依存性パーソナリティ障害の患者は、自分で自分の面倒をみることができないと考えていて、服従することで他者に自分の面倒をみてもらおうとします。
依存性パーソナリティ障害の診断は、面倒をみてもらいたいという欲求や、自分で自分の面倒をみなければならないことに対する恐れなど、特定の症状に基づいて下されます。
自立への恐れを検討することに焦点を合わせた精神療法が役立つことがあります。
パーソナリティ障害 パーソナリティ障害の概要 パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。 パーソナリティ障害は10種類あり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。... さらに読む (人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。
依存性パーソナリティ障害の患者は、他者に面倒をみてもらうことを望み、自分で自分の面倒をみることに強い不安を抱いています。望み通り他者から面倒をみてもらうために、進んで自立性や関心を手放します。このため患者は過度に依存的、服従的になります。
依存性パーソナリティ障害は米国の一般集団の1%未満でみられます。女性の方が多く診断されますが、男女で同じように生じることを示す研究もあります。
他の病気もしばしばみられます。患者には、しばしば以下のうち1つ以上の病気もみられます。
うつ病 うつ病 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む や 持続性抑うつ障害 持続性抑うつ障害 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む などの抑うつ障害
別のパーソナリティ障害(境界性 境界性パーソナリティ障害(BPD) 境界性パーソナリティ障害は、人間関係、自己像、気分、行動の不安定性、そして拒絶されたり、見捨てられたりする可能性に対する過敏性を特徴とします。 境界性パーソナリティ障害の患者は拒絶されたり見捨てられたりすることを恐れますが、その理由の1つは孤独になりたくないからです。 境界性パーソナリティ障害の診断は、人間関係、自己像、気分の頻繁な変化、また自己破壊的で衝動的な行動などの具体的症状に基づいて下されます。... さらに読む や 演技性 演技性パーソナリティ障害 演技性パーソナリティ障害は、過度の情動性と注意を引きたい欲求の広汎なパターンを特徴とします。 演技性パーソナリティ障害の患者は継続的に注目の的になることを求め、しばしば他者の注目を引きつけるために不適切に誘惑的かつ挑発的な形で衣服を着用して行動したり、自分を非常に劇的に表現したりします。 演技性パーソナリティ障害の診断は、注目の的になっていないことによる不快感、不適切に誘惑的または挑発的な他者との交流、劇的な行動や感情の表現などの特定の... さらに読む など)
依存性パーソナリティ障害の原因
依存性パーソナリティ障害の原因に関する情報はあまりありません。関わっている可能性のある因子には以下のものがあります。
文化的因子
幼児期の否定的な体験
不安になりやすい先天的傾向
家族内で受け継がれる特性(服従性、自信のなさ、控えめな行動など)
依存性パーソナリティ障害の症状
面倒をみてもらいたいという欲求
依存性パーソナリティ障害の患者は自分で自分の面倒をみることができるとは考えていません。患者は他者に服従することで、面倒をみてもらおうとします。
この障害のある人は、一般的に、通常の判断を行うにあたりふんだんな安心と助言を必要とします。患者はしばしば他者、しばしば一人の人に、自分の生活の多くの側面について責任を負ってもらいます。例えば、患者は配偶者に依存し、何を着て、どのような種類の仕事を探し、誰と付き合うべきかを教えてもらいます。
依存性パーソナリティ障害の患者は、依存対象のごく少人数の人としか社会的に交流しない傾向があります。親密な関係が終わると、患者はすぐに代わりになる人を見つけようとします。患者は他者に面倒をみてもらうのに必死であるため、代わりの人を選ぶにあたり、見境がなくなることがあります。
依存性パーソナリティ障害の患者は、理由がない場合でも、依存している相手に見捨てられることを過度に恐れています。
過度の服従性
依存性パーソナリティ障害の患者は、支持や承認を失うことを恐れるため、他者との意見の違いをなかなか口に出すことができません。他者の支援を失うリスクを冒すくらいなら間違っていることが分かっていることに同意することもあります。怒って当然の場合でも、患者は支援を失うことを恐れて、友人や同僚に怒りを向けることをしません。
依存性パーソナリティ障害の患者は、他者からの世話や支援を得るのに多大な労力を払います。例えば、不快な課題をこなしたり、不当な要望の言いなりになったり、身体的、性的、または情緒的虐待に耐えたりすることさえあります。患者は自分で自分の面倒をみることができないと恐れるため、一人でいることに強い居心地の悪さを感じたり、恐れたりします。
自信のなさ
依存性パーソナリティ障害の患者は自分が劣っていると考え、自分の能力を卑下する傾向があります。患者はあらゆる批判や否認を自分の能力のなさの証拠と受け取り、さらに自信を失います。
自立心のなさ
依存性パーソナリティ障害の患者は自分が一人では何もできないと確信しているため、新しい課題を始めたり、独立して働いたりすることに困難があります。患者は責任を負う必要のある課題を避けます。患者は、常に支援と安心を必要とする、能力のない存在として振る舞います。能力のある人が依存性パーソナリティ障害の患者を監督したり、承認したりして安心感をもっている場合、患者は十分に役割を果たすことができる傾向があります。しかし、見捨てられることを恐れてあまりに能力があるようにみられることを望みません。その結果、患者の経歴が損なわれることがあります。患者は自立して生活する技能を学ばないことが多いため、依存性を長続きさせます。
依存性パーソナリティ障害の診断
具体的な診断基準に基づく医師による評価
パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5 精神障害の分類と診断 1980年に米国精神医学会が発行した『精神障害の診断と統計マニュアル第3版』(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders[DSM-III])は、標準化された定義と診断基準を用いて精神障害を診断しようとする初めての試みでした。2022年に発行された最新版であるDSM-5-TRでは、精神症状(考え方や感じ方を反映するものとしての患者の言動のこと)や病気の経過に基づいて、精神障害... さらに読む )に基づいて下されます。
依存性パーソナリティ障害の診断を下すには、対象者が面倒をみてもらいたいという欲求を持続的かつ過剰にもち、服従的でしがみつくような行動をとっていることを確認する必要があり、以下の項目の5つ以上を満たすかどうかで判定されます。
他者からの過剰な量の助言や安心なしに日常的判断を下すことが困難である。
生活の重要な側面の大半について他者に責任を負ってもらうことを望んでいる。
支援や承認を失うことを恐れることから、他者との意見の不一致をなかなか口にできない。
自分の判断力や能力に自信がないあまり(意欲や気力がないためではなく)、一人で計画を始めることに困難がある。
他者からの支援を得るために、進んで多大な労力を払う(例えば、不快な課題をこなす)。
自分の面倒を見ることができないことを恐れるあまり、一人でいるときに居心地悪く感じたり、無力感を覚えたりする。
親密な関係が終わったときに、世話や支援を与えてくれる人と新たな関係を築く差し迫った必要性を感じる。
一人にされて自分の面倒をみることになる恐れにとりつかれている。
また、症状は成人期早期までに始まっている必要があります。
依存性パーソナリティ障害の治療
認知行動療法
精神力動的精神療法
依存性パーソナリティ障害の 一般的治療 治療 パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。 パーソナリティ障害は10種類あり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。... さらに読む は、すべてのパーソナリティ障害に対するものと同じです。
自立への恐れと自己主張することの困難さを検討することに焦点を当てた 精神力動的精神療法 精神力動的精神療法 精神障害の治療は大きな進歩を遂げています。その結果、多くの精神障害に関する治療成績が身体的な病気に近い水準まで向上してきています。 精神障害に対する治療法の大半は、以下のいずれかに分類できます。 身体的な治療法 精神療法(心理療法) 身体的な治療法としては、薬物療法と電気けいれん療法のほか、脳を刺激する治療法(経頭蓋磁気刺激療法や迷走神経刺激療法など)などがあります。 さらに読む と 認知行動療法 精神療法(心理療法) 精神障害の治療は大きな進歩を遂げています。その結果、多くの精神障害に関する治療成績が身体的な病気に近い水準まで向上してきています。 精神障害に対する治療法の大半は、以下のいずれかに分類できます。 身体的な治療法 精神療法(心理療法) 身体的な治療法としては、薬物療法と電気けいれん療法のほか、脳を刺激する治療法(経頭蓋磁気刺激療法や迷走神経刺激療法など)などがあります。 さらに読む が、依存性パーソナリティ障害患者に役立つことがあります。
薬が有用であるかどうかは不明です。ときに、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの 抗うつ薬 うつ病に対する薬物療法 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む が抑うつと不安の治療に使用されることがあります。