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チアミン

(ビタミンB1、サイアミン)

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

最終査読/改訂年月 2018年 9月
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ビタミンの一種であるチアミン(ビタミンB1)は多くの食物に含まれています。チアミンは、炭水化物(エネルギーの産生)、タンパク質、脂質を処理する過程(代謝)と、神経および心臓の正常な機能に必要不可欠です。

チアミンに毒性はありません。

乾燥酵母、全粒穀物、肉(特に豚肉とレバー)、栄養強化シリアル、ナッツ類、豆類、ジャガイモなどにはチアミンが豊富に含まれています。

チアミン欠乏症

  • 主として白小麦粉や白砂糖、その他の高度に精製された炭水化物から成る食事は、チアミン欠乏症の原因となることがあります。

  • 最初は疲労や易怒性などの漠然とした症状がみられますが、重度の欠乏症(脚気)では神経、筋肉、心臓、脳に影響が及ぶことがあります。

  • 診断は、症状と、チアミンのサプリメントに良好な反応を示すかに基づいて下されます。

  • チアミンのサプリメント(通常は服用する)によってチアミン欠乏症を改善できます。

チアミン欠乏症はしばしば、他の種類のビタミンB欠乏症とともに起こります。

原因

チアミン欠乏症は、以下のものから生じることがあります。

  • 食事からのチアミンの摂取不足

重度の食欲不振のある若い成人や、食事が主として高度に精製された炭水化物(精白米、白小麦粉、白砂糖など)から成る人では、チアミンを十分に摂取していないことがあります。精米すると、ほぼすべてのビタミンが取り除かれます。

アルコール依存症の人は、食事の代わりに飲酒することが多く、十分にチアミンを摂取しないため、チアミン欠乏症になるリスクが高いといえます。さらに、アルコールはチアミンの吸収と代謝を妨げる可能性があり、身体のチアミン必要量を増加させることがあります。

チアミン欠乏症は、以下のものから生じることもあります。

  • 甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)、妊娠、授乳、激しい運動、発熱などの、身体のチアミン必要量を増加させる病気や状態

  • 肝疾患など、チアミンの代謝を妨げる病気

  • 長期間にわたる下痢など、チアミンの吸収を妨げる病気

症状

チアミン欠乏症の初期症状は漠然としています。初期症状には、疲労、易怒性、記憶力の低下、食欲減退、睡眠障害、腹部不快感、体重減少などがあります。

やがて、神経、心臓、脳の異常を特徴とする重度のチアミン欠乏症(脚気)が発生することがあります。脚気のタイプが異なると、症状も異なります。

乾性脚気

神経および筋肉の異常が起こります。症状としては、つま先にピンや針で刺されているようなチクチクする感覚、足に焼けつくような感覚が生じて夜間に特に激しくなる、脚の筋けいれんや痛みなどがあります。筋力低下や筋肉の萎縮がみられることもあります。欠乏症が悪化した場合は腕にも影響が及びます。

湿性脚気

心臓の異常が起こります。心臓が押し出す血液量が増加して鼓動が速くなります。血管が拡張して皮膚が温かく湿っぽくなります。心臓はこのレベルで働き続けることはできないため、最終的に心不全が生じます。その結果、体液が脚(浮腫)や肺(うっ血)にたまり、血圧が下がりショックを起こして、ときには死に至ることもあります。

脳の異常

チアミン欠乏症によって、主にアルコール依存症患者で、脳の異常が起こります。脳の異常は、アルコールの過剰摂取などチアミン欠乏症を悪化させることが起こるまで、何の症状も起こさずに存在していることがあります。また脳の異常は、アルコール依存症患者が炭水化物の静脈内投与を受けた後に症状を引き起こすこともあります。症状は、そうした余分な炭水化物によってチアミンの必要量がさらに増加するために起こります。このような脳の異常はウェルニッケ-コルサコフ症候群と呼ばれ、これは次の2つから構成されています。

  • ウェルニッケ脳症は、錯乱、無関心、歩行困難、不随意の眼球運動(眼振)や眼の部分麻痺などの眼の問題を引き起こします。ウェルニッケ脳症は速やかに治療しないと、症状が悪化し、昏睡や死に至ることもあります。

  • コルサコフ精神病は、最近の出来事の記憶障害、錯乱、記憶の欠落を埋めるために話を作る傾向(作話)を引き起こします。

乳児脚気

この脚気は、チアミン欠乏症の母親から授乳を受けている乳児(通常生後3~4週間)に起こります。このような乳児では、心不全が突然起こることがあります。ある程度の失声(声が出なくなること)が起こったり、特定の反射がみられないことがあります。

診断

  • 身体診察

  • チアミンのサプリメントを摂取すると症状が緩和される

チアミン欠乏症の診断は、症状に基づいて下されます。

診断を確定する簡便な検査はありません。考えられる他の原因の可能性を否定するため、通常は電解質の値を測定する血液検査を行います。

チアミンのサプリメントを投与して症状が緩和されれば、診断が確定します。

治療

  • チアミンのサプリメント

どのタイプでも、チアミン欠乏症はチアミンのサプリメントで治療します。通常は経口投与します。症状が重い場合は、静脈から投与します。チアミン欠乏症はしばしば他の種類のビタミンB欠乏症とともに起こるため、通常は数週間総合ビタミン剤が投与されます。患者は、健康的な食事をして、ビタミンを1日当たりの推奨摂取量の1~2倍摂取するように指導されます。アルコールは一切飲んではいけません。

緊急治療を要するウェルニッケ-コルサコフ症候群は、高用量のチアミンを数日間にわたって静脈または筋肉に注射して治療します。飲酒は止めなければなりません。

特にアルコール依存症患者などチアミン欠乏症が疑われる人で、静脈から栄養補給をしなければならない場合には、まずチアミンのサプリメントが投与されます。この点滴にはブドウ糖が含まれます。チアミンはブドウ糖の処理(代謝)に必要であるため、ブドウ糖はチアミン欠乏症の引き金や症状悪化の原因になることがあります。チアミンのサプリメントを最初に投与することで、ウェルニッケ-コルサコフ症候群の発生や悪化を予防できます。

治療により、大半の人は完全に回復します。ウェルニッケ-コルサコフ症候群の人の一部は、脳に何らかの永続的な損傷を受けることがあります。脚気の症状は、回復したようにみえても、何年も経ってから再発することがあります。

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