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遺伝性および後天性の血管性浮腫

執筆者:

James Fernandez

, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

レビュー/改訂 2022年 10月
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やさしくわかる病気事典
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遺伝性血管性浮腫(遺伝性の病気)と後天性血管性浮腫(後天性C1インヒビター欠損症)は、免疫系の一部であるC1インヒビターの欠損または機能不全により発生します。どちらの病気でも、皮下の腫れが繰り返し発生します。

後天性血管性浮腫はまれな疾患で、遺伝性血管性浮腫とは異なります。 リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む リンパ腫の概要 などの特定のがんまたは 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) などの自己免疫疾患や 皮膚筋炎 自己免疫性筋炎 自己免疫性筋炎は、筋肉の炎症と筋力低下(多発性筋炎)または皮膚と筋肉の炎症(皮膚筋炎)を引き起こします。 筋肉が損傷すると筋肉痛が発生し、筋力低下によって、肩より上に腕を上げること、階段を昇ること、または座った姿勢から立ち上がることが困難になることがあります。 医師は、筋肉の酵素(筋酵素)の血中濃度を調べ、場合によっては筋肉の電気的活動性を検査し、筋肉のMRI検査、筋肉組織の一部を採取して調べる検査を行います。... さらに読む 自己免疫性筋炎 によりC1インヒビターが欠損した場合に発生します。症状は、この欠損を引き起こす病気にかかった後、通常は高齢になってから現れます。

遺伝性と後天性のいずれの血管性浮腫も、以下によって腫れ(血管性浮腫)が誘発されます。

  • 歯科処置で発生することがあるような軽い傷

  • ウイルス感染

  • 特定の食品

  • 妊娠

  • エストロゲンを含むかそれに関連する薬(タモキシフェンなど)

  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)など、高血圧に使われる一部の薬

  • 寒冷な環境にさらされる

特定の食品や薬によって血管性浮腫が誘発されることがありますが、それらの物質に対するアレルギー反応ではありません。

歯科処置や外科処置を受ける前に感じるストレスが、血管性浮腫を悪化させることがあります。

症状

顔、唇、舌、手や足の甲、性器や体の他の部位が腫れたりすることがあります。一般に、腫れた部位がわずかに痛みますが、かゆみはなく、じんま疹は現れません。腫れは通常1~3日で治ります。

口、のど、気道を覆っている粘膜も腫れることがあります。息を吸うときにあえぐような音がすることがあります。このような腫れは呼吸を妨げ、生命を脅かすことがあります。このような症状がみられる場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

消化管の内側を覆っている膜が腫れることもあります。よくみられる症状は吐き気、嘔吐、けいれん性の腹痛です。

血管性浮腫の画像

診断

  • 血液検査

以下のどちらもが認められる場合は、遺伝性または後天性血管性浮腫が疑われます。

  • 顔、唇、舌、手、足、性器などの部位に腫れがみられるが、じんま疹はみられない。

  • 腫れが再発し、原因が明らかではない。

血管性浮腫が軽い傷によって誘発された場合も、これらの病気の1つが疑われます。

これらの症状が家族にもみられる場合、遺伝性血管性浮腫が疑われます。

血液を採取して、C1インヒビターの量や活性を測定することで、遺伝性または後天性血管性浮腫と診断されます。

治療

  • エカランチド、イカチバントなどの薬またはC1インヒビター

  • 新鮮凍結血漿

  • 将来の発作を予防する薬

腫れを緩和できることのある薬として、エカランチド、イカチバント、精製C1インヒビター(ヒトの血液に由来)、遺伝子組換えC1インヒビター(遺伝子改変ウサギの乳から抽出)などがあります。C1インヒビターを投与することにより、C1インヒビターの欠損や機能不全を補います。これらの薬は静脈を介して投与するか、皮膚の下に注射して投与します。

遺伝性血管性浮腫はまれな病気であるため、医師は通常、地域の医療施設にこれらの必要な薬があるかどうかを確認します。重度の反応を経験したことがある場合は、医師はこれらの薬の1つを患者に自宅保管用として与え、発作が始まったときに使用するよう伝えることがあります。患者または家族には、自分で薬を注射する方法を指導します。治療の開始は早ければ早いほどよいです。

痛み止め、吐き気を抑える薬(制吐薬)、輸液などが症状緩和に役立つことがあります。

緊急の治療

気道が突然腫れて呼吸困難になった場合、医師は気道を確保しなければなりません。そのためには、アドレナリンを皮下または筋肉内に注射して、腫れを抑えます。しかし、アドレナリンでは、速やかに腫れを抑えたり、十分な期間にわたり腫れを抑えたりすることができないことがあります。その場合、口や鼻から呼吸用のチューブを気管まで挿入します(挿管)。

ときに、気管の上の皮膚を小さく切開して、呼吸用のチューブを挿入しなければならないことがあります。

血管性浮腫の発作を予防する薬

遺伝性血管性浮腫の患者では、血管性浮腫の発作の予防に役立てるためにいくつかの治療法が利用できます。具体的には以下のものがあります。

  • 人の血液からつくられるC1インヒビター

  • ラナデルマブ

  • ベロトラルスタット

  • 合成男性ホルモン

  • 抗線溶薬(例、トラネキサム酸)

発作の予防には、人の血液からつくられるC1インヒビターを使用することができます。しかし、遺伝子組換えC1インヒビターは使用できません。

ベロトラルスタットはラナデルマブと同じ物質を抑制するもので、1日3回内服します。

合成男性ホルモンであるスタノゾロールやダナゾールがその後の発作の予防に役立つことがあります。これらの薬は内服で使用され、C1インヒビターをより多く生産するように体を刺激しますが、後天性血管性浮腫に対する効果はあまり高くありません。ただし、これらの薬には男性化の副作用があるため、女性に長期にわたって投与する場合は、できるだけ早く投与量を減らし、またできるだけ少量の内服に留めます。

スタノゾロールやダナゾールは、歯科処置や外科処置の5日前から2日後まで投与されることがあります。あるいは、歯科処置や手術の1時間前にスタノゾロールやダナゾールの代わりに可能であればC1インヒビターを投与されることがあります。

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