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多系統萎縮症

執筆者:

Phillip Low

, MD, College of Medicine, Mayo Clinic

最終査読/改訂年月 2017年 5月
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多系統萎縮症は死に至る進行性の病気で、筋肉が硬くなり(筋強剛)、運動障害、協調運動障害、体内プロセス(血圧や膀胱の制御など)の機能不全などが起こります。

  • 運動や多くの体内プロセスを制御している脳領域に変性が起こります。

  • パーキンソン病に似た症状もありますが、多系統萎縮症では体内プロセスの機能不全も起こります。

  • 医師は、レボドパ(パーキンソン病の治療に用いられる薬剤)を使用したときの反応と、MRI検査および自律神経機能の検査に基づいて診断を進めます。

  • 簡単な対策と薬剤の使用が症状の軽減に役立ちますが、この病気は進行性で、最終的には死に至ります。

自律神経系の概要も参照のこと。)

多系統萎縮症は、通常は50代で始まります。女性より男性に2倍多くみられます。

多系統萎縮症(MSA)には以下の2種類があります。

  • MSA-C:協調運動障害とバランス維持が困難になることを特徴とします。

  • MSA-P:しばしば振戦がみられず、レボドパで症状が軽減しない場合が多いことを除けば、パーキンソン病と非常によく似ています。

どちらの場合でも自律神経系の機能障害がみられる。多系統萎縮症は、最初はこれらのタイプの一方として始まりますが、最終的にはもう一方のタイプの症状もみられるようになります。5年経過すれば、最初に発症した病気が何であれ、症状は同様のものになる傾向があります。

原因

多系統萎縮症は、以下に挙げる脳と脊髄の部位の変性が原因で起こります。

  • 大脳基底核:脳の奥深くにある大脳の底部に神経細胞が集まった部分である大脳基底核は、反対方向に動かす筋肉同士(例えば、腕を曲げる筋肉と腕を伸ばす筋肉)の活動のバランスをとることにより筋肉の随意運動の制御を助けています。

  • 小脳:小脳は随意運動(特に、同時に行う複雑な動き)を協調させ、平衡感覚の維持を助けています。

  • 自律神経系を制御する領域:この部位は、姿勢を変えたときの血圧調節などの、不随意に行われる体内プロセスを調節しています。

変性が起こる原因は分かっていませんが、多系統萎縮症でみられる変性はおそらく、脳内の神経細胞を支える細胞の中に変形したアルファ-シヌクレインが蓄積することによって起こると考えられています。アルファ-シヌクレインは、神経細胞同士の情報伝達を補助している脳内のタンパクですが、その正常な機能は完全には分かっていません。異常なアルファ-シヌクレインの蓄積は、純粋自律神経不全症パーキンソン病、またはレビー小体型認知症の患者にもみられます。多系統萎縮症を含む、アルファ-シヌクレインが蓄積する病気の患者には、しばしばレムレム睡眠行動障害がみられます。

小脳と大脳基底核の位置

小脳は脳幹の真上、大脳の下にあり、体の各部の動きを協調させる役割を果たしています。小脳は、大脳皮質と大脳基底核から送られてくる腕や脚の位置や姿勢に関する情報をもとに、腕や脚の動きがスムーズかつ精密になるように調整します。(大脳皮質とは、大脳の外表面を構成している複雑に折りたたまれた層のことで、神経系の神経細胞の大半がこの中に存在します。)

大脳基底核は、脳の奥深くにある神経細胞の集まりです。以下の構造が含まれています。

  • 尾状核(後方に向かって先細る形をしたC字型の構造物)

  • 被殻

  • 淡蒼球(被殻の下にある)

  • 視床下核

  • 黒質

大脳基底核には、筋肉の動きを滑らかにして姿勢を調整する働きがあります。

小脳と大脳基底核の位置

症状

多系統萎縮症は進行性の病気です。多系統萎縮症の初期症状は様々で、最初に脳のどの部分がどれだけ侵されたかによって異なります。この病気では3種類の症状が現れます。

パーキンソニズムは、パーキンソン病に似た症状で、多系統萎縮症でも起こることがあります。この種の症状は大脳基底核の変性によって生じます。筋肉が硬くなり(筋強剛)、動きが遅く、ふるえるようになり、動作を開始することが困難になります。歩行時に足を引きずり、腕の振りがなくなることがあります。不安定でバランスがとれないように感じ、転倒しやすくなります。姿勢が前かがみになることもあります。腕や脚がひきつったようにふるえることがあり、これは通常は腕や脚を一定の位置に保っているときにみられます。しかし、多系統萎縮症では、パーキンソン病と比べて、安静時に振戦が起こることはあまりありません。言葉を明瞭に発音するのが困難になり、声が甲高く、ふるえるようになることがあります。

協調運動障害が起こることがあります。これは小脳の変性が原因で起こります。平衡感覚が失われます。その後、腕と脚の動きを制御できなくなることもあります。結果として歩くことが困難になり、歩幅が広くて不規則な歩き方になります。物に手を伸ばしたとき、手が対象物を通り越してその向こう側に伸びてしまうことがあります。座っているときに不安定に感じることもあります。眼の焦点を合わせることや、動く物体を眼で追うことが困難になることもあります。ドアの取っ手を回す、電球を回してはめるなど、素早い交互の動作を必要とする作業も困難になります。

自律神経系によって制御されている体内プロセスの機能不全も起こることがあります。立ち上がったときに血圧が急激に下がり、めまい、ふらつき、失神をきたします(この症状を起立性低血圧と呼びます)。横になると血圧が上昇することがあります。切迫した尿意を感じたり、排尿回数が増えたり、または無意識に尿が漏れたり(尿失禁)することがあります。排尿自体が困難になることもあります(尿閉)。便秘がよくみられます。視力が低下します。男性では、勃起の開始や維持が困難になることがあります(勃起障害)。

以上のほかに自律神経の機能不全でみられる症状としては、以下のものがあります。

  • 汗、涙、唾液の量が減少します。その結果、暑さに耐えることができなくなり、ドライアイや口腔乾燥がみられることがあります。

  • 嚥下(えんげ)困難や呼吸困難がみられることもあります。

  • 呼吸時に大きな高い音が出るようなことがあります。

  • 寝ている間に、呼吸が繰り返し止まったり不十分になったりすることがあります(睡眠時無呼吸症候群)。

  • レム睡眠行動障害があれば、睡眠中に話したり(しばしば下品な発言がみられます)、腕や脚を激しく振ったりすることがあり、このような症状がみられるのは、患者が鮮明な恐ろしい夢を身ぶりで表しているためとも考えられます。

  • 排便を制御できなくなることもあります(便失禁)。

発症して5年以内に、車いす生活を余儀なくされるか、その他の重い身体障害に陥ります。発症から9~10年後に死に至ります。

診断

  • 医師による評価

  • MRI検査

  • 自律神経系を評価する検査

多系統萎縮症の診断は、医師の評価と特定の検査の結果に基づいて下されます。例えば、パーキンソン病でみられる症状(パーキンソン症状)が急速に悪化していて、レボドパ(パーキンソン病の治療薬)を使用しても症状の改善がみられないか、わずかだけの場合、医師は多系統萎縮症を疑います。

通常は、脳内で特定の変化が起きていないか調べるためにMRI検査が行われます。

自律神経系を評価する検査が行われます。具体的には、温熱発汗試験や、座っているときと立ち上がった後の血圧をそれぞれ測定して起立性低血圧の有無を調べる検査などを行います。

MRIで多系統萎縮症を示唆する変化が認められ、かつ検査結果が異常であれば、多系統萎縮症の可能性が高くなります。

治療

  • 症状の緩和

多系統萎縮症を治す治療法はありません。しかし、簡単な対策と薬剤を併用すると症状の緩和に役立つことがあります。

  • パーキンソニズム:できるだけ多くの日常生活動作を続けると、筋力と筋肉の柔軟性の維持に役立ちます。定期的にストレッチや運動をするのも助けになることがあります。レボドパとカルビドパの組合せなど、パーキンソン病の治療に用いられる薬剤の服用が試みられることがありますが、通常はほとんど効果がないか、あったとしても2~3年しか続きません。

  • 起立性低血圧:血圧が突然変化しないよう、血圧を安定させる対策がとられます。塩分と水分の摂取量を増やすと、血液の量が増え、血圧の上昇に役立ちます。ゆっくり立ち上がるようにすると、大幅な血圧低下や急激な血圧低下を予防するのに役立つほか、腹帯や弾性ストッキングの着用も助けになる可能性があります。そのようなサポーターは、脚から心臓に向かう血流を促す働きがあり、脚に血がたまりすぎるのを防ぐことによって、血圧の維持に役立ちます。ベッドの頭側を10センチメートルほど高くすると、横になるときに血圧が上昇しすぎるのを予防するのに役立ちます。フルドロコルチゾンを経口で使用することもあります。フルドロコルチゾンは、体内に塩分と水分を保持するのを助けるため、立ち上がるときに必要な分だけ血圧が上がる可能性があります。ミドドリンやドロキシドパなどの薬剤の服用も役立つ場合があります。

  • 体液の産生減少:発汗が減少または消失している場合は、体温が上がりすぎないよう、暖かい環境を避けるべきです。口腔乾燥がある場合は、十分な口腔ケアと歯の定期検診が非常に重要です。ドライアイがある場合は、人工涙液(実際の涙に似た成分を含む点眼薬)を数時間毎に眼にさすことで、症状を和らげることができます。

  • 尿閉:必要であれば、カテーテル(ゴム製の細い管)を自分で膀胱内まで挿入する方法を教わることができます。挿入は1日に数回行います。尿道からカテーテルを挿入して、膀胱内の尿を排出できるようにします。膀胱が空になったらカテーテルを抜き取ります。この方法は、膀胱の拡張と尿路感染症の発生を予防するのに役立ちます。感染予防には、手を洗い、尿道の周りを洗浄し、滅菌されているか清潔なカテーテルを使用することも役立ちます。協調運動障害が進むと、カテーテルの挿入がより困難になります。ときに、膀胱の収縮を刺激して排尿を促すために、ベタネコールなどの薬剤を使用します。

  • 尿失禁:過度に活発になった膀胱の筋肉を弛緩させるために、オキシブチニンミラベグロン、タムスロシンまたはトルテロジンを服用してもらうことがあります。失禁が続く場合は、カテーテルを膀胱に挿入すると役立つことがあります。カテーテルを自分で挿入する方法を教わることもできます。

  • 便秘:高繊維食(食物繊維を多く含む食事)をとり、便軟化剤を使用することが推奨されます。便秘が続く場合は、浣腸が必要になることがあります。

  • 勃起障害:通常はシルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル(avanafil)などの経口薬による治療が行われます。

多系統萎縮症が進行すると、呼吸用のチューブ、栄養チューブ(通常は手術で挿入する)、またはその両方が必要になることがあります。

歩行、日常動作、会話が困難になった場合は、それらの能力低下を補う方法を理学療法士、作業療法士、言語療法士から教わることができます。ソーシャルワーカーは、支援団体を見つける手助けや、症状によって日常生活に支障をきたすようになった場合、在宅ケアやホスピスを探す手助けをします。

終末期の問題

多系統萎縮症は進行性の病気で最終的には死に至るため、診断された後はすぐに事前指示書を作成するべきです。事前指示書には、終末期にどのような治療を受けたいかを記載しておきます。

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