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免疫不全疾患の概要

執筆者: James Fernandez, MD, PhD, Clinical Assistant Professor of Medicine, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University; Director, Allergy and Clinical Immunology, Louis Stokes VA Medical Center, Wade Park; Cleveland Clinic, Staff, Department of Allergy and Clinical Immunology,

免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。

  • 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。

  • この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起きたり、普通では考えられないほど症状が重くなったり、回復までの期間が長引いたりします。

  • 医師は症状から免疫不全疾患を疑い、血液検査により具体的な病気を特定します。

  • 感染症を予防し、治療するために抗菌薬(抗生物質)を使用します。

  • 抗体(免疫グロブリン)が不足している場合、または正常に機能していない場合は免疫グロブリンを補います。

  • 症状が重い患者には、ときに幹細胞移植を実施することもあります。

免疫系は細菌、ウイルス、真菌などの外敵の侵入や、がん細胞などの異常細胞による攻撃から体を守っていますが、免疫不全疾患では、この免疫系の防御能力が損なわれます。その結果、免疫機能が正常であればかからないような細菌、ウイルス、真菌による感染症や、リンパ腫などのがんを発症します。その他の問題として、免疫不全疾患の患者の最大25%には、免疫性血小板減少症などの自己免疫疾患もみられます。自己免疫疾患では、免疫系が自分の組織を攻撃してしまいます( 自己免疫疾患)。ときに、免疫不全による症状が現れる前に自己免疫疾患を発症します。

免疫不全疾患には以下の2種類があります。

  • 原発性:通常は出生時にすでにみられます。通常は遺伝性で、典型的には乳児期または小児期に明らかになります。原発性免疫不全症には100種類を超える病気がありますが、いずれも比較的まれです。

  • 続発性:一般に生まれた後に発症する免疫不全で、たいていは薬を使用したり、糖尿病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの病気にかかったりしたことが原因となります。原発性免疫不全症より多くみられます。

免疫不全疾患には寿命を短くするものもあれば、生涯続くものの寿命には影響しないものもあり、また少数ながら、治療によって治るものや、治療なしで自然に治るものあります。

原因

原発性免疫不全症

これらの疾患は遺伝子の突然変異が原因の可能性があり、ときに特定の遺伝子に異常がみられます。突然変異した遺伝子がX染色体(性染色体)上にある場合に生じる病気をX連鎖疾患( 遺伝形式 : X連鎖遺伝)といいます。X連鎖疾患は男児に多くみられます。原発性免疫不全症患者の約60%が男性です。

原発性免疫不全症は、免疫系( 免疫系の概要)のどの部分が損なわれるかによって分類されます。

  • 液性免疫(抗体[免疫グロブリン]を産生する白血球の一種であるB細胞[Bリンパ球]が関与する)

  • 細胞性免疫(外来細胞や異常な細胞を識別し、破壊するのを助ける白血球の一種であるT細胞[Tリンパ球]が関与する)

  • 液性免疫と細胞性免疫の両方

  • 食細胞(微生物を取り込んで殺す細胞)

  • 補体タンパク(細菌や外来細胞を殺したり、他の免疫細胞が外来細胞を特定したり取り込んだりしやすくするなど、様々な免疫機能をもつタンパク質— 自然免疫 : 補体系

免疫不全疾患では、影響を受けた免疫系の構成要素が欠落したり、数が減ったり、異常になったり、機能しなくなったりします。原発性免疫不全症の中で一番多いのはB細胞に問題が起きるもので、全体の半数がこのタイプです。

主な原発性免疫不全症

免疫系のうち損なわれている部分

疾患名

液性免疫:B細胞(Bリンパ球)と、それによる抗体産生の問題

分類不能型免疫不全症

IgA欠損症など特定の抗体(免疫グロブリン)の欠損

乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症

X連鎖無ガンマグロブリン血症

細胞性免疫:T細胞(Tリンパ球)の問題

慢性皮膚粘膜カンジダ症

ディ・ジョージ症候群

X連鎖リンパ増殖性症候群

液性免疫と細胞性免疫の複合:B細胞とT細胞の問題

毛細血管拡張性運動失調症

高IgE症候群

重症複合免疫不全症

ヴィスコット‐オールドリッチ症候群

食細胞:これらの細胞の移動や殺傷能力の問題

慢性肉芽腫性疾患

チェディアック・東症候群(まれ)

周期性好中球減少症

白血球接着不全症

補体タンパク:補体タンパクの欠損

補体第1成分(C1)インヒビター欠損症(遺伝性血管性浮腫)

C3欠損症

C5、C6、C7、C8、C9欠損症またはその複合

続発性免疫不全症

これら免疫不全疾患の原因として一番多いのは、主に免疫抑制薬などの薬です。免疫抑制薬は、移植した臓器や組織に対する拒絶反応を抑えるなど、免疫系の働きを意図的に抑えるために使います( 移植による拒絶反応の予防に用いる薬剤)。自己免疫疾患の患者で、自身の組織への攻撃を抑制するために使用されることもあります。免疫抑制薬の一種であるコルチコステロイドは、関節リウマチなどの様々な病気による炎症を鎮めるために使います。しかし、免疫抑制薬は、体が感染に抵抗する力や、おそらくはがん細胞を破壊する力も抑制してしまいます。

このほかに、化学療法や放射線療法も免疫系を抑制し、免疫不全疾患を引き起こすことがあります。

免疫不全を引き起こす可能性がある主な薬剤

種類

抗けいれん薬(けいれんの治療に用いられる)

カルバマゼピン

フェニトイン

バルプロ酸

免疫抑制薬(免疫系を抑制する薬)

アザチオプリン

シクロスポリン

ミコフェノール酸モフェチル

シロリムス

タクロリムス

コルチコステロイド

メチルプレドニゾロン

プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)

化学療法薬

アレムツズマブ

ブスルファン

シクロホスファミド

メルファラン

生物製剤に分類される免疫抑制薬(免疫系の特定の部分を標的にして抑制する抗体のような物質)

アダリムマブ

エタネルセプト

インフリキシマブ

ムロモナブ(muromonab、OKT3)

リツキシマブ

トシリズマブ

免疫不全を起こす可能性のある病気

種類

血液疾患

再生不良性貧血

白血病

多発性骨髄腫(がんの一種)

鎌状赤血球症

がん

脳腫瘍

他の多くの種類のがん

染色体異常

ダウン症候群

感染症

サイトメガロウイルス感染症

エプスタイン-バーウイルス感染症

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症

麻疹(はしか)

水痘(水ぼうそう)

一部の細菌感染症

内分泌疾患

糖尿病

腎疾患

血液中に有害物質が蓄積(尿毒症)

慢性腎臓病

ネフローゼ症候群

肝疾患

肝炎

肝不全

筋骨格系の病気

関節リウマチ

全身性エリテマトーデス

脾臓の問題

脾臓摘出

その他

アルコール依存症

熱傷

低栄養

長期間にわたる重篤な病気は、ほとんどのものが免疫不全疾患の原因になります。例えば糖尿病で血糖値が高くなると、白血球がうまく機能しないため免疫不全疾患が起こります。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって起こる後天性免疫不全症候群(エイズ)は、最も一般的な重度の後天性免疫不全疾患です。

免疫系は、栄養素がどれか1つでも不足すると十分に機能しなくなります。また、低栄養により体重が推奨体重の80%を下回ると、通常、免疫系が正常に働かなくなり、70%未満になると重度の機能不全が起こります。

症状

免疫不全疾患の患者は、次々と感染症にかかる傾向があります。通常は、まず呼吸器系の感染症(副鼻腔や肺などの感染症)が起こり、何度も再発します。ほとんどの患者はやがて、治りにくく、再発を繰り返す、あるいは合併症を伴うような重い細菌感染症にかかります。例えば、のどの痛みや鼻かぜが進行して肺炎が起きることがあります。しかし逆に、かぜをひきやすいからといって必ずしも免疫不全疾患の疑いがあるというわけではありません。

口、眼、消化管の感染症がよく起こります。このうち、口の真菌感染症である鵞口瘡(がこうそう)が、免疫不全疾患の最初の徴候である場合があります。口の中には口内炎ができます。慢性の歯肉の病気(歯肉炎)や耳や皮膚の感染症が頻繁に起こることがあります。ブドウ球菌などの細菌感染により、皮膚表面が膿んでただれる膿皮(のうひ)症が起きることもあります。特定の免疫不全疾患の患者では、多くの大きな目立ついぼ(ウイルスによる)がみられることがあります。

発熱、悪寒、食欲不振、体重減少などが多くの患者にみられます。

腹痛が生じることがありますが、これは肝臓や脾臓が腫れるためと考えられます。

乳幼児では慢性の下痢が起き、健康な小児と比べて成長と発達が不十分なことがあります(発育不良と呼ばれる)。症状が小児期の初期に発生した場合、後期に発生するよりも免疫不全がより重度になることがあります。

その他の症状は、感染症の程度と感染期間の長さにより異なります。

原発性免疫不全症は、他の症状を伴う症候群の一部として発生することがあります。このような他の症状はしばしば、免疫不全の症状よりも容易に認識されます。例えば、乳児において耳が低い位置にあり、あごの骨が小さく引っ込んでおり、目と目の間があいていると、ディ・ジョージ症候群と認識できる場合があります。

診断

まず免疫不全があることを疑い、次いで実際に検査を行って、免疫系のどこに異常があるのかを特定します。

反復性の感染症(典型的には副鼻腔炎、気管支炎、中耳の感染症、肺炎)がみられる場合に免疫不全疾患が疑われます。重症の感染症や、通常は起きないような感染症がたびたび発症する場合や、本来なら重い感染症を起こさないような微生物(ニューモシスチス真菌やサイトメガロウイルスなど)が重い感染症を引き起こしている場合にも、免疫不全が疑われます。

身体診察の結果、免疫不全が疑われ、ときには免疫不全疾患の種類が示唆されることがあります。例えば、リンパ節と扁桃が極端に小さい場合にある種の免疫不全疾患が疑われ、リンパ節と扁桃が腫れて圧痛がある場合には別の免疫不全疾患が疑われます。

医師は、免疫不全疾患の種類を特定するために、何歳頃から感染症を繰り返すようになったか、あるいは、普段かからないような感染症にかかるようになったか、あるいはその他の特徴的な症状がないかを尋ねます。様々な免疫不全疾患の種類は、以下のように感染症が最初にみられた年齢に依存する可能性が高くなります。

  • 生後6カ月未満:通常はT細胞の異常

  • 生後6~12カ月:B細胞とT細胞の問題である可能性

  • 生後12カ月より後:通常はB細胞と抗体産生の異常

感染症の種類が分かれば、かかっている免疫不全疾患の種類を特定する手がかりになることがあります。例えば、どの器官(耳、肺、脳、膀胱)が侵されているか、感染微生物(細菌、真菌、ウイルス)は何か、その微生物の種は何かを知ることが役立つ可能性があります。

医師は糖尿病、特定の薬の使用、有害物質との接触の有無などの危険因子の有無、また近親者に免疫不全疾患にかかっている人がいないかなどの家族歴を尋ねます。また、HIV感染症が原因になっている可能性がないかどうか判断するため、現在および過去の性行為や静注薬物の使用についてや、過去の輸血歴について尋ねることもあります( ヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染症)。

検査

免疫不全疾患の診断を確定し、その種類を特定するには、臨床検査が必要です。採血を行い白血球の総数と各タイプの白血球の比率を測定するとともに、白血球の異常の有無を顕微鏡で調べます。免疫グロブリンの量、赤血球と血小板の数、そしてワクチン接種後に産生された特定の特異抗体の量も測定します。もしいずれかの結果に異常がみられれば、通常はさらに検査を行います。

T細胞に異常があるために免疫不全になっていると考えられる場合は、皮膚テストを行うことがあります。このテストは結核を診断するためのツベルクリン検査に似ており、真菌などの一般的な感染性微生物に含まれるタンパク質を少量、皮膚の下に注射します。もし赤くなり、暖かくなって、腫れるという反応が48時間以内に起きれば、T細胞は正常に機能しています。まったく反応がない場合は、T細胞の異常が示唆されます。あるいは、血液検査を行いT細胞の量を測定し、T細胞の機能を評価することで、T細胞の異常を調べることができます。

家族に遺伝性免疫不全疾患の遺伝子異常があることが分かっている場合は、自分にもその遺伝子異常があるか、また子どもに影響が及ぶ確率はどれくらいかを知るために、遺伝子検査を希望してもよいでしょう。遺伝子検査の前に遺伝カウンセリングを受けると参考になります。X連鎖無ガンマグロブリン血症、ヴィスコット‐オールドリッチ症候群、重症複合免疫不全症、慢性肉芽腫性疾患など、いくつかの免疫不全疾患については、胎児の周囲を満たしている液体(羊水)や胎児の血液を採取して調べることで発見できます(出生前検査— 検査方法)。免疫不全疾患の家族歴があり、家族に遺伝子変異が特定されている場合は、このような検査が推奨されることがあります。一部の専門家は、すべての新生児を対象にT細胞に異常がないかどうかや、数が少なすぎないかどうかを調べる、T細胞受容体切除サークル(TREC)と呼ばれる血液検査によるスクリーニングを推奨しています。この検査により、重症複合免疫不全症などの細胞性免疫不全症を特定できます。重症複合免疫不全症の乳児を早期に発見することは、若い年齢での死亡を予防するのに役立ちます。現在、米国の多くの州で、すべての新生児を対象としたTREC検査が義務づけられています。

予防と治療

免疫不全を引き起こす病気の中には予防や治療が可能なものがあり、それが免疫不全の発症予防に役立ちます。以下にいくつか例を挙げます。

  • HIV感染症:安全な性行為のための指針に従うこと、および薬物を注射する際に針の共用をしないことで、HIV感染症の拡大を抑えられる。また、抗レトロウイルス薬によって通常はHIV感染が効果的に治療できる( ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 治療)。

  • がん:治療が成功すれば、免疫抑制薬を継続的に使わなければならない場合を除き、通常は免疫系の機能が回復する。

  • 糖尿病:血糖値をうまくコントロールできれば白血球の働きがよくなり、感染症を予防できる。

感染症を予防し、治療するための戦略は、免疫不全疾患の種類により異なります。例えば、抗体の欠乏によって免疫不全疾患を発症している人は細菌感染症のリスクが高く、以下の方法がリスク低下に役立ちます。

  • 定期的に免疫グロブリン(免疫系が正常な人の血液から採取した抗体)の静脈内投与または皮下投与を受ける

  • 患者本人が衛生管理を十分に行う(口腔ケアにも注意を払う)

  • 十分に加熱したものだけを食べる

  • 汚染の可能性のある水を飲まない

  • 感染症のある人との接触を避ける

発熱などの感染症を疑わせる徴候が出たら、できるだけ早く抗菌薬を使用します。手術や歯の治療により細菌が血液中に入りやすいため、この場合も事前に抗菌薬を使います。重症複合免疫不全症など、重篤な感染症や特定の感染症の発生リスクが高い病気にかかっている場合は、感染を予防する目的で抗菌薬が投与される場合があります。

ウイルス感染のリスクを高める免疫不全疾患(T細胞異常による免疫不全など)がある場合は、感染の徴候が最初に認められた時点で、抗ウイルス薬が投与されます。このような薬には、インフルエンザに対するアマンタジン、帯状疱疹や水痘に対するアシクロビルなどがあります。

ワクチンは、かかっている免疫不全疾患において抗体産生に影響がない場合は接種されます。ワクチンは、特定の細菌やウイルスを識別して攻撃する抗体の産生を促すために接種されます。免疫系が抗体をつくれない場合は、ワクチンを接種しても抗体が産生されず、病気になることさえあります。例えば、患者の病気が抗体産生に影響がないものであれば、インフルエンザワクチンを年に1回接種します。その患者の近親者や患者と濃厚な接触がある人にもインフルエンザワクチンを接種することがあります。一般にB細胞やT細胞異常の患者では、生ウイルスワクチンはこれによって感染を起こすことがあるため、接種されません。生ウイルスワクチンには、ロタウイルスワクチン、麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン、水痘ワクチン、水痘帯状疱疹ワクチン、BCG(カルメット-ゲラン桿菌)ワクチン、および鼻腔スプレーで投与するインフルエンザワクチンなどがあります。米国では、生ウイルス経口ポリオワクチンは現在では使用されていませんが、世界の他の地域では使われています。

一部の免疫不全疾患、特に重症複合免疫不全症は、幹細胞移植幹細胞移植)により治すことができます。幹細胞は通常、骨髄から採取しますが、へその緒の血液(臍帯[さいたい]血)など、血液から採取することもあります。幹細胞移植は大病院で受けることができますが、通常は重度の疾患に対してのみ行われます。

胸腺組織の移植が有効な場合もあります。免疫不全を起こす先天性の病気のいくつかに対して、遺伝子治療が成功しています。

適切な治療を行うことで、免疫不全疾患の多くの患者が正常な寿命を全うしています。しかし、生涯にわたって集中的な頻回の治療が必要になる場合もあります。一方で、重症複合免疫不全症の患者のように、骨髄移植または幹細胞移植を受けない限り、乳児期に死亡する場合もあります。

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