血液疾患では、ほぼすべての身体部位に様々な症状が現れる可能性があります。最も一般的には、血液成分の減少により症状が生じます。
白血球 白血球 血液の主な成分 血漿(けっしょう) 赤血球 白血球 血小板 さらに読む
や 免疫系 免疫系の構成要素 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守るために、免疫系が備わっています。侵入物には以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕[ぜん]虫など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む のタンパク質が減少すると、 発熱や感染症 成人の発熱 発熱とは、体温が上昇した状態で、口腔体温計で38℃または直腸体温計で38.2℃より高ければ、体温が高いとみなされます。「熱がある」という表現は、あいまいに使われることが多く、実際に体温を測っていなくても、熱っぽい、寒気がする、汗をよくかくなどの状態を指して用いられる場合もあります。 37℃前後が平熱とされますが、体温は1日を通じて変動します。早朝で最も低く、夕方に最も高くなって37... さらに読む が繰り返し起こることがあります。
血小板 血小板 血液の主な成分 血漿(けっしょう) 赤血球 白血球 血小板 さらに読む
や 血液凝固因子 血栓について 止血とは、傷ついた血管からの出血を止めようとする体の働きです。止血の過程では、血液の凝固が起こります。 凝固の働きが弱すぎると、軽いけがでも、大量の出血が起きるようになります。 凝固の働きが強すぎると、出血が起きていない血管がふさがれてしまうことがあります。 そのため、人の体には、血液の凝固を抑制し、必要なくなった血のかたまりを溶かすため... さらに読む が減少すると、異常な 出血やあざ あざと出血 けがをしたときのあざや出血は正常です( 血栓についても参照)。しかし、あざや出血を起こしやすくなる病気があります。ときには、あきらかな原因やけががないのに出血することもあります。体のほぼあらゆる部分で自然に出血することがありますが、鼻や口、消化管に最も多くみられます。 血友病では、関節内や筋肉内でしばしば出血がみられます。ほとんどの場合、出血はわずかですが、生命を脅かすほど大量に出血することもあります。ただし、わずかな出血でも、脳に発生... さらに読む
(皮下出血)がみられることがあります。
また、血液成分の増加によっても症状が生じます。
赤血球が増加すると血液が濃く(血液粘稠度が高く)なり、頭痛や赤ら顔が現れることがあります(多血症)。
免疫系のタンパク質の増加によっても、血液が濃く(血液粘稠度が高く)なることがあります。
血小板や血液凝固因子が増加すると、血液凝固が不適切に過剰になることがあります(血栓症)。
免疫関連のタンパク質、赤血球、血小板の量が増加することによって血液が濃くなる血液疾患もあります。この濃くなった(より粘度が高い)血液は、細い血管を通ることが困難になり、身体の特定部位への血流が減少することで、 過粘稠度(かねんちゅうど)症候群 過粘稠度(かねんちゅうど)症候群 好中球増多症とは、血液中の好中球( 白血球の一種)の数が異常に多くなった状態をいいます。 好中球は白血球の一種で、体が感染に抵抗するのを助けたり、傷を治したりするのを助けます。好中球は、以下のようないくつかの病態状や病気に反応して増加することがあります。 感染症 外傷 炎症性疾患 さらに読む と呼ばれる重篤な状態になることがあります。この状態になると、息切れ、頭痛、めまい、錯乱などの症状がみられます。過粘稠度症候群は、 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫は形質細胞のがんで、異常な形質細胞が骨髄や、ときには他の部位で、制御を失った状態で増殖する病気です。 骨の痛みや骨折が発生することが多く、腎臓障害、免疫機能の低下(易感染状態)、筋力低下、錯乱などがみられることもあります。 血液検査や尿検査で各種の抗体の量を測定することで診断が下され、骨髄生検によって確認されます。 多くの場合、治療には従来の化学療法薬であるコルチコステロイドと、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ、カルフィル... さらに読む の場合にみられることがあり、これは免疫系のタンパク質の増加により引き起こされます。
血液疾患では、他の疾患でも生じることのある症状がしばしばみられます。例えば、 貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む による脱力感や息切れは、心臓や肺の病気のように身体への酸素供給が損なわれる別の疾患で生じることがあります。一方で、血液疾患が疑われる症状の1つである あざができやすい あざと出血 けがをしたときのあざや出血は正常です( 血栓についても参照)。しかし、あざや出血を起こしやすくなる病気があります。ときには、あきらかな原因やけががないのに出血することもあります。体のほぼあらゆる部分で自然に出血することがありますが、鼻や口、消化管に最も多くみられます。 血友病では、関節内や筋肉内でしばしば出血がみられます。ほとんどの場合、出血はわずかですが、生命を脅かすほど大量に出血することもあります。ただし、わずかな出血でも、脳に発生... さらに読む 状態は、血液疾患以外の特に血管の病気によって、またはアスピリンなどの様々な薬の使用によって引き起こされることがあります。
血液疾患以外でも、例えば、けが、外科手術、月経、出産、乳児の歯の萌出などにより出血が生じることがあります。 血尿 血尿 尿に血液が混じると(血尿)、血液の量や血液が尿に混入してからの経過時間や尿の酸性度などに応じて、尿の色がピンク、赤色、茶色に変化することがあります。混入した血液の量が少なく尿が変色しない場合(顕微鏡的血尿)でも、化学的な検査や顕微鏡による検査では検出することが可能です。別の理由で尿検査を受けた際に顕微鏡的血尿が発見される場合もあります。 血尿のある人は、血尿の原因に応じて、側腹部または背部の痛み、下腹部痛、尿意切迫感、排尿困難など、... さらに読む や 血便 消化管出血 口から肛門までの消化管のいずれの部分でも、出血が起こることがあります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜在性)もあります。潜在性の出血(潜血)は、特別な化学物質を用いた便サンプルの検査でのみ検出されます。 嘔吐物中に血液がみられる場合(吐血)があり、この場合上部消化管(通常は食道、胃または小腸の最... さらに読む は通常、血液疾患ではなく、尿路または消化管の異常によって引き起こされます。しかし、血液疾患があると出血が悪化することがあります。血液疾患のある人は、歯科処置の後に過度の出血を経験したり、月経が非常に重いことがあります。
血液の病気がより強く疑われる症状がいくつかあります。以下に一例を示します。
通常は脚にみられる(ほとんどの場合、脚の腫れ、発赤、熱感、または息切れなどを引き起こす) 血栓 血栓について 止血とは、傷ついた血管からの出血を止めようとする体の働きです。止血の過程では、血液の凝固が起こります。 凝固の働きが弱すぎると、軽いけがでも、大量の出血が起きるようになります。 凝固の働きが強すぎると、出血が起きていない血管がふさがれてしまうことがあります。 そのため、人の体には、血液の凝固を抑制し、必要なくなった血のかたまりを溶かすため... さらに読む (静脈炎)
血小板が少なすぎるために生じる点状出血(くっきりした点状の赤い皮疹)
口腔の血性水疱(血小板が少なすぎるため、または凝固異常によって生じます)
白血球のがん( 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む や リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、Bリンパ球やTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつ... さらに読む
など)に起因する リンパ節の腫れ リンパ節の腫れ リンパ節は、小さな豆型の器官で、 リンパ液をろ過します。リンパ節は体中に分布していますが、特に首、わきの下、鼠径部の皮膚の下に集まっています。リンパ節は、感染やがんの拡大を阻止する身体の防御機構の1つである リンパ系の一部です。( リンパ系の概要も参照のこと。) リンパ液は、血管から細胞の間隙に滲出した水分、 白血球、タンパク質、脂肪で構成される透明な液体です。この液体の一部は血管に再吸収され、残りはリンパ管に入ります。リンパ液は、損傷... さらに読む
異食症 異食症 異食症は、食べものではないものを日常的に食べることを特徴とする 摂食障害です。 通常、異食症の人が食べるのは体の害にならないものですが、食べるものによっては、消化管の閉塞や鉛中毒などの合併症が起きることがあります。 通常は、2歳以上の人が食べものではないものの摂食を1カ月以上にわたり続けている場合に、異食症と診断されます。 行動変容法が助けになることがありますが、異食症に対する特別な治療法については、ほとんど分かっていません。... さらに読む (氷、泥、土を食べる)( 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血は、赤血球の産生に必要な鉄の貯蔵量の不足や欠乏によって起こります。 過剰な出血が最も一般的な原因です。 脱力感や息切れを覚えたり、顔が青白くなったりします。 血液検査で鉄分の量が測定できます。 鉄分の量を回復させるために、鉄剤が用いられます。 さらに読む が疑われます)