができないようにし、がん化させてしまいます。

B型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスなどの一部のウイルスは、慢性の感染症の原因となります。慢性肝炎は何年、何十年にもわたって続くことがあります。多くの場合、慢性肝炎はかなり軽症で、肝傷害はほとんど引き起こしません。しかし、一部の患者では、最終的には肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や肝不全に至り、ときに肝臓がんが発生することがあります。

知っていますか?

  • ウイルスは感染した細胞を支配し、強制的にウイルスを複製させます。

通常、ウイルスはそれぞれ決まったタイプの細胞にのみ感染します。例えば、かぜ(感冒)のウイルスは上気道の細胞だけに感染します。さらに、大半のウイルスは少数の植物種や動物種にしか感染せず、また人間にだけ感染するウイルスもあります。

多くのウイルスが、乳児や小児における感染症の原因となります。

ウイルス感染症の種類

おそらく、最も一般的なウイルス感染症は次のものです。

  • 呼吸器感染症:鼻、のど、上気道、肺の感染症

特に多くみられる呼吸器感染症は、のどの痛み副鼻腔炎かぜ(感冒)といった上気道の感染症です。

ウイルス性の呼吸器感染症には、ほかにもインフルエンザ肺炎などがあります。

年少の小児では、クループ(喉頭気管気管支炎と呼ばれる上気道と下気道の炎症)や下気道の炎症(細気管支炎)もよくみられます。

呼吸器感染症は、乳児、高齢者、また肺や心臓の病気がある人では症状が重くなる傾向があります。

ほかにも、各種のウイルスが様々な体の部位に感染します。

  • 消化管:胃腸炎などの消化管の感染症は、ウイルス(ノロウイルスやロタウイルスなど)によって引き起こされることがよくあります。

  • 肝臓:ウイルス感染によって肝炎が起こります。

  • 神経系狂犬病ウイルスウエストナイルウイルスなどの一部のウイルスが脳に感染し、脳炎を引き起こします。脳や脊髄を覆う組織の層(髄膜)に感染し、髄膜炎ポリオを引き起こすウイルスもあります。

  • 皮膚:皮膚にのみ影響を及ぼすウイルス感染症によって、いぼなどの外観を損なう病変が生じることがあります。体の他の部位を侵すことのある様々なウイルス(水痘など)も、発疹の原因になります。

  • 胎盤および胎児:例えばジカウイルス風疹ウイルス、サイトメガロウイルスなどの一部のウイルスは胎盤および胎児に感染する可能性があります。

一部のウイルスは多くの臓器に影響を及ぼします。そうしたウイルスには、エンテロウイルス(コクサッキーウイルスやエコーウイルスなど)やサイトメガロウイルスなどがあります。

ウイルス感染

ウイルスは様々な経路で感染します。主な経路は以下の通りです。

  • 嚥下(えんげ)

  • 吸入

  • 蚊や人間を刺す種類のハエ、マダニなどの昆虫による刺咬

  • 性的な接触(性感染症の場合)

  • 汚染された血液の輸血

かつては世界の限られた地域にしか存在しなかった多数のウイルスが、今では広い地域にみられるようになりました。例えば、チクングニアウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ロスリバーウイルス、ジカウイルス、跳躍病ウイルスなどが以前よりも広範囲に確認されるようになっています。その理由の1つは、気候が変化して、ウイルスを運ぶ蚊が生息できる地域が増えたことです。また、旅先で感染した旅行者が、帰宅してから蚊に刺され、その蚊がウイルス感染を別の人に広げることもあります。

ウイルスに対する防御

ウイルスに対して、体はいくつかの防御機能を備えています。

  • 皮膚のような物理的バリアは、ウイルスが簡単に侵入できないように防御します。

  • 体の免疫系は、ウイルスを攻撃します。

ウイルスが体内に侵入すると、体の免疫機能が働き始めます。そうした防御機能では、まずリンパ球や単球などの白血球が、ウイルスやウイルスに感染した細胞を攻撃して破壊する術を獲得します。体がウイルスの攻撃に勝つと、一部の白血球はそのとき侵入してきたウイルスを記憶し、次に同じウイルスに感染したときにより早く効果的に対処できるようになります。この反応を免疫と呼びます。免疫はワクチン接種を受けることでも得られます。

ウイルスとがん

ウイルスの中には宿主細胞のDNAを変化させ、がんを生じやすくするものがあります。ヘルペスウイルスHIVのように、一部のウイルスは宿主細胞内に遺伝物質を残し、長期にわたって休眠状態でとどまります(潜伏感染)。その細胞が弱ると、ウイルスが再び複製を始め、病気を引き起こすことがあります。

がんを引き起こすことが分かっているウイルスはほんの数種類ですが、ほかにも存在する可能性があります。

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ウイルスとがん:そのつながり

ウイルス

がん

ある種の鼻やのどのがん

免疫機能が低下している人(エイズ患者など)に生じるB細胞リンパ腫

ヘルペスウイルス8型

エイズ患者において、カポジ肉腫と非ホジキンリンパ腫

診断

  • 医師による評価

  • 流行する感染症の場合、同様の病態を抱えた他の患者の存在

  • 一部の感染症では、血液検査と培養検査

一般的なウイルス感染症(麻疹[はしか]、風疹水痘[水ぼうそう])は、症状に基づいて診断できることがあります。

流行する感染症(インフルエンザなど)の場合は、周囲にも似たような患者が存在することから、医師は感染症を具体的に特定しやすくなることがあります。

それ以外の感染症では、血液検査や培養検査(検査室で、血液、体液、その他の感染部位から採取したサンプルから微生物を増殖させること)を行うことがあります。ウイルスの遺伝物質のコピーを多数作り出すために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が用いられることもあります。この方法によって、医師がウイルスをすばやくかつ正確に特定しやすくなります。血液を検査して、抗原(ウイルスの表面または内部に存在し、体の防御機能を作動させるタンパク)の有無を調べることもあります。ウイルスに対する抗体の有無を調べるために、血液検査を行う場合もあります。(抗体とは、特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパクです。)検査は通常、迅速に行われ、その感染症が公衆衛生上の深刻な脅威である場合や症状が重い場合は特に迅速な対応がとられます。

血液やその他の組織のサンプルを、高倍率で明瞭に観察できる電子顕微鏡で調べる場合もあります。

予防

ウイルス感染症の予防には以下のものがあります。

  • 一般的な対策

  • ワクチン

  • 免疫グロブリン製剤

ワクチンや免疫グロブリン製剤は、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めるための助けとなります。体の防御機能を強化するためのプロセスを免疫付与(immunization)と呼びます。

一般的な対策

ウイルス感染症の予防には、個人が自らや他者を守るために常識的な対策(個人レベルの対策)をとることが助けとなります。どのような対策をとるのが良いかは、ウイルスがどのように広がるかによって変わります。対策には以下のものがあります。

  • 頻回かつ徹底的に石けんで手を洗う

  • 適切に準備され調理された食べものや飲みものだけを口にする

  • 感染している人や、汚染されている物との接触を避ける

  • くしゃみやせきをするときはティッシュや(この場合ティッシュは必ず捨てること)、上腕で完全に口や鼻を覆うようにする

  • 安全な性行為をする

ワクチン

ワクチンは、体の生来の防御機構を刺激することで効き目を発揮します(能動免疫と呼ばれます)。ワクチンは、感染を予防するために、ウイルスにさらされる前に投与します。

一般的に使用されているウイルスワクチンには以下のものがあります。

天然痘ワクチンは使用可能ですが、天然痘感染リスクが高い人(例えば特定の軍人など)に限って用いられます。

ウイルス性の病気は、良いワクチンがあれば根絶することができます。天然痘は1978年に根絶されました。ポリオもほとんどすべての国で根絶されましたが、物流や宗教的な感情によってワクチン接種に支障をきたしているようないくつかの国ではまだ残っています。麻疹(はしか)も世界の一部の地域(アメリカ大陸など)ではほぼ根絶されています。ただし、麻疹は感染力が高く、麻疹が根絶されたと考えられている地域であってもワクチンの接種率が100%ではないことから、すぐに完全に根絶される可能性は低いと考えられます。

免疫グロブリン製剤

免疫グロブリン製剤は、複数の人の血液から採取して収集した抗体を含有する無菌の溶液です(イムノグロブリンとも呼ばれる)。免疫グロブリン製剤は人に直接投与されます(受動免疫と呼ばれます)。

以下のような人の血液から免疫グロブリンを収集することができます。

  • 全般的に健康な人(この免疫グロブリンはpooled human immunoglobulinと呼ばれます)

  • 過去に感染したことがあるなど、特定の感染微生物に対する抗体を大量にもっている人(この免疫グロブリンは高力価免疫グロブリンと呼ばれます)

高力価免疫グロブリンは、いくつかの感染症に対してのみ利用可能です(B型肝炎、狂犬病、破傷風、水痘[水ぼうそう]など)。

免疫グロブリンは、筋肉内または静脈内に投与されます。免疫グロブリンによる免疫の効力が持続するのは数日から数週間で、注入した抗体はやがて人体から排除されます。

狂犬病やB型肝炎に対するものなど、免疫グロブリン製剤やワクチンの中には、ウイルスにさらされた後に、発症の予防や発症時の重症化の予防を目的として投与することが可能なものもあります。

免疫グロブリン製剤は、いくつかの感染症の治療にも用いられます。例えば、感染に対して免疫系が十分に反応しないような人に投与されることがあります( 免疫系の欠損している成分の補充)。

治療

  • 症状を改善する治療(対症療法)

  • ときに抗ウイルス薬

症状を改善する治療(対症療法)

多くのウイルスには特別な治療法がありません。しかし、以下のように様々な方法で特定の症状を和らげることができます。

  • 脱水:十分な水分補給、ときに静脈から投与する輸液

  • 下痢:ときにロペラミド

  • 発熱と痛み:アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • 吐き気と嘔吐:澄んだ液体の流動食やときにオンダンセトロンなどの制吐薬(吐き気止め)

  • 発疹(一部のもの):鎮痛作用のあるクリームや保湿クリームの塗布、ときにかゆみを抑える抗ヒスタミン薬の経口投与

  • 鼻水:ときにフェニレフリンやフェニルプロパノールアミンなどの鼻閉改善薬

  • のどの痛み:ときに、のどを麻痺させる作用のあるアミノ安息香酸エチルやジクロニン(dyclonine)を含むトローチ

こうした症状がみられる人すべてに治療が必要なわけではありません。軽症の場合は、自然に解消されるのを待つ方がよい場合もあります。乳幼児に適さない治療法もあります。

抗ウイルス薬

ウイルス感染症を治療するための薬を抗ウイルス薬と呼びます。多くのウイルス感染症には、効果的な抗ウイルス薬がありません。しかし、インフルエンザに対しては数種類の薬があり、1種類または複数種類のヘルペスウイルス感染症に対しては多くの薬があり( ヘルペスウイルス感染症に対する主な抗ウイルス薬)、HIV感染症HIV感染症の治療薬)とC型肝炎の治療にも多数の新しい抗ウイルス薬があります。

抗ウイルス薬の多くは、ウイルスの複製を抑えることで作用します。HIV感染症 の治療薬は、ほとんどがそのように作用します。ウイルスは非常に小さく、感染した細胞内でその細胞の代謝機能を利用して自らを複製するため、抗ウイルス薬では少数の代謝機能しか攻撃できません。一方、細菌は比較的大きな生物であり、一般に細胞の外で自ら増殖するため、抗菌薬(抗生物質)で多くの代謝機能を攻撃することができます。そのため、抗ウイルス薬の開発は、抗菌薬の開発よりはるかに困難です。さらに、抗菌薬は多種の細菌に対して効果的なことが多いですが、それとは異なり、ほとんどの抗ウイルス薬はそれぞれが1種類の(またはごく少数の)ウイルスにしか効きません。

抗ウイルス薬は人の細胞に対して毒性をもつことがあります。また、ウイルスが抗ウイルス薬に対し耐性をもつようになることもあります。

ほとんどの抗ウイルス薬は服用する(飲む)ことができます。また静脈内注射や筋肉内注射でも投与できるものがあります。軟膏剤、クリーム剤、点眼薬として投与するものや、粉末として吸入するものもあります。

抗菌薬はウイルス感染症には効きませんが、ウイルス感染症に加えて細菌感染症も発生している場合には、しばしば必要になります。

インターフェロンは、体内で自然に作られる、ウイルスの複製を遅らせたり止めたりする物質を模倣したものです。このような薬は以下のようなウイルス感染症の治療に用いられます。

インターフェロンには、発熱、悪寒、筋力低下、筋肉痛などの副作用が生じることがあります。副作用は通常、最初の注射後7~12時間で発現し、最長で12時間持続します。

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