神経性過食症は、神経性やせ症と同様に、遺伝的な要因と社会的な要因の影響を受けます。また、患者の大半が体型や体重をひどく気にしている若い女性であるという点も、神経性やせ症と類似しています。
神経性過食症は主に青年や若い成人が発症します。1年間で調べてみると、若い女性の約100人に1人に神経性過食症が認められます。男性で発症する人の割合は、女性よりはるかに少なくなっています。
症状
神経性過食症の人は過食を繰り返します。すなわち、大半の人と比べて、同様の状況下の同程度の時間内で、はるかに多くの食べものを摂取します。普段の食事として多すぎるとみなされる量は、休日の食事として多すぎるとみなされる量とは異なる場合があります。
精神的ストレスがきっかけで過食が始まる場合が多く、通常、その行為は隠れて行われます。過食には自制できないという感覚が伴い、通常は空腹でなくても食べたり、身体的な不快感が生じるまで食べ続けたりします。
患者は、アイスクリームやケーキのように、脂肪分を豊富に含む甘い食物を食べる傾向があります。摂取される食物の量は様々で、ときに何千カロリーにもなることがあります。1日に複数回にわたって過食をすることもあります。
過食による影響を軽減しようとして、以下のような様々な手段で埋め合わせをしようとします。
腹部膨満感を治そうとして利尿薬を飲む人もよくいます。
神経性やせ症と違って、神経性過食症の人の体重は正常体重の付近を上下する傾向があります。過体重や肥満の人はごく少数です。
過食性障害とは違って、神経性過食症の人は排出行動などの手段で過食の埋め合わせをしようとします。
自己誘発性嘔吐は、歯のエナメル質の溶解、頬の唾液腺(耳下腺)の腫れ、食道の炎症などを引き起こします。嘔吐などの排出行動を繰り返すと、血液中のカリウム濃度が下がり、それにより不整脈が引き起こされます。嘔吐を誘発するためにトコンを繰り返し大量に飲む患者の場合、不整脈が生じ、その結果、突然死することがあります。まれに、過食または排出行動時に、胃が破裂したり、食道が裂けたりし、生命を脅かす合併症を引き起こすことがあります。
神経性過食症の人は自分の体重や体型にとらわれていて、それらが自己評価の基準になっています。患者の自尊心は大部分が体重と体型に基づいています。
神経性やせ症の人と比べて、神経性過食症の人は自分の行動について自覚があり、自責の念や罪悪感を抱く傾向があります。また、自分の悩みを医師や信頼できる人に打ち明けることもよくあります。一般に、神経性過食症の人はより社交的な傾向があります。また、衝動的に行動をしたり、薬物やアルコールを乱用したり、うつ病になりやすい傾向がみられます。自分の体重や社会活動への参加について不安を抱いています。
診断
治療
神経性過食症の治療法としては、認知行動療法、対人関係療法、薬物療法などがあります。
通常は認知行動療法が用いられ、以下を目標とします。
4~5カ月間にわたって週に1~2回、個人またはグループ単位で精神療法家と会い、合計16~20回ほどのセッションを受けます。認知行動療法により、神経性過食症患者の約30~50%で過食と排出行動がなくなります。他の患者の多くも改善しますが、治療をやめてしまう人や、効果が得られない人もいます。改善した患者では通常、良好な状態が維持されます。
認知行動療法が利用できない場合は、対人関係療法が別の選択肢となります。この治療法では、摂食障害の原因になっている可能性のある対人関係の問題を患者が特定して変化させることを支援します。この治療法は、患者にどのように変化すべきかを教えたり、患者の行動を解釈したり、摂食障害に直接対処したりするものではありません。
抗うつ薬の一種である選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、過食と嘔吐の頻度を減らすことができますが、長期的にどれほど有効であるかは不明です。この種の薬は、神経性過食症患者によくみられる不安と抑うつに治療にも有効です。