ウイルスは核酸(DNAかRNA 遺伝子 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む のどちらか一方)で構成されており、タンパク質の膜で覆われています。ウイルスが増殖するには生きている細胞が必要です。ウイルス感染症は、無症状(明らかな症状はない)から重度の病態にいたるまで、幅広い症状を引き起こします。
ウイルス感染症は、ウイルスを飲み込んだり、吸い込んだり、虫に刺されたり、性的接触を通じて感染することがあります。
ウイルス感染症は、鼻、のど、上気道や、神経系、消化器系、生殖器系に生じるものが最もよくみられます。
診断は、症状、血液検査と培養検査、感染組織の検査に基づいて下されます。
抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を妨いだり、ウイルス感染症に対する免疫反応を強化するものです。
ウイルスは真菌や細菌よりはるかに小さく、生きた細胞に侵入しないと増殖(複製)できない感染性微生物です。ウイルスは細胞(宿主細胞と呼ばれる)に付着して細胞内に侵入し、細胞内で自身の DNAやRNA 遺伝子 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む を放出します。このDNAやRNAは、ウイルス自身を複製するために必要な情報を含む遺伝物質です。ウイルスの遺伝物質は細胞を支配し、強制的にウイルスを複製させます。ウイルスに感染した細胞は、ウイルスによって正常に機能できなくなるため、通常は死にます。細胞が死ぬと、その細胞から新しいウイルスが放出され、他の細胞に感染します。
ウイルスは、複製にDNAとRNAのどちらを利用するかによって、DNAウイルスかRNAウイルスに分類されます。RNAウイルスには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む )などのレトロウイルスがあります。RNAウイルス、特にレトロウイルスは突然変異しやすい傾向があります。
ウイルスの種類によっては、感染した細胞を殺さずにその機能を変えてしまうものがあります。あるものは細胞に感染して、正常な細胞分裂ができないようにし、がん化させてしまいます。
B型肝炎ウイルス B型肝炎(慢性) B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 ほとんどのB型慢性肝炎患者では症状がありませんが、全身のだるさを感じ、疲れを覚え、食欲を失う場合もあります。 B型慢性肝炎があると肝臓がんのリスクが増大します。 血液検査の結果に基づいてB型肝炎の診断が下され、ときとして肝傷害の程度を確認するために肝生検が... さらに読む や C型肝炎ウイルス C型肝炎(慢性) C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。 C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。... さらに読む などの一部のウイルスは、慢性の感染症の原因となります。慢性肝炎は何年、何十年にもわたって続くことがあります。多くの場合、慢性肝炎はかなり軽症で、肝傷害はほとんど引き起こしません。しかし、一部の患者では、最終的には 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、 飲酒によらない脂肪肝です。... さらに読む (肝臓の重度の瘢痕化)や 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。... さらに読む に至り、ときに 肝臓がん 肝細胞がん 肝細胞がんは、肝臓の細胞から発生するがんの一種であり、原発性の肝臓がんの中で最も多くみられるものです。 B型またはC型肝炎、 脂肪性肝疾患、および 過度の飲酒は、肝細胞がんの発生リスクを高め、特に肝硬変がある患者では著しくリスクを高めます。 腹痛や体重減少がみられるほか、右上腹部に大きなかたまりを触れることがあります。... さらに読む が発生することがあります。
通常、ウイルスはそれぞれ決まったタイプの細胞にのみ感染します。例えば、 かぜ(感冒)のウイルス かぜ(感冒) かぜ(感冒)は、鼻、副鼻腔、のどの粘膜に起こる ウイルス感染症です。 様々なウイルスがかぜの原因となります。 通常、かぜは感染者の鼻の分泌物に手が触れることでうつります。 初期にのどのいがらっぽさや痛み、または鼻の不快感が生じることが多く、続いてくしゃみや鼻水、せき、全身のけん怠感が生じます。... さらに読む は上気道の細胞だけに感染します。さらに、大半のウイルスは少数の植物種や動物種にしか感染せず、また人間にだけ感染するウイルスもあります。
多くのウイルスが、高齢者、 乳児や小児における感染症 乳児と小児におけるウイルス感染症 の原因となります。
ウイルス感染症の種類
おそらく、最も一般的なウイルス感染症は次のものです。
呼吸器感染症:鼻、のど、上気道、肺の感染症
特に多くみられる呼吸器感染症は、 のどの痛み のどの痛み のどの痛みとは、のどの奥に生じる痛みのことです。痛みは激しいこともあり、通常はものを飲み込んだときに強くなります。のどの痛みがある人の多くは、食べたり飲んだりするのを拒みます。ときに、耳にも痛みを感じることがあります(のどの奥に向かう神経は、耳に通じる神経のごく近くを通っています)。... さらに読む 、 副鼻腔炎 副鼻腔炎 副鼻腔炎は副鼻腔の炎症で、多くはウイルスや細菌の感染またはアレルギーが原因です。 最もよくみられる症状は痛み、圧痛、鼻づまり、頭痛などです。 診断は症状に基づいて下されますが、ときにCT検査などの画像検査が必要になることもあります。 原因となっている細菌感染症は抗菌薬で根治させることができます。... さらに読む 、 かぜ(感冒) かぜ(感冒) かぜ(感冒)は、鼻、副鼻腔、のどの粘膜に起こる ウイルス感染症です。 様々なウイルスがかぜの原因となります。 通常、かぜは感染者の鼻の分泌物に手が触れることでうつります。 初期にのどのいがらっぽさや痛み、または鼻の不快感が生じることが多く、続いてくしゃみや鼻水、せき、全身のけん怠感が生じます。... さらに読む といった上気道の感染症です。
ウイルス性の呼吸器感染症には、ほかにも インフルエンザ インフルエンザ (流感) インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道の ウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。... さらに読む や 肺炎 市中肺炎 市中肺炎は、病院外の人に発生する肺の感染症です。 多くの細菌、ウイルス、真菌が原因となります。 肺炎で最もよくみられる症状は、たんがからんだせきですが、胸痛、悪寒、発熱、息切れもよくみられます。 医師は、聴診器で肺の音を聞き、胸部のX線やCT画像を見て、市中肺炎を診断します。 肺炎の原因と考えられる微生物に応じて、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗... さらに読む 、 コロナウイルス コロナウイルスと急性呼吸器症候群(COVID-19、MERS、SARS) コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、... さらに読む などがあります。
年少の小児では、 クループ クループ クループとは、ウイルス感染症により発生する気管と喉頭の炎症で、せきと、高いキューキューいう呼吸音(吸気性喘鳴)が起こり、ときに息を吸う(吸気)のが難しくなります。 原因はウイルスです。 症状には、発熱、鼻水、典型的なイヌが吠えるようなせきなどがあります。 診断は症状に基づいて下されます。... さらに読む (喉頭気管気管支炎と呼ばれる上気道と下気道の炎症)や下気道の炎症(細気管支炎 細気管支炎 細気管支炎とは、乳児と生後24カ月未満の幼児の下気道を侵すウイルス感染症です。 原因は、たいていウイルスです。 症状として、鼻水、発熱、せき、呼気性喘鳴、呼吸困難などがみられます。 診断は症状と身体診察の結果に基づいて下されます。 自宅で順調に、数日で回復するのが普通ですが、入院が必要になることもあります。 さらに読む )もよくみられます。
呼吸器感染症は、乳児、高齢者、また肺や心臓の病気がある人では症状が重くなる傾向があります。
ほかにも、各種のウイルスが様々な体の部位に感染します。
消化管: 胃腸炎 胃腸炎 胃腸炎とは、胃、小腸、大腸の粘膜に生じた炎症のことです。通常は微生物が感染することで起こりますが、毒性のある化学物質や薬の摂取が原因で起こることもあります。 胃腸炎の通常の原因は感染ですが、毒性物質や薬の摂取が原因となることもあります。 典型的には、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛がみられます。... さらに読む
などの消化管の感染症は、ウイルス(ノロウイルスや ロタウイルス ロタウイルス感染症 ロタウイルスは一般的なウイルスで、非常に感染力が強く、 嘔吐と 下痢を引き起こします。 ロタウイルスは消化管のウイルス感染症を引き起こし、重度の脱水が生じることがあります。 典型的な症状としては、発熱、嘔吐、水様性下痢などがあります。 診断は症状に基づいて下されます。 定期予防接種でロタウイルス感染症を予防できます。 さらに読む など)によって引き起こされることがよくあります。
神経系 脳の感染症の概要 脳の感染症は、ウイルス、細菌、真菌のほか、ときに原虫や寄生虫によって引き起こされます。別の種類の脳疾患として、 プリオンと呼ばれる異常なタンパク質によって引き起こされる海綿状脳症という病気もあります。 脳の感染症が起こると、しばしば中枢神経系のほかの部位(脊髄など)も侵されます。通常、脳や脊髄は感染から保護されていますが、いったん感染が起... さらに読む : 狂犬病ウイルス 狂犬病 狂犬病は、動物によって媒介されるウイルス感染症で、脳と脊髄に炎症を引き起こします。狂犬病ウイルスが脊髄や脳に達すると、ほぼ必ず死に至ります。 通常は、人は感染した動物に咬まれることでウイルスに感染しますが、米国では一般にコウモリに咬まれることで感染する一方、イヌに対する狂犬病ワクチンの接種が義務化されていない国では、イヌが感染源になってい... さらに読む や ウエストナイルウイルス 流行性の脳炎 脳炎とは、ウイルスが脳に直接感染して起こることもあれば、ウイルスやワクチン、その他の物質が炎症を誘発して起こることもあります。炎症が脊髄に波及することもあり、その場合は脳脊髄炎と呼ばれます。 発熱、頭痛、けいれん発作が起こることがあり、眠気、しびれ、錯乱をきたすこともあります。... さらに読む などの一部のウイルスが脳に感染し、脳炎を引き起こします。脳や脊髄を覆う組織の層(髄膜)に感染し、 髄膜炎 ウイルス性髄膜炎 ウイルス性髄膜炎は、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)に炎症が起きる病気のうち、ウイルスによるものです。 ウイルス性髄膜炎は、発熱、全身のけん怠感、頭痛、筋肉痛といったウイルス感染症の症状で始まるのが普通です。 その後、頭痛と項部硬直(あごを胸につけられない、またはつけるのが難しくなる症状)が生じます。... さらに読む や ポリオ ポリオ ポリオとは、非常に感染性が強く、死に至ることのある エンテロウイルス感染症で、神経を侵して永久的な筋力低下や麻痺などの症状が生じます。 ポリオはウイルスが原因で生じる病気で、通常は汚染された食べものや水を飲食したり、汚染されたものを触った後にその手で口に触れたりすることで感染します。... さらに読む を引き起こすウイルスもあります。
皮膚:皮膚にのみ影響を及ぼすウイルス感染症によって、 いぼ 疣贅(いぼ) 疣贅(ゆうぜい)は、ヒトパピローマウイルスの感染によって引き起こされる皮膚の小さな増殖性病変で、一般にいぼと呼ばれるものです。 疣贅(いぼ)は、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされます。 隆起した病変または平坦な病変として、あらゆる部位の皮膚に出現します。 ほとんどのいぼは痛みを伴いません。... さらに読む
などの外観を損なう病変が生じることがあります。体の他の部位を侵すことのある様々なウイルス(水痘 水痘(水ぼうそう) 水痘とは、水痘帯状疱疹ウイルスによる、感染力が非常に強い ウイルス感染症で、かゆみのある特徴的な発疹が現れます。発疹は小さな斑点で、盛り上がったり、水疱(水ぶくれ)を形成したり、かさぶたができたりします。 水痘はほとんどが小児に起こりますが、水痘ワクチンのおかげで発生数は大幅に減少しています。... さらに読む
など)も、発疹の原因になります。
胎盤および胎児:例えば ジカウイルス ジカウイルス感染症 ジカウイルス感染症は蚊が媒介するウイルス感染症の一種であり、一般に症状を引き起こしませんが、発熱、発疹、関節痛、または白眼を覆う膜の感染症(結膜炎)がみられることもあります。妊婦のジカウイルス感染症は、新生児に小頭症(重大な先天異常)と眼の異常を引き起こすことがあります。 ジカウイルスは蚊によって広がりますが、性交や輸血によって感染するこ... さらに読む
、 風疹 風疹 風疹は、典型的には関節痛や発疹などの軽い症状を引き起こす感染力の強いウイルス感染症ですが、妊娠中の母親が風疹に感染すると、新生児に重い先天異常が起きます。 風疹の原因はウイルスです。 典型的な症状としては、リンパ節の腫れ、口蓋(こうがい)に出るバラ色の斑点、特徴的な発疹などがあります。... さらに読む
ウイルス、 サイトメガロウイルス サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス感染症はよくみられるヘルペスウイルス感染症で、症状が出ないものから、発熱と疲労感が出るもの(伝染性単核球症に似たもの)、また、眼や脳、その他の内臓を侵す重い症状が生じるものまで、症状は多岐にわたります。 この ウイルスは、体の分泌物と接触(性的接触とそれ以外の接触の両方)することで感染します。... さらに読む などの一部のウイルスは胎盤および胎児に感染する可能性があります。
一部のウイルスは多くの臓器に影響を及ぼします。そうしたウイルスには、 エンテロウイルス エンテロウイルス感染症の概要 エンテロウイルス感染症は、体の多くの部分を侵し、また数種類の異なるエンテロウイルスのいずれもが原因となる可能性があります。 エンテロウイルス感染症は、様々な種類のウイルスによって引き起こされます。 エンテロウイルス感染症の症状は、発熱、頭痛、呼吸器疾患、のどの痛みなどで、ときに口の痛みや発疹がみられることもあります。... さらに読む (コクサッキーウイルスやエコーウイルスなど)やサイトメガロウイルスなどがあります。
ウイルス感染
ウイルスは様々な経路で感染します。主な経路は以下の通りです。
嚥下(えんげ)
吸入
蚊や人間を刺す種類のハエ、マダニなどの昆虫による刺咬
汚染された血液の輸血
新しいヒトウイルスは通常は動物に感染するウイルス(例えば、 SARS-CoV 重症急性呼吸器症候群(SARS) コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、... さらに読む 、 SARS-CoV2 COVID-19 コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、... さらに読む )から生じることがあります。これは、宿主である感染した動物と、感染しやすい状態の人が濃厚に接触したときに起こります。
かつては世界の限られた地域にしか存在しなかった多数のウイルスが、今では広い地域にみられるようになりました。例えば、チクングニアウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ロスリバーウイルス、 ジカウイルス ジカウイルス感染症 ジカウイルス感染症は蚊が媒介するウイルス感染症の一種であり、一般に症状を引き起こしませんが、発熱、発疹、関節痛、または白眼を覆う膜の感染症(結膜炎)がみられることもあります。妊婦のジカウイルス感染症は、新生児に小頭症(重大な先天異常)と眼の異常を引き起こすことがあります。 ジカウイルスは蚊によって広がりますが、性交や輸血によって感染するこ... さらに読む 、跳躍病ウイルスなどが以前よりも広範囲に確認されるようになっています。その理由の1つは、気候が変化して、ウイルスを運ぶ蚊が生息できる地域が増えたことです。また、旅先で感染した旅行者が、帰宅してから蚊に刺され、その蚊がウイルス感染を別の人に広げることもあります。
ウイルスに対する防御
ウイルスに対して、体はいくつかの防御機能を備えています。
皮膚のような物理的バリアは、ウイルスが簡単に侵入できないように防御します。
体の免疫系は、ウイルスを攻撃します。
ウイルスが体内に侵入すると、体の免疫機能が働き始めます。そうした防御機能では、まず リンパ球 リンパ球 体の防御線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっており、白血球は血流に乗って体内を巡り、組織に入り込んで微生物などの異物を見つけ出し、攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防御は以下の2つの部分に分かれています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロ... さらに読む や単球などの 白血球 白血球 が、ウイルスやウイルスに感染した細胞を攻撃して破壊する術を獲得します。体がウイルスの攻撃に勝つと、一部の白血球はそのとき侵入してきたウイルスを記憶し、次に同じウイルスに感染したときにより早く効果的に対処できるようになります。この反応を免疫と呼びます。免疫は ワクチン 予防接種の概要 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む 接種を受けることでも得られます。
ウイルスとがん
ウイルスの中には宿主細胞のDNAを変化させ、がんを生じやすくするものがあります。 ヘルペスウイルス ヘルペスウイルス感染症の概要 よくみられるウイルス感染症の1つに、ヘルペスウイルスによるものがあります。人間に感染するヘルペスウイルスには、以下の8種類があります。 単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルス(ヘルペスウイルス3型、 水痘や 帯状疱疹の原因となる)の3種類のヘルペスウイルスは、皮膚や粘膜に水疱... さらに読む や HIV ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む のように、一部のウイルスは宿主細胞内に遺伝物質を残し、長期にわたって休眠状態でとどまります(潜伏感染)。その細胞が弱ると、ウイルスが再び複製を始め、病気を引き起こすことがあります。
がんを引き起こすことが分かっているウイルスはほんの数種類ですが、ほかにも存在する可能性があります。
診断
医師による評価
流行する感染症の場合、同様の病態を抱えた他の患者の存在
一部の感染症では、血液検査と培養検査
一般的なウイルス感染症(麻疹 麻疹(はしか) 麻疹は非常に感染力の強い ウイルス感染症で、かぜのような様々な症状と特徴的な発疹が現れます。 麻疹の原因はウイルスです。 症状としては、発熱、鼻水、頻発する空せき、目の充血、かゆみを伴う赤い発疹などがみられます。 診断は、典型的な症状と特徴的な発疹に基づいて下されます。 ほとんどの小児が回復しますが、まれに麻疹により死亡したり脳に損傷が生... さらに読む [はしか]、 風疹 風疹 風疹は、典型的には関節痛や発疹などの軽い症状を引き起こす感染力の強いウイルス感染症ですが、妊娠中の母親が風疹に感染すると、新生児に重い先天異常が起きます。 風疹の原因はウイルスです。 典型的な症状としては、リンパ節の腫れ、口蓋(こうがい)に出るバラ色の斑点、特徴的な発疹などがあります。... さらに読む
、 水痘 水痘(水ぼうそう) 水痘とは、水痘帯状疱疹ウイルスによる、感染力が非常に強い ウイルス感染症で、かゆみのある特徴的な発疹が現れます。発疹は小さな斑点で、盛り上がったり、水疱(水ぶくれ)を形成したり、かさぶたができたりします。 水痘はほとんどが小児に起こりますが、水痘ワクチンのおかげで発生数は大幅に減少しています。... さらに読む
[水ぼうそう])は、症状に基づいて診断できることがあります。
流行する感染症(インフルエンザ インフルエンザ (流感) インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道の ウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。... さらに読む など)の場合は、周囲にも似たような患者が存在することから、医師は感染症を具体的に特定しやすくなることがあります。 COVID-19 COVID-19 コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、... さらに読む (SARS-CoV2)と インフルエンザ インフルエンザ (流感) インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道の ウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。... さらに読む のように、類似の症状を引き起こす異なるウイルスを区別するためには、臨床検査による診断が重要です。
それ以外の感染症では、血液検査や培養検査(検査室で、血液、体液、その他の感染部位から採取したサンプルから微生物を増殖させること)を行うことがあります。ウイルスの遺伝物質のコピーを多数作り出すために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が用いられることもあります。この方法によって、医師がウイルスをすばやくかつ正確に特定しやすくなります。血液を検査して、抗原(ウイルスの表面または内部に存在し、体の防御機能を作動させるタンパク質)の有無を調べることもあります。ウイルスに対する 抗体 抗体 体の防御線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっており、白血球は血流に乗って体内を巡り、組織に入り込んで微生物などの異物を見つけ出し、攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防御は以下の2つの部分に分かれています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロ... さらに読む の有無を調べるために、血液検査を行う場合もあります。(抗体とは、特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)検査は通常、迅速に行われ、その感染症が公衆衛生上の深刻な脅威である場合や症状が重い場合は特に迅速な対応がとられます。
血液やその他の組織のサンプルを、高倍率で明瞭に観察できる電子顕微鏡で調べる場合もあります。
予防
ウイルス感染症の予防には以下のものがあります。
ワクチンや免疫グロブリン製剤は、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めるための助けとなります。体の防御機能を強化するためのプロセスを 免疫付与(immunization) 予防接種の概要 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む と呼びます。
一般的な対策
ワクチン
ワクチン 予防接種の概要 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む は、体の生来の防御機構を刺激することで効き目を発揮します(能動免疫 能動免疫 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む と呼ばれます)。ワクチンは、感染を予防するために、ウイルスにさらされる前に投与します。
一般的に使用されているウイルスワクチンには以下のものがあります。
日本脳炎(脳の炎症)
天然痘ワクチン 天然痘ワクチン 米国では、天然痘が根絶されたため、天然痘ワクチンの定期予防接種は1972年に中止されました。ワクチンの効果が持続する期間は約10年ですので、現在はほとんどの人が 天然痘に対する免疫をもっていません。 ウイルスのサンプルが保存されているため、天然痘がテロリストに 生物兵器として利用されるのではないかと恐れる人もいます。しかし、一般市民の間で... さらに読む は使用可能ですが、天然痘感染リスクが高い人(例えば特定の軍人など)に限って用いられます。
2016年以来、西アフリカで流行中に限定的に使用されてきた エボラ エボラウイルス感染症とマールブルグウイルス感染症 マールブルグウイルス感染症とエボラウイルス感染症は、出血と臓器不全を引き起こします。これらの感染症の患者は、多くの場合、死亡します。 マールブルグウイルス感染症とエボラウイルス感染症は、感染した動物またはその死骸を扱ったり、症状が出ている感染者またはその遺体の皮膚や体液に触れたりすることで広がります。... さらに読む ワクチンが、2019年12月に米国食品医薬品局(FDA)によって18歳以上の人を対象として承認されました。
ウイルス性の病気は、よいワクチンがあれば根絶することができます。 天然痘 天然痘 天然痘は、天然痘ウイルスが引き起こす、感染性、致死性ともに非常に高い病気です。この病気は現在では根絶されています。 1977年以来、天然痘は発生していません。 感染者が呼吸やせきで排出した空気を吸い込むことで感染します。 発熱、頭痛、背部痛、発疹、またときには重度の腹痛が生じ、非常に体調が悪くなります。... さらに読む は1978年に根絶されました。 ポリオ ポリオ ポリオとは、非常に感染性が強く、死に至ることのある エンテロウイルス感染症で、神経を侵して永久的な筋力低下や麻痺などの症状が生じます。 ポリオはウイルスが原因で生じる病気で、通常は汚染された食べものや水を飲食したり、汚染されたものを触った後にその手で口に触れたりすることで感染します。... さらに読む もほとんどすべての国で根絶されましたが、物流や宗教的な感情によってワクチン接種に支障をきたしているようないくつかの国ではまだ残っています。 麻疹(はしか) 麻疹(はしか) 麻疹は非常に感染力の強い ウイルス感染症で、かぜのような様々な症状と特徴的な発疹が現れます。 麻疹の原因はウイルスです。 症状としては、発熱、鼻水、頻発する空せき、目の充血、かゆみを伴う赤い発疹などがみられます。 診断は、典型的な症状と特徴的な発疹に基づいて下されます。 ほとんどの小児が回復しますが、まれに麻疹により死亡したり脳に損傷が生... さらに読む
も世界の一部の地域(アメリカ大陸など)ではほぼ根絶されています。ただし、麻疹は感染力が高く、麻疹が根絶されたと考えられている地域であってもワクチンの接種率が100%ではないことから、すぐに完全に根絶される可能性は低いと考えられます。
免疫グロブリン製剤
免疫グロブリン製剤は、複数の人の血液から採取して収集した 抗体 抗体 体の防御線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっており、白血球は血流に乗って体内を巡り、組織に入り込んで微生物などの異物を見つけ出し、攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防御は以下の2つの部分に分かれています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロ... さらに読む を含有する無菌の溶液です(イムノグロブリンとも呼ばれる)。免疫グロブリン製剤は人に直接投与されます(受動免疫 受動免疫 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む と呼ばれます)。
以下のような人の血液から免疫グロブリンを収集することができます。
全般的に健康な人(この免疫グロブリンはpooled human immunoglobulinと呼ばれます)
過去に感染したことがあるなど、特定の感染微生物に対する抗体を大量にもっている人(この免疫グロブリンは高力価免疫グロブリンと呼ばれます)
高力価免疫グロブリンは、いくつかの感染症に対してのみ利用可能です(B型肝炎 免疫グロブリン製剤 ウイルスは核酸( DNAかRNAのどちらか一方)で構成されており、タンパク質の膜で覆われています。ウイルスが増殖するには生きている細胞が必要です。ウイルス感染症は、無症状(明らかな症状はない)から重度の病態にいたるまで、幅広い症状を引き起こします。 ウイルス感染症は、ウイルスを飲み込んだり、吸い込んだり、虫に刺されたり、性的接触を通じて感... さらに読む 、 狂犬病 狂犬病 狂犬病は、動物によって媒介されるウイルス感染症で、脳と脊髄に炎症を引き起こします。狂犬病ウイルスが脊髄や脳に達すると、ほぼ必ず死に至ります。 通常は、人は感染した動物に咬まれることでウイルスに感染しますが、米国では一般にコウモリに咬まれることで感染する一方、イヌに対する狂犬病ワクチンの接種が義務化されていない国では、イヌが感染源になってい... さらに読む 、 破傷風 破傷風 破傷風は、嫌気性細菌の破傷風菌 Clostridium tetaniが作り出す毒素によって引き起こされる病気です。この毒素によって筋肉が不随意に収縮し、硬くなって動かせなくなります。 破傷風は通常、傷口や皮膚を突き破るようなけがなどが汚染されることで発生します。 診断は症状に基づいて下されます。... さらに読む 、 水痘 水痘(水ぼうそう) 水痘とは、水痘帯状疱疹ウイルスによる、感染力が非常に強い ウイルス感染症で、かゆみのある特徴的な発疹が現れます。発疹は小さな斑点で、盛り上がったり、水疱(水ぶくれ)を形成したり、かさぶたができたりします。 水痘はほとんどが小児に起こりますが、水痘ワクチンのおかげで発生数は大幅に減少しています。... さらに読む [水ぼうそう]など)。通常は、微生物にさらされた後、発病する前に投与されます。例えば、狂犬病にかかっている可能性のある動物に咬まれた人には、直ちに狂犬病の高力価免疫グロブリンが投与されます。
免疫グロブリンは、筋肉内または静脈内に投与されます。免疫グロブリンによる免疫の効力が持続するのは数日から数週間で、注入した抗体はやがて人体から排除されます。
ときに狂犬病やB型肝炎のウイルスにさらされた場合など、発症の予防や発症時の重症化の予防を目的として免疫グロブリンとワクチンの両方が投与されることがあります。
免疫グロブリン製剤は、いくつかの感染症の治療にも用いられます。例えば、感染に対して免疫系が十分に反応しないような人に投与されることがあります(免疫系の欠損している成分の補充 免疫系の欠損している成分の補充 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む )。
治療
症状を改善する治療(対症療法)
ときに抗ウイルス薬
症状を改善する治療(対症療法)
多くのウイルスには特別な治療法がありません。しかし、以下のように様々な方法で特定の症状を和らげることができます。
脱水:十分な水分補給、ときに静脈から投与する輸液
下痢:ときにロペラミドなどの下痢止め薬
吐き気と嘔吐:澄んだ液体の流動食やときにオンダンセトロンなどの制吐薬(吐き気止め)
発疹(一部のもの):鎮痛作用のあるクリームや保湿クリームの塗布、ときにかゆみを抑える抗ヒスタミン薬の経口投与
鼻水:ときにフェニレフリンやフェニルプロパノールアミンなどの鼻閉改善薬
のどの痛み:ときに、のどを麻痺させる作用のあるアミノ安息香酸エチルやジクロニン(dyclonine)を含むトローチ
こうした症状がみられる人すべてに治療が必要なわけではありません。軽症の場合は、自然に解消されるのを待つ方がよい場合もあります。乳幼児に適さない治療法もあります。
抗ウイルス薬
ウイルス感染症を治療するための薬を抗ウイルス薬と呼びます。多くのウイルス感染症には、効果的な抗ウイルス薬がありません。しかし、 インフルエンザ治療薬 治療 インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道の ウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。... さらに読む は数種類あり、1種類または複数種類のヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス感染症に対する主な抗ウイルス薬 ヘルペスウイルス感染症に対する主な抗ウイルス薬 )による感染症に対しては多くの薬があり、 HIV感染症の治療 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の薬物治療 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療に用いられる抗レトロウイルス薬は以下の目的で使用します。 血液中のHIV RNAの量(ウイルス量)を検出不可能な量まで減らす CD4陽性細胞数を正常値に回復させる HIV感染症の治療には、数種類の抗レトロウイルス薬を組み合わせて使用します。そのような薬には、HIVが人の細胞に侵入するのを阻止する働... さらに読む (HIV感染症の治療薬 HIV感染症の治療薬
)や C型肝炎 治療 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 ほとんどの場合は無症状ですが、全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎は、肝硬変のほか、最終的には肝臓がんや肝不全に進行することがあります。... さらに読む 、 B型肝炎 B型肝炎(慢性) B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 ほとんどのB型慢性肝炎患者では症状がありませんが、全身のだるさを感じ、疲れを覚え、食欲を失う場合もあります。 B型慢性肝炎があると肝臓がんのリスクが増大します。 血液検査の結果に基づいてB型肝炎の診断が下され、ときとして肝傷害の程度を確認するために肝生検が... さらに読む 、 エボラ エボラウイルス感染症とマールブルグウイルス感染症 マールブルグウイルス感染症とエボラウイルス感染症は、出血と臓器不全を引き起こします。これらの感染症の患者は、多くの場合、死亡します。 マールブルグウイルス感染症とエボラウイルス感染症は、感染した動物またはその死骸を扱ったり、症状が出ている感染者またはその遺体の皮膚や体液に触れたりすることで広がります。... さらに読む の治療にも多数の新しい抗ウイルス薬があります。
抗ウイルス薬の多くは、ウイルスの複製を抑えることで作用します。HIV感染症の治療薬は、ほとんどがそのように作用します。ウイルスは非常に小さく、感染した細胞内でその細胞の代謝機能を利用して自らを複製するため、抗ウイルス薬では少数の代謝機能しか攻撃できません。一方、細菌は比較的大きな生物であり、一般に細胞の外で自ら増殖するため、抗菌薬(抗生物質)で多くの代謝機能を攻撃することができます。そのため、抗ウイルス薬の開発は、抗菌薬の開発よりはるかに困難です。さらに、抗菌薬は多種の細菌に対して効果的なことが多いですが、それとは異なり、ほとんどの抗ウイルス薬はそれぞれが1種類の(またはごく少数の)ウイルスにしか効きません。
抗ウイルス薬は人の細胞に対して毒性をもつことがあります。また、ウイルスが抗ウイルス薬に対し耐性をもつようになることもあります。
ほとんどの抗ウイルス薬は服用する(飲む)ことができます。また静脈内注射や筋肉内注射でも投与できるものがあります。軟膏剤、クリーム剤、点眼薬として投与するものや、粉末として吸入するものもあります。
抗菌薬はウイルス感染症には効きませんが、ウイルス感染症に加えて細菌感染症も発生している場合には、しばしば必要になります。
インターフェロンは、体内で自然に作られる、ウイルスの複製を遅らせたり止めたりする物質を模倣したものです。このような薬は以下のようなウイルス感染症の治療に用いられます。
インターフェロンには、発熱、悪寒、筋力低下、筋肉痛などの副作用が生じることがあります。副作用は通常、最初の注射後7~12時間で発現し、最長で12時間持続します。