甲状腺の良性の腫大は、食事中のヨウ素の不足またはある種の物質や薬の摂取が原因で発生することがあります。
ほとんどの場合、症状はありません。
血液検査により、甲状腺がどの程度機能しているかを判定します。
腫大の原因に対する治療を行い、ときに腫大した甲状腺の一部を手術で切除しなければならないこともあります。
(甲状腺の概要 甲状腺の概要 甲状腺は幅約5センチメートルの小さな腺で、首ののどぼとけの下方の皮膚のすぐ下にあります。甲状腺は2つの部分(葉)に分かれ、中央で結合し(峡部と呼ばれます)、蝶ネクタイのような形をしています。正常な甲状腺は外見では分からず、かろうじて触れることができる程度ですが、甲状腺が腫れて大きくなると、医師が触診すれば容易に分かるようになり、のどぼとけ... さらに読む も参照のこと。)
甲状腺腫という言葉は、他のタイプの甲状腺の腫大(例えば、炎症やがんによる腫大など)を指すために用いられることもあります。単純性非中毒性甲状腺腫は、特定の型の良性の腫大です。
世界のほとんどの地域における単純性非中毒性甲状腺腫の最も一般的な原因は以下のものです。
甲状腺はヨウ素を使って甲状腺ホルモンをつくります。十分なヨウ素がないと、それを代償しようと、甲状腺が大きくなります。しかし、米国ではほとんどの塩にヨウ素が添加されているため、ヨウ素の不足が甲状腺腫の原因となることはあまりありません。
その他の単純性非中毒性甲状腺腫の原因には以下のものがあります。
特定の薬の使用(アミオダロンやリチウムなど)
ある種の食べもの(キャッサバ、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなど)を異常に大量に摂取すること
思春期、妊娠期、更年期など、一時的な甲状腺腫がみられることがあります。
単純性非中毒性甲状腺腫があっても、つくられる甲状腺ホルモンの量は正常であるため、 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの産生が不十分になる病気で、身体の重要な機能が働く速度が低下します。 顔の表情が乏しく、声がかすれ、話し方はゆっくりになり、まぶたは垂れて、眼と顔が腫れます。 通常は1回の血液検査で診断が確定されます。 甲状腺機能低下症の人は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの投与を受ける必要があります。 甲状腺は、体内の化学反応が進行する速度(代謝率)を制御する甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホル... さらに読む や 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は甲状腺が働きすぎている状態で、甲状腺ホルモンの値が高く、身体の重要な機能が働く速度が上昇します。 バセドウ病は甲状腺機能亢進症の原因として最もよくみられます。 心拍数と血圧の上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、意図しない体重減少などの症状がみられます。 診断は血液検査により確定されます。 甲状腺機能亢進症の管理には、チアマゾールまたはプロピルチオウラシルが用いられます。 さらに読む
になることはありません。
症状
典型的には首の付け根が腫れますが、他の症状はみられません。ときに甲状腺腫により周囲の組織が圧迫され、せき、声がれ、呼吸困難、嚥下(えんげ)困難を生じることがあります。 亜急性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎は、甲状腺に起こる急性の炎症で、原因はおそらくウイルスと考えられます。 ( 甲状腺の概要も参照のこと。) 亜急性甲状腺炎は突然発生します。この病気では、炎症によって甲状腺が過剰な甲状腺ホルモンを分泌して 甲状腺機能亢進症が起こり、ほとんどの場合、続いて一時的な 甲状腺機能低下症が発生しますが、最終的に甲状腺機能は正常に回復します。 亜急性甲状腺炎はウイルス性の病気に続いて発生し、多くの人が初めに「のどの痛み」を感じますが、... さらに読む では、通常甲状腺に痛みを伴い、触れると圧痛があります。
診断
甲状腺機能検査
超音波検査および甲状腺の画像検査
医師は通常、血液検査を行い、甲状腺がどの程度機能しているかを調べます(甲状腺機能検査 甲状腺機能検査 甲状腺は幅約5センチメートルの小さな腺で、首ののどぼとけの下方の皮膚のすぐ下にあります。甲状腺は2つの部分(葉)に分かれ、中央で結合し(峡部と呼ばれます)、蝶ネクタイのような形をしています。正常な甲状腺は外見では分からず、かろうじて触れることができる程度ですが、甲状腺が腫れて大きくなると、医師が触診すれば容易に分かるようになり、のどぼとけ... さらに読む )。血液中の甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4、別名テトラヨードサイロニン)とトリヨードサイロニン(T3)、および甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量を測定し、甲状腺の機能を調べます。また、血液中の甲状腺を攻撃する抗体(抗甲状腺抗体)の有無も調べることがあり、これがあれば甲状腺に対する免疫反応によって炎症が起きていることが分かります。
また、放射性ヨード摂取率検査と 甲状腺の画像検査 甲状腺の画像検査 甲状腺は幅約5センチメートルの小さな腺で、首ののどぼとけの下方の皮膚のすぐ下にあります。甲状腺は2つの部分(葉)に分かれ、中央で結合し(峡部と呼ばれます)、蝶ネクタイのような形をしています。正常な甲状腺は外見では分からず、かろうじて触れることができる程度ですが、甲状腺が腫れて大きくなると、医師が触診すれば容易に分かるようになり、のどぼとけ... さらに読む を行います。検査に際し、患者は少量の放射性ヨード(放射性ヨウ素)を摂取(または注射で投与)します。この放射性ヨードは甲状腺に集まります。どれくらいのヨウ素が甲状腺に取り込まれたかがスキャナによって検出され、ガンマカメラ(放射線を検出します)で甲状腺の画像が作成されます。これらの検査では、 バセドウ病 原因 、甲状腺結節、または甲状腺炎を示唆しうるあらゆる甲状腺の異常を見つけることができます。
また、超音波を用いて甲状腺を画像化する超音波検査を行って、がんの可能性のある結節がないかを確認します。
治療
ときにヨウ素の補充
ときに甲状腺ホルモンの補充
ときに手術
治療法は、甲状腺腫の大きさや原因により異なります。
ヨウ素が不足している地域では、ヨウ素サプリメントが使用されています。ヨウ素不足を補うために、塩、水、農作物にヨウ素が添加されることもあります。甲状腺ホルモンの産生を阻害する食べものは中止する必要があります。
食事が原因でない場合は、レボチロキシンにより甲状腺ホルモンを補充することもあります。この薬により甲状腺刺激ホルモンの産生が抑制され、甲状腺腫が小さくなることがあります。
甲状腺腫が非常に大きい場合は、手術で甲状腺の一部を切除する必要が生じたり、放射性ヨードを投与して甲状腺を小さくしたりして、呼吸や嚥下の問題あるいは審美的問題を改善することがあります。