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自殺行動

執筆者:

Paula J. Clayton

, MD, University of Minnesota School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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本ページのリソース

自殺行動には、自殺既遂と自殺企図(自殺未遂のこと)が含まれます。自殺について考え、計画することは、希死念慮と呼ばれます。

  • 自殺は通常、多くの要因が相互に絡み合って起こり、たいていはうつ病がその中に含まれます。

  • 自殺方法には死に至る確率が高いもの(銃など)もありますが、致死率の低い方法を選択したからといって、必ずしも本気でなかったことを意味するものではありません。

  • 自殺するという脅しや自殺企図は、真剣に受け止め、援助の手を差し伸べるべきです。

  • 自殺を考えている人は、電話のホットラインを利用して相談に乗ってもらうことができます。

小児と青年における自殺行動も参照のこと。)

自殺行動には以下のものがあります。

  • 自殺既遂:意図的に自分を傷つける行為によって死に至ったもの。

  • 自殺企図:死ぬことを目的として自分を傷つけたものの、結果として死に至らなかったもの。自殺企図ではけがが生じることもあれば、生じないこともあります。

非自殺的な自傷行為とは、死に至ることを意図せずに自分を傷つける行為のことです。このような行為には腕に傷をつける、タバコで自分の体を焼く、ビタミン剤を過剰摂取することなどがあります。非自殺的な自傷行為は、緊張を緩和するための方法であったり、なおも生きたいと願う人が助けを求める訴えであったりする場合もあります。それらの行為を軽く片付けてはいけません。

自殺の頻度に関する情報源は、主に死亡証明書や調査報告であるため、おそらくは実際の自殺率よりも低く見積もられています。それでも、自殺行動はよくみられる健康問題です。自殺行動は、性別、年齢、人種、信条、収入、教育水準、性的指向を問わず、あらゆる人々でみられます。自殺を特徴づける典型的な特徴はありません。

世界における自殺者数

世界全体で毎年およそ800,000人が自殺により死亡しています。

自殺は15~29歳の年齢層での死因の第2位でした。

研究データから、自殺を試みる人の数は実際に自殺する人の数よりもはるかに多いとみられています。その比率は国、宗教、性別、年齢、方法によって異なります。

米国における自殺者数

米国では、2016年に45,000人近くの人が自殺しました。平均すると、毎日123件の自殺が発生していることになります。

2016年の自殺率は以下の通りでした。

  • 45~54歳が最も高い

  • 85歳以上が2番目に高い

主な死因の1つとして、自殺は全体の10位を占めています。若年層での死因としての自殺の順位は、以下のようになっています。

  • 10~14歳では3位

  • 15~34歳では2位

どの年齢層でも、自殺する人の数は4:1ほどの比率で男性の方が女性より多くなっています。その理由は不明ですが、以下の要因が関係していると考えられています。

  • 男性が問題を抱えている場合、友人や医療従事者に助けを求める可能性が低い。

  • 男性では、自殺行動に寄与するとみられるアルコール乱用や薬物乱用が多い。

  • 男性は自殺を試みる際に、より積極的で致死率の高い方法を用いる。

  • 男性の自殺者の数には、軍人と退役軍人の自殺が含まれている。どちらの集団も、女性より男性の占める比率が高い。

人種・民族別の自殺率は、2016年には、アメリカンインディアンとアラスカ先住民が最も高く、ヒスパニック系以外の白人が2番目に高くなっていました。

知っていますか?

  • 自殺は若年層における主な死因の1つになっていますが、年代別の自殺率は45~54歳が最も高く、85歳以上が2番目に高くなっています。

  • 男性の方が女性より自殺が多くみられます。

  • 自殺する人よりもはるかに多くの人が自殺を試みています。

米国における自殺未遂者数

米国では毎年、100万人以上の人が自殺を試みています。自殺を試みる人は実際に自殺する人の約25倍多くいます。多くの人が繰り返し自殺を試みます。しかし、自殺を試みた人で最終的に自殺により死亡するのは5~10%のみです。自殺企図が特に多くみられるのは、青年期の女子です。15~19歳の女子では、自殺1件当たり100件の比率で自殺企図が起きており、自殺企図の頻度は男子と比べて100倍高くなっています。全年齢層でみると、女性の自殺企図の割合は男性の2~3倍ですが、実際に死に至る可能性は男性の方が4倍高くなっています。高齢者では、自殺1件当たり4件の比率で自殺企図が起きています。

自殺を試みた人では、それ以外の人と比べて、余命が有意に短くなります。こうした余命の短縮の大部分は、自殺未遂者が後に自殺してしまうことでなく、身体的な病気によるものとみられています。

原因

自殺する人のおよそ6人に1人が遺書を残し、ときに自殺の理由を知る手がかりになります。

自殺行動は、一般にいくつかの要因の相互作用の結果として起こります。

自殺行動につながる要因として最も多くみられるのは、以下のものです。

うつ病双極性障害の一部としてのうつ病を含みます)は、自殺企図の約半数に関係していて、自殺既遂での割合はさらに高くなっています。うつ病は、思いがけず突然に起こる場合もあれば、最近体験した喪失や悲惨な出来事が誘因になる場合や、複数の要因が組み合わさって起こる場合もあります。うつ病の人では、夫婦間の問題、最近の逮捕や法律上のトラブル、恋愛上のトラブルや破局、親との確執やいじめ(青年の場合)、愛する人の喪失(特に高齢者の場合)などが、自殺企図のきっかけになります。うつ病の人に強い不安もみられる場合は、自殺のリスクが高くなります。

特定の身体的な病気に苦しむ人が、抑うつ状態に陥って自殺を試みたり、遂げたりすることがあります。自殺率の上昇と関連する身体的な病気は、そのほとんどが神経系や脳に直接的な影響を及ぼすもの(エイズ多発性硬化症側頭葉てんかん頭部外傷など)か、それに対する治療がうつ病の原因になるもの(高血圧治療に使用される一部の薬など)です。

高齢者では、自殺の約20%が少なくとも部分的に、痛みを伴う重篤な慢性疾患に対する反応として起こります。

小児期のトラウマ体験(身体的虐待や性的虐待を含みます)は、自殺企図のリスクを高めますが、これはおそらく、このような体験をした人でうつ病がよくみられるためと考えられます。

飲酒は、うつ病を悪化させることがあり、それにより自殺行動の可能性を高めます。また、アルコールは自制心を弱めます。自殺を試みる人の約30%が事前に飲酒をしており、その約半数の人は酩酊した状態で自殺を試みます。アルコール依存症の人、特に大量の飲酒がみられる人では、しらふになったときにしばしば深い自責の念に駆られるため、酔いが覚めたときに自殺しやすくなる傾向があります。

その他のほぼすべての精神障害も自殺のリスクを高めます。

統合失調症などの精神病性障害があると、対処不能な妄想(固定された誤った思い込み)が生じたり、自殺を命じる幻聴(聴覚性の幻覚)が聞こえたりすることがあります。また、統合失調症の人はうつ病になりやすい傾向があります。

境界性パーソナリティ障害反社会性パーソナリティ障害の人、特に過去に暴力行動がみられた人でも、自殺のリスクが高くなります。これらの精神障害がある人は、フラストレーションへの対処が上手ではなく、ストレスに対して衝動的に反応し、ときに自傷行為や攻撃的な行動をとるに至ることがあります。

一人暮らしは自殺行動のリスクを高めます。離別、離婚、配偶者との死別などを経験した人では、自殺既遂の可能性が高くなります。安定的な人間関係の中で暮らしている人では、一人暮らしの人と比べて、自殺が少なくなっています。

自殺行動の危険因子

  • アメリカンインディアンまたはアラスカ先住民

  • 男性

  • 痛みを伴う病気や体を不自由にする病気

  • 一人暮らし

  • 不景気または借金

  • 失業

  • 死別や喪失

  • 屈辱や不名誉

  • 絶望感

  • 攻撃的または衝動的な行動

  • うつ病、特に不安を伴う場合と双極性障害の一部である場合

  • うつ病を理由とする最近の入院

  • その他の精神障害のほとんど、パーソナリティ障害など

  • うつ病で他の症状が軽快しても悲しみの感情が持続する状態

  • 薬物乱用またはアルコール乱用の病歴

  • 自殺企図の経歴

  • 自殺または精神障害の家族歴

  • 小児期の心的外傷(トラウマ)となる体験(身体的または性的虐待を含む)

  • 自殺への執着(そのことばかり話す)

  • 詳細な自殺計画

抗うつ薬と自殺のリスク

自殺企図のリスクは、抗うつ薬治療を開始する前の月に最大となり、抗うつ薬の使用を開始してからは、それまでと比べて自殺による死亡リスクが低くなります。ただし、抗うつ薬を使用すると、小児、青年、若年者では自殺念慮や自殺行動の頻度が若干高まります(自殺既遂の頻度は高まりません)。このため、小児や青年の親に注意を促す必要があり、小児や青年については不安、興奮、不穏(落ち着かなくなる)、易怒性、怒りの増大、または軽躁病(患者に活力が満ち、楽しそうになるが、しばしばすぐにいらだち、気が散り、興奮する状態)への移行などの副作用が生じていないか、特に薬剤の服用開始後の数週間は注意深く監視する必要があります。

抗うつ薬を服用すると自殺のリスクが高まる可能性があるという公衆衛生上の警告が出されたことから、小児や若年者に対して抗うつ薬が処方される頻度が30%以上少なくなりました。しかし、これと同じ時期に、若年者の自殺率は一時的に14%増加しました。したがって、うつ病の薬物療法を控えさせるこの警告は、結果的に自殺による死亡者数の減少ではなく、逆に増加につながってしまった可能性があります。

うつ病の人に抗うつ薬を投与する場合、医師は自殺行動のリスクを低下させる以下のような一定の予防策を講じます。

  • 抗うつ薬の用量を患者の死亡を招かないであろう量にする。

  • 治療を初めて開始する際には、より頻繁な受診スケジュールを設定する。

  • 症状の悪化や希死念慮がみられないか注意する必要があることを患者、家族、重要な関係者に明確に警告する。

  • 症状が悪化した場合や自殺念慮が生じた場合は、すぐに抗うつ薬を処方した医師に連絡するか、別の形で医療を求めるよう患者、家族、重要な関係者に指示する。

知っていますか?

  • 抗うつ薬の服用は自殺念慮や自殺企図のリスクの増大と結び付けられていますが、抗うつ薬を服用しない場合には、自殺のリスクがさらに大きくなる可能性があります。

  • 米国では、男女とも成人が自殺する際には多くの人が銃を使用しますが、この方法で自殺既遂に至る割合は男性の方が2倍以上高くなっています。

自殺の方法

自殺方法の選択は、しばしば文化的背景や実行のしやすさに影響されます。自殺方法は、意図の真剣さを反映していることもあれば、していないこともあります。ほぼ生存が不可能な方法(高層ビルから飛び降りるなど)もあれば、救命が可能な方法(薬物の過剰摂取など)もあります。ただし、致死的でない方法を選んだ人でも、致死的な方法を選んだ人と同じくらい本気で死のうとしていた可能性があります。

自殺企図で最も頻繁に用いられる方法は、薬物の過剰摂取と服毒です。銃や首つりなどの暴力的な方法は、選択するとほぼ確実に死に至るため、自殺企図ではあまり多くみられません。

自殺既遂の大半で銃の使用がみられます。米国では、約半数の自殺で銃が使用されています。男性は女性よりこの方法をよく選択します。その他の方法としては、首つり、服毒、飛び降り、刃物の使用などがあります。車で崖から落ちるなど、一部の方法では他者に危険が及ぶ可能性があります。

世界全体で見ると、殺虫剤の服毒が自殺既遂の約30%を占めています。

予防

自殺企図や自殺既遂は、家族や友人にも衝撃を与える事態となる場合がありますが、多くの人は明確な警告サインを発しています。自殺がほのめかされたり、自殺企図が起こった場合は、必ず真剣に受け止める必要があります。こうしたサインが無視されると、命が失われるおそれがあります。

今にも自殺しそうであったり、実際に自殺企図を起こしてしまった場合は、直ちに警察に連絡し、できるだけ早く救急車を呼び、助けが来るまで、冷静かつ支えとなるような態度で話しかけるようにします。

医師は自殺をほのめかす人や自殺企図をした人を入院させることができます。米国の大半の州では、自傷他害のリスクが高いと医師が判断すれば、本人の意思に反して入院させることが認められています。

自殺への介入:全米自殺予防ライフライン(National Suicide Prevention Lifeline)

自殺をほのめかす人は危機的な状況にあります。全米自殺予防ライフライン(1-800-273-TALK、米国のみ)は、米国全土でそのような人に対して危機介入を行っています。自殺予防センターでは、特別な訓練を受けたボランティアのスタッフがその任にあたっています。

自殺のおそれのある人がホットラインに電話をかけてきた場合、スタッフは以下の対応を取ります。

  • その人と関係を築くことを試み、名前を繰り返し呼ぶなどして、自分のアイデンティティを思い出させる。

  • 自殺の危機をもたらした問題に対して建設的な助言をし、解決に向けて前向きに行動するよう励ます。

  • その人のことを心配して助けたいと思っている家族や友人がいることを思い出させる。

  • 自殺の衝動に駆られている人が緊急に専門家と直に会って援助が受けられるように手配する。

ときに、すでに自殺行為に及んでしまった(薬物を過剰摂取した、ガス栓を開いたなど)、今から自殺しようと思っている、などという電話が入ることがあります。そのような場合は、対応するスタッフは住所を聞き出そうと試みます。聞き出せないときは、別のスタッフが警察と連絡を取って電話を逆探知し、救助を試みます。可能であれば、警察が到着するまで電話で会話を続けます。

管理

医師は、その人が本気で自殺を考えているかどうかに関係なく、自殺行為を真剣に受け止めます。

自殺を試みて重傷を負った人には、医師はその外傷に対する評価と治療を行い、通常はその人を入院させます。死に至る可能性がある薬を過剰摂取した場合は、体内への吸収を防ぎ、体外への排出を促す処置を直ちに行います。また、解毒剤が入手可能であればそれを投与し、呼吸用のチューブを挿入するなどの支持療法を行います。

初期評価が終わったら、自殺を試みた人を精神科医に紹介し、精神科医は自殺企図につながった問題を明らかにし、適切な治療計画を立てるよう努めます。

問題を特定するために、精神科医は以下のことをします。

  • その人の話をよく聴く

  • 何がその人を自殺未遂に至らしめたのか、どのような行為が自殺未遂に至ったのか、どこでどのように自殺未遂が起こったのかの特定を試みる

  • 自殺行動のリスクを高める精神障害の症状について質問する

  • その人が精神障害に対する治療を受けていないか(その治療のために何か薬を服用していないかを含む)を質問する

  • その人の精神状態を評価し、うつ病、不安、混乱、パニック発作、重度の不眠症、その他の精神障害、アルコールまたは薬物乱用などの徴候がないか調べる

  • 対人関係や家族関係について質問する

  • 親しい家族や友人と話をして、飲酒や大麻、鎮痛薬、乱用薬物の使用について質問する

  • その人が自殺思考の引き金になるものを特定する手助けをし、その誘因に対処する手立てを計画するのを手伝う。

うつ病は自殺行動のリスクを高めることから、うつ病の人に対しては、医師は自殺行動や自殺念慮がないか注意深くモニタリングします。

自殺のリスクが高い人が気分障害の治療のためにリチウム、抗うつ薬、抗精神病薬を使用することで、自殺の件数が減少する可能性があることを示唆した研究結果もあります。クロザピンによる統合失調症の治療は、自殺のリスクを低下させます。

自殺の影響

自殺による死は、周囲のすべての人に著しい感情的影響を与えます。家族、友人、医師は、自殺を防げなかったことに罪悪感を抱き、自責や後悔の念に駆られます。自殺した人に対して怒りを感じることもあります。最終的には、自殺を防ぐことはできなかったと理解することもあります。

悲嘆に関するカウンセリングや自助グループに参加することが、家族や友人の気持ちの整理に役立ち、罪悪感や悲しみに対処する助けになります。支援団体などに関する情報は、かかりつけ医や地域の精神保健サービスを通じて得ることができます。さらに、全米自殺防止財団(American Foundation for Suicide Prevention)などの全国的な機関でも、地域の支援団体のリストを管理しています。インターネット上で情報を得ることもできます。

自殺企図による影響も同様です。しかし、自殺企図の場合は、助けを求める声に適切に対応していくことで、家族や友人には気持ちの整理をつける機会があります。

医師による死の幇助(かつての自殺幇助)

医師による死の幇助とは、人生を終えたいと願う人を医師が手助けすることです。医師の通常の目標は患者の生命を守ることであるのに対し、死の幇助はその正反対の行為であるため、様々に意見が分かれています。米国で医師による死の幇助が合法とされているのは、5つの州(オレゴン州、ワシントン州、モンタナ州、バーモント州、カリフォルニア州)だけです。それ以外の州では、医師は身体的・精神的苦痛の軽減を目的とした治療を行うことはできますが、意図的に死を早める行為は認められていません。

一方で、医師による死の幇助が合法とされている国もあります。

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