(免疫不全疾患の概要も参照のこと。)
X連鎖リンパ増殖性症候群は原発性免疫不全症の一種です。X連鎖劣性遺伝疾患として遺伝します。X連鎖とは、この病気がX(性)染色体上にある1つ以上の遺伝子の突然変異に起因することを意味します。X連鎖劣性遺伝疾患は男児にのみ発生します。
2つの病型があり、それぞれ異なる遺伝子変異によって生じますが、類似の症状を引き起こします。
1つ目の病型では、エプスタイン-バー(EB)ウイルスの感染に反応して白血球(体が感染に抵抗するのを助ける)が過剰に産生されます。EBウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。また、ナチュラルキラー細胞が機能しません。ナチュラルキラー細胞は白血球の一種で、異常な細胞(ある種の感染した細胞やがん細胞など)を認識して殺傷します。
2つ目の病型は、まれではあるものの重篤な病気である血球貪食性リンパ組織球症を引き起こす可能性があり、それによって乳児や幼児に免疫不全が生じます。血球貪食性リンパ組織球症では、免疫系で過剰な数の血球が活性化します。その結果として広範囲の炎症が起こります。ときとして、この過剰な活性がEBウイルスなどの感染性微生物によって誘発されます。
症状
診断
若年の男児に重度のEBウイルス感染症や他の特徴的な問題があるか、その家族に類似の症状がみられる場合、X連鎖リンパ増殖性症候群が疑われます。
診断は遺伝子検査によって確定されます。しかし、遺伝子検査が完了するには何週間もかかることがあるため、フローサイトメトリー(白血球の表面にあるタンパクの分析)などの特殊な血液検査を行って免疫細胞の異常がないか調べることがあります。ときとして、骨髄生検を行います。
リンパ腫と貧血の有無を調べるため、臨床検査と画像検査を年1回行います。
家族には遺伝子検査が推奨されます。
家族にX連鎖リンパ増殖性症候群を引き起こす遺伝子変異があると特定されている場合、出生前の遺伝子スクリーニングが推奨されます。
治療
幹細胞移植を受けた人の約80%が生存します。EBウイルス感染症や他の病気が非常に重症になる前に移植を行えば、X連鎖リンパ増殖性症候群が治癒する可能性があります。
リツキシマブ(免疫系の活動を調節する薬)は、移植が行われる前の重度のEBウイルス感染症を予防するのに役立ちます。