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自己免疫疾患

執筆者:

Peter J. Delves

, PhD, University College London, London, UK

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。

  • 自己免疫疾患の原因は不明です。

  • 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。

  • 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。

  • 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。

免疫系は何らかの物質を異物または危険な物質であると認識すると、その物質から体を守ろうとします( 認識)。このような物質には、細菌、ウイルス、蠕虫などの寄生虫、特定のがん細胞がありますが、このほかに移植された臓器や組織を異物と認識してしまうこともあります。これらの物質には、免疫系が認識し、免疫系による反応を刺激する分子が含まれています。これらの分子を抗原と呼んでいます。抗原は細胞内にあったり、細胞(細菌やがん細胞など)の表面にあったり、ウイルスの一部であったりします。花粉や食物の分子などは、それ自体が抗原となります。

それぞれの人の組織内細胞にも抗原が含まれています。しかし、通常であれば免疫系は異物や危険な物質に対してだけ反応し、自己の組織の抗原には反応しません。ただし、ときに免疫系が正常に機能しなくなり、自己の組織を異物と認識して自己抗体と呼ばれる抗体や免疫細胞を産生し、これらが特定の細胞や組織を標的にして攻撃します。この反応を自己免疫反応と呼び、炎症と組織の損傷を引き起こします。こうした反応は自己免疫疾患の症状である場合がありますが、多くの人では作られる自己抗体の量がごく少量であるため、自己免疫疾患は起こりません。

自己免疫疾患には様々なものがあります。特に多くみられる自己免疫疾患には、バセドウ病関節リウマチ橋本甲状腺炎1型糖尿病全身性エリテマトーデス血管炎などがあります。自己免疫性と考えられているその他の疾患には、アジソン病多発性筋炎シェーグレン症候群、進行性の全身性強皮症、多くの糸球体腎炎(腎臓の炎症)、一部の不妊症などがあります。

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主な自己免疫疾患

疾患名

主に損傷を受ける組織

症状と経過

赤血球

赤血球が減少して貧血が起こり、疲労感、脱力感、ふらつきが現れる。

脾臓が腫れる場合がある。

貧血は重く、そのために死に至ることさえある。

皮膚

皮膚に大きな水疱ができ、水疱の周辺は赤くなって腫れる。たいていはかゆみを伴う。

この病気は主に高齢者にみられ、生命を脅かすことがある(特に他の病気がある高齢者の場合)。

肺および腎臓

息切れ、喀血(肺や気管支から出血して血を吐くこと)、疲労感、腫れなどの症状が現れる。

肺や腎臓が深刻な損傷を受ける前に治療を開始すれば予後は良好。

甲状腺

甲状腺が刺激に反応して大きくなり、その結果、甲状腺ホルモンが増加する(甲状腺機能亢進症)。

心拍数の上昇、暑さに耐えられない、振戦、体重減少、神経過敏などの症状が起こることがある。

治療すれば予後は良好。

甲状腺

甲状腺に起きた炎症と損傷の結果、甲状腺ホルモンが減少する(甲状腺機能低下症)。

体重増加、皮膚の荒れ、寒さに耐えられない、眠気などの症状が起こることがある。

生涯にわたって甲状腺ホルモンによる治療が必要になるが、治療により症状は通常、消失する。

脳および脊髄

侵された神経細胞を覆う膜が損傷し、神経細胞が神経信号を正常に伝達できなくなる。

脱力感、感覚異常、回転性めまい、視力障害、筋肉のけいれん、失禁などの症状が起こることがある。病気の経過とともに症状が現れたり消えたりすることがある。

予後は患者により異なる。

神経と筋肉の接合部(神経筋接合部)

筋肉、特に目の筋肉が弱り、疲れやすくなるが、その程度は患者により異なる。病気の進行の仕方も個人差が大きい。

たいていは薬で症状をコントロールできる。

皮膚

皮膚や粘膜(口の内側など)に大きな水疱ができる。

治療しなければ、生命が脅かされる場合がある。

胃の粘膜にある、ある種の細胞

胃の粘膜の細胞が損傷を受けると、ビタミンB12が吸収されにくくなる(ビタミンB12は血液細胞の成熟と、神経細胞の維持に必要である)。その結果、貧血が生じ、しばしば疲労感、脱力感、ふらつきが起こる。また、神経が損傷を受けるため、脱力感と感覚消失が起こる。

治療しなければ脊髄が損傷し、いずれは感覚消失、脱力感、失禁を招く。

胃がんのリスクも増加する。しかし、治療を受ければ予後は良好。

関節、肺、神経、皮膚、心臓などのその他の組織

様々な症状が起こる可能性がある。発熱、疲労感、関節痛、関節のこわばり、関節の変形、息切れ、感覚消失、脱力感、発疹、胸痛、関節や腱の腫れなどがみられる。

予後は患者により異なる。

関節、腎臓、皮膚、肺、心臓、脳、血液の細胞

関節にも炎症が起こるが、変形は伴わない。

疲労感、脱力感、ふらつきなどの貧血の症状、および、疲労感、息切れ、かゆみ、胸痛などの腎臓、肺、心疾患による症状が起こることがある。

発疹が現れることもある。

脱毛がよくみられる。

予後は実に様々だが、大半の患者はときおり症状が再燃するものの、活動的な生活を送ることができる。

膵臓のベータ細胞( インスリンを産生している)

様々な長期合併症のほか、強いのどの渇き、過剰な尿量や食欲といった症状がみられる。

膵臓の細胞の破壊が止まったとしても、すでに十分な量の インスリンを産生できるだけの細胞が残っていないため、インスリン治療を生涯続ける必要がある。

予後は実に様々であり、重症で、病気になってからの期間が長いと悪い傾向にある。

血管

神経、頭、皮膚、腎臓、肺、腸など体の一部または数箇所の血管が侵される。いくつかの型がある。

症状(発疹、腹痛、体重減少、呼吸困難、せき、胸痛、頭痛、視力障害、神経の損傷や腎不全の症状など)は、体のどの部位が侵されているかによる。

予後は病気の原因と、組織がどの程度損傷を受けているかによる。通常は、治療すれば予後はかなりよい。

原因

自己免疫疾患は以下のように、いろいろなものが引き金になって起こります。

  • 体内の正常な物質がウイルス、薬、日光、放射線などの影響で変化し、変化した物質を免疫系が異物と認識することがあります。例えばウイルスに感染すると体の細胞が変化します。この細胞が免疫系を刺激し、攻撃を促します。

  • 体にもともと存在する物質によく似た異物が体外から入ってきたときに、免疫系が異物を攻撃する際に気づかずに、体内にあったよく似た物質も標的にしてしまうことがあります。例えば、レンサ球菌咽頭炎を起こす細菌は人間の心臓細胞に存在する物質と似た抗原をもっています。そのため、咽頭炎が治った後でまれに免疫系が心臓を攻撃します。これはリウマチ熱で起こる反応の1つです。

  • 抗体の産生を調節する細胞、例えば白血球の一種であるB細胞が正常に機能しなくなり、体の細胞を攻撃する異常な抗体を産生する場合があります。

  • 正常な状態では体内の特定の領域にとどまり免疫系の標的にならない物質が血流の中に放出されてしまった場合も、それが引き金になります。例えば、眼をぶつけると眼球の中の液体が血流に流れ出します。この液体の刺激によって免疫系が眼を異物と認識し、攻撃します。

ある人に自己免疫反応または疾患が発生する引き金となっても、別の人ではならない物質が存在する理由は大体が不明です。しかし、ときに遺伝が関与していることがあります。自己免疫疾患を発症する可能性を、わずかではありますが高める遺伝子をもつ人もいます。病気そのものではなく、このようにわずかに高い自己免疫疾患の起きやすさが遺伝します。このように、もともと自己免疫疾患になりやすい人はウイルス感染や組織の損傷などが引き金になって発症します。

多くの自己免疫疾患は、女性により多くみられます。

症状

症状は疾患の種類と、侵された体の部位により様々です。例えば血管、軟骨、皮膚などの特定の組織が全身で侵される疾患もあれば、決まった臓器だけが侵される疾患もあります。腎臓、肺、心臓、脳を含め、事実上いかなる臓器も侵される可能性があります。発症すると炎症と組織の損傷が起こり、痛み、関節の変形、脱力感、黄疸、かゆみ、呼吸困難、体液貯留(浮腫)、せん妄が現れて、死亡することすらあります。

診断

  • 血液検査

  • 医師による評価

血液検査で炎症が起きていることが分かれば、自己免疫疾患の診断に役立つことがあります。そのような検査には、次のものがあります。

  • 赤血球沈降速度(赤沈):この検査では、血液の入った試験管の底に赤血球が沈澱する速さを測定します。炎症があると、それに反応してつくられるタンパク質によって、赤血球が血液中に浮遊する能力が抑制されるため、赤沈がしばしば高くなります。

  • 血算:この検査には、血液中の赤血球数測定も含まれます。炎症があると、産生される赤血球の数が減少するため、赤血球数が減少します(貧血)。

炎症は様々な原因で起こり、その大半は自己免疫疾患と関係ありません。そのため医師はしばしば血液検査も行い、特定の自己免疫疾患にかかった患者に現れる様々な抗体の有無を調べます。このような抗体の例として、以下があります。

  • 抗核抗体(典型的に全身性エリテマトーデスでみられます)

  • リウマトイド因子や抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体(典型的に関節リウマチでみられます)

しかし、これらの抗体でも、ときに自己免疫疾患ではない人に検出されるため、医師は通常、検査結果と患者の徴候と症状を組み合わせて自己免疫疾患の診断を行います。

知っていますか?

  • 自己免疫疾患を発症する可能性を、わずかではありますが高める遺伝子をもつ人もいます。

  • 自己免疫疾患では、事実上いかなる臓器も侵される可能性があります。

予後(経過の見通し)

自己免疫疾患の中には、原因が分からないまま発症し、自然に治癒するものもあります。しかし、ほとんどは慢性の病気で、たいていは生涯にわたって薬で症状をコントロールする必要があります。

予後は、疾患によって異なります。

治療

  • コルチコステロイドなど、免疫系を抑制する薬

  • 一部の自己免疫疾患に対して、血漿交換と免疫グロブリン製剤の静脈内投与

薬物療法

アザチオプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シクロスポリン、ミコフェノール酸、メトトレキサートなどの免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)を長期間にわたって内服します。( 移植による拒絶反応の予防に用いる薬剤)。しかし、これらの薬は自己免疫反応を抑えるだけでなく、感染症の原因となる微生物やがん細胞を含む異物から自分の体を守る能力も抑制してしまうため、結果としてある種の感染症やがんを発症するリスクを高めます。

プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドを通常は服用します。コルチコステロイドは炎症を鎮めますが、免疫系も抑制するため、長期にわたって用いると様々な副作用が起こります( コルチコステロイドの使用法と副作用)。したがって、できればコルチコステロイドは疾患の初期、または症状が悪化したときに短期間だけ使うようにします。ただし、場合によっては一生使い続けなければなりません。

多発性硬化症や甲状腺疾患など、ある種の自己免疫疾患の治療には免疫抑制薬とコルチコステロイド以外の薬も使います。また、症状を和らげるための治療が必要になることもあります。

エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブは、体内で炎症を起こす腫瘍壊死因子(TNF)の作用を妨げる薬です。これらの薬は関節リウマチなどの一部の自己免疫疾患の治療に非常に効果的ですが、多発性硬化症などの特定の自己免疫疾患の治療に使用すると逆に有害なことがあります。また、感染症とある種の皮膚がんを発症するリスクを高める可能性もあります。

新しい薬の中には特に白血球を標的とするものがあります。白血球には体を感染症から守る働きがあるとともに、自己免疫反応にも関与しています。このような薬には以下のものがあります。

  • アバタセプトは、白血球の一種であるT細胞の作用を妨げる薬で、関節リウマチの治療に使用されます。

  • リツキシマブは、白血球の仲間であるB細胞を減少させるため、当初は、ある種の白血球のがんの治療に使用されていました。関節リウマチや、血管の炎症(血管炎)を引き起こす特定の疾患(多発血管炎性肉芽腫症[ウェゲナー肉芽腫症]など)のような一部の自己免疫疾患で効果的です。リツキシマブは、他の様々な自己免疫疾患で研究段階にあります。

他に白血球を標的とする薬の開発が進んでいます。

血漿交換と免疫グロブリン製剤の静脈内投与

一部の自己免疫疾患の治療には血漿交換が用いられます。まず血液を採取し、ろ過を行い、自己抗体などの異常なタンパク質を取り除きます。その後、ろ過した血液を患者の体内に戻します( 血小板献血)。

一部の自己免疫疾患の治療では免疫グロブリン製剤の静脈内投与(ヒトの血漿中の抗体を精製して製造され静脈内投与される)を行います。その作用機序は不明です。

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