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多発性内分泌腫瘍症

執筆者:

Patricia A. Daly

, MD, University of Virginia;


Lewis Landsberg

, MD, Northwestern University Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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多発性内分泌腫瘍症はまれな遺伝性の病気で、いくつかの内分泌腺で良性(がんではない)腫瘍または悪性腫瘍(がん)が発生したり、腫瘍はできないものの腺が過剰に肥大したりします。

  • 多発性内分泌腫瘍症は、遺伝子変異により発生するため、家族内で遺伝する傾向がみられます。

  • 症状は多様で、影響を受けた内分泌腺によって異なります。

  • 家族の誰が多発性内分泌腫瘍症かは、遺伝子スクリーニング検査で発見できます。

  • 治癒(ちゆ)させる方法はありませんが、それぞれの内分泌腺に発生した異変を手術や薬で治療し、過剰なホルモン分泌を抑えます。

多発性内分泌腫瘍症は乳児や70代の高齢者でもみられ、通常は遺伝します。

多発性内分泌腫瘍症には1型、2A型、2B型の3つがありますが、ときにはこれらの症状が重複します。腫瘍や異常に大きくなった腺は、しばしばホルモンを過剰に分泌します。腫瘍または異常な増殖は、複数の内分泌腺で同時に発生することがありますが、多くの場合、変化は徐々に現れます。

多発性内分泌腫瘍症は、遺伝によって受け継がれた遺伝子変異により発生します。1型の原因である単一の遺伝子が確認されています。また、2A型と2B型では、1型と異なる1つの遺伝子に異常が確認されています。

病型

1型

多発性内分泌腫瘍症1型では、以下の腺の2つ以上で腫瘍または過剰な増殖と活性化が発生します。

  • 副甲状腺(首の付け根にある甲状腺に隣接する小さな腺)

  • 膵臓(すいぞう)

  • 下垂体(かすいたい)

  • 甲状腺(頻度は低い)

  • 副腎(頻度は低い)

多発性内分泌腫瘍症1型のほぼすべての患者に副甲状腺の腫瘍がみられます。腫瘍の大半は良性ですが、副甲状腺ホルモンを過剰に分泌します(副甲状腺機能亢進症)。過剰な副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を上昇させ、ときには腎結石の原因となります。

1型の患者の多く(30%から約80%)で、膵臓のホルモンを分泌する細胞(膵島細胞)にも腫瘍が発生します。

膵島細胞腫瘍のうち半数超がガストリンというホルモンを過剰に分泌し、それによって胃が刺激され、胃酸が過剰に分泌されます。ガストリンを産生する腫瘍があると、しばしば消化性潰瘍ができて出血し、穴が開いて(穿孔[せんこう])、胃の内容物が腹部に漏れ出したり、胃の働きが妨げられたりすることがあります。胃酸の濃度が高いと、膵臓から分泌される酵素の活性が妨げられ、下痢になったり脂肪性の悪臭のする便(脂肪便)が出たりします。このような膵島細胞腫瘍の中には、 インスリンを多量に産生するものがあり、その結果として(特に数時間食事していない場合)血糖値が大幅に低下します(低血糖)。残りの膵島細胞腫瘍は、血管作用性腸管ポリペプチドのような別のホルモンを分泌して重度の下痢や脱水症状を引き起こします。膵島細胞腫瘍の中には、ホルモンをまったく分泌しないものもあります。

膵島細胞腫瘍には悪性のものがあり、体の他の部位に広がる(転移する)可能性があります。1型の患者に発生する悪性の膵島細胞腫瘍は、1型ではない患者に発生する悪性の膵島細胞腫瘍よりも増殖速度が遅い傾向にあります。

1型の患者では、下垂体腫瘍が発生することもあります。下垂体腫瘍の中にはプロラクチンというホルモンを分泌するものもあり、その結果、女性では月経異常や授乳中ではないにもかかわらずしばしば乳汁分泌が起こり、男性では性欲減退や勃起障害(インポテンス)が起こります。また成長ホルモンを分泌する腫瘍もあり、先端巨大症を引き起こします。下垂体腫瘍のごく一部ですが、 副腎皮質刺激ホルモンというホルモンを分泌するものがあり、これにより副腎が過度に刺激されて、副腎皮質ホルモンの濃度が上昇し、クッシング症候群が発生します。少数ですが、ホルモンをまったく分泌しない下垂体腫瘍もあります。下垂体腫瘍は隣接する脳の一部を圧迫して、頭痛、視覚障害、下垂体の機能低下を引き起こす場合があります。

1型の一部の患者では、甲状腺と副腎の腫瘍または過剰な増殖と活性化が発生します。割合は低いものの、カルチノイド腫瘍という異なるタイプの腫瘍が発生することがあります。一部では皮膚の直下に良性の脂肪組織の増殖もみられます。

2A型

多発性内分泌腫瘍症2A型では、腫瘍または過剰な増殖と活性化が以下の腺のうち、2つまたは3つの腺でみられます。

2A型の患者では、皮膚アミロイド苔癬(たいせん)と呼ばれるかゆみを伴う皮膚疾患がときに起こることがあります。2A型患者の2~5%にヒルシュスプルング病がみられます。

ほぼすべての2A型患者が甲状腺髄様がんを発症します。患者の約40~50%は副腎腫瘍の1つである褐色細胞腫を発症し、腫瘍が産生する アドレナリンなどの物質によって血圧が上昇します。高血圧は間欠的なこともあれば持続的なこともあり、しばしば非常に重症になります。

一部の2A型患者では、副甲状腺の機能が亢進します。副甲状腺ホルモンの量が多いと、血液中のカルシウムの値が上昇します。カルシウムの値が上昇しても多くの場合症状は現れませんが、約25%の人で腎結石ができます。

2B型

多発性内分泌腫瘍症2B型には以下のものがあります。

2B型患者の多くは、家族内に同じ病気の人がいません(つまり家族歴がありません)。この場合、病気の原因は新たな遺伝子異常(遺伝子突然変異)です。

2B型の甲状腺髄様がんは若年で発症する傾向があり、生後3カ月の乳児が発症した報告例もあります。2B型の甲状腺髄様がんは2A型のものよりも増殖も進展も急速です。

2B型患者の大半で粘膜に神経腫がみられます。神経腫は唇の周囲、舌、口内に光沢のあるこぶとして現れます。神経腫はまぶたや、眼の表面の光沢のある部分(結膜や角膜など)にも現れます。まぶたや唇が厚くなったり、唇が裏返しになったりする(めくり返る)こともあります。

消化管の異常は便秘と下痢を引き起こします。ときおり、結腸が肥大して拡張します(巨大結腸症)。これらの異常は、腸管の神経から神経腫が増殖した結果と考えられます。

2B型では、しばしば脊椎の異常、特に背骨の弯曲(わんきょく)が起こります。また頭蓋骨、足や太ももの骨にも異常がみられます。多くの場合、手足が長く関節がゆるくなります。これらの異常の一部は、マルファン症候群の症状と類似しています。

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それぞれの多発性内分泌腫瘍症で発生する病態

病態

MEN 1型

MEN 2A型

MEN 2B型

副甲状腺機能亢進症(副甲状腺ホルモン高値)

95%以上

10~20%

膵臓腫瘍

30~80%

下垂体腫瘍

15~42%

甲状腺腫瘍(特に甲状腺髄様がん

95%超

95%超

褐色細胞腫(副腎の腫瘍)

40~50%

50%

粘膜の神経腫(神経周囲の腫瘍)

ほぼ100%

マルファン症候群の人と類似した体の特徴

ほぼ100%

MEN = 多発性内分泌腫瘍症。

診断

  • 遺伝子検査

  • 血液および尿中のホルモンの値

  • ときに画像検査

各タイプの多発性内分泌腫瘍症にみられる遺伝子の異常を調べる検査が利用できます。通常、多発性内分泌腫瘍症に典型的な腫瘍のいずれかを有する人や、この病気と診断された人の家族に対して、このような遺伝子検査が行われます。多発性内分泌腫瘍症は子どもの約半数に遺伝するため、家族のスクリーニング(ときには出生前でも)は特に重要です。

血液検査と尿検査を行い、ホルモンの値が上昇していないかを調べます。

腫瘍の位置を特定するために、超音波検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査などの画像検査も必要になります。

治療

  • 腫瘍の切除

  • 多くの場合、甲状腺の摘出

多発性内分泌腫瘍症を治す方法は分かっていません。治療は各内分泌腺のそれぞれの変化に対して行われます。

可能な場合は、手術で腫瘍を摘出します。摘出が不可能な場合(また、摘出する前にも)、薬を投与して、腺の機能亢進により引き起こされたホルモンの不均衡を是正します。腫瘍がなくても顕著な肥大や機能亢進がある場合は、腺の機能亢進を抑える薬で治療します。

甲状腺髄様がんは治療しなければ死に至ります。そのため、遺伝子検査で多発性内分泌腫瘍症2A型または2B型である証拠が得られれば、ほとんどの場合、医師から予防的な甲状腺の摘出が勧められます。この予防的手術は、甲状腺髄様がんの診断が確定していなくても行われます。他の甲状腺がんと違い、このがんは悪性度が高く放射性ヨードで治療できません。甲状腺が摘出されると、その後生涯にわたり甲状腺ホルモンを補充しなければなりません。甲状腺がんが他の場所に広がっている場合は、別の治療法(化学療法や他の薬など)が延命に役立つことがあります。褐色細胞腫は、適切な薬で血圧をコントロールしてから手術で切除する必要があります。

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