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性別違和と性転換症

執筆者:

George R. Brown

, MD, East Tennessee State University

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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性別違和では、解剖学的な性が自身の内的な感覚(男性、女性、混合、中性、それ以外―すなわちジェンダーアイデンティティ)と一致していないという強く持続的な感覚が生じます。この不一致の感覚のために、強い苦痛が生じるか、日常生活に大きな支障をきたします。性転換症は性別違和の最も極端なタイプです。

  • 小児では、異性が典型的に行う活動に執拗な関心をもち、自分の性器に対して否定的な感情を抱きます。

  • 症状として反対の性になることに対する強い志向性がみられる場合、性転換症と診断されます。

  • 反対の性として人生を送りたいという強い思いがある人の大半は、外見を自らが感じているジェンダーの外見に近づける治療(ホルモン療法や、ときに不可逆的な性器手術)を求めます。

  • 解剖学的な性が自身のジェンダーアイデンティティと一致しない人の中には、社会の中で反対のジェンダーの一員として働き、生活し、衣服を着ることで満足する人もいますが、このような人の多くには性別違和の診断基準を満たす症状はありません。

性別違和の人は、自分は生物学的な事故の犠牲者であり、無慈悲にもジェンダーアイデンティティ(男、女、あるいはそれ以外の存在として、心の中での自分をどう捉えているか)に一致しない体に閉じ込められているというように考えます。例えば、出生時に男性とされたものの、自分は女性であるにもかかわらず、男性の体の中に閉じ込められているように感じる人がいます(逆のケースもあります)。この不一致の感覚(性別不一致と呼ばれます)は、そのために強い苦痛が生じたり、日常生活に支障をきたしたりしない限り、病気とはみなされません。その苦痛は一般的に不安、抑うつ、いらだちが組み合わさったものです。

自分は男性でも女性でもない、両者の中間的なところにいる、両者の組合せである、またはジェンダーアイデンティティが変化すると感じている人もいます。ジェンダークィアとは、このようなジェンダーアイデンティティの種類のいくつかを広く指す言葉です。ほかに使用されることのある言葉として、ノンバイナリーやアジェンダ―などがあります。

性別違和の人がどれくらいいるのかは不明ですが、この病気は出生時の性が男性である新生児1000人のうち5~14人に、出生時の性が女性である新生児1000人のうち2~3人に発生すると推定されています。

異性装(服装倒錯)では、本人(ほぼ常に男性)は異性の衣服を着ることで性的に興奮しますが、実際にその性に属しているという内的な感覚があるわけではありません。

性転換症

性転換症者にとって、解剖学的な性とジェンダーアイデンティティの間に感じられる不一致は絶対的かつ重度であり、長年にわたって心をかき乱します。

性転換症者のほとんどが生物学的には男性で、ときとして小児期の早期から自分は女性であると感じていて、自分の生器や男性的な特徴に嫌悪感を抱いています。しかしながら、ジェンダーアイデンティティに問題を抱える小児の大部分は、成人になって性転換症者となることはありません。

性転換症者ではまれに、生まれたときから性器が男性か女性かはっきりしなかったり(半陰陽)、ターナー症候群クラインフェルター症候群などの遺伝性異常がみられたりするケースがあります。しかし、小児の場合は、はっきりとどちらかの性に決めて、一貫して養育すれば、たとえ半陰陽であっても、明確なジェンダーアイデンティティの感覚をもつようになる場合が大半です。

症状

小児の性別違和は、通常は2~3歳までに発症します。

小児での性別違和の症状

性別違和を抱える小児には次の行動がみられます。

  • 異性の服装を好む

  • 自分は反対の性であると主張する

  • 目覚めたときに反対の性であったらよいのにと思う

  • 異性が行う遊びや活動に参加することを好む

  • 自分の生器に対して否定的な感情を抱く

例えば、女児がいずれ自分にはペニスができ、男の子になるのだと言い張ったり、立って排尿したりすることもあります。男児が自分は女の子であると夢想し、荒っぽい遊びや競争的なゲームを避けることがあります。座って排尿し、自分のペニスや精巣を取ってしまいたいと願う男児もいます。性別違和のある男児の場合は、しばしば思春期の身体的変化に悩み、自分の体をもっと女性らしくする治療を受けたいと訴えることがあります。

しかし、異性に向いているとされる活動を好む(性別不適合行動と呼ばれる)子どもの多くは性別違和を感じていません。

成人における性別違和の症状

性転換症者のほとんどは、幼少期に性別違和の症状や違和感がみられるようになりますが、成人になるまでこのような感覚が生じない人もいます。

性転換症者(通常は男性)は、まず異性の衣類を身に着ける異性装者になりますが、自分がその異性であるという認識(アイデンティティ)を後々まで認めないことがあります。このような男性の中には、反対の性になりたいという感情から逃れたり、その気持ちを否定したりする手段として、結婚したり、軍隊に入ったりする人もいます。一方、このような感情を自分の中で受け入れると、多くの場合、ホルモン療法や性別適合手術を受けるかどうかに関係なく、自分で満足でき、納得がいく形で女性の性別役割を公然と果たすようになります。他方では、不安、抑うつ、自殺行動などの問題を経験する人もいます。社会や家族に受け入れられないことのストレスが、これらの問題の原因になったり、問題に影響を及ぼしたりすることがあります。

知っていますか?

  • 性別違和を抱える小児は、自分は反対の性だと主張することがあります。

診断

  • 具体的な診断基準に基づく医師による評価

性別違和を抱える小児の大部分は、6~9歳になるまで評価を受けないまま過ごします。

次のような症状がみられる場合(小児または成人)、性別違和と診断されます。

  • 自分の解剖学的な性がジェンダーアイデンティティと一致していないと感じており、それが6カ月以上続いている

  • この感情のために、強い苦痛を感じていたり、日常的な役割を普段通り果たすことができない

  • ほかに一定の症状がある(年齢層によって様々)

医師が性別違和の診断を下すために必要になる他の症状は小児、青年、成人で若干異なります。

小児では、さらに以下の症状の6つ以上がみられる必要もあります。

  • 反対のジェンダー(または他のジェンダー)になりたいという持続的で強固な願望をもっている、または反対のジェンダー(または他のジェンダー)であると主張する

  • 異性の衣服を着ることを強く好み、女児では典型的に女性的な衣服を着ることに抵抗を示す

  • 遊びの際に異性のふりをすることを強く好む

  • 異性に典型的な玩具、ゲーム、活動を強く好む

  • 遊び友達として異性を強く好む

  • 自分の解剖学的な性と一致するジェンダーの典型的な玩具、ゲーム、活動を強く拒絶する(例えば、男児がトラックの玩具やフットボールで遊ぼうとしない)

  • 自分の解剖学的性器を強く嫌悪する

  • 自分のジェンダーアイデンティティと一致する性的特徴を強く望む

青年と成人では、さらに以下の症状が最低でも1つみられる必要があります。

  • 自分の性的特徴をなくしたいという強い欲求、青年期早期では、第二次性徴(思春期に生じるもの)の出現を止めたいという強い欲求がある

  • 自分のジェンダーアイデンティティと一致する性的特徴を強く望む

  • 異性(または他のジェンダー)になりたいという強い欲求がある

  • 別のジェンダーとして扱われ、人生を送りたいと強く願う

  • 別のジェンダーと同じように感じ、物事に対応しているという強い確信がある

治療

  • 精神療法

  • ときにホルモン療法

  • ときに性別適合手術

自分の解剖学的な性がジェンダーアイデンティティと一致していないと感じている成人でも、心理的苦痛や社会生活上の問題がなければ、治療の必要がない場合もあります。自分とは反対のジェンダーの一員として職種、生活スタイル、服装などを選択し、自分の性別役割を変えることで満足する人もいます。このような場合、社会の中で反対のジェンダーとして仕事をしたり暮らしたりする助けとなるように、身分証明書(運転免許証など)を取得するといった行動がみられることもあります。このような人たちは、どのような方法であれ、自分の体の構造を変えようとはしません。このような人の多くは、ときにトランスジェンダーと呼ばれ、精神障害の基準を満たす症状はみられません。

ほとんどの欧米の文化では、治療を求める性転換症者の大半は、解剖学的な性が男性であって、自分は女性であると認識していて、自身の性器や男性的特徴を嫌悪している人々です。

治療を求める性転換症者の大半は、心理学的治療を求めず、自分の外見を自らが感じるジェンダーアイデンティティに近づけるホルモン療法や手術を望みます。

多くの性転換症者では、以下を併用する治療が最も役立つとみられています。

  • ホルモン療法

  • 電気分解法

  • 患者が希望する場合は性器(性別適合または性別確認)手術(不可逆的な治療)

性転換症者がホルモン療法や性別適合手術の前に精神療法を受けることは、もはや必須ではなくなっています。しかし、精神医療従事者は以下を行うことで支援することができます。

  • 精神障害(うつ病や物質使用障害など)がみられるかどうかを判定する

  • 患者が自身の状態が要因となった可能性のある問題(不承認や差別など) に対処するのを支援する

  • 患者が心地のよい形で自分が感じているジェンダーを表現する方法を見出すのを支援する

  • 該当する場合、患者が性別役割を変更し、カミングアウトし、別のジェンダーに移行する過程を支援する

ホルモン療法

性転換症者の中には、身体的な性別とは反対の性の行動、服装、しぐさを身につけるだけでなく、ホルモン療法を受けて第二次性徴を変えようとする人もいます。

  • 生物学的性が男性の人では、女性ホルモンの エストロゲンを使用すると、胸が大きくなるほか、顔の毛や体毛が薄くなり、男性器が縮小し(性器萎縮)、勃起状態が持続しなくなるなどの体の変化が生じます。

  • 生物学的性が女性の人では、男性ホルモンの テストステロンを使用すると、顔の毛が濃くなる、声が低くなる、体臭や体脂肪と筋肉のつき方が変わるなどの変化が生じます。

身体的な影響に加えて、ホルモン療法には、気持ちが安らぐ、不安が軽減される、望ましいジェンダーとして他者と関わることがさらに可能になるなど、かなり有益な心理的効果もあります。

性別適合手術

性別適合手術を求める人もいます。この手術は不可逆的な治療です。

男女とも、手術に先立って以下のことを行います。

  • 適切な性ホルモンの投与(男性から女性の転換には エストロゲン、女性から男性への転換には テストステロン

  • 常時反対の性別役割で少なくとも1年間生活する

生物学的性が男性の人では、手術によって陰茎(ペニス)の一部と精巣を切除するとともに、人工腟を作ります。陰茎の残した部分は陰核として利用します。残った部分には通常は性的な感受性があり、オルガスムの達成を可能にします。

生物学性が女性の人では、手術によって乳房(乳房切除術)のほか、ときに生殖器(子宮、卵巣)を除去し、腟を閉鎖するとともに、人工ペニスと通常は陰嚢を作ります。女性から男性への手術は、外見と機能の点で男性から女性への手術ほど満足のいくものではなく、これが性転換症の女性の方が性別適合手術を求めることが少ない理由である可能性があります。また、合併症(主に排尿障害)がよくみられます。しかし、女性から男性への手術は技術が改善し続けていて、手術を求める生物学的性が女性の人は増加しています。

性別適合手術を受けると生殖能力は失われますが、多くの場合、満足のいく性的関係をもつことができるようになります。術後もオルガスムに達する能力は保たれることが多く、初めて性的に心地よく感じたと報告する人もいます。しかし、反対の性としての性的機能を果たせるようになりたいというだけの目的で、性別適合手術を受けるケースはほとんどありません。通常は、内的なジェンダーアイデンティティを確認することが主な動機です。

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