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重症複合免疫不全症(SCID)

執筆者:

James Fernandez

, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2018年 6月
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重症複合免疫不全症は、原発性免疫不全症の一種で、抗体(免疫グロブリン)の量が少なくなり、T細胞(Tリンパ球)が少なくなったり完全になくなったりします。

  • この病気にかかった乳児のほとんどは、通常生後6カ月までに肺炎、持続性ウイルス感染症、鵞口瘡(がこうそう)、下痢を発症します。

  • 血液中のB細胞T細胞の数、ならびに免疫グロブリンの量を測定し、B細胞とT細胞がどの程度機能しているか調べる検査を行うことで、診断を下します。

  • この病気の患者は感染を起こす可能性のあるものから体を守るために、ずっと保護された環境で過ごします。

  • 治療では、感染症を予防するための抗菌薬と免疫グロブリン製剤を用います。効果的な治療法は幹細胞移植だけですが、遺伝子治療にもその可能性があります。

免疫不全疾患の概要も参照のこと。)

この病気は重篤で、死に至る可能性がある免疫不全疾患です。出生時から存在し、多くの種類の遺伝子における突然変異に起因している可能性があります。すべての病型は遺伝性です。

最も一般的な病型は、X(性)染色体上にある遺伝子の突然変異に起因しており(X連鎖疾患)、ほぼ例外なく男児に発生します。別の病型では通常、性別に関係する伴性遺伝ではなく、常染色体劣性遺伝疾患として遺伝します。すなわち、両親から遺伝子を1つずつ受け継いで2つそろうと発症します。

アデノシンデアミナーゼという酵素の欠損が原因で起こることもあります。この酵素は白血球中の有害物質を分解するため、十分な アデノシンデアミナーゼがないと、有害物質が蓄積して白血球が死んでしまいます。そのため、感染を防御する白血球が少なくなってきます。

T細胞がまったく存在せず、B細胞はT細胞の助けがなければ抗体(免疫グロブリン)を産生できないため、免疫グロブリンの量が少なくなります。

さらに、ナチュラルキラー細胞が正常に機能しません。ナチュラルキラー細胞は白血球の一種で、異常な細胞(ある種の感染した細胞やがん細胞など)を認識して殺傷します。

重症複合免疫不全症の患者では、細菌、ウイルス、真菌に対する免疫系による防御が実質的にはまったくありません。結果として感染症が繰り返したり長引いたりします。

症状

重症複合免疫不全症にかかった乳児のほとんどは、通常生後6カ月までに肺炎、持続性ウイルス感染症、鵞口瘡(がこうそう)、下痢を発症します。また、ニューモシスチス(Pneumocystis jirovecii肺炎などの、より重篤な感染症も起こります。結果として、乳児は正常に成長、発達することができません(発育不良と呼ばれます)。皮がむけるような発疹ができることもあります。

この病気にかかった乳児では、必ず重度の胸腺発育不全がみられます。

治療しなければ、通常1歳までに死亡します。

診断

  • 血液検査

  • 場合により新生児のスクリーニング検査

この病気は症状から示唆されます。B細胞とT細胞の数、ならびに免疫グロブリンの量を測定するとともに、B細胞とT細胞がどの程度機能しているか調べるために血液検査を行います。

一部の専門家は、すべての新生児を対象にT細胞に異常がないかどうかや、数が少なすぎないかどうかを調べる、T細胞受容体切除サークル(TREC)と呼ばれる血液検査による重症複合免疫不全症のスクリーニングを推奨しています。米国の多くの州で、すべての新生児を対象としたTREC検査が義務化されています。この病気の乳児を早期に発見することで、若い年齢での死亡を防ぐのに役立ちます。

遺伝子検査を行ってこの疾患を引き起こしている具体的な突然変異を特定し、重症度や予後(経過の見通し)の判断に役立てることもあります。

治療

  • 逆隔離

  • 感染症を予防するための抗菌薬、抗真菌薬、免疫グロブリン製剤

  • 幹細胞移植

  • 場合により アデノシンデアミナーゼの補充または遺伝子治療

この病気の患者は感染を起こす可能性のあるものから体を守るために、ずっと保護された環境で過ごします(逆隔離と呼ばれます)。かつてこの病気をもつ小児は厳重に隔離され、ときとしてずっとビニールテントの中に入れられていたため、「バブルボーイ症候群」と呼ばれていました。

抗菌薬と免疫グロブリン(免疫系が正常な人の血液から採取した抗体)による治療が感染予防に役立ちますが、この病気が治癒するわけではありません。

唯一の効果的な治療法は、この病気になっていない組織型が同じ兄弟姉妹などからの幹細胞移植です。生後3カ月までに移植できれば、96%の乳児が生存します。

移植を受けられない場合でも、病気の原因が アデノシンデアミナーゼの欠損であれば、注射によるこの酵素の補充療法が一部有効です。

重症複合免疫不全症の病型によっては、遺伝子治療が効果的な場合があります。遺伝子治療では、乳児の骨髄から白血球を少し取り出して、この中に正常な遺伝子を入れ、乳児の体に戻します。しかし、X連鎖型の重症複合免疫不全症では、このような治療の後で白血病を発症するリスクがあるため、この治療法は用いることができません。

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