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獲得免疫

執筆者:

Peter J. Delves

, PhD, University College London, London, UK

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識したときに始まります。そして、獲得免疫を構成する要素が、それぞれの抗原について最良の攻撃方法を学習し、抗原を記憶していきます。獲得免疫が特異免疫とも呼ばれているのは、過去に遭遇した抗原に対し、それぞれに応じた(特異的な)攻撃をするからです。その優れたところは、学習し、適応し、記憶する能力にあります。(免疫系の概要も参照のこと。)

体が新しい抗原に最初にさらされてから、獲得免疫ができるまでには時間がかかります。しかし最初の曝露の後、抗原が記憶され、その抗原に対する次回の反応は最初に抗原にさらされたときより速く、効果的なものになります。

獲得免疫には、以下の種類の白血球が関与しています。

  • リンパ球(T細胞とB細胞)

通常の獲得免疫反応は、B細胞(Bリンパ球)によってつくられた抗体が抗原に遭遇することで始まります。

そのほかに以下のものが獲得免疫に関与します。

リンパ球

リンパ球の働きによって体は抗原を記憶し、自己と有害な異物(ウイルスや細菌)を区別できます。リンパ球は血流、リンパ系を循環しており、必要に応じて各種組織に入ります。

免疫系は過去に遭遇したあらゆる抗原を記憶できます。これは抗原と接触した後にメモリー細胞となるリンパ球があるからです。このような細胞はその後何年も、場合によっては何十年も生きつづけます。メモリー細胞が過去に遭遇した抗原に再び遭遇すると、その抗原を直ちに認識し、素早く、活発に、また特異的に反応します。この特異免疫反応があるために水痘(水ぼうそう)やはしか麻疹(はしか)は、一度かかると二度とかかりません。また病気によっては予防接種で発病を予防できます。

こういったリンパ球にはT細胞、B細胞が含まれます。T細胞とB細胞が協力して働き、異物を破壊します。

T細胞

T細胞は骨髄中の幹細胞からつくられ、胸部にある胸腺と呼ばれる器官に移動します。T細胞はそこで、体の組織を攻撃しないように自己と非自己を区別する方法を獲得します。通常は、自身の抗原(自己抗原)を無視できるT細胞だけが成熟して、胸腺を離れることが許されます。

T細胞は、ほぼ無限の種類の抗原を認識できます。

成熟T細胞は、リンパ節、脾臓(ひぞう)、扁桃、虫垂、小腸内のパイエル板などの二次リンパ器官に保存され、血流やリンパ系を循環しています。そして感染した細胞や異常細胞に初めて遭遇すると活性化されて、同じような細胞がほかにないかを探し始めます。

通常、T細胞が活性化するには、他の免疫細胞の助けを必要とします。他の免疫細胞が抗原を断片に分解し(抗原プロセシングと呼ばれる)、感染または異常細胞からの抗原をT細胞に提示します。その後、T細胞は増殖し、様々な種類のT細胞へと特殊化していきます。T細胞の種類には以下のものがあります。

  • キラー(細胞傷害性)T細胞は、感染した細胞や異常細胞(がん細胞など)の抗原と結合します。次に、こういった細胞の細胞膜に穴を開けて内部に酵素を注入して殺傷します。

  • ヘルパーT細胞は、他の免疫細胞を助けます。例えばヘルパーT細胞の中には、B細胞の異物の抗原に対する抗体の産生を助けるものがあります。また、キラーT細胞を活性化させて感染した細胞や異常細胞を殺傷するのを助けたり、マクロファージを活性化させて感染した細胞や異常細胞をより効率よく捕食するのを助けるものもあります。

  • サプレッサー(制御性)T細胞は、免疫反応の終結を助ける物質をつくり出したり、ときには体に有害な反応が起こるのを防いだりします。

T細胞が最初に抗原に遭遇すると、ほとんどが本来の機能を果たしますが、一部はメモリー細胞となって、抗原を記憶しておき、再び遭遇したときにより活発に反応します。

理由は完全には分かっていませんが、T細胞が、自己と非自己を区別しなくなることがあります。この機能不全により自己免疫疾患となることがあり、体が自分自身の組織を攻撃してしまいます。

B細胞

B細胞は骨髄で形成されます。B細胞は表面に、抗原と結合する部分である受容体と呼ばれる特別な部位をもっています。B細胞は学習により、ほぼ無限の種類の抗原を認識できるようになります。

B細胞の主な目的は抗体をつくることです。抗体は抗原にくっつくことで、抗原を攻撃するか直接無力化します。B細胞はまた、T細胞に抗原を提示します。提示を受けたT細胞は活性化します。

B細胞の抗原への反応には次の2段階があります。

  • 一次免疫反応:B細胞が初めて抗原と遭遇すると、抗原が受容体と結合してB細胞が刺激されます。その後メモリー細胞となってそれぞれの抗原を記憶するものと、形質細胞となるB細胞があります。このプロセスではヘルパーT細胞がB細胞を助けます。形質細胞は抗原に刺激されると、それぞれの抗原に特異的な抗体を産生します。最初に抗原と遭遇してから、それぞれの抗原に特異的な抗体が十分つくられるまでには数日かかります。このように、一次免疫反応はゆっくりと起こります。

  • 二次免疫反応:しかしそれ以後は、B細胞がいつ同じ抗原に遭遇しても、メモリーB細胞が非常に素早く抗原を認識し、増殖して形質細胞に変化し、抗体をつくります。この反応は迅速で、非常に効率的なものです。

樹状細胞

樹状細胞は、皮膚やリンパ節、体中の組織に存在しています。樹状細胞のほとんどは抗原提示細胞です。抗原を取り込んで分解して提示することで、ヘルパーT細胞が抗原を認識できるようにします。樹状細胞は、リンパ節においてT細胞に抗原断片を提示します。

樹状細胞には、濾胞樹状細胞と呼ばれる別のタイプの細胞もあり、抗体と結合した抗原(抗原抗体複合体)をそのまま処理することなくB細胞に提示します。濾胞樹状細胞はB細胞が抗原に反応するのを助けます。

T細胞とB細胞は、抗原を提示されると活性化します。

抗体

B細胞が抗原に遭遇すると刺激を受けて成熟し、形質細胞あるいはメモリーB細胞になります。そして形質細胞は抗体を放出します(抗体は、免疫グロブリンあるいはIgとも呼ばれる)。

抗体は以下の方法で体を守ります。

  • 細胞が抗原を取り込むのを助ける(抗原を取り込む細胞は食細胞と呼ばれます)

  • 細菌によってつくられた有害物質を不活性化する

  • 細菌やウイルスを直接攻撃する

  • 細菌やウイルスが細胞に付着し侵入するのを防ぐ

  • 多くの免疫機能をもっている補体系を活性化させる

  • ナチュラルキラー細胞などの特定の細胞が、感染した細胞やがん細胞を殺傷するのを助けます。

ある種の細菌感染、真菌感染では、抗体はその撃退に不可欠な役割を担います。また、ウイルスの撃退にも役立ちます。

抗体は、その抗体が認識できる抗原と結合して免疫複合体(抗原抗体複合体)を形成します。この抗体と抗原は、ジグソーパズルのピースのようにしっかりと結合しています。その抗体が本来認識して結合すべき抗原と非常に似ている抗原に遭遇した場合、ときにその抗原に結合する可能性もあります。

抗体の構造

抗体分子はY字形の構造をしており、2つの部分から成り立っています。

  • 可変領域:その抗体が標的とする抗原によって、抗体毎に異なっている部分です。抗原はこの可変領域に結合します。

  • 定常領域:この部分は、IgM、IgG、IgA、IgE、IgDの5種類の構造体のいずれかで、これにより抗体の型が決まります。この部分は、抗体の型が同じであればみな同じです。

抗体の構造

抗体分子にはそれぞれ以下の2つの部分があります。

  • 可変領域:この部分は抗体毎に異なっており、それぞれ特定の抗原にだけ結合します。

  • 定常領域:この部分は、IgM、IgG、IgA、IgE、IgDの5種類の構造体のいずれかで、これにより抗体の型が決まります。この部分は、抗体の型が同じであればみな同じで、抗体の機能を決定する部分です。

抗体は定常領域を切り替えて異なる型に変化することができますが、可変領域は変化しません。そのため、つくられた抗体が結合すべき特定の抗原を常に認識できます。

IgM

この型の抗体は、特定の抗原(感染性微生物の抗原など)に初めて遭遇したときにつくられます。抗原との最初の出会いで起こる反応は一次免疫反応と呼ばれます。IgMが抗原に結合すると、補体系が活性化され、それによって微生物が捕食されやすくなります。

通常、IgMは組織中ではなく血流中に存在します。

IgG

IgGは最も多い型の抗体で、過去に出会った抗原に再び遭遇したときにつくられます。この反応は二次免疫反応と呼ばれ、一次免疫反応時に比べ、多くの抗体がつくられます。またこの反応は一次免疫反応より速く、より効果のある抗体(主にIgG)がつくられます。

IgGは、細菌、ウイルス、真菌、有毒な物質から体を守ります。

IgGは組織中および血流中に存在します。IgGは母体から胎盤を通じて胎児に移行する唯一の抗体です。新生児の免疫系が自分で抗体をつくり出す時期まで、母体のIgGが胎児や新生児を保護します。

またIgGは、病気の治療で最も使われることの多い抗体です。例えば、免疫グロブリン(免疫系が正常な人の血液から採取した抗体)は主にIgGで構成されます。免疫グロブリンは免疫不全疾患自己免疫疾患の治療に用いられます。

IgA

この抗体は、鼻、眼、肺、消化管などの粘膜で覆われた体表面から微生物が侵入するのを防ぐ働きをします。

IgAは以下の中に存在します。

  • 血流

  • 粘膜からの分泌物(涙や唾液など)

  • 初乳(出産後、母乳がつくられるまでの数日間に分泌される)

IgE

IgE抗体は、即時のアレルギー反応の引き金となります。IgEは、血流中にある白血球の一種である好塩基球や組織の肥満細胞と結合します。IgEと結合した好塩基球や肥満細胞がアレルギー反応を引き起こす抗原(アレルゲン)に出会うと、ヒスタミンなどの物質を放出し、それにより炎症が引き起こされたり周辺組織が損傷したりします。このようにIgEだけは、しばしば体に良い作用というよりは悪い作用をもたらす抗体のように思われることがあります。しかし、IgEは発展途上国でよくみられる寄生虫感染症から体を守るのに役立ちます。

少量のIgE抗体が血流中、消化器系の粘液中に存在しますが、その量は、喘息、花粉症、その他のアレルギー疾患、または寄生虫感染症の患者で多くなります。

IgD

IgDは主に未成熟のB細胞の表面に存在し、B細胞の成熟を助けています。

また血流中にも少量存在しています。血流中でのその機能は、あるとしてもよく分かっていません。

撃退の戦略

侵入してくる微生物によって、それを攻撃し破壊する方法は異なります。

微生物によっては、好中球やマクロファージといった異物を捕食する細胞(食細胞)に直接認識、捕食、破壊されるものもあります。

しかし、食細胞は、特殊な外膜に包まれている特定の細菌を直接認識することができません。このような場合に食細胞が細菌を認識するには、B細胞の助けを必要とします。B細胞は、細菌の外膜に含まれる抗原に対する抗体をつくります。この抗体が細菌の外膜に結合すると、食細胞が細菌を認識できるようになります。

なかには完全には排除できない微生物もあります。こうした微生物に対する防御策として、免疫系はその微生物の周りに壁を構築します。この壁は、食細胞、特にマクロファージが互いにくっつき合って形成されます。このように微生物を囲む壁は肉芽腫と呼ばれます。ある種の細菌はこうして閉じこめられた形で体内に長期間生存します。そして免疫機能が低下していると(50~60年も後になることもあります)、肉芽腫の壁が崩れて細菌が増殖を始め、症状が現れてくることがあります。

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