脳と脊髄は、3層の組織層(髄膜)で覆われています。その層とは以下の3つです。
くも膜下腔とは、くも膜と軟膜の間の空間のことで、この空間は髄液で満たされています。髄液は髄膜の間を流れるほか、脳の内部も満たしており、脳と脊髄のクッションとして機能します。
髄膜炎の原因として最も多いのは、以下のものです。
しかし、ときとして特定の薬剤や感染症以外の病気が髄膜炎の原因になることもあります(非感染性髄膜炎)。そのような病気としては以下のものがあります。
髄膜炎は、しばしば突然発生します(急性髄膜炎)が、ときに数日から数週間かけて発生することもあります(亜急性髄膜炎)。4カ月以上持続する場合は慢性とみなされます。いったん治まったように見えた後に再発することもあります(再発性髄膜炎)。
髄膜炎は原因(細菌、ウイルス、それ以外)および発生様式(急性、亜急性、または慢性)によって分類することができますが、通常は次のうちいずれかに分類されます。
-
急性細菌性髄膜炎(最も速く重篤化するタイプ)
急性細菌性髄膜炎は特に重篤で、急速に悪化します。ウイルス性または非感染性髄膜炎の患者は、ほとんどが数週間以内に回復します。亜急性髄膜炎と慢性髄膜炎は通常、ゆっくりと段階的に進行しますが、原因、ひいては行うべき治療を判断するのが難しい場合があります。
無菌性髄膜炎という用語は、しばしばウイルス性髄膜炎のことを指して用いられますが、実際には急性細菌性髄膜炎の典型的な原因菌以外が原因となって発生する髄膜炎は、すべて無菌性髄膜炎といえます。すなわち、以下に起因する髄膜炎が無菌性髄膜炎に含まれます。
症状
診断
医師はしばしば症状から髄膜炎を疑います。しかし、髄膜炎は重篤化する可能性があるため、検査が行われます。
医師は細菌性髄膜炎を疑うと、まず直ちに患者の血液サンプルを採取して検査に送り、培養(微生物の増殖)を依頼します。しかし、血液検査で細菌性髄膜炎を診断することはできません。
髄膜炎の種類にかかわらず、医師は腰椎穿刺により診断を確定し、原因を特定します。腰椎穿刺では、髄液のサンプルを採取し、これを検査室に送って検査、分析、培養を行います。
しかし、頭蓋内の圧力が著しく上昇している(例えば、膿瘍、腫瘍、その他の脳内腫瘤による)ことが疑われる場合には、CTまたはMRI検査が先に行われることがあります。頭蓋内の圧力が上昇しているときの腰椎穿刺は危険を伴う可能性があります。脳の一部が降下してしまう可能性があるためです。脳の各部分を仕切っている組織に開いた小さな穴から脳の一部が押し出されると、脳ヘルニアと呼ばれる生命を脅かす状態に陥ります。
腰椎穿刺がすぐに行えず、細菌性髄膜炎が疑われる場合、医師は検査結果を待たずに抗菌薬による治療を開始します。頭蓋内の圧力が低下した後、または腫瘤が検出されない場合は、腰椎穿刺が行われ、結果が得られたら、必要に応じて医師が治療を調整します。
治療
髄膜炎の治療法は原因によって異なります。髄膜炎の原因が感染症である場合、適切な抗微生物薬(抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬など)が使用されます。
細菌性髄膜炎は急速に進行し生命を脅かすため、髄膜炎が細菌によるものであると疑われる場合や、患者の状態が非常に悪い場合には、検査結果を待たず直ちに抗菌薬が投与されます。脳の腫れを抑えるために、コルチコステロイドが投与されることもあります。
ウイルス感染や薬剤への反応などが髄膜炎の原因である場合は、一般的な対策が症状の緩和に役立ちます。髄膜炎が軽度であれば、たっぷり水分を摂取し、安静にして、市販薬を服用すれば発熱と痛みは和らぎます。
髄膜炎が重度であれば、治療のため病院に入院します。