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糖尿病の薬物治療

執筆者:

Erika F. Brutsaert

, MD, New York Medical College

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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糖尿病の人の多くは、血糖値を下げ、症状を緩和し、合併症を予防するために薬を必要とします。

糖尿病も参照のこと。)

糖尿病には、1型2型の2つの種類があります。

1型糖尿病の一般的な治療では、食事や運動を含む、生活習慣の変更を必要とあします。1型糖尿病の場合は、 インスリン注射のほか、指先採血による血糖値の頻繁なモニタリングが必要となります。

2型糖尿病の一般的な治療においても、減量や食事、運動を含む、生活習慣の変更を必要とします。2型糖尿病の人では、食事と運動のみで血糖値をコントロールできる人がわずかにいますが、ほとんどの人が血糖値を下げる薬(ときに インスリンを含む)を必要とします。2型糖尿病で薬を服用している場合は、1日数回の指先採血による血糖値のモニタリングがしばしば必要となります。

インスリンや多くの経口薬は、血糖値を過度に低下させて低血糖を招くおそれがあるため、薬による糖尿病の治療は慎重に行わなければなりません。

インスリン補充療法

1型糖尿病の人は、ほぼ必ず インスリン療法が必要で、これを行わないと状態が非常に悪くなります。2型糖尿病でも多くの人が インスリンを必要とします。 通常のインスリンは皮膚に注射します。一部の人のためにつくられた吸入式の インスリンもありますが、一般的には使用されていません。 インスリンは胃で破壊されるため、今のところ インスリンの経口投与はできません。経口で投与するものなど、 インスリンの新しい剤形が現在研究中です。

インスリンは通常、腕、太ももまたは腹部の皮下脂肪層に注射します。用いられる小型注射器は非常に針が細く、注射をしてもほとんど痛みを感じません。

インスリンペンは インスリン入りのカートリッジを備えており、 インスリンを携帯して使用する多くの人にとって便利な器具で、特に1日数回、自宅以外で注射が必要な人に有用です。

インスリンポンプを使う方法もあります。この装置は、皮膚に刺したままにした小さい針から インスリンを連続的に送り込みます。 インスリンを注入する速度は、時間によって調節できるほか、運動中かどうかなどのその他のパラメータによっても調整が可能です。食事の際や血糖値の上昇を是正するために、必要に応じて インスリンを追加で注入できます。このポンプによる注入は、体内で インスリンがつくられる場合とよく似ています。ポンプによる治療は1日に3回を超える注射が必要な一部の人で考慮されます。ポンプを使うと良好に血糖をコントロールできる人もいますが、ポンプの装着が煩わしいという人や、針を刺した部位がただれる人もいます。

ハイブリッド型クローズドループ インスリン注入システムという新しい装置が利用可能です。このシステム(ときに人工膵臓とよばれます)では、持続血糖測定からの入力に基づきアルゴリズムを用いて インスリンのベースライン用量を計算し、 インスリンポンプからインスリンを自動的に注入します。ただし、この装置を用いても、血糖値をモニタリングして食事の前に インスリンを追加投与する必要が完全になくなるわけではありません。

インスリンの種類

インスリンには4種類の基本型があり、作用が現れる速さと持続時間によって区別されます:

  • 超速効型インスリンには、リスプロ、アスパルト、グルリシンなどがあります。 これらのインスリンは作用が現れるのが最も速く、投与後1時間で最大の活性を示し、3~5時間持続します。超速効型インスリンは、食事開始時に注射します。

  • 速効型インスリン(レギュラー インスリンなど)は、超速効型インスリンよりも作用が現れるのがやや遅く、作用時間が長くなります。レギュラー インスリンは投与後2~4時間で最大の活性を示し、6~8時間持続します。食事開始の30分前に注射します。

  • 中間型インスリン(neutral protamine Hagedorn[NPH]、インスリンU-500)は、どの中間型インスリンを用いるかにもよりますが、0.5~2時間で効き始め、4~12時間後に最大の活性を示し、13~26時間持続します。この種類の インスリンは朝に注射して1日の前半分を供給するか、夕方使用して夜間のインスリンを供給します。

  • 持効型インスリン インスリングラルギン、インスリンデテミル、U-300インスリングラルギン、インスリンデグルデクなど)は、最初の数時間はほとんど作用がありませんが、20~40時間(使用する種類によって異なります)効果が持続します。

超速効型 インスリンと速効型インスリンはともに、1日に数回のインスリン注射が必要であり、食事の際には追加の注射を必要とする人でよく用いられます。

インスリンを組み合わせた製剤(すでに混合されているもの)もいくつか利用できます。さらに、高用量のインスリン投与が必要な場合には、濃縮型のインスリンも利用可能です。

吸入式 インスリンは、 インスリン注射ができない人やそれを望まない人が特定の状況下で使用します。吸入式 インスリンは、吸入器(喘息[ぜんそく]用吸入器に似たもの)で使用でき、肺に インスリンを吸い込むことで吸収されます。吸入式 インスリンは速効型 インスリンと似た作用があり、1日に数回吸入する必要があります。持効型 インスリンの注射が必要になることもあります。吸入式 インスリンを使用している間、医師は6~12カ月毎に肺機能を検査します。

インスリン製剤は、室温で最長1カ月間は安定しているため、持ち運びができ、職場や旅行にも携帯できます。ただし、 インスリンは極端な温度では保存すべきではなく、1カ月以上保存する場合は冷蔵庫に入れるべきです。

インスリンの種類と用量の選択

インスリンの選択は複雑です。どの インスリンが最良で、どのぐらいの用量が必要かを決定する際には、医師は以下の点を考慮します。

  • 産生された インスリンにどれぐらい体が反応するか

  • 食事後にどれぐらい血糖値が上昇するか

  • インスリンの代わりに他の血糖降下薬を用いることができるかどうか

  • 血糖値のモニタリングと インスリン量の調節が容易にできるか

  • インスリン注射がどれくらいの頻度でできるか

  • 日々の活動の幅はどれぐらいか

  • 低血糖の症状がでる可能性がどれぐらい高いか

ときに医師は、朝1回目の注射に超速効型と中間型の2つの インスリン を組み合わせて注射することを勧めます。夕食時か就寝時に、2回目の注射として片方または両方の インスリンを注射します。

一部の人では、毎日同じ量の インスリンを注射します。その他の人(特に1型糖尿病の場合)では、食事、運動、血糖値のパターンに応じて、特に食事時間近辺での インスリン投与量を調節します。さらに、体重に増減がある場合や精神的ストレスまたは病気(特に感染症)がある場合も、 インスリンの必要量が変わることがあります。

調節可能なインスリン投与法の1つとして、持効型 インスリンを朝晩注射し、さらに食事に合わせて超速効型 インスリンを数回注射するというものがあります。必要量の変化に応じて インスリンの量を調節します。1日の様々な時間に血糖値を測定しておくと、調節方法を決定する際の参考になります。この投与法では、治療の詳細に対して細かな注意を払うための糖尿病に関する豊富な知識が、患者に必要となります。

低血糖

インスリンを用いる治療で最もよくみられる合併症は低血糖です。低血糖は、血糖値を厳密に管理しようとする人でより多くみられます。

軽度から中等度の低血糖でみられる症状としては、頭痛、発汗、動悸、ふらつき、かすみ目、興奮、混乱などがあります。より重度の低血糖では、てんかん発作や意識の喪失が起こります。高齢者では、低血糖によって、脳卒中に似た症状が生じることがあります。

頻繁に低血糖が生じると、低血糖による症状を感じなくなるため、低血糖が起きていることに気づかない可能性があります(無自覚性低血糖)。

医師は、低血糖の症状を認識する方法やそれを治療する方法を患者に指導します。通常は、キャンディーやジュースなどの何か甘いものを摂取することで、素早く血糖値を上昇させることができます。低血糖が起こったときに服用できるようにブドウ糖の錠剤を携帯することもできます。低血糖が起こったときに、本人が非常に混乱して低血糖が起きていることに気づかない可能性があるため、家族に低血糖の徴候を伝えておくことが重要です。

インスリン抗体

注入された インスリンは正確には体がつくる インスリンとは異なるため、非常にまれではありますが、注入された インスリンに対して、体が抗体を産生する場合があります。最近の インスリン製剤ではこうした抗体の発生が少なくなっていますが、これらの抗体はインスリンの作用を妨げるため、非常に多量の インスリンが必要になります。

インスリンに対するアレルギー反応

インスリン注射は皮膚や皮下組織に影響を与えます。アレルギー反応はまれですが、痛みや熱感が生じ、それに続いて発赤、かゆみ、注射部位の周囲が数時間腫れることがあります。非常にまれではありますが、インスリンの注射後にアナフィラキシー反応が起こることがあります。

インスリンに対する皮膚反応

インスリン注射によって脂肪が蓄積してこぶのように膨らんだり、脂肪が破壊され皮膚にくぼみができたりします。このような皮膚反応はアレルギー反応ではありませんが、注入されたインスリンの吸収が悪くなる可能性があります。したがって、注射する部位を、ある日は太ももに、次の日は腹部、次は腕というように変えてこうした問題が起きないようにすることが重要です。

経口血糖降下薬

2型糖尿病では、経口血糖降下薬で血糖値を十分に下げることができます。ただし、1型糖尿病では効果がありません。経口血糖降下薬にはいくつかの種類がありますが、主なものは以下の4種類です。

  • インスリン分泌促進薬(膵臓[すいぞう]を刺激してより多くの インスリン産生を促す薬)

  • インスリン抵抗性改善薬( インスリンの分泌には影響を与えず、体のインスリンへの反応を促進する薬)

  • 腸でのブドウ糖の吸収を遅らせる薬

  • ブドウ糖の尿中への排泄を増やす薬

インスリン分泌促進薬には、スルホニル尿素薬(グリベンクラミドなど)やメグリチニド系薬剤(レパグリニドなど)があります。

インスリン抵抗性改善薬には、ビグアナイド系薬剤(例えば、メトホルミンなど)やチアゾリジン系薬剤(例えば、ピオグリタゾンなど)があります。

腸でのブドウ糖の吸収を遅らせる薬には、アルファグルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボースやミグリトールなど)があります。

ブドウ糖の尿中への排泄を増やす薬にはナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬(例えば、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなど)があります。

ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬(例えば、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン)は、インスリン産生量を増やすよう膵臓を刺激するとともに、腸でのブドウ糖の吸収を遅らせます。このような薬は グルカゴン様ペプチド1(GLP)を増加させることで作用します。

食事と運動で血糖値を十分に下げられない2型糖尿病患者には、しばしば経口血糖降下薬が処方されます。薬は毎朝1回だけ飲めばよいだけのこともありますが、1日2~3回服用が必要な人もいます。1種類の薬では不十分な場合は、経口薬を2種類以上、または経口薬1種類にインスリンあるいはグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)の注射剤が用いられることがあります。

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経口血糖降下薬

服用回数

主な副作用

ビグアナイド薬

ビグアナイド薬はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 下痢

  • 体液の酸性化(まれ)

  • 肝不全(まれ)

メトホルミン

1日2~3回

メトホルミン徐放製剤

1日1~2回

スルホニル尿素薬

スルホニル尿素薬はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 体重増加

  • 低血糖

心血管系の合併症によって死に至るリスクが上昇する可能性あり

アセトヘキサミド

1日1回

下痢

吐き気

体液貯留(浮腫)

クロルプロパミド

1日1回

血中ナトリウム減少

グリメピリド

1日1回

めまい

頭痛

グリピジド

1日1~2回

下痢

吐き気

血球数減少(貧血)

グリピジド、徐放製剤

1日1回

下痢

吐き気

グリベンクラミド

1日1~2回

消化不良

微粉化グリベンクラミド

1日1~2回

消化不良

トラザミド

1日1~2回

吐き気

嘔吐

トルブタミド

1日1~2回

頭痛

血球数減少

グリニド系

グリニド系はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 低血糖

ナテグリニド

1日3回

わずかな体重増加

レパグリニド

1日3回

チアゾリジン系

チアゾリジン系はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 体重増加

  • 体液貯留(浮腫)

  • 骨折リスクの上昇

ピオグリタゾン

1日1回

ロシグリタゾン

1日1~2回

心臓発作増加の可能性

アルファグルコシダーゼ阻害薬

アルファグルコシダーゼ阻害薬はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 下痢

  • 腹痛

  • 腹部膨満

  • ガス

アカルボース

1日3回

ミグリトール

1日3回

ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬

ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 頭痛

  • 上気道感染症

  • 膵臓の炎症(膵炎)のリスク上昇

アログリプチン

1日1回

関節痛

リナグリプチン

1日1回

下痢

サキサグリプチン

1日1回

関節痛

シタグリプチン

1日1回

下痢

関節痛

ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬

ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 尿量の増加

  • めまい

  • 性器の真菌感染症および尿路感染症のリスク上昇

SGLT2阻害薬は以下を引き起こす可能性あり

カナグリフロジン

1日1回

切断リスクの上昇(まれ)

ダパグリフロジン

1日1回

エンパグリフロジン

1日1回

注射用の血糖降下薬

インスリンは、最もよく使用されている注射用の血糖降下薬です。使用法についてはすでに説明済みです。

注射用の血糖降下薬にはほかに以下の2種類があります。

  • グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬

  • アミリンアナログ

注射用の血糖降下薬は、他の血糖降下薬とともに投与されます。

グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1受容体作動薬)には、主に膵臓からの インスリン分泌を増加させる作用があります。これらの薬には、胃からの食べものが出ていくのを遅らせる(血糖の増加を遅らせる)働きや、食欲を減退させ体重減少を促す働きがあります。GLP-1受容体作動薬は注射により投与します。最もよくみられる副作用は吐き気と嘔吐です。科学的根拠は不明ですが、膵炎(膵臓の有痛性の炎症)のリスクが上昇する可能性もあります。この薬は甲状腺髄様がんの病歴や家族歴がある人には投与すべきではありません。これは、動物での研究でいくつかの種類の甲状腺腫瘍のリスクが上昇することが示されたためですが、これまでのところ、ヒトにおけるこれらの腫瘍の増加は認められていません。

アミリンアナログは、アミリンという食後の血糖値の調節に関与する膵臓のホルモンに似た作用をもつ一群の薬剤です。プラムリンタイド(pramlintide)は現在利用できる唯一のアミリンアナログで、 グルカゴンというホルモンの分泌を抑制します。 グルカゴンは血糖値を上昇させるため、プラムリンタイド(pramlintide)は血糖値を下げるのに役立ちます。また、胃からの食べものが出ていくのを遅らせるため、満腹感の維持に役立ちます。注射により投与することができ、1型または2型糖尿病の人で食事の際の インスリンと併用されます。

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注射用の血糖降下薬*

投与回数

主な副作用

グルカゴン様ペプチド薬-1(GLP-1)受容体作動薬

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬はすべて以下を引き起こす可能性あり

  • 吐き気

  • 嘔吐

  • 下痢

膵臓の炎症(膵炎)やいくつかの種類の甲状腺がんのリスクが上昇する可能性もあり

アルビグルチド

週1回

デュラグルチド

週1回

エキセナチド

1日2回

腎障害(まれ)

エキセナチド徐放製剤

週1回

注射部位の結節

リラグルチド

1日1回

アミリンアナログ

プラムリンタイド(pramlintide

1日3回

吐き気

低血糖

*インスリンは最も多く使用されている注射用の血糖降下薬です。

糖尿病で投与される他の薬

糖尿病では心臓発作や脳卒中などの合併症のリスクがあるため、このような合併症を予防または治療するための薬を服用することが重要です。服用できない理由がない限りは(例えば、その薬に対するアレルギーがある)、以下の薬が投与されます。

  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬:糖尿病で高血圧または慢性腎臓病がある人に対して

  • アスピリン:糖尿病で心血管疾患の危険因子がある人に対して

  • スタチン:ほとんどの糖尿病の人に対して

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