人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。
細胞内の体液
細胞の周囲の体液
血液
体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。
一部の ミネラル ミネラルの概要 体の細胞が正常に機能するには、ミネラルが必要です。体は、以下のものを比較的大量に必要とします。 カルシウム 塩化物 マグネシウム リン さらに読む 、特に多量ミネラル(体内で比較的大量に必要とされるミネラル)は電解質として重要な役割を果たします。電解質は、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びるミネラルです。血液中の電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸)は、神経や筋肉の機能の調整、 酸塩基平衡 酸塩基平衡の概要 酸性度とアルカリ性度は、血液の重要な特性の1つです。血液を含むあらゆる溶液の酸性度やアルカリ性度は、pH値で表します。pH値は、0(強酸性)から14(強塩基性または強アルカリ性)までの範囲で表します。中間のpH7.0が中性です。正常な血液はわずかに塩基性で、血液のpH値の正常範囲はおよそ7... さらに読む および 水分バランス 体内の水分について 水分は体重の約半分から3分の2を占めます。脂肪組織は筋組織より水分の割合が少なく、女性は脂肪が多い傾向があるため、平均的な女性で水分が体重に占める割合は男性より低くなります(男性が60%に対して女性は52~55%)。高齢者や肥満の人も水分が体重に占める割合が低く、反対に出生時や乳幼児期では水分が体重に占める割合が高く(70%)なります。... さらに読む の維持を助けます。
各コンパートメントに含まれる体液の量は、そのコンパートメントの電解質の量(濃度)によって変化します。そのため、電解質、特に ナトリウム 体内でのナトリウムの役割の概要 ナトリウムは体内の 電解質のうちの1つで、体内で比較的大量に必要とされる ミネラルです。電解質は血液などの体液に溶けると電荷を帯びます。( 電解質の概要も参照のこと。) 体内のナトリウムは、ほとんどが血液中または細胞の周囲の体液中に存在しています。ナトリウムには体液のバランスを正常に保つ働きがあります(... さらに読む は、これらの体液コンパートメント内で正常な体液量を維持する働きを担っています。電解質濃度が高くなったコンパートメントには、体液が流入します(このプロセスを浸透圧と呼びます)。反対に電解質濃度が低くなったコンパートメントからは、体液が流出します。体は細胞内外に電解質を能動的に移動させて、体液量を調節することができます。したがって各コンパートメントの体液バランスを維持するには、適切な電解質濃度(電解質バランス)を保つことが重要です。
腎臓は血液から電解質と水をろ過して、一部を血液中に戻し、余剰分を尿中に排泄することで、 電解質濃度の維持を助ける働き 水分と電解質のバランス 腎臓は 尿路の中でもとりわけ特徴的な臓器で、ソラマメのような形をしています。左右とも長さは約12センチメートル、重さは約150グラムです。脊柱(背骨)の左右両側にあり、消化器系の臓器が納まっている空間(腹腔)より背中側に位置しています。 それぞれの腎臓には、大動脈から枝分かれした腎動脈と呼ばれる血管を通じて血液が流れ込みます。血液は腎動脈... さらに読む をしています。つまり、腎臓は電解質と水の日々の摂取および排泄のバランスをとる働きをしているといえます。
電解質のバランスが崩れると、様々な病気になります。例えば、バランスを崩す要因には次のようなものがあります。
脱水状態 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリ... さらに読む または 水分過剰 水分過剰 水分過剰は体内に過剰な水分がある状態です。 体の水分排泄能力を低下させる病気または体の水分貯留傾向を高める病気があると、水分過剰に陥る可能性があります。 水分を摂取しすぎても、腎臓が正常であれば過剰な水が容易に排泄されるため、水分過剰になることはまれです。 多くの場合、症状は現れませんが、重度の水分過剰では、錯乱やけいれん発作が起こること... さらに読む
特定の薬剤の使用
心臓や腎臓、肝臓の特定の病気
輸液や静脈内栄養の量が不適切