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ウィルソン病

(先天性銅中毒)

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

レビュー/改訂 2021年 12月
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本ページのリソース

ウィルソン病はまれな遺伝性疾患で、肝臓が正常時のように余分な銅を胆汁中に排泄せず、結果として肝臓に銅が蓄積して肝臓が損傷します。

  • 銅は肝臓、脳、眼やその他の臓器に蓄積します。

  • ウィルソン病の患者では、振戦(ふるえ)、発語困難、嚥下(えんげ)困難、協調運動障害、人格変化、肝炎がみられることがあります。

  • 血液検査と眼の診察が診断の確定に役立ちます。

  • 患者は、銅を除去するために薬を服用する必要があり、その後生涯にわたって銅の含有量が高い食品を避けなければなりません。

体内の銅のほとんどは肝臓、骨、筋肉に存在していますが、体のすべての組織に微量の銅が存在します。肝臓は、余分な銅を体内から取り除くために胆汁中に排泄します。ウィルソン病の患者では、肝臓が余分な銅を排泄しないため、肝臓に銅が蓄積して肝臓が損傷し、 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 を起こします。損傷した肝臓は銅を血液中に直接放出し、銅は脳や腎臓、眼など他の臓器へ運ばれて、そこでも蓄積します。

ウィルソン病の症状

症状は、通常は5~35歳で出始めますが、2~72歳のどの年齢でも始まることがあります。

患者のほぼ半数では、最初の症状は脳の損傷によって生じます。そうした症状には、振戦、発語困難、嚥下困難、よだれ、協調運動障害、けいれん性不随意運動(舞踏運動)、人格変化などがあり、統合失調症や躁うつ病などの精神病症状がみられることもあります。

虹彩(眼の色が付いた部分)の縁に金色または緑がかった金色の輪(カイザー-フライシャー輪)が現れることがあります。この輪は銅が蓄積すると生じます。少数の患者では、この輪がウィルソン病の最初の徴候となります。

知っていますか?

  • 眼の角膜の辺縁にみられる緑色がかった金色の輪は、ウィルソン病の徴候です。

ウィルソン病の診断

  • 眼の細隙灯顕微鏡検査

  • 血液と尿の検査

  • ときに肝生検

ウィルソン病の病歴をもつ家族がいる小児には、1歳になった後に検査を行います。それより早い時期に検査を行うと、ウィルソン病を見逃す可能性が高くなります。

ウィルソン病の治療

  • 食習慣の変更

  • 薬と亜鉛のサプリメント

  • 肝臓の移植を行う可能性あり

ウィルソン病の患者は、食事を銅の少ないものにする必要があります。避けるべき食品としては、牛レバー、カシューナッツ、ササゲ、野菜ジュース、甲殻類、キノコ類、ココアなどがあります。この病気の患者は、ビタミンやミネラルのサプリメントで銅が含有されるものを一切摂取すべきではありません。

蓄積した銅を除去するため、ペニシラミンやトリエンチンなどの銅と結合する薬を服用します。亜鉛のサプリメントは、銅が体に吸収されるのを防ぐことができ、ペニシラミンかトリエンチンが効果的でなかったり副作用が多すぎる場合に用いられます。亜鉛は、ペニシラミンやトリエンチンと結合でき、これらの薬が効果的でなくなるため、これらを服用する前後2時間以内には亜鉛を飲まないようにします。ウィルソン病の人は、ペニシラミン、トリエンチン、または亜鉛サプリメントを生涯にわたって服用する必要があります。

ウィルソン病は、生涯にわたって治療をしないと、一般的には30歳までに死に至ります。治療を受ければ通常、診断された時点でウィルソン病が進行していない限り、患者は問題なく暮らせます。

指示通りに薬を服用しない場合、特に若い人では、肝不全が生じることがあります。

この病気の患者は肝疾患の専門医を定期的に受診することが推奨されています。

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