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解離性同一症

(多重人格障害)

執筆者:

David Spiegel

, MD, Stanford University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 7月
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解離性同一症(解離性同一性障害とも呼ばれます)は、かつては多重人格障害と呼ばれていた精神障害で、複数の人格が同一人物の中にコントロールされた状態で交代して現れるものです。また、日々の出来事や重要な個人情報、トラウマになった出来事(外傷的出来事)やストレスになる出来事など、通常なら容易に思い出せるはずの情報を思い出すことができません。

  • 小児期に極度のストレスを受けると、自己の経験をまとまりのある1つの自己同一性(人格)に統合できなくなることがあります。

  • 患者には複数の人格があり、日々の出来事や重要な個人情報、外傷的出来事やストレスになる出来事などについて記憶の空白がみられるほか、抑うつや不安など他の症状も多くみられます。

  • 徹底的な精神医学的面接と専用の質問票の使用(ときに催眠や鎮静薬も併用します)が診断を下すのに役立ちます。

  • 集中的な精神療法が、複数の人格を1つに統合したり、あるいは少なくとも人格同士に協調性をもたせたりするのに役立つことがあります。

解離症の概要も参照のこと。)

解離性同一症の患者数は分かっていません。ある小規模な研究では、1年間の調査で約1.5%の人にこの病気が認められました。

解離性同一症には以下の種類があります。

  • 憑依型

  • 非憑依型

憑依型では、別の人格が患者を外部から支配する存在のようにみえます。こうした別の人格は、超自然的な存在や霊魂(しばしば悪魔や神であり、過去の行い対する罰を与えようとする場合もあります)と表現されることもありますが、ときに別の人間(しばしば死別した人で、ときに劇的に振る舞います)であることもあります。いずれのケースでも、普段の患者とは大きく異なる話しぶりや振舞いがみられます。そのため、周りの人が別の人格に気づきます。多くの文化において、同様の憑依現象が地域の文化や宗教の中で普通にみられ、それらは病気とみなされません。これとは対照的に、解離性同一症では、別の人格は望ましいものではなく、強い苦痛や障害の原因になり、患者が置かれた社会的状況、文化、または宗教にふさわしくない時期や場所で現れます。

非憑依型は、周りの人にとってそれほど明らかにならない傾向があります。自己の感覚が突然変わったように感じることがあり、おそらくは自身を主体としてではなく、自分の会話、感情、行動の観察者であるかのように感じています。

原因

解離性同一症は通常、小児期に圧倒的なストレスや心的外傷(トラウマ)を経験した人で発生します。米国、カナダ、欧州では、この病気をもつ人の約90%が小児期にひどい虐待(身体的、性的、または情緒的虐待)やネグレクトを受けていました。虐待を受けたことはないものの、幼少時に大切な人をなくしていること(親との死別など)や重い病気など、圧倒的なストレスがかかる出来事を経験していた人もいます。

小児はその成長過程で、様々な種類の複雑な情報や経験を、複雑ながらまとまりのある1つの人格に統合する方法を習得しなければなりません。人格の発達過程にある小児期に性的虐待や身体的虐待を受けると、単一の統合された人格を形成する能力に永続的な影響が生じることがあり、特に虐待者が親や養育者であった場合、その傾向が強くなります。

虐待を受けている小児は、生きていく上で経験する様々な知覚、記憶、感情を隔離する段階を経ることがあります。時間が経つにつれて、そのような小児は「逃げ出し」たり、残酷な物理的環境から自分を引き離したり、自分の殻に引きこもったりすることで、虐待を回避する術を覚えるようになります。それぞれの段階やトラウマ体験によって、別の人格が形成されることがあります。

しかし、このような傷つきやすい小児でも、本当の愛情をもった大人から十分な保護を受けて安心感を得ることができれば、解離性同一症を発症する可能性は低くなります。

症状

解離性同一症は慢性の精神障害であり、日常生活が困難になる可能性もありますが、多くの人は日常生活に支障をきたさず、創造的で生産的な生活を送ります。

解離性同一症に典型的な症状がいくつかあります。

健忘

健忘には次のようなものがあります。

  • 過去の個人的な出来事についての記憶の空白:小児期や青年期の一定期間のことを思い出せないなど

  • 現在の日々の出来事や熟練した技能についての度忘れ:コンピュータの使い方を一時的に忘れるなど

  • 記憶にないことを自分がやったという証拠の発見

一定期間の記憶が欠落していることに本人が気づいている場合もあります。

健忘が発生した後に、自分で説明できない物品や見覚えのない物品を自宅の押入れの中で発見したり、手書きのメモなどを見つけたりすることがあります。また、最後に覚えているのとは違う場所にいることに気づき、なぜ、どのようにしてそこにたどり着いたのか見当がつかないこともあります。解離性同一症では、自分がしたことを覚えていなかったり、自分の行動の変化を説明できなかったりすることがあります。記憶にないことを言ったり、したりしたと他者から指摘されることもあります。

複数の人格

憑依型では、別の人格の存在が家族や第三者にも明白になります。明らかに普段と異なる言動がみられ、まるで別の人間や存在が乗り移っているように見えます。

非憑依型では、多くの場合、傍目から見て別の人格の存在は明白ではありません。この種類の解離性同一症の人は、別人が乗り移っているかのように振る舞うのではなく、まるで自分が出演している映画を見ているかのような、あるいは別の誰かを見ているかのように、自分が自身の様々な要素から切り話されているように感じることがあります(この症状を離人感と呼びます)。突然、自分でコントロールできず、自分のものとは思えないことを考えたり、感じたり、言ったり、行ったりすることがあります。態度、意見、好み(例えば、食べもの、衣服、関心)が突然変わり、その後元に戻ることもあります。これらの症状の一部(食べものの好みの変化など)は他者から観察可能です。

自分の体が変わったように感じたり(例えば、小さな子どもや異性など)、自分のものではないように思えたりすることがあります。自身を一人称複数形(私たち)で呼んだり、三人称(彼、彼女、彼ら)で呼んだりすることもありますが、その理由が自分で分からないこともあります。

複数の人格の中には、他の人格が知らない重要な個人的情報を知っている人格が存在することがあります。複雑な内的世界の中で、いくつかの人格が互いの存在を知っていて、人格間でやり取りがあるようにみえる場合もあります。例えば、人格Aは人格Bの存在を知っていて、まるでBを観察しているかのようにBの行動を把握しているといった場合があります。人格Bは人格Aの存在を認識している場合もあれば、そうでない場合もあり、同居する他の人格についても同様のことがいえます。人格が入れ替わり、入れ替わる前の人格のとった行動を認識していない場合には、しばしば生活に大きな混乱が生じます。

人格が互いにやり取りをするために、声が聞こえると報告する患者もいます。その声は複数の人格間の内的な会話であることもあれば、当人に直接話しかけ、その行動について意見を言う場合もあります。複数の声が同時に話をし、非常に混乱する場合もあります。

解離性同一症では、別の人格、声、記憶などが日々の活動に侵入してくる体験もします。例えば、怒っている別人格のせいで、職場で突然、同僚や上司を怒鳴りつけるといった具合です。

その他の症状

解離性同一症の人は、しばしば他の精神障害や各種の身体疾患に似た一連の症状を訴えます。例えば、重度の頭痛などの肉体的な苦痛が生じることがよくあります。その時々で異なる症状群が生じます。なかには、実際に別の病気の存在を示唆する症状もみられますが、過去の体験が侵入して、それが症状に反映されている場合もあります。例えば、悲しみに沈んでいる状態はうつ病の併発を示唆することもありますが、複数ある人格の1つが過去の不幸に根ざした感情を再体験している場合もあります。

気分が落ちこみ、不安になる患者が多くいます。自分を傷つける(自傷行為)傾向もあります。物質乱用、自傷行為、自殺行動(自殺を考える自殺念慮と自殺を試みる自殺企図)、性機能障害などがよくみられます。虐待を受けた過去のある人の多くと同様に、患者は危険な状況を探してその中にとどまることがあり、トラウマを再体験しやすい傾向があります。

別の人格の声が聞こえることに加え、他の種類(視覚、触覚、嗅覚、味覚)の幻覚を経験することもあります。幻覚がフラッシュバックの一部として生じることもあります。このため、解離性同一症が統合失調症などの精神病性障害として誤診されることがあります。しかし、このような幻覚症状は精神病性障害に典型的な幻覚とは異なります。解離性同一症の人は、このような症状が別の人格、つまり自分の頭の中から生じたものとして経験します。例えば、別の誰かが自分の眼を使って泣こうとしているかのように感じたりします。統合失調症の人は通常、幻覚が外部の自分以外のところから生じると考えます。

患者はしばしば、自分の症状やそれが他者に及ぼす影響を隠したり軽視したりしようとします。

診断

  • 医師による評価

解離性同一症の診断は、患者の病歴と症状に基づいて下されます。

  • 患者には複数の人格があり、自分自信であるという感覚や自分の意思で行動できるという感覚が崩壊しています。

  • 日々の出来事、重要な個人情報、トラウマになる出来事など、普通なら忘れることのない情報について、記憶の空白がみられます。

  • その症状によって強い苦痛を感じているか、その症状のために社会的な状況や職場で役割を果たすことができなくなっています。

詳細な精神医学的面接を行うとともに、解離性同一症を特定し、他の精神障害の可能性を否定するために作成された専用の質問票を使用します。特定の症状を説明できる身体的な病気がないかどうかを調べるために、身体診察が必要になる場合もあります。

面接は、ときに長時間にわたることもあり、患者をリラックスさせる目的で、催眠や鎮静薬を慎重に静脈から投与して面接を行うこともあります。受診と受診の間で日誌をつけるように指示することもあります。これらの方法を用いることで、面接中に別の人格が現れたり、患者の記憶の空白期間に関する情報が明らかになったりする可能性が高まります。

また、患者が思い出せないことや誰か他の人がやったように思える行動に関わっている人格と話をするように患者を促すことで、医師が別人格との直接の接触を試みることもあります。

医師は通常、解離性同一症を詐病(何らかの利益を得るために偽りの身体的または精神的症状を訴えること)と区別することができます。詐病の場合は以下の傾向がみられます。

  • この病気のよく知られた症状を強調して訴え、それ以外の症状は控えめに訴える傾向がある

  • ステレオタイプな別人格を創り出す傾向がある

  • 通常は、この病気であることを楽しんでいるように見える(解離性同一症の人は多くの場合、この病気を隠そうとします)

患者がこの病気を装っていると疑えば、医師は複数の情報源から集めた情報を照合することにより、解離性同一症の否定につながる矛盾がないかチェックすることもできます。

予後(経過の見通し)

一部の症状は自然に現れたり消えたりすることもありますが、解離性同一症が自然に消失することはありません。

どの程度回復するかは、患者の症状や病状と、患者が受けている治療の質や期間によって異なります。例えば、重篤な精神障害を併発している場合、日常生活に支障をきたしている場合、自分を虐待した相手に依然として深い愛着を抱いている場合は、あまり良好な経過は望めません。このような患者には長期の治療が必要であり、治療が成功する見込みも低くなります。

治療

  • 精神療法

  • ときに誘導イメージ療法と催眠

通常、解離性同一症の治療目標は、複数の人格を1つに統合することです。ただし、必ずしも成功するとは限りません。統合が難しい場合は、複数の人格同士の関係に協調性をもたせ、正常に役割を果たせる状態にすることを目標にします。

薬物療法は、不安や抑うつなど特定の併存症状を改善させることはありますが、この病気自体に効果を示すことはありません。

複数の人格を統合するための主な治療法は、精神療法です。

精神療法は、しばしば長く困難なものとなり、精神的な苦痛を伴います。複数の人格がとる行動や、治療中にトラウマ体験の記憶がよみがえって生じる絶望感から、何度も精神的な危機的状態に陥る恐れがあります。つらい時期を乗り越え、特に苦痛に満ちた記憶に向き合えるようになるまで、患者は精神科に何度か入院しなければならない場合もあります。入院中は継続的にサポートとモニタリングを受けます。

解離性同一症に対する有効な精神療法の重要な要素として、以下のものが挙げられます。

  • 強い感情を安定させる方法の指導

  • 複数の人格間の関係の交渉

  • トラウマ体験の記憶への対処

  • さらなるトラウマ体験からの保護

  • 患者と精神療法家との良好な関係の確立とその強化

ときに精神療法家は、患者が自分で心を落ち着けること、出来事についての見方を変えること、少ししか耐えられない場合もあるトラウマ体験の記憶の影響を徐々に弱めることを支援するために、催眠などの技法を用いることもあります。ときに催眠療法が、別人格を呼び出して対話を促し、人格の交代をコントロールするのに役立つ可能性があります。

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