シゾイドパーソナリティ障害の患者は、他者との親密な関係に対して関心がないようにみえ、一人でいることを好みます。
シゾイドパーソナリティ障害の診断は、社会的関係から距離を取ることと無関心、また感情表現の少なさなどの、特定の症状に基づいて下されます。
社会的技能を身に付けることに焦点を当てた認知行動療法がこの障害の患者を変化させるのに有用な場合があります。
パーソナリティ障害 パーソナリティ障害の概要 パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。 パーソナリティ障害は10種類あり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。... さらに読む (人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、他者と意味のある関係をもつことに困難を抱えています。
シゾイドパーソナリティ障害は米国の一般の人の約3~5%にみられます。男性で若干多くみられます。
他の病気もしばしば認められます。シゾイドパーソナリティ障害患者の最大半数が うつ病 うつ病 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。 うつ病になると、悲しみに沈み、動作が緩慢になり、以前は楽しんでい... さらに読む を少なくとも1回経験しています。患者はしばしば他のパーソナリティ障害ももっています。最も多いのは以下のものです。
原因
シゾイドパーソナリティ障害の発症には遺伝子が一定の役割を果たしていると考えられています。この障害は、 統合失調症 統合失調症 統合失調症は、現実とのつながりの喪失(精神病)、幻覚(通常は幻聴)、妄想(誤った強い思い込み)、異常な思考や行動、感情表現の減少、意欲の低下、精神機能(認知機能)の低下、日常生活(仕事、対人関係、身の回りの管理など)の問題を特徴とする精神障害です。 統合失調症は、遺伝的な要因と環境的な要因の双方によって起こると考えられています。 症状は様々で、奇異な行動、とりとめのない支離滅裂な発言、感情鈍麻、寡黙、集中力や記憶力の低下など、多岐にわた... さらに読む や 統合失調型パーソナリティ障害 統合失調型パーソナリティ障害 統合失調型パーソナリティ障害は、親密な関係に対する強い居心地の悪さとそのような関係を築く能力の低さ、思考や知覚の歪み、ならびに風変わり(奇妙)な行動の広汎なパターンを特徴とします。 統合失調型パーソナリティ障害の患者は、自分が他者とは異なり、どこにも属していないように感じているため、他者と交流しないことを好む場合があります。 統合失調型パーソナリティ障害の診断は、親密な関係に対する強い居心地の悪さ、思考や知覚の歪み、奇妙な行動などの、特... さらに読む の家族がいる人でより多くみられる場合があります。
小児期に養育者が感情的に冷たい、ネグレクトする、そしてよそよそしい人物であったことが、シゾイドパーソナリティ障害の発症に関わっている可能性があります。そのような養育者をもつことで、他者との人間関係とは満足の得られるものではないという子どもの感じ方が助長される可能性があります。
症状
他者からの孤立
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、近親者も含め、他者と親密な関係をもちたいという欲求がないようにみえます。患者には、ときに第1度近親者(親や兄弟など)がいる以外、親しい友人や相談相手がいません。デートすることはまれであり、結婚しないこともよくあります。患者は一人でいることを好むため、他者との交流の必要がない活動や趣味(コンピュータゲームなど)を選ぶ傾向があります。
他者との性行為に対する関心は、あるとしてもごくわずかです。また患者は感覚的、身体的体験による楽しさ(砂浜での散歩など)をあまり感じないようにみえます。
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、他者が自分のことをどのように考えているかについて、それがよいことであれ、悪いことであれ、悩まないようにみえます。無関心であるように、または自分のことに没頭しているようにみえることがあります。普通の社会的行動様式に気づかないため、社会的に不器用にみえることがあります。
感情表現の少なさ
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、社会的状況に反応したり(例えば、微笑んだり、頷いたりすることにより)、感情を示したりすることがまれです。患者は、挑発された場合でも、怒りを表すことに困難があります。重要なライフイベントに適切に反応することがなく、状況の変化に対する反応が受け身にみえることがあります。そのため、自分の人生に方向性をもっていないようにみえることもあります。
まれに、このような患者が安心して自分の内面をさらけだす場合、患者は(特に社会的交流において)苦痛を感じていることを認めます。
症状の持続
シゾイドパーソナリティ障害の症状は時間が経過しても同じ状態にとどまる傾向があり、他のパーソナリティ障害よりもその傾向がみられます。
診断
具体的な診断基準に基づく医師による評価
パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5 精神障害の分類と診断 1980年に米国精神医学会が発行した『精神障害の診断と統計マニュアル第3版』(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders[DSM-III])は、標準化された定義と診断基準を用いて精神障害を診断しようとする初めての試みでした。2013年に発行された最新版であるDSM-5では、精神症状(考え方や感じ方を反映するものとしての患者の言動のこと)や病気の経過に基づいて、精神障害を各種... さらに読む )に基づいて下されます。
シゾイドパーソナリティ障害の診断を下すには、以下の4つ以上によって示されるように、社会的関係から距離を置くこととそのような関係に対する全般的な無関心、また人付き合いで感情を表すことの少なさが持続的に認められる必要があります。
家族も含め、親密な関係を求めたり、楽しんだりすることがない。
一人で活動することを強く好む。
他者との性的活動に対する興味がほとんどなく、あるとしてもごくわずかである。
楽しみを得る活動がほとんどない。
場合により第1度近親者がいること以外に、親しい友人や相談相手がいない。
他者からの賞賛や批判に対して無関心であるようにみえる。
感情的に冷めていて、無関心であり、出来事への反応や人付き合いにおいて感情を表さない。
また、症状は成人期早期までに始まっている必要があります。
治療
社会的技能に焦点を合わせた認知行動療法
シゾイドパーソナリティ障害の 一般的治療 治療 パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。 パーソナリティ障害は10種類あり、自己像(セルフイメージ)と他者やストレスに対する反応のパターンに、それぞれ特徴的な問題がみられます。... さらに読む は、すべてのパーソナリティ障害に対するものと同じです。
シゾイドパーソナリティ障害の患者はよそよそしく、無関心なため、医師が患者と協力的で互いを尊重し合う関係を築くことが困難になります。協力関係を築き、患者が治療に参加するのを促すために、医師は、他者との交流の必要がない活動を好む人にアピールする話題(切手収集など)について話し合おうと努めることもあります。
シゾイドパーソナリティ障害に対する精神療法または薬物療法の効果については、情報があまりありません。
社会的技能を身に付けることに焦点を当てた 認知行動療法 精神療法(心理療法) 精神障害の治療は大きな進歩を遂げています。その結果、多くの精神障害に関する治療成績が身体的な病気に近い水準まで向上してきています。 精神障害に対する治療法の大半は、以下のいずれかに分類できます。 身体的な治療法 精神療法(心理療法) 身体的な治療法としては、薬物療法と電気けいれん療法のほか、脳を刺激する治療法(経頭蓋磁気刺激療法や迷走神経刺激療法など)などがあります。 さらに読む が患者を変化させるのに有用な場合があります。例えば、患者は社会的手がかり(言葉によるものと、顔の表情や身振りなどの言葉によらないもの)をどうやって認識するのかを学ぶことができます。