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血栓について

執筆者:

Joel L. Moake

, MD, Baylor College of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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止血とは、傷ついた血管からの出血を止めようとする体の働きです。止血には血液の凝固が伴います。

  • 血液が凝固しすぎると、出血していない血管までふさいでしまうことがあります。

  • 凝固が不十分すぎると、軽いけがでも過剰な出血が生じやすくなります。

ゆえに体には、凝固を抑制し、もはや必要なくなった血のかたまりを溶かすための仕組みが備わっています。このような出血を調節する系統が一部でも異常になると、大量に出血したり、血がかたまりすぎたりすることがあり、どちらも危険な状態になる可能性があります。凝固力が弱いと、血管がわずかに傷ついただけで重度の失血に至る可能性があります。凝固が過剰になると、重要な場所にある毛細血管が血のかたまりで詰まってしまうことがあります。脳の血管が詰まると脳卒中が起こり、心臓につながる血管が詰まると心臓発作が起きます。脚、骨盤、腹部などの静脈にできた血のかたまりが、血流に乗って肺に入り、太い動脈を遮断すると、肺塞栓を起こします。

止血の過程には、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 血管が狭くなる(収縮)

  • 血液凝固を促進する血液中の細胞のような断片(血小板)の活性化

  • 血漿中にみられ、血小板と共同して血液が固まるのを助けるタンパク質(血液凝固因子)の活性化

血栓:血管の破れ目をふさぐ

外傷により血管の壁が破れると、血小板が活動を始めます。球状だった血小板が突起の多い形に変わり、破れた血管の壁に付着したり、互いにくっつきあったりして、血管の傷をふさいでいきます。また、別の血中タンパク質との相互作用によってフィブリンを形成します。フィブリン線維は網状になってさらに血小板や血球をとらえ、傷をふさぐ血のかたまり(血栓)をつくります。

血栓:血管の破れ目をふさぐ

血管因子

傷ついた血管は、収縮することで血液の流出速度を低下させ、これにより血液が凝固できるようになります。同時に、血管の外側に血液がたまり(血腫)、これが血管を圧迫してさらに出血を抑えます。

血小板因子

血管の壁に傷がつくと、すぐに血小板を活性化させる一連の反応が起こり、傷ついた部分に血小板が付着します。血小板を血管の壁に付着させる「接着剤」の役割を果たすのは、血管の壁の細胞が産生するフォン・ヴィルブランド因子という大きなタンパク質です。タンパク質のコラーゲンとトロンビンは、傷の部分で血小板同士の接着を促す働きをします。集まった血小板は、網状の構造を形成して傷をふさぎます。血小板は丸い形からとがった突起の多い形に変わり、タンパク質などの物質を放出してさらに多くの血小板と凝固タンパク質を集めます。こうした一連の反応によって傷をふさぐ血のかたまり(凝血塊)が大きくなり、血栓が形成されます。

血液凝固因子

血栓ができる過程では、様々な血液凝固因子が連続的に活性化し、その中でトロンビンもつくられます。血液凝固因子のフィブリノーゲンは普段は血液中に溶けていますが、トロンビンの作用を受けると線維状のフィブリンに変化し、血小板のかたまりから放射状に伸び、網状に広がってさらに多くの血小板と血球を取り込みます。フィブリンの線維は、血栓の体積を増大させるため凝血塊が移動しにくくなり、傷ついた血管の壁をふさがった状態に保ちます。

凝固の停止

このような血液凝固の反応に対し、生体には血管が修復された後に凝固プロセスを停止し、凝固物を溶かす反応があり、両者の間でうまくバランスが取れています。このような調節機構がなければ、血管に小さな傷ができただけで、全身に血のかたまりが広がってしまいますし、実際にそれが起きる病気もあります。

薬と血液凝固

出血を抑制する人体の能力(止血)と薬との関係は複雑です。血液を凝固させる能力は止血に不可欠ですが、過度の凝固は、心臓発作脳卒中肺塞栓症などのリスクを高めます。多くの薬は、その用途にかかわらず、血液を凝固させる人体の能力に影響を与えます。

血液凝固のリスクが高い人には、リスクを低下させる効果を狙って薬が使用されます。そういった薬は、血小板の粘着性を低下させることによって、血小板が集まって血管をふさぐのを防ぎます。例えば、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、アブシキシマブ、チロフィバン(tirofiban)などが、血小板の働きを妨げる薬として挙げられます。

凝固因子という血液中のタンパク質の働きを阻止する抗凝固薬という薬も使われます。抗凝固薬は「血液をサラサラにする薬」と表現されることがよくありますが、血液を薄めるということではありません。よく使用される抗凝固薬は、ワルファリンという内服薬とヘパリンという注射薬です。これらの薬を使用する人は、常に医師の監督の下になければなりません。

医師は血が凝固するまでの時間を測定する血液検査を行って、これらの薬のいくつかの作用をモニタリングし、その検査結果をもとに薬の用量を調整します。用量が少なすぎると凝固を防止できず、また一方で多すぎると重度の出血を起こします。低分子ヘパリンなどの他の種類の抗凝固薬では、それほど厳重な管理は必要ありません。

比較的新しいタイプの直接型経口抗凝固薬(DOAC)は、凝固が起こるのに必要とされる強力なタンパク質であるトロンビンまたは活性第X因子を直接阻害します。DOACの例としては、ダビガトラン、アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバンなどがあります。これらの薬を服用している場合は、ワルファリンを服用している場合とは異なり、凝固検査を頻繁に受ける必要はありません。

すでに血栓ができている場合は、血栓溶解薬(線溶薬)を使用して血栓の溶解を促します。ストレプトキナーゼ(streptokinase)や組織プラスミノーゲンアクチベータなどの血栓溶解薬は、ときに血栓による心臓発作や脳卒中の治療に使用されます。これらの薬は命を救うことがある一方で、重度の出血のリスクをもたらす可能性もあります。血栓のリスクを減らすため使用される薬であるヘパリンが、血小板に対して意図とは逆の活性化作用を及ぼし、凝固のリスクを高めることもあります(ヘパリン起因性血小板減少症/血栓症)。

エストロゲンには、単独の場合でも経口避妊薬として服用している場合でも、過剰な血液凝固を引き起こす副作用があります。がんの治療に使用される薬(化学療法薬)にも、アスパラギナーゼなどのように、凝固のリスクを増加させるものがあります。

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