慢性リンパ性白血病(CLL)

執筆者:Ashkan Emadi, MD, PhD, University of Maryland;
Jennie York Law, MD, University of Maryland, School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 7月
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やさしくわかる病気事典

慢性リンパ性白血病は、成熟しているように見えるリンパ球(白血球の一種)ががん化して、リンパ節の正常な細胞を徐々に締め出していく、通常は緩やかに進行する病気です。

  • 症状が現れないこともありますが、疲労感、発熱、寝汗、意図しない体重減少などの全身症状がみられることもあります。

  • リンパ節が腫れたり、脾臓の腫大による腹部膨満感を覚えたりすることもあります。

  • 診断には血液検査が必要です。

  • 治療には、化学療法薬やモノクローナル抗体などがあり、ときには放射線療法も使用されます。

白血病の概要も参照のこと。)

慢性リンパ性白血病(CLL)は、全体の4分の3以上の患者が60歳以上で、小児では極めてまれです。北米や欧州では、最も多くみられる白血病がCLLです。日本や東南アジアではまれにしかみられず、このことから、この病気の発生に遺伝が関係していることが示唆されます。

慢性リンパ性白血病では、成熟しているように見えるリンパ球ががん化して、最初に血液中や骨髄中、リンパ節内で増殖します。がん化したリンパ球は、続いて肝臓と脾臓に広がり、これらの臓器が腫れて大きくなってきます。

骨髄では、がん化したリンパ球によって正常な造血細胞が締め出され、結果として以下のいずれかの数が減少します。

  • 赤血球:全身の組織に酸素を運んでいる血球

  • 白血球:体を感染から守っている血球

  • 血小板:血液凝固のプロセスを助けている細胞のような微細な粒子

がん化したリンパ球は、正常なリンパ球のようには機能せず、感染に対する防御に利用されるタンパク質である抗体を作ります。残った少数の正常なリンパ球だけで常に十分な抗体を作れるとは限らず、そのため感染が起きる可能性が高くなります。また、免疫系にも異常が生じることがあり、正常時は微生物や異物に対する防御を担っている免疫系がときに正常組織に反応して攻撃してしまうことがあります。こうした対象を誤った免疫反応により、赤血球、好中球、または血小板が破壊される可能性があります。

CLLはときに、リンパ腫と呼ばれる進行の速いがんに変化することがあります。この変化が起きた状態はリヒター症候群と呼ばれ、2~10%の症例で発生します。

知っていますか?

  • 慢性リンパ性白血病は、小児にはみられません。

CLLの症状

初期のCLLでは一般に症状がみられず、白血球数の増加から診断されます。後から現れる症状としては以下のものがあります。

  • リンパ節の腫れ

  • 疲労

  • 食欲不振

  • 体重減少

  • 寝汗

  • 運動時の息切れ

  • 脾臓の腫れに起因する腹部膨満感

CLLが進行するにつれて、顔色が青白くなったり、あざができやすくなったりすることがあります。感染防御のために骨髄で作られる正常な白血球の数が減少するため、この病気の経過の後期には細菌、ウイルス、および真菌感染症が発生することがあります。

CLLの診断

  • 血液検査

CLLは、別の理由で血算を行ったときにリンパ球が多いことから偶然発見されることがあります。異常なリンパ球の特徴を明らかにするために、採血を行ってその中に含まれている細胞を調べるための特殊な血液検査(フローサイトメトリーや細胞表面マーカー検査と呼ばれます)を行うことがあります。血液検査でも、赤血球、血小板、抗体が減少していることが明らかになります。

骨髄検査はCLLの診断には必要ありませんが、行った場合には、しばしばリンパ球の増加がみられます。

CLLの予後(経過の見通し)

通常、CLLはゆっくり進行します。医師は、生存期間を予測するために、病気がどの程度まで進行しているかを判定します(病期分類)。病期診断は、以下のいくつかの要因に基づいて行います。

  • 血液中のリンパ球数

  • 骨髄中のリンパ球数

  • 脾臓の大きさ

  • 肝臓の大きさ

  • 血液中の赤血球数

  • 血液中の血小板数

CLLの早期患者の多くは診断後10~20年以上生存し、初期の段階で通常は治療を必要としません。赤血球数の減少(貧血)や血小板数の減少(血小板減少症)がみられる人には、直ちに治療を行う必要があり、予後はあまりよくありません。慢性リンパ性白血病による死亡は、骨髄で正常な細胞が十分に作られなくなり、酸素の運搬、感染に対する防御、出血の抑止といった機能が果たされなくなることが原因です。

CLLでは皮膚がん肺がんなど別のがんが発生しやすいですが、これについては、おそらく免疫系の変化が関係していると考えられています。CLLは、リンパ系のがんでさらに進行が速いタイプへ変化することもあります(リンパ腫)。

CLLの治療

  • 化学療法

  • 免疫療法

CLLは進行が緩やかですので、多くの患者は何年間も治療を必要としません。医師は通常、以下の1つまたは複数の状況が発生するまで治療の開始を待ちます:

  • リンパ球の数が増加し始め、それによる症状が現れている

  • リンパ節が大きくなり始めている

  • 赤血球または血小板の数が減少している

CLLの薬物治療

化学療法薬免疫療法薬(モノクローナル抗体など)などの薬物療法は、症状を緩和したり、腫大したリンパ節や脾臓を小さくしたりするのに役立ちますが、白血病を治癒させるわけではありません。治療を行うことで、数年間にわたってCLLを抑えることができ、再発時にもしばしば同じ治療が行われ、効果が得られます。

CLLに使用される薬剤について、標準とされている組合せはありません。B細胞系のCLLに対する最初の薬物治療では、通常はフルダラビンやシクロホスファミドなどの薬剤が使用され、がん細胞のDNAに作用して死滅させます。現在、CLLの治療には化学療法薬とリツキシマブと呼ばれるモノクローナル抗体も使用されています。通常、この併用療法により、CLLをコントロールする(寛解を誘導する)ことができます。やがて、ほとんどのCLLがこれらの薬剤に抵抗性を示すようになります。次に別の薬剤や別のモノクローナル抗体を用いた治療が考慮されます。

イブルチニブは、一部のCLL患者で持続的な寛解をもたらしている薬剤です。最初の治療や、ほかの治療で効果が出る可能性が低いCLL、ほかの治療で効果がみられなかった(難治性)または再発したCLLで使用できます。オビヌツズマブは、CLLと他の疾患を併発した高齢者に使用されることがあります。再発した人には、ときに造血幹細胞移植を行うことができます。

CLLの症状に対する治療

貧血は輸血のほか、ときにエリスロポエチンまたはダルベポエチン(赤血球の生産を促進する薬)の注射で治療します。血小板が少なくなると、出血につながることがあり、血小板数の減少は血小板輸血で治療します。感染症は抗微生物薬で治療します。リンパ節、肝臓、脾臓などの腫大が不快感を引き起こしていて、化学療法が無効に終わった場合は、腫れを軽減させるために放射線療法が用いられます。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 白血病リンパ腫協会:CLLとは(Leukemia & Lymphoma Society: What is CLL):診断、治療選択肢、最新の研究結果を含めた急性リンパ性白血病の様々な側面に関する一般的な情報

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