ビタミンE(トコフェロール)には抗酸化作用があり、フリーラジカル(正常な細胞活動の副産物で、細胞内の化学反応に関与する)による損傷から細胞を守ります。フリーラジカルが関与する反応の中には、有害なものもあります。(ビタミンの概要も参照のこと。)
特定の病気の予防に役立てるために、多くの人がビタミンEのサプリメントを摂取しています。ビタミンEのサプリメントで、心臓や血管の病気が予防されることはありません。ビタミンEが、たとえ高用量でもアルツハイマー病の進行を遅らせるという説得力のある証拠はありません。ビタミンEのサプリメントが、遅発性ジスキネジア(抗精神病薬の副作用である、口、舌、腕、または脚の反復性の不随意運動)を予防するかどうか、喫煙者の前立腺がんのリスクを上下させるかどうかについては、議論があります。
ビタミンEは、ビタミンA、D、Kと同じく脂溶性ビタミンで、脂肪に溶け、多少の脂肪と一緒に食べた場合に最もよく吸収されます。植物油、ナッツ類、種子、緑色の葉野菜、小麦胚芽などには、ビタミンEが豊富に含まれています。
ビタミンE欠乏症
ビタミンEはわずかな量しか胎盤を通過しないため、新生児が体内に蓄えているビタミンEの量は比較的少量です。そのため、新生児(特に未熟児)ではビタミンE欠乏症のリスクが高くなります。しかし、乳児は通常母乳や市販の人工乳から十分な量のビタミンEが得られるため、年齢が増えるにつれてリスクは低下します。成人は脂肪組織に多量のビタミンEを蓄えることができ、欠乏症が起こりにくくなっています。
原因
ビタミンEの主要な摂取源は植物油であり、ビタミンEは多少の脂肪と一緒に食べた場合に最もよく吸収されるため、極端な低脂肪食ではビタミンEが不足します。脂肪の吸収を妨げる病気(特定の肝疾患や胆嚢疾患、膵炎、嚢胞性線維症など)によっても、ビタミンEの吸収量が減少し、ビタミンE欠乏症のリスクが高くなることがあります。
米国やその他の先進国では、年長児や成人ではビタミンE欠乏症はまれであり、ビタミンE欠乏症の原因には通常次のようなものが挙げられます。
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脂肪の吸収を妨げる病気(吸収不良を引き起こす病気)
発展途上国では、ビタミンE欠乏症の最も一般的な原因は以下のものです。
症状
診断
治療
ビタミンEの大量摂取
(ビタミンE中毒)
多くの成人では、比較的多量のビタミンEを数カ月から数年摂取しても明らかな害はみられません。しかし、高用量のビタミンEによって出血のリスクが高まる可能性があり、特に抗凝固薬(特にワルファリン)など、血栓をできにくくする薬を服用している成人でよくみられます。ときに、非常に高用量のビタミンEを摂取している成人で、筋力低下、疲労、吐き気、下痢がみられることがあります。
ビタミンE中毒の診断は、ビタミンEのサプリメントの使用歴と症状に基づいて下されます。
ビタミンE中毒の治療としては、ビタミンEのサプリメントの使用を中止します。必要であれば、出血を止めるために血液の凝固を助けるビタミンKが投与されます。