カルシウム濃度の低下は、副甲状腺の問題や、食事、腎疾患、特定の薬剤などが原因で発生します。
低カルシウム血症が進行すると、強い痛みを伴う筋肉のけいれんがよくみられ、そのほかに錯乱、抑うつ、忘れっぽくなる、唇や指や足のチクチク感、筋肉のこわばりと疼きなどの症状が現れることもあります。
通常は一般的な血液検査で発見されます。
低カルシウム血症の治療には、カルシウムとビタミンDのサプリメントが使用されます。
(電解質の概要 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む 、 体内でのカルシウムの役割の概要 体内でのカルシウムの役割の概要 カルシウムは体内に存在する 電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルですが、体内のほとんどのカルシウムは電荷を帯びていません。( 電解質の概要も参照のこと。) 体のカルシウムの99%は骨に蓄えられていますが、細胞(特に筋肉細胞)や血液中にもあります。カルシウムは以下の働きや過程に不可欠です。 骨と歯の形成 筋収縮 多くの酵素が正常に機能すること さらに読む も参照のこと。)
カルシウムは体内に存在する 電解質 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラル ミネラルの概要 体の細胞が正常に機能するには、ミネラルが必要です。体は、以下のものを比較的大量に必要とします。 カルシウム 塩化物 マグネシウム リン さらに読む です(しかし体内のほとんどのカルシウムは電荷を帯びていません)。体内の カルシウム 体内でのカルシウムの役割の概要 カルシウムは体内に存在する 電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルですが、体内のほとんどのカルシウムは電荷を帯びていません。( 電解質の概要も参照のこと。) 体のカルシウムの99%は骨に蓄えられていますが、細胞(特に筋肉細胞)や血液中にもあります。カルシウムは以下の働きや過程に不可欠です。 骨と歯の形成 筋収縮 多くの酵素が正常に機能すること さらに読む は、ほとんどが骨に蓄えられていますが、一部は血液中に含まれます。血液中のカルシウムの約40%は、血液中で主にアルブミンというタンパク質に結合しています。タンパク質と結合したカルシウムは細胞用の保存源であり、体内で作用を発揮することはありません。結合していないカルシウムだけが体の機能に影響を及ぼします。したがって、低カルシウム血症の症状は、タンパク質に結合していないカルシウムの濃度が低下したときにのみ現れます。非結合型のカルシウムは電荷を帯びている(イオンである)ため、カルシウムイオンとも呼ばれます。
原因
低カルシウム血症は、尿中に過量のカルシウムが排出された場合や、骨から血液中に流入するカルシウムの量が不十分な場合に発生するのが最も一般的です。低カルシウム血症の原因には以下のものがあります。
副甲状腺ホルモン濃度の低下(副甲状腺機能低下症)(甲状腺の手術中に副甲状腺が損傷した場合などに起こる)
副甲状腺ホルモンの値は正常であるにもかかわらず、このホルモンへの反応が欠如している(偽性副甲状腺機能低下症)
マグネシウム濃度の低下(低マグネシウム血症 低マグネシウム血症(血液中のマグネシウム濃度が低いこと) 低マグネシウム血症とは、血液中のマグネシウム濃度が非常に低い状態をいいます。 ( 電解質の概要、 体内でのマグネシウムの役割の概要も参照のこと。) マグネシウムは体内に存在する 電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルですが、体内の大半のマグネシウムは電荷を帯びておらず、タンパク質と結合しているか、骨に蓄えられています。血液中に含まれる マグネシウムはごく微量であるものの、骨や歯の形成および、神経や筋肉の正常... さらに読む )による、副甲状腺ホルモンの働きの低下
腎機能障害により、尿中へのカルシウム排出量が増加し、さらにビタミンDを活性化する腎臓の機能が低下する
カルシウムの摂取不足
カルシウム吸収を低下させる病気
リファンピシン(抗菌薬)、抗てんかん薬(フェニトインやフェノバルビタールなど)、ビスホスホネート(アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸)、カルシトニン、クロロキン、コルチコステロイド、プリカマイシン(plicamycin)などの薬剤
症状
血液中のカルシウム濃度がある程度低下しても、症状は出ないことがあります。カルシウム濃度が低い状態が長く続くと、皮膚は乾燥して角質が剥がれ落ち、爪はもろく、毛髪は粗くなります。背中や脚の筋肉に、強い痛みを伴うけいれんがよくみられます。やがて、脳に影響が及び、錯乱、記憶障害、せん妄、抑うつ、幻覚といった精神症状や神経学的症状が現れます。これらの症状はカルシウム濃度が回復すると消失します。
カルシウム濃度が極めて低くなると、チクチク感(唇、舌、指、足によくみられる)、筋肉痛、のどの筋肉のれん縮(呼吸困難に至る)、筋肉の硬直やれん縮(テタニー)、 けいれん発作 けいれん性疾患 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまる場合もあります。... さらに読む 、 不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む が現れます。
診断
血液中のカルシウム濃度の測定
低カルシウム血症は、症状が顕在化する前に通常の血液検査で見つかることがよくあります。血液中の総カルシウム濃度(アルブミンに結合しているカルシウムを含む)とアルブミン濃度を測定し、結合していないカルシウムの濃度が低下しているかどうかを判定します。
血液検査によって、腎機能の評価と、マグネシウム、リン、副甲状腺ホルモン、ビタミンDの各濃度の測定が行われます。原因を特定するために、血中の他の物質を測定することもあります。
治療
カルシウムのサプリメント
ときにビタミンD
たいていの場合、低カルシウム血症は経口のカルシウムサプリメントだけで治療できます。原因を特定して、低カルシウム血症を引き起こしている病気を治療するか薬剤を変更すれば、カルシウム濃度は元に戻ります。
症状が出ている場合には、カルシウムの静脈内投与が必要です。ビタミンDサプリメントは、消化管からのカルシウム吸収を増やすのに役立ちます。
副甲状腺機能低下症の人には、ときに合成副甲状腺ホルモンが投与されます。