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貧血の概要

執筆者:

Evan M. Braunstein

, MD, PhD, Johns Hopkins School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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本ページのリソース

貧血とは、赤血球の数やヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)の量が少ない状態をいいます。

赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少したり、赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなったりすると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。

貧血の原因

貧血の原因は数多くありますが、貧血が生じる仕組みを大きく分けると、ほとんどの場合次の3種類に分類されます。

  • 失血(過剰な出血

  • 赤血球の産生不足

  • 赤血球の過剰な破壊

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貧血の一般的な原因

発症の仕組み

慢性的な過剰出血

消化管のがん

胃や小腸の潰瘍

突然の過剰出血

外傷

血管破裂

手術

赤血球産生低下

転移したがん

骨髄異形成(骨髄組織の異常)

赤血球の大量破壊

赤血球に対する自己免疫反応

グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠乏症

遺伝性楕円赤血球症

遺伝性球状赤血球症

赤血球の物理的損傷

発作性夜間血色素尿症

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貧血の主な原因の詳細

原因

発症の仕組み

治療

備考

脾腫

脾腫になると異常な赤血球が取り込まれて破壊されます。

脾腫の原因になっている病気を取り除きます。

脾臓を手術で切除しなければならないこともあります。

極度に大きな脾腫では、腹痛が発生し、少し食べただけで満腹感を覚えるようになります。

脾腫になると血小板や白血球も取り込まれることが多いため、血液中の血小板や白血球の数も減少します。

赤血球の物理的損傷

血管の異常(動脈瘤など)、人工心臓弁、心臓弁の損傷などがあると、正常な赤血球が破壊されることがあります。

損傷の原因を特定して、修正します。

損傷を受けた赤血球は脾臓で血液からろ過されます。

発作性夜間血色素尿症

免疫系によって赤血球が破壊されます。

これらの破壊された赤血球から出たヘモグロビンが夜間に尿に凝縮されるため、朝に暗赤色の尿がみられます。

補体系を阻害するエクリズマブという薬が症状の緩和に役立ちます。

血がかたまりやすい人では、抗凝固薬の服用が必要になることがあります。

重度の胃けいれんが発生したり、腹部や脚の太い静脈に血栓ができたりする人もいます。

症状は多くが突然(発作的に)発生します。

遺伝性球状赤血球症

赤血球の形が崩れて固くなり、脾臓に取り込まれて破壊されます。

治療は通常必要ありませんが、重度の貧血がある場合は、脾臓の切除が必要になることがあります。

この遺伝性疾患は、頭が塔のような形に見える塔状頭蓋などの骨異常を引き起こすこともあります。

この病気によって、胆石が生じることがあります。

遺伝性楕円赤血球症

赤血球の形が正常な円盤状ではなく、円形や楕円形になります。

重度の貧血になると、脾臓の切除が必要になることがあります。

通常は軽い貧血の場合が多く、治療の必要はありません。

赤血球酵素異常

グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症:赤血球の細胞膜からG6PD酵素が失われることで、赤血球がさらにもろくなります。

ピルビン酸キナーゼ(PK)欠損症は、通常出生時に存在し(先天性)、これによっても赤血球がさらにもろくなります。

G6PD欠損症では、薬物など、そのきっかけとなるものを避けることで、貧血を防ぐことができます。

PK欠損症では、脾臓の切除が有益な場合があります。

G6PD欠損症は遺伝性疾患で、ほぼ男性にみられます。

黒人男性では約10%、またこれよりも割合は少ないですが地中海沿岸出身の白人にもG6PD欠損症がみられます。

ピルビン酸キナーゼ欠損症はまれです。

過剰出血による貧血

大量の出血によって貧血が起きることがあります。出血は、けがや手術の際などに、突然発生することがあります。しかし多くの場合、出血は徐々に繰り返し発生し(慢性出血)、その典型的な原因は消化器や尿路の異常や重い月経です。慢性的な出血があると体内の鉄分が減少し、貧血がさらに悪化します。

赤血球の産生不足による貧血

体が十分な量の赤血球をつくれないことも、貧血の原因になります(血球の形成も参照)。赤血球の産生には多くの栄養素が必要です。最も重要な栄養素は、鉄、ビタミンB12、葉酸の3つですが、銅もごく微量ながら必要なほかに、適切なホルモンバランスも必要で、特に エリスロポエチン(赤血球の産生を刺激するホルモン)が重要です。これらの栄養素やホルモンがないと、赤血球の産生速度や産生量が低下したり、赤血球が変形して酸素を十分に運べなくなったりします。

慢性疾患も赤血球の産生に影響する場合があります。状況によっては、白血病リンパ腫、他の部位から転移してきたがんなどが骨髄に浸潤して、骨髄のスペースが置き換えられることで、赤血球の産生が低下することがあります。

赤血球の過剰な破壊による貧血

赤血球が破壊されすぎた場合も、貧血になることがあります。通常、赤血球の寿命は約120日間です。この通常の寿命に近いものや寿命を過ぎた赤血球は、骨髄、脾臓、肝臓にある貪食細胞に取り込まれて破壊されます。寿命に達していない赤血球が破壊(溶血)されると、それを補おうとして骨髄は新しい赤血球の産生を速めます。赤血球の産生を上回るペースで破壊が進むと、溶血性貧血が起こります。溶血性貧血は、過剰な出血や赤血球産生低下による貧血に比べると、比較的まれな貧血です。溶血性貧血は、赤血球自体の異常から生じることもありますが、より多いのは赤血球を破壊する別の疾患に起因するものです。

貧血の症状

貧血の重症度や進行の速さによって、症状は様々です。貧血が軽く、特に進行が遅い場合は、症状がまったく現れないこともあります。また、運動している間だけ症状がみられることもあります。貧血が重い場合は、安静にしていても症状が現れることがあります。血管の破裂による出血などで貧血が急に進んだ場合は、貧血の程度が軽度であれ重度であれ、症状が強く現れます。

軽い貧血では、疲労感や脱力感を覚えたり、顔色が青白くなったりします。貧血が重くなると、気が遠くなる、めまい、のどの渇き、発汗、脈が弱く速くなる、呼吸が速くなるなどの症状が加わります。重度の貧血で、特に脚の血行が悪くなっている場合や、肺や心臓に特定の病気がある場合は、運動中に痛みを伴った筋けいれんが下腿に発生したり、息切れや胸痛などの症状が現れたりすることがあります。

一部の症状からは、貧血の原因の手がかりも得られることがあります。例えば、黒いタール状の便、血尿や血便、または喀血(せきとともに血が出る)がみられる場合、出血が貧血の原因であることが疑われます。濃い色の尿または黄疸(皮膚や白眼が黄色がかった色になる)がみられる場合、赤血球の破壊が貧血の原因となっている可能性が疑われます。手や足の灼熱感やチクチク感があれば、ビタミンB12欠乏症の可能性が疑われます。

高齢者の貧血

がん(骨髄異形成多発性骨髄腫といった血液のがんを含む)など、貧血の原因となる病気の多くは、高齢になるほど多くみられる傾向があります。そのため、貧血は高齢になるほど多く発生します。慢性疾患に伴う貧血鉄欠乏性貧血(異常出血を原因とします)は、高齢者における貧血の最も一般的な原因です。貧血は、加齢に伴う正常な変化ではなく、貧血が見つかった場合は必ず原因を探すべきです。

どの年齢でも、貧血の症状は基本的に同じです。また、貧血が軽くても、高齢の人は混乱を示したり、気落ちしたり、動揺したり、無気力になったりする傾向が若い人に比べて高いようです。さらに、体のバランスが不安定になり、歩行が困難になる場合もあります。このような問題によって、自立して生活していく力が衰えるおそれがあります。しかし、貧血が軽い高齢者の中にはまったく症状が現れない人もおり、特に、貧血が徐々に進行する場合(これは実際よくあります)に多くみられます。

高齢者では、ビタミンB12欠乏症による貧血が認知症と間違えられることがありますが、これは、この種の貧血が精神機能に影響を与えることがあるからです。

貧血によって、高齢者の余命が短くなる場合もあります。そのため、貧血の原因を特定して、それを解消することが特に重要です。

貧血の診断

  • 血液検査

症状を自覚する前に、一般的な血液検査で貧血が見つかることもあります。

採取した血液のヘモグロビン値が低いか、ヘマトクリット値(全血液量に占める赤血球の割合)が低ければ、貧血と診断されます。ほかにも、血液サンプルの顕微鏡による検査や、実施頻度は少ないものの、骨髄から採取したサンプルの検査など、貧血原因の特定に役立つ検査があります。

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