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凝固亢進状態

(血栓形成傾向)

執筆者:

Joel L. Moake

, MD, Baylor College of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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凝固亢進状態(血栓形成傾向とも呼ばれます)とは、血液が固まりやすくなったり過度に凝固したりする病態です。

  • 遺伝性疾患や後天性疾患によって、血液凝固が促進されることがあります。

  • 血のかたまりができると脚や腕が腫れてきます。

  • 凝固を調節している血液中のタンパク質が測定されます。

  • 抗凝固薬が必要になる人もいます。

凝固亢進状態の原因になる疾患のほとんどで静脈内に血栓が形成されるリスクが高まります。数は少ないものの、動脈と静脈の両方で血栓形成のリスクが高まる疾患もあります。

原因

凝固亢進状態を引き起こす病気には遺伝性のものがあります。これらの多くは、血液中で凝固を制御するタンパク質の量や機能が変化することによって起こります。以下に例を挙げます。

凝固亢進状態は、後天的な病気が原因で引き起こされることもあります。そのような病気としては、 播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群 播種性血管内凝固症候群(DIC) 播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群は、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気です。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こします。 感染や手術など、考えられる原因はいくつかあります。 必要以上の血液凝固は過度の出血を引き起こします。... さらに読む (がんで発生することが多い)や 抗リン脂質抗体症候群 抗リン脂質抗体症候群 バセドウ病を含む自己免疫疾患は女性に多い病気ですが、特に妊婦に多くみられます。自己免疫疾患で作られる異常な抗体は、胎盤を通過できるため、胎児に問題を引き起こす可能性があります。妊娠による影響は自己免疫疾患の種類によって異なります。 血栓が形成されやすい、または過剰に形成される病気である抗リン脂質抗体症候群は、妊娠中、以下の原因となる可能性... さらに読む (ループス「抗凝固因子」の存在を含む)があり、いずれも血液凝固因子の活性が過剰になるため、血液凝固のリスクが高まります。高ホモシステイン血症(多くの場合、 ビタミンB6 ビタミンB6欠乏症 ビタミンB6(ピリドキシン)は、炭水化物とアミノ酸、脂肪(脂質)の処理(代謝)のほか、正常な神経機能、赤血球の形成に必要不可欠です。皮膚を健康に保つのにも役立ちます。(ビタミンの概要も参照のこと。) 乾燥酵母、レバーなどの内臓肉、全粒粉シリアル、魚、豆類などには、ビタミンB6が豊富に含まれています。... さらに読む ビタミンB12 ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12(コバラミン)は葉酸とともに、赤血球の形成と成熟、および細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成に必要です。ビタミンB12はまた、正常な神経機能にも必要です。 (ビタミンの概要も参照のこと。) 肉(特に牛肉、豚肉、レバーなどの内臓肉)、卵、栄養強化シリアル、牛乳、アサリ、カキ、サケ科の魚、ツナ(マグロなど)などに... さらに読む 、または 葉酸 葉酸欠乏症 葉酸はビタミンB群の1つです。ビタミンB12とともに、葉酸は正常な赤血球の形成と細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成に必要不可欠な物質です。葉酸は胎児の神経系の正常な発達にも必要です。 生の緑色の葉野菜、アスパラガス、ブロッコリー、果物(特にかんきつ類)、レバーなどの内臓肉、乾燥酵母、栄養強化したパンやパスタおよびシリアル... さらに読む の欠乏によって生じる、ホモシステイン値の異常上昇)は 、凝固亢進状態の原因となる可能性があります。

凝固亢進状態とともに凝固リスクを高める要因は、ほかにもあります。その要因の多くは、人が十分に動き回ることができずに、静脈に血液が滞留してしまうような状態に関係しています。そういった例としては、麻痺状態、長時間の座位(特に、車や飛行機のような狭いスペースで座っている場合)、長期間の床上安静、手術を受けたばかりの状態、 心臓発作 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 急性冠症候群は、冠動脈が突然ふさがる(閉塞)ことによって起こります。閉塞の位置と量に応じて、不安定狭心症か心臓発作(心筋梗塞)が起こります。 急性冠症候群を発症すると、通常は胸部の圧迫感や痛み、息切れ、疲労などが起こります。 急性冠症候群が起きたと思ったら、まず救急車を呼んでから、アスピリンの錠剤を噛み砕いて服用します。... さらに読む 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) などがあります。 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全 も、血液を全身に循環させるためのポンプ機能が十分に働かなくなるため、血栓形成の危険因子になります。肥満や妊娠などで、静脈に加わる圧力が高い状態になってもリスクが高まります。

症状

遺伝性の凝固亢進状態では、年齢にかかわらず血栓ができる可能性がありますが、普通は青年期に入るまで血栓のリスクが上昇することはありません。

合併症

遺伝性疾患では、脚の深部の静脈に血栓ができて( 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症は、深部静脈に血栓(血液のかたまり)が形成される病気で、通常は脚で発生します。 血栓は、静脈の損傷や血液の凝固を引き起こす病気により形成される場合や、何らかの原因で心臓に戻る血流が遅くなることで形成される場合があります。 血栓によって、脚や腕の腫れが生じることがあります。... さらに読む 深部静脈血栓症 )、脚が腫れる人が多くみられます。脚の深部にできた血栓が 肺塞栓症 肺塞栓症 肺塞栓症は、血液のかたまり(血栓)や、まれに他の固形物が血液の流れに乗って肺の動脈(肺動脈)に運ばれ、そこをふさいでしまう(塞栓)病気です。 肺塞栓症は、一般に血栓によって発生しますが、別の物質が塞栓を形成して動脈をふさぐこともあります。 肺塞栓症の症状は様々ですが、一般に息切れなどがみられます。... さらに読む を引き起こすこともあります。深部静脈に血栓がいくつかできると、さらに重度の腫れや皮膚の変色が生じることがあります( 慢性深部静脈不全 慢性静脈不全症と静脈炎後症候群 慢性静脈不全症は、脚の静脈が損傷し、血液が正常に流れない状態です。静脈炎後症候群は、静脈内の血栓によって生じる慢性静脈不全症です。 慢性静脈不全症は、脚の不快感、腫れ、皮膚の発疹、変色、潰瘍を引き起こすことがあります。 静脈炎後症候群は、静脈の血栓を原因とする慢性静脈不全症です(深部静脈血栓症)。... さらに読む 慢性静脈不全症と静脈炎後症候群 )。ときに、血栓が脚の表面の静脈にできると、痛みや発赤を伴います( 表在性血栓性静脈炎 表在静脈血栓症 表在静脈血栓症は、表在静脈に炎症と血栓が生じた状態で、通常は腕や脚で起こります。 静脈の上の皮膚が赤く腫れて、痛みます。 医師は症状がみられる部位を診察しますが、検査は通常不要です。 病気が治まるまで、必要に応じて、痛みを軽減するために鎮痛薬を使用します。 (静脈系の概要も参照のこと。) さらに読む )。まれに、腕の静脈、腹部静脈、頭蓋内静脈に血栓が形成されることもあります。抗リン脂質抗体症候群でも、動脈や静脈に血栓ができることがあります。

診断

  • 血栓の具体的な原因を特定するための血液検査

  • 血栓の位置を特定する検査

血栓の素因とみられるものがなく、2回以上期間を開けて血栓ができたことがある場合は、凝固亢進状態の原因となる遺伝性疾患であることが疑われます。血栓が生じたのが初めてでも、家族に同じ病歴がある場合は、遺伝性が疑われます。また、若く健康で特に原因がない人に血栓が生じた場合も、遺伝性疾患の可能性があります。

血液検査を行い、凝固を調節している様々なタンパク質の量や活性を測定することで、凝固亢進状態を引き起こしている遺伝性疾患を特定します。

その他の検査は、どこに血栓ができるかによって異なります。脚に血栓があることが疑われる場合は、脚の静脈に閉塞がないか調べるために超音波検査を行います。肺塞栓症が疑われる場合は、肺の特殊な 核医学検査 胸部の画像検査 胸部の画像検査 またはCT検査を行います。

治療

  • 抗凝固薬

凝固亢進状態を引き起こす遺伝性疾患は治りません。2回以上血栓ができたことがある人では、生涯にわたってワルファリンという抗凝固薬を服用するよう勧められる傾向が特に高いようです。ワルファリンを服用している場合は、血液の凝固検査を頻繁に受ける必要があります。血栓が1回だけできたことがある人では、長期にわたって寝たきりになるなど、血栓を生じる危険性が高い場合、予防のためにワルファリンやヘパリンが注射されます。

頻繁な凝固検査を必要としない新たな種類の直接型経口抗凝固薬(DOAC)は、経口ワルファリンの有効な代替薬です。直接型経口抗凝固薬には、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンなどがあります。

高ホモシステイン血症では、欠乏しているビタミンのサプリメントによる治療が行われます。

その他の治療は、血栓の部位によって異なります。

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