がんには多くの種類があり、がんの種類毎に原因や 危険因子 がんの危険因子 多くの遺伝的要因と環境的要因が、発がんのリスクを上昇させます。ただし、発がん物質にさらされている人や他の危険因子をもっている人が必ずがんになるわけではありません。( がんの概要も参照のこと。) 一部の家系では、特定のがんの発生リスクが非常に高いことがあります。リスクが増大する原因は、単一の遺伝子による場合もあれば、いくつかの遺伝子の相互作... さらに読む も異なります。また、個人によってそれぞれのがんの発症リスクも異なります。したがって、誰にでも効果的な予防策というものはありません。しかし、多くの人でがんのリスクを低下させる一般的な戦略はいくつか存在します。
悪性腫瘍や前がん性の腫瘍を早期に発見することで、命が救われます。そのため、推奨される がんのスクリーニング検査 がんのスクリーニング 患者の症状と身体診察の結果、ときにスクリーニング検査の結果に基づいて、医師はがんを疑います。外傷など、別の理由で撮影されたX線画像で、がんが疑われる異常が見つかることもときにあります。がんの存在を確定するには、他の検査(診断検査)が必要になります。 がんであることが診断されたら、がんの病期分類(ステージング)が行われます。病期とは、がんの... さらに読む を受けることが重要です。
生活習慣の要因
食事などの生活習慣を変えることで、一部のがんのリスクを低下させられる場合があります。どの程度リスクを低下させられるかはがんの種類によって異なります。
食事を変える 食事とがん 特定の食べものによってがんが発生するリスクが増大または減少するかどうかは、多くの研究で検討されています。残念ながら、様々な研究によって相反する結果が得られているため、がんのリスクに対する食べものやサプリメントの影響を明らかにすることは困難です。一般的な問題として、特定の食べものを多く摂取した人が特定のがんになる割合が低いとみられることが研... さらに読む ことで、リスクが低下するがんが数種類あります。
アルコール摂取量を減らすと、頭頸部、肝臓、食道のがんのリスクを低下させることができます。
脂肪の摂取量を減らすと、乳がんと結腸がんのリスクが低下するとみられています。
加工肉の摂取を制限し、全粒穀物や果物、野菜の摂取量を増やすと、一部のがんのリスクが低下する可能性があります。
肉の調理方法によっても、がんのリスクが増加する可能性があります。肉を直火で焼いたり、網焼きにしたり、炒めたりすると、結腸がんとの関連が報告されている特定の化学物質が発生します。ほかの調理方法にすることで、そのような化学物質の発生を減らし、結腸がんのリスクを減らせる可能性があります。
タバコの使用はすべてのがんの3分の1に直接関与します。喫煙せずタバコの煙を避けると、肺や腎臓、膀胱、頭頸部のがんのリスクを大きく低下させられます。 禁煙 禁煙 禁煙は非常に困難なことが多いですが、喫煙者が自分の健康のためにできる最も重要なことの1つです。 禁煙はすぐに健康上の便益をもたらし、便益は時間の経過とともに大きくなります。 禁煙する人は、イライラし、不安で、悲しく、落ち着きのない状態になることがありますが、これらの症状は時間の経過とともに軽減します。... さらに読む する人もがんのリスクを低下させることができ、リスクは時間が経つにつれて低下していきます。無煙タバコ(嗅ぎタバコや噛みタバコ)をやめると、口の中や舌にできるがんのリスクが低下します。
過体重または肥満はがん(特に乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、腎臓がん、膵臓がん)のリスクを高めます。食事と運動の両方を通じて健康な体重を維持するよう努めるべきです。運動自体によって乳がん、子宮内膜がん、前立腺がんのリスクが低下する可能性があります。
環境的要因
発がん物質とは、がんのリスクを高める物質のことです。アスベストやベンゼンといった一部の発がん物質は職場に存在することがあり、すでに判明している発がん物質を使用する産業に従事する人は、曝露を避けたり最小限に抑えたりするための適切な予防策を講じるべきです。家の中や環境中に存在する発がん物質もあります。例えば、地中に天然に存在する放射性元素が崩壊して放射性のラドンガスになり、特定の地域に住む人々の家の中にたまることがあります。ラドンに曝露すると肺がんのリスクが増加します(特に喫煙者)。
日光への曝露を避ければ(特に昼間)、皮膚がんのリスクを低下させることができます。肌の露出を避け、紫外線A波とB波の両方に対して保護する紫外線防御指数(SPF)が30以上の、幅広い波長に有効な日焼け止め製品を使うことも、皮膚がんのリスク低下に役立ちます。
がんに対するワクチン
ワクチンの接種(予防接種)により、ウイルスが原因で発生する特定のがんを予防できます。例えば、性行為によって感染する特定の型の ヒトパピローマウイルス ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、 HPVの中でも以下の病態を引き起こす可能性が非常に高い株による感染の予防に役立ちます。 女性の 子宮頸がん、 腟がん、 外陰がん 男性の陰茎がん 男女を問わず、 肛門がん、 のどのがん、 尖圭コンジローマ これらの病気はヒトパピローマウイルスによって引き起こされ、このウイルスは尖圭コンジローマ... さらに読む (HPV)は子宮頸がん、肛門がん、一部の頭頸部がんを引き起こします。最初の性行為を経験する前に HPVの予防接種 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、 HPVの中でも以下の病態を引き起こす可能性が非常に高い株による感染の予防に役立ちます。 女性の 子宮頸がん、 腟がん、 外陰がん 男性の陰茎がん 男女を問わず、 肛門がん、 のどのがん、 尖圭コンジローマ これらの病気はヒトパピローマウイルスによって引き起こされ、このウイルスは尖圭コンジローマ... さらに読む を受けておくと、これらのがんの大部分を予防できます。
また別の例として、B型肝炎ウイルスに感染すると肝臓がんのリスクが高くなります。 B型肝炎ウイルスに対するワクチン接種 B型肝炎ワクチン B型肝炎ワクチンは B型肝炎とその合併症( 慢性肝炎、 肝硬変、 肝臓がん)の予防に役立ちます。 一般に、B型肝炎は A型肝炎より重篤で、死に至ることもあります。症状は軽度のこともあれば、重度のこともあります。食欲減退、吐き気、疲労などがみられます。5~10%の患者ではB型肝炎が慢性化し、肝硬変や肝臓がんに進行することがあります。... さらに読む が肝臓がんの予防に役立ちます。
その他の要因
アスピリンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用すると、大腸がんのリスクが低下します。
子宮頸部細胞診 子宮頸がんのスクリーニング検査 医師は、 スクリーニング検査を勧めることがあります。スクリーニング検査とは、症状がない人に対して病気の有無を調べるために行われる検査です。女性に生殖器系に関連する症状(婦人科疾患の症状)がある場合、症状を引き起こしている病気を特定するための検査(診断目的の検査)が必要になることがあります。... さらに読む は、子宮頸部の細胞に生じる前がん性の変化を検出することによって、子宮頸がんの予防に役立ちます。前がん性の 結腸ポリープ 結腸と直腸のポリープ ポリープは、腸のような中空の臓器の壁から増殖した組織が突出したものです。 ポリープの中には遺伝性疾患により生じるものがあります。 下血が最もよくみられる症状です。 一部のポリープはがん化します。( 大腸がんを参照) 診断を下すために大腸内視鏡検査が行われます。 さらに読む
を取り除くと、大腸がんの予防に役立ちます。
更年期症状に対するホルモン療法(エストロゲンやプロゲステロンなど)を避けると、乳がんと子宮内膜がんのリスクが低下する可能性があります。
詳しい情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国がん協会(American Cancer Society):がんのリスクを減らすのに役立つ情報