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パーキンソン病

(パーキンソン病)

執筆者:

Hector A. Gonzalez-Usigli

, MD, HE UMAE Centro Médico Nacional de Occidente;


Alberto Espay

, MD, University of Cincinnati

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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パーキンソン病は、中枢神経系(脳と脊髄)の特定の領域がゆっくりと進行性に変性していく病気です。特徴として、筋肉が安静な状態にあるときに起こるふるえ(安静時振戦)、筋肉の緊張度の高まり(こわばり、筋強剛)、随意運動が遅くなる、バランス維持の困難(姿勢不安定)などがみられます。多くの患者では、思考が障害され、認知症が発生します。

  • パーキンソン病は、動きを協調させている脳領域の変性によって起こります。

  • たいてい、最も顕著な症状は、筋肉が弛緩しているときに起こる振戦です。

  • 筋肉がこわばり、動作が遅くなって協調運動が難しくなり、バランスを崩しやすくなります。

  • 診断は症状に基づいて下されます。

  • 一般的な対策(日課を簡素化するなど)、薬剤(レボドパとカルビドパの併用など)のほか、ときに手術も役立つことがありますが、病気は進行性であり、最終的には重度の身体障害をきたし、体を動かせなくなります。

パーキンソン病は、中枢神経系の変性疾患としては、アルツハイマー病の次に多い病気です。以下の割合でみられるようになります。

  • 40歳以上の人の約250人に1人

  • 65歳以上の人の約100人に1人

  • 80歳以上の人の約10人に1人

一般的には50~79歳の間に発症します。まれに、小児や青年がパーキンソン病を発症することもあります。

パーキンソニズムとは、パーキンソン病と同じ症状が、他の様々な病気(多系統萎縮症進行性核上性麻痺脳卒中頭部外傷、特定の薬剤など)によって引き起こされることをいいます。

脳内で起きる変化

パーキンソン病では、大脳基底核の黒質と呼ばれる部位の神経細胞が変性します。

大脳基底核は、脳の奥深くにある神経細胞の集まりです。大脳基底核には、筋肉の動きを滑らかにして姿勢を調整する働きがあります。脳から筋肉を動かすための信号(腕を上げるなど)が出ると、その信号は大脳基底核を通ります。他の神経細胞と同様に、大脳基底核の神経細胞も化学伝達物質(神経伝達物質)を放出して、隣の神経細胞を刺激することにより信号を伝達します。大脳基底核の主要な神経伝達物質は ドパミンです。ドパミンの主な作用は、筋肉に送られる信号を増幅することです。

大脳基底核の神経細胞が変性すると、 ドパミンの生産量が減るとともに、大脳基底核の神経細胞同士をつなぐ接続の数が減少します。すると、筋肉の動きを滑らかにするという大脳基底核の正常な働きが損なわれて、振戦や協調運動障害が起こるほか、動作が遅く(動作緩慢)、小さく(運動減少)なり、姿勢や歩行に異常が現れます。

大脳基底核の位置

大脳基底核は、脳の奥深くにある神経細胞の集まりです。以下のものが含まれます。

  • 尾状核(後方に向かって先細る形をしたC字型の構造物)

  • 被殻

  • 淡蒼球(被殻の下にある)

  • 視床下核

  • 黒質

大脳基底核には、筋肉の動きを滑らかにして姿勢を調整する働きがあります。

大脳基底核の位置

原因

パーキンソン病の原因は解明されていません。ある説によると、シヌクレイン(神経細胞間の情報伝達を助ける脳内タンパク)の異常な沈着がパーキンソン病を引き起こすといわれています。レビー小体と呼ばれるこの沈着物は、脳の複数箇所(特に大脳の深部にある黒質)に蓄積して、脳の機能を妨げます。レビー小体は脳と神経系の他の部位にも蓄積するため、他の病気にも関与している可能性があります。レビー小体型認知症では、脳の外側の層(大脳皮質)全体にレビー小体が形成されます。レビー小体はアルツハイマー病にも関わっている可能性があり、これによってパーキンソン病患者の約3分の1がアルツハイマー病の症状を有する理由や、アルツハイマー病患者の一部でパーキンソン症状がみられる理由を説明できるかもしれません。

パーキンソン病患者の約15~20%にパーキンソン病の近親者がいるため、遺伝も関与している可能性があります。

知っていますか?

  • 多くの薬剤が、パーキンソン病に似た症状を引き起こします。

  • 加齢が原因でパーキンソン病と同じ症状が起こることがあるため、高齢者ではパーキンソン病の診断が困難な場合があります。

症状

通常、パーキンソン病はかすかな症状で始まり、徐々に進行します。

初発症状は以下のものです。

  • 約3分の2の人で振戦

  • 他のほとんどの人で運動症状または嗅覚の低下

振戦(ふるえ)には一般的に以下の特徴がみられます。

  • 粗く律動的

  • 通常は安静な状態にした片方の手で起こる(安静時振戦)

  • しばしば、小さな物体を転がすように手を動かす(丸薬丸め運動と呼ばれる)

  • 手を意図的に動かしているときにはあまり起こらず、睡眠中はまったく起こらない

  • 精神的ストレスや疲労によって悪化することがある

  • 最終的には、もう一方の手、腕、脚にも起こるようになる

  • あご、舌、額、まぶたにも起こるが、声は影響を受けない

なかには、振戦がまったく起こらない人もいます。

典型的なパーキンソン病では次のような症状もみられます:

  • こわばり(筋強剛):筋肉がこわばり、動くことが困難になります。医師が患者の腕を曲げたり伸ばしたりしようとすると、動きに抵抗があり、歯車のように動き始めたと思えば止まり、止まったと思えば動き始めます(歯車様強剛と呼ばれます)。

  • 動作の緩慢化:動きが緩慢になり、動作の開始が困難になります。患者は体を動かさない生活を送るようになり、その結果、関節が硬くなり、筋力が低下するため、動くことがますます難しくなります。

  • バランスと姿勢の保持の困難:姿勢が前かがみになります。また、平衡感覚を保てなくなり、前方や後方に倒れるようになります。動作が緩慢になるため、転びそうになってもさっと手をつくことができません。

歩行が困難になり、特に最初の一歩が踏み出せなくなります。いったん歩き出すと、小刻みに足を引きずるような歩き方になり、腕は腰のところで曲げたまま、ほとんどまたはまったく振りません。歩行中に止まったり向きを変えたりすることが難しくなる人もいます。病気が進行すると、足が地面にくっついたように感じて突然歩くのをやめてしまうこともあります(すくみ足と呼ばれます)。あるいは、意図しないのに次第に速足になり、転倒を避けようとして、つまずくような走り方になることもあります。この症状は加速歩行と呼ばれます。

こわばりと可動性の低下により、筋肉痛と疲労が生じます。筋肉が硬くなっているため、多くの動きに支障をきたし、寝返りをうつこと、車の乗り降り、深く腰を掛けた状態から立ち上がることなどが困難になります。日常生活の行為(着衣、髪をとかす、食事、歯磨き)に時間がかかるようになります。

また、手の小さな筋肉の制御が難しくなるため、シャツのボタンをかける、靴ひもを結ぶなどの動作も次第に困難になります。パーキンソン病の人の多くは、文字を書く手がふるえ、字が小さくなりますが(小字症)、この症状は、字の一画一画を書き始めたり書き続けたりすることが難しいために起こります。こういった症状を筋力の低下と勘違いする人もいます。しかし通常、筋力や感覚は正常に保たれます。

表情をコントロールする顔面筋が正常に動かないため、顔の表情が乏しくなり(仮面様顔貌)、うつ病と間違われたり、逆にうつ病があるのに見過ごされたりすることがあります。(パーキンソン病の人ではうつ病が多くみられます。)最終的には、口を開けたままうつろなまなざしになり、まばたきの回数も減少します。顔面とのどの筋肉が硬くなると嚥下(ものを飲み込むこと)が困難になるため、よだれが出たり、ものをのどに詰まらせたりします。しばしば話し方が単調で小声になります。また、言葉を明瞭に発音できないため、吃音(きつおん)が生じることもあります。

パーキンソン病では、上記以外に以下のような症状もみられます。

  • 排尿回数が増えたり、夜間に症状が悪化して寝返りが困難になったりするために、不眠症などの睡眠障害がよくみられます。レム睡眠行動障害もよくみられます。正常であれば、レム睡眠中に体が動くことはないはずですが、この病気がある人は夢の内容に合わせて体を動かすため、レム睡眠中に腕や脚が突然乱暴に動くことがあり、ときに隣で寝ている人にけがをさせることもあります。また、睡眠不足のために、抑うつや日中の眠気が悪化します。

  • 排尿の問題が生じることがあります。排尿の開始と持続が難しくなります(排尿遅延)。切迫した尿意を感じることもあります(尿意切迫)。失禁もよくあります。

  • 腸が内容物を送る動きがゆっくりになるため、便秘をきたすことがあります。運動不足とパーキンソン病の主要な治療薬であるレボドパによって便秘が悪化することがあります。

  • 立ち上がったときに過度の急激な血圧降下起こることがあります(起立性低血圧)。

  • 頭皮や顔面、ときにその他の部位にしばしば鱗屑(りんせつ)が生じます(脂漏性皮膚炎)。

  • 嗅覚の消失(嗅覚脱失)もよくみられますが、気づかれないことがあります。

  • パーキンソン病がある人の約3分の1に認知症が現れます。それ以外の人でも、多くの場合思考が障害されますが、気づかれないことがあります。

  • 抑うつがみられることもあり、ときに運動症状が発生する何年も前からみられることさえあります。抑うつは、パーキンソン病が重症化するにつれて悪化する傾向があります。抑うつは運動症状を悪化させることもあります。

  • 幻覚、妄想、およびパラノイアがみられることもあり、認知症を発症した場合には特によくみられます。そこにないものが見えたり聞こえたり(幻覚)するほか、矛盾を示す明確な証拠があるにもかかわらず特定の信念に固執したりします(妄想)。疑い深くなり、他者から危害を加えられると思い込むこともあります(パラノイア)。これらの症状は、現実との接触の喪失を表しているため、精神病症状とみなされます。精神病症状は、パーキンソン病の患者が施設入居に至る最も一般的な理由です。これらの症状は死亡のリスクを高めます。

精神病症状などの精神症状は、パーキンソン病に起因する場合もあれば、その治療に用いられる薬剤が原因である場合もあります。

パーキンソン病の治療薬( パーキンソン病の治療に用いられる薬剤)は、強迫行動や衝動を押さえられないなどの問題を引き起こし、例えば、強迫的なギャンブルや収集癖をもたらすことがあります。

診断

  • 医師による評価

  • ときにCTまたはMRI検査

  • ときに、レボドパを使用して症状が改善するか確かめる

以下の特徴がみられる患者では、パーキンソン病の可能性が高くなります。

  • 動きが少なく、遅い

  • 特徴的な振戦

  • 筋肉のこわばり(筋強剛)

  • レボドパに反応してみられる明瞭かつ長期的(持続的)な改善

通常、初発症状はわずかであるため、早期の軽いパーキンソン病は、診断が困難な場合があります。年齢を重ねると、平衡感覚が低下する、動作が緩慢になる、筋肉がこわばる、姿勢が前かがみになるなど、パーキンソン病と同じ症状が現れることもあるため、特に高齢者では診断が困難です。ときに、本態性振戦がパーキンソン病と誤診されることもあります。

これらの症状が他の原因で起こっている可能性を否定するために、医師は、病歴、毒性物質への曝露、パーキンソニズムの原因になりうる薬剤の使用について質問します。

身体診察

身体診察に際し、診断の確定に役立てるため、特定の動きをするよう求められることがあります。例えば、指で自分の鼻に触れるように指示されることがありますが、パーキンソン病の患者がその動作を行うと、振戦が消失したり軽減したりします。また、この病気の患者は、素早く動作を入れ替えることがうまくできないため、両手を膝に置いて、両手を裏返し元に戻すといった動作を素早く繰り返すことができません。

検査

パーキンソン病の診断を直接確定できる検査や画像診断法はありません。しかし、構造的な異常が原因で症状が起こっていないかを調べるために、CT検査MRI検査が行われることがあります。SPECT(単一光子放出型コンピュータ断層撮影)検査PET(陽電子放出断層撮影)検査では、パーキンソン病に典型的な脳の異常を検出できます。しかし、現在のところSPECTやPETの装置は研究施設でしか利用されておらず、またこれらの検査では、パーキンソン病と、同じ症状を引き起こすその他の病気(パーキンソニズム)とを鑑別することができません。

診断がはっきりしない場合は、パーキンソン病の治療薬であるレボドパが投与されることがあります。レボドパによって明確な改善がみられた場合は、パーキンソン病である可能性が高くなります。

治療

  • 症状を管理するための一般的な対策

  • 理学療法と作業療法

  • レボドパ/カルビドパやその他の薬剤

  • ときに脳深部刺激療法

パーキンソン病の人が日常生活をより円滑に送るには、この病気に対する一般的な対策が役立ちます。

運動機能を改善して、数年以上にわたって日常生活の維持を可能にする薬剤は数多くあります。パーキンソン病に対する治療の支柱となっているのは以下の薬剤です。

  • レボドパ+カルビドパ

レボドパ以外の薬剤は、一般にレボドパより有効性が劣りますが、一部の人では有益なこともあり、特にレボドパの副作用に耐えられない場合や効果が不十分な場合には役立つ可能性があります。しかし、この病気を根治できる薬剤はありません。

2種類以上の薬が必要になる場合もあります。高齢者ではしばしば用量が減らされます。パーキンソン病の症状を引き起こしたり悪化させたりする薬剤(特に抗精神病薬)は、使用を控えます。

パーキンソン病の治療に用いられる薬剤は、厄介な副作用を引き起こす可能性があります。異常な影響(衝動を抑えられない、錯乱など)がみられたら、主治医に報告するべきです。主治医の指示がない限り、薬の服用をやめてはいけません。

病気が進行しているものの、認知症や精神症状がなく、薬剤を使用しても効果がないか重い副作用が出る場合は、外科的処置である脳深部刺激療法が考慮されます。

一般的な対策

パーキンソン病の人の移動能力と自立性を保つ上では、以下のような多くの単純な対策が役立ちます。

  • できるだけ多くの日常活動を続ける。

  • 定期的な運動プログラムを守る。

  • 日常生活の行為を簡単に行えるように工夫する(例えば、服のボタンをマジックテープに替える、マジックテープ付きの靴を買う)。

  • ジッパータブ(ファスナーを引くための補助器具)やボタンエイド(ボタンをかけるための補助器具)を使用する。

理学療法士作業療法士から、これらの対策を日常生活に取り入れる方法や、筋緊張を改善して関節の可動域を維持するための体操、また、自立を維持するための歩行器などの補助器具について、助言を受けることができます。

パーキンソン病の人が安全に暮らせるように、自宅周りで行える簡単な工夫もあります。

  • つまずかないようにカーペットや絨毯を取り除く。

  • 転倒のリスクを減らすため、浴室や廊下などに手すりを取り付ける。

便秘には以下のような対策が役立ちます。

  • プルーンやフルーツジュースなど、繊維分を多く含む食事をとる。

  • 運動する。

  • 水分を十分に摂取する。

  • 便軟化剤(センナなど)、サプリメント(オオバコなど)、または刺激性下剤(経口薬のビサコジルなど)を使用して、規則的な排便を維持する。

嚥下困難があると食べものの摂取が制限されるため、栄養の豊富な食事をする必要があります。息を鼻から深く吸い込むようにすると、嗅覚が改善して食欲が増進することがあります。

レボドパ/カルビドパ

従来から、レボドパとカルビドパの併用が最初の選択肢とされてきました。これらはともに経口薬で、パーキンソン病に対する治療の中心となっています。しかし、長期間使用し続けると、レボドパの副作用が現れ、効果も弱くなることがあります。そこで、最初は別の薬剤を使用し、遅れてレボドパを開始する治療法を推奨する専門家もいます。しかし、レボドパを長期間使用した後に副作用が発生し、効果が弱くなるのは、おそらくパーキンソン病の悪化によるものであり、いつ薬剤の使用を開始するかとは無関係であることが科学的に示されています。それでも、レボドパを数年間使用すると効果が弱くなる可能性は残るため、薬物治療を長期間続けることになるであろう60歳未満の人には、まず別の薬剤が処方されることがあります。ほかに使用される可能性のある薬剤には、アマンタジンやドパミン作動薬( ドパミンのように作用して、脳細胞のドパミン受容体を刺激する薬)などがあります。このような薬剤が使用されるのは、パーキンソン病患者において、 ドパミンの産生が減少しているためです。

レボドパは、筋肉のこわばりを軽減し、運動能力を改善し、振戦を大幅に軽減します。パーキンソン病の人がレボドパを使用すると、状態が劇的に改善します。軽度のパーキンソン病患者の多くは活動水準がほぼ正常まで回復し、寝たきりだった人が再び歩けるようになることもあります。

レボドパは、パーキンソン病に似た症状(パーキンソニズム)を引き起こす別の病気(多系統萎縮症進行性核上性麻痺など)の患者にはほとんど効果がありません。

レボドパは ドパミン前駆体です。これはつまり、体内で ドパミンに変換されるということです。この変換は脳の大脳基底核で起こりますが、そこでレボドパによって、パーキンソン病のために量が減少している ドパミンが補充されます。しかし、レボドパの一部は、脳に到達する前に腸管や血液中で ドパミンに変換されます。腸管内や血液中の ドパミン濃度が上昇すると、嘔吐、起立性低血圧、紅潮などの副作用のリスクが高くなります。レボドパがこのように大脳基底核に到達する前に ドパミンに変換されるのを防ぐため、同時にカルビドパが投与されます。その結果、副作用が少なくなる上、脳で多くのドパミンが利用できるようになります。

患者が耐えられるレボドパの用量は副作用によって制限されることがあるため、医師は、病気を抑える作用と副作用とのバランスを考慮してその人に最適な用量を決定します。具体的な副作用としては以下のものがあります。

  • ジスキネジアと呼ばれる不随意運動(口、顔面、四肢に現れる)

  • 悪夢

  • 幻覚とパラノイア

  • 血圧の変化

  • 錯乱

レボドパの服用を5年以上続けると、薬剤がよく効く期間とまったく効かない期間が頻繁に入れ替わる、オンオフ現象と呼ばれる異常が半数以上の人に現れます。例えば、数秒の間に、かなり良好に動ける状態から、重度の障害が起こってまったく動けない状態に変化することがあります。毎回の服用後に動ける時間が徐々に短くなり、次の予定服用時刻前に症状が現れるようになります(これをウェアリング-オフ現象と呼びます)。また、レボドパの服用に伴って、身をよじったり活動が過剰になったりなどの不随意運動が生じることもあります。以下のいずれかの対策により、しばらくの間ウェアリング-オフ現象を抑えることができます。

  • 1回の用量を減らして服用回数を増やす

  • レボドパの放出制御製剤(血液中にレボドパがよりゆっくりと放出される剤形)に切り替える

  • ドパミン作動薬またはアマンタジンを追加する

しかし、15~20年が経過すると、このウェアリング-オフ現象を抑えるのは困難になります。この時点で手術が検討されます。

レボドパ/カルビドパを含有するある製剤(欧州で入手可能)は、小腸に挿入された栄養チューブに接続したポンプから投与することができます。この製剤は、内服薬では緩和できない重度の症状があり、かつ手術を受けることができない人に対する治療法として研究されています。この製剤は、薬が効かない時間を大幅に短縮し、生活の質(QOL)を向上させるようです。

その他の薬剤

レボドパ以外の薬剤は、一般にレボドパより有効性が劣りますが、一部の人では有益なこともあり、特にレボドパの副作用に耐えられない場合や効果が不十分な場合には役立つ可能性があります。

ドパミン作動薬は、 ドパミンに似た作用をもつ薬で、パーキンソン病のどの段階でも有用です。具体的には以下のものがあります。

  • プラミペキソールとロピニロール(経口投与)

  • ロチゴチン(皮膚パッチで投与)

  • アポモルヒネ(皮下注射)

アポモルヒネは、動作の開始が困難なときに、レボドパのウェアリング-オフ現象を打ち消すために使用される即効性の薬剤です。そのため、この薬はレスキュー薬と呼ばれます。この薬剤は、患者がその場で凍り付いたようになって、歩けなくなったときなどに使用されます。患者自身か別の人(家族など)が、必要に応じて1日に5回まで注射することができます。一部の国では、手術が選択肢とならない重度の症状がある人に対し、ポンプを介して投与できるアポモルヒネの製剤が利用できます。

ラサギリンセレギリンはモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)と呼ばれるタイプの薬剤です。これらの薬剤は、 ドパミンの分解を阻害して、体内での ドパミンの作用時間を延長させます。MAO阻害薬を特定の食べもの(一部のチーズなど)、飲みもの(赤ワインなど)、または薬剤と一緒に服用すると、理論的には高血圧クリーゼと呼ばれる重篤な副作用が発生する可能性があります。しかし、パーキンソン病の治療においては、使用される用量が少なく、使用されるMAO阻害薬の種類(MAO-B阻害薬)も副作用が起こりにくいものであるため(特にラサギリン)、この副作用が起こる可能性は低いです。

カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬(エンタカポンやトルカポンなど)は、 レボドパ ドパミンの分解を遅らせ、これらの薬剤の作用時間を延長するため、レボドパの補助薬として有用であると考えられます。これらの薬剤は、レボドパとの併用でのみ用いられます。トルカポンはまれに肝臓の損傷を引き起こすことがあるため、めったに使用されません。しかし、トルカポンはエンタカポンより作用が強いため、ウェアリング-オフ現象が激しい場合や長く続く場合は、より有用な可能性があります。

一部の抗コリン薬(抗コリン作用を期待して投与されます)は、振戦を軽くする効果があるため、パーキンソン病の初期に使用されることがあります。一般的に用いられる抗コリン薬としては、ベンツトロピンやトリヘキシフェニジルなどがあります。非常に若い人で最も困っている症状が振戦である場合は、抗コリン薬が特に有用です。抗コリン薬は、副作用(錯乱、眠気、口腔乾燥、かすみ目、めまい、便秘、排尿困難、尿失禁など)があり、長期間服用すると精神機能が低下するリスクが高まるため、高齢者には使用されません。振戦は、神経伝達物質であるアセチルコリンの過剰と ドパミンの不足という不均衡に起因すると考えられていて、これらの薬剤を投与すると、アセチルコリンの作用が遮断されるため、振戦が抑制されると考えられます。

ときに、一部の抗ヒスタミン薬や三環系抗うつ薬など、抗コリン作用があるその他の薬剤も用いられることがあり、ときにレボドパの補助薬としても使用されます。しかし、これらの薬剤の効果は弱く、多くの厄介な抗コリン作用があるため、パーキンソン病の治療に使用されることはほとんどありません。

アマンタジンはインフルエンザの治療薬として使用されることがある薬剤で、軽度のパーキンソン病に単独で使用されるか、またはレボドパの補助薬として使用されることがあります。アマンタジンは、多くの作用によって効果を発揮すると考えられています。例えば、神経細胞を刺激して ドパミンを放出させると考えられています。この薬剤は、レボドパの副作用である不随意運動を制御する目的で用いられることが特に多いです。

腕や脚を重力に逆らった位置(例えば、腕をいっぱいに伸ばした状態)に保持したときに振戦が悪化する場合は、振戦を和らげるためにベータ遮断薬であるプロプラノロールが使用されることがあります。そのような振戦は姿勢時振戦と呼ばれます。

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パーキンソン病の治療に用いられる薬剤

薬剤

主な副作用

備考

ドパミン前駆体

レボドパ(カルビドパと併用)

レボドパ:不随意運動(口、顔面、腕や脚)、悪夢、立ち上がったときの血圧低下(起立性低血圧)、便秘、吐き気、眠気、錯乱、幻覚、パラノイア、動悸、紅潮

これらの薬剤の使用を急に中止すると、悪性症候群(高熱、高血圧、筋肉のこわばり、筋肉の損傷、昏睡がみられる)が生じ、生命を脅かすことがある。

この組合せが治療の中心となる。カルビドパはレボドパの効果を高め、副作用を減らす。数年経つと、併用の効果が低下することがある。

ドパミン作動薬

プラミペキソール

ロピニロール

眠気、吐き気、起立性低血圧、不随意運動、錯乱、強迫的な行動、衝動(ギャンブルなど)の出現または亢進、幻覚

薬剤の突然の中止による悪性症候群

病気の初期では、いずれの薬剤も単独で使用するか、低用量のレボドパと併用してレボドパの副作用の発現を遅らせる。病気が進行してからは、オンオフ現象によってレボドパの効果が低下した場合に、 ドパミン作動薬が役立つ。これらの薬剤は65歳以下の患者に特に有用である。

アポモルヒネ

重度の吐き気、嘔吐、注射箇所の皮膚の下のこぶ(結節)

即効性の薬剤で、皮下注射で投与される。レボドパのウェアリング-オフ現象を打ち消すためのレスキュー薬として使用される。

ロチゴチン

眠気、吐き気、起立性低血圧、錯乱、強迫的な行動、衝動(ギャンブルなど)の出現または亢進、幻覚、体重増加(体液の貯留が原因の可能性あり)、ときに皮膚に貼付した部位の刺激感

パッチ剤として利用できる。病気の初期では単独で使用される。24時間貼ったままにし、それから貼り替える。皮膚が刺激されるリスクを減らすために、貼る場所を毎日変える。

MAO-B阻害薬

ラサギリン

吐き気、不眠症、眠気、水分の貯留によるむくみ(浮腫)

ラサギリンは、レボドパの使用を遅らせるために単独で使用されることがあるが、多くの場合は、レボドパの補助薬として使用される。ラサギリンの有効性は、せいぜい中程度である。

セレギリン

レボドパと併用すると、レボドパの副作用(吐き気、錯乱、不眠、不随意運動など)が悪化する。

セレギリンは、レボドパの使用を遅らせるために単独で使用されることがあるが、多くの場合は、レボドパの補助薬として使用される。セレギリンの有効性は、せいぜい中程度である。

COMT阻害薬

エンタカポン

トルカポン

レボドパと併用すると、レボドパの副作用(吐き気、錯乱、不眠、不随意運動など)が悪化する。

下痢、背部痛、オレンジ色の尿

トルカポンでは、まれに肝傷害のリスク

病気が進行してからは、レボドパの投与間隔を長くするためにレボドパの補助薬として使用できる。レボドパとの併用でのみ用いられる。

トルカポンを使用する場合、医師は血液検査を定期的に行い、肝臓がどの程度機能しているか、肝傷害があるかどうかを確認する(肝機能検査)。

抗コリン作用のある薬*

ベンズトロピン

トリヘキシフェニジル

抑うつの治療が必要な場合は、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)

一部の抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)

眠気、錯乱、口腔乾燥、かすみ目、めまい、便秘、排尿困難、尿失禁、体温の調節障害

最も厄介な症状が振戦である若年患者において、初期に単独で使用されることがある。これらの薬は振戦を軽減できるが、動作の緩慢化や筋肉のこわばりに効果はない。

抗ウイルス薬

アマンタジン

吐き気、めまい、不眠、不安、錯乱、浮腫、排尿困難、緑内障の悪化、血管の拡張による皮膚のまだら状の変色(網状皮斑)

まれに、薬剤の使用中止または減量により、悪性症候群

アマンタジンは早期に軽度の症状に対して単独で使用されるが、数カ月で効果が失われる。病気が進行すると、レボドパの補助薬として、またレボドパによる不随意運動を軽減させる目的で使用される。

ベータ遮断薬

プロプラノロール

気道のけいれん(気管支れん縮)、異常な心拍数の低下(徐脈)、心不全、低血圧、高血糖、末梢循環不良、不眠、疲労、息切れ、抑うつ、鮮明な夢、幻覚、性機能障害

プロプラノロールは、腕や脚を重力に抵抗する位置に保持したときに悪化する振戦(姿勢時振戦)を和らげるために用いられることがある。

プロプラノロールは、糖尿病患者の血糖値を上昇させることがある。この薬剤を使用していると、血糖値の低下(低血糖)を警告する徴候が目立たなくなることもある。(糖尿病の治療薬を使用すると、血糖値が下がりすぎることがある。)この作用は糖尿病患者にとって危険である。

*抗コリン作用のある薬は、効果が小さく、多くの厄介な副作用があるため、パーキンソン病の治療に使用されることはほとんどありません。

MAO-B = B型モノアミン酸化酵素、COMT = カテコールO-メチルトランスフェラーゼ。

脳深部刺激療法

レボドパの長期使用による不随意運動が起こっている場合は、脳深部刺激療法が有益となることがあります。大脳基底核の一部に微小な電極を手術で埋め込みます。刺激を与える部位を特定するために、MRIまたはCT検査を行うことがあります。脳深部刺激療法では、この部分を刺激することにより、不随意運動と振戦が大幅に減り、オンオフ現象のオフ部分の時間が短くなります。

一部の国では、脳の重度に侵された小さな領域を除去したり、微小な電極で破壊したりします。この処置により症状が緩和します。その後、脳の別の部位にも脳深部刺激を行うことがあります。

幹細胞

脳への幹細胞移植は、パーキンソン病の将来的な治療になると考えられていましたが、効果がなく、厄介な副作用を伴うことが証明されています。

精神症状を改善する治療(対症療法)

原因がパーキンソン病そのものであるか、薬剤であるか、他の何であるかにかかわらず、精神病症状やその他の精神症状に対する治療を行います。

パーキンソン病や認知症の高齢者における精神病症状の治療に、特定の抗精神病薬(クエチアピン、クロザピン、またはピマバンセリン)を使用することは推奨されません。それでも、これらの薬剤は他の抗精神病薬と異なり、パーキンソン病の症状を悪化させないため、ときに使用されることがあります。

抑うつの治療には抗うつ薬が使用されます。ときに、抗コリン作用のある抗うつ薬(アミトリプチリンなど)が使用されます。このような薬剤は振戦の緩和にも役立ちます。しかし、非常に効果が高く、副作用がより少ない抗うつ薬が、ほかにもたくさんあります。例えば、フルオキセチン、パロキセチン、セレギリン、シタロプラム、エスシタロプラムなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、ベンラファキシン、ミルタザピン、ブプロピオンといったその他の抗うつ薬などです。

精神症状の治療は、運動症状を軽減し、生活の質(QOL)を改善し、ときには施設に入れる必要を遅らせるのに役立ちます。

介護者と終末期の問題

パーキンソン病は進行性の病気であるため、最終的には食事、入浴、着替え、トイレなど、日常生活に介護が必要になります。介護者はパーキンソン病が身体と精神に与える影響や、患者の身体機能をできるだけ保つ方法を学んでおくと役に立ちます。介護は疲労とストレスをもたらすため、支援団体の援助を受けることが有益です。

最終的にパーキンソン病の人のほとんどは重度の身体障害に陥り動けなくなります。介助されても食事ができなくなる可能性があります。約3分の1の患者には認知症が現れます。ものを飲み込むのが次第に困難になるため、誤嚥性肺炎(口や胃の中の液体を肺に吸い込むことによる肺の感染症)で死に至るリスクが高くなります。人によっては、介護施設への入居が最善の選択肢である場合もあります。

患者は意思決定能力が大きく損なわれる前に、終末期にどのような治療を望むかを記した事前指示書を作成しておくべきです。

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