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しびれ

執筆者:

Michael C. Levin

, MD, College of Medicine, University of Saskatchewan

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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しびれとは、本来は感覚が部分的または完全に消失した状態を指します。これは末梢神経系の機能障害の症状である可能性があります。(脳、脊髄、末梢神経の病気の症状に関する序も参照のこと。)

しびれがある人では、軽い触覚、痛み、温度、振動を感じることができなかったり、体の一部がどこにあるのか(位置覚)が分からなくなったりすることがあります。体の一部がどこにあるか分からないと、平衡感覚や協調運動、歩行、自動車の運転に問題が生じるようになり、また転倒しやすくなります。

一方で、チクチク感やピリピリする痛み(ピンや針で刺されるような感覚)、四肢の脱力や麻痺などに対して「しびれ」という言葉が用いられることもありますが、このことはおそらく、しびれに伴ってこのような異常な感覚や症状が生じることが多いためと考えられます。他の症状があるかどうかは、しびれの原因によって異なります。

しびれが長く続くと(特に脚に起こった場合)、別の症状につながる可能性があります。歩行や運転が難しくなったり、転倒しやすくなる可能性があります。痛みも感じなくなるため、感染、足病変(足潰瘍)、けがなどに気づかないこともあります。このような場合、治療が遅れる可能性があります。

感覚の経路

人の感覚が正常に機能するためには、感覚受容器(皮膚の下にある神経線維の末端が感覚の受容に特化したもの)が体の内部または周囲の情報を検知する必要があります。それらの受容器は、以下の経路に沿って信号を送ります。

  • 感覚神経(皮膚から脊髄に向かう)をたどる

  • 脊髄神経根(複数の感覚神経が組み合わさった短く太い枝)として背骨の椎骨と椎骨の間をくぐり、脊髄に合流する( 脊椎の成り立ち

  • 脊髄を上行する

  • 脳幹を上行する

  • 信号を受け取って解釈する脳の部位(大脳にある)に到達する

体の部位によっては、経路に神経叢または馬尾と呼ばれる部分が含まれることもあります。

神経叢とは、感覚神経線維と運動神経線維(脳からの信号を脊髄を介して筋肉や体の他の部位に伝える神経線維)からなるネットワークです。神経叢では、神経線維がいったん組み合わされた後、体の特定の部位へ向かうように並べ替えられます。神経叢から分岐した神経線維は末梢神経となります。体幹には4つの神経叢があります。

馬尾は、脊髄の下に付着している脊髄神経根の線維の束です。構造が馬の尾に似ていることから、この名前で呼ばれています。馬尾は、太もも、殿部、性器と、これらに挟まれる領域の感覚に関与していて、この領域は自転車に乗るときにサドルにあたる部分に相当することから、サドル領域と呼ばれています。

原因

感覚の経路の一部が(通常は病気や薬剤によって)機能しなくなると、しびれが生じます。

多くの病態が様々な形でしびれを引き起こします。以下なような例が挙げられます。

  • 体または脳の神経への血液の供給が減少する、または遮断される(体の場合は血管炎など、脳の場合は脳卒中などが原因になります)

  • けが、神経を侵す遺伝性疾患(フリードライヒ運動失調症など)により、感覚の経路の一部が損傷される

  • 経路の一部に圧力がかかる(圧迫)

  • 神経の感染症(ハンセン病、HIV感染症、ライム病など)

  • 経路の一部の神経に炎症が起こったり、外層がなくなったり(脱髄)する(多発性硬化症やギラン-バレー症候群など)

  • 代謝に異常が生じる(糖尿病、ビタミンB12欠乏症、ヒ素中毒、化学療法薬の使用など)

経路のそれぞれの部位を圧迫する原因には、以下のように様々なものがあります( しびれの主な原因と特徴)。

  • 末梢神経の圧迫:特定の動きを何度も繰り返したために腫れが生じること(例えば手根管症候群の場合)、または長時間同じ姿勢でいること(脚を組んだまま長時間座っているなど)

  • 脊髄神経根の圧迫:脊髄の椎間板の破裂またはヘルニア、変形性関節症、脊柱管狭窄症(脊髄が通っている管が狭くなる病気)

  • 脊髄の圧迫:腫瘍、けが、脊髄付近にたまる血液(血腫)または膿(膿瘍)

評価

しびれを引き起こす病気は非常に多いため、医師は可能性の高い原因に重点を置きつつ、体系的に問診を行っていきます。

警戒すべき徴候

しびれがみられる場合は、以下の症状に注意が必要です。

  • 突然(数分または数時間以内に)始まるしびれ

  • 突然または急速に(数時間または数日以内に)始まる筋力低下

  • しびれまたは筋力低下が上方または下方に向かって急速に広がり、体の他の部位に次々と及ぶ

  • 呼吸困難

  • 太もも、殿部、性器とこれらに挟まれる領域(サドル領域)のしびれ、尿失禁や便失禁

  • 特定の高さより下(胸より下など)の両側の部位に起きたしびれ

  • 1つの脚または腕の全体に及ぶしびれ

  • 顔面と体幹の感覚消失

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医療機関を受診する必要があります。警戒すべき徴候がない人は、主治医に電話してください。医師は患者の症状に基づいて、どの程度早急な受診が必要かを判断します。

医師が行うこと

医師は最初に、体のどの部位に症状があるかを尋ねます。以下のように、症状がある体の部位のパターンから、神経の経路のどこに機能不全があるのか分かることがよくあります。

  • 腕または脚の一部:末梢神経または脊髄神経根の機能不全

  • 左右同じ側の腕と脚:脳の機能不全

  • 体の特定の高さより下の両側:脊髄の機能不全

  • 体の両側、主に手足:体中の多くの末梢神経が同時に機能しなくなる(多発神経障害

医師は次に、その他の症状や病歴について質問します。身体診察も行います。病歴と身体診察での所見から、多くの場合、原因と必要な検査が推測できます( しびれの主な原因と特徴)。

医師はまず、しびれを詳しく説明するよう患者に求めます。次に、以下のような具体的な質問をすることもあります。

  • しびれが始まったのはいつですか

  • どれくらいの速さで始まりましたか

  • ほかに症状はありますか(例えば、異常感覚、筋力低下または麻痺、便失禁、尿失禁、尿閉[膀胱に尿がたまっても排尿できない状態]、視覚障害、嚥下困難、または精神機能の悪化)

  • 症状を誘発する要因はありますか(例えば、脚や腕を圧迫すること、けが、不自然な姿勢で寝ること、感染症)

しびれや他の症状がどの程度時間をかけて現れたかを知ることは、医師が病気の種類を判断する際の助けになります。

原因を示唆する症状がないかを尋ねられます。例えば、背中や首の痛みは、変形性関節症、椎間板破裂、脊髄に圧力をかけるその他の病気を示唆します。

医師は、しびれの原因になりうる病気(特に糖尿病、慢性腎臓病、HIV感染症やライム病などの感染症、脳卒中、感染症)にかかったことがあるかについても尋ねます。家族に同様の症状がみられる人がいるか、神経系を侵す遺伝性の病気をもつ人がいるかを尋ねることもあります。薬剤(レクリエーショナルドラッグを含む)の使用歴、毒性物質にさらされた可能性についても尋ねます。

身体診察では、神経系の完全な評価(神経学的診察)を行い、特に感覚の評価(触感、温かさなどの刺激を正常に感じ取ることができるか)と反射や筋肉の機能の評価に重点を置きます。

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しびれの主な原因と特徴

原因

一般的な特徴*

検査

体の片側の腕と脚におけるしびれ

以下のような大脳(脳の中で一番大きな領域)の外層を侵す病気

顔面と体の左右同じ側の感覚消失、触って物を認識することができない

通常、筋力低下、協調運動障害、その他神経系の機能不全を示唆する症状

脳のMRIまたはCT検査

脳幹の上部を侵す病気

  • 脳卒中

  • 腫瘍

顔面と体の左右同じ側の感覚消失

しばしば複視

脳のMRIまたはCT検査

脳幹の下部を侵す病気

  • 脳卒中

  • 腫瘍

  • 脳の変性疾患

顔面の片側と体の対側の感覚消失

しばしば視覚障害、咀嚼(そしゃく)困難、嚥下困難、発話困難

脳のMRI検査

四肢または体幹の両側のしびれ

脊髄の断面全体を侵す病気

  • けが、腫瘍、椎間板の破裂もしくはヘルニア、血腫(血液がたまった状態)、または膿瘍(内部に膿がたまった空洞)による脊髄の圧迫

  • 急性横断性脊髄炎(突然の脊髄の炎症)

体の特定の高さより下の感覚消失と通常は筋力低下

顔面の感覚消失はなし

通常は尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)、便失禁や尿失禁、性的な反応性の低下(男性の勃起障害など)

脊髄のMRI検査

圧迫による馬尾症候群

  • 椎間板の破裂またはヘルニア

  • がんの脊髄への波及

主に太もも、殿部、膀胱、性器と、これらに挟まれる領域(サドル領域)にみられるしびれ

通常は腰痛

しばしば尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)、便失禁や尿失禁、性的な反応性の低下(男性の勃起障害など)

脊髄のMRI検査

多発神経障害(体中の多くの末梢神経が同時に機能しなくなる病態)

  • 特定の薬剤の使用

  • 糖尿病

  • 慢性腎臓病

  • 代謝性疾患(尿毒症[腎不全により血液中に有害物質が蓄積すること]、ビタミンB12欠乏症など)

  • 感染症(HIV感染症、ライム病など)

体の両側のほぼ同じ領域(主に手足)にみられるしびれまたは感覚異常

ときに筋力低下と反射の消失

神経伝導検査(神経が信号を伝える速さを測定する検査)と筋電図検査(筋肉を刺激して電気的活動を記録する検査)

疑われる病気に応じてその他の検査

脱髄疾患(神経が炎症を起こして髄鞘[神経の外側を覆っている層]が脱落する病気)

  • 多発性硬化症

しばしば筋力低下またはぎこちない動き

ときに視覚または発話障害

脳および脊髄のMRI検査

腰椎穿刺による髄液(脳と脊髄の周囲を流れている液体)のサンプルの検査

腕または脚の一部のしびれ

脊髄神経根を侵す病気

以下に該当する痛み

  • ときに腕または脚に走る刺すような痛み

  • 電気ショックのように感じることもある

  • 脊椎を動かす、せきをする、バルサルバ法(鼻や口から息が漏れないようにした状態で思い切り息を吐き出そうとする動作)を行うことにより、悪化することがある

しばしば、異常のある神経根が支配する領域における筋力低下や反射減弱または消失

医師の診察

ときに脊髄のMRIまたはCT検査

ときに神経伝導検査と筋電図検査

  • 胸郭出口症候群

  • 刺創などのけが

  • 神経叢の近くの臓器に広がったがん

  • 腕神経叢炎(首や肩にある神経叢の突然の機能不全)

腕または脚の比較的広い領域におけるしびれ、痛み、筋力低下

神経伝導検査と筋電図検査

MRI検査(けがの場合や腕神経叢炎が疑われる場合を除く)

単神経障害(1本の末梢神経だけに起こる機能不全)

痛みを伴うまたは伴わないしびれ

しばしば、1つの神経が支配する領域にみられる筋力低下や反射減弱または消失

医師の診察

ときに神経伝導検査と筋電図検査

*この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここに示されている特徴は典型的なものですが、常に当てはまるわけではありません。

CT = コンピュータ断層撮影、MRI = 磁気共鳴画像。

検査

診断が明らかであり、治療が一般的な対策(安静や副子固定など)のみでよい場合(例えば手根管症候群の場合など)、検査は必要ありません。

それ以外の場合は、医師が異常を疑った部位に応じて以下の検査が行われます。

  • 感覚神経、神経叢、または脊髄神経根の場合:神経伝導検査と筋電図検査

  • 神経叢の場合:ときに、造影剤を静脈に注射して行うMRI検査

  • 脳または脊髄の場合:MRI検査またはCT検査(MRI検査がすぐに行えない場合)

神経伝導検査と筋電図検査は、しばしば同時に行われます。神経伝導検査では、電極または小さな針で神経を刺激します。そして、信号が神経を伝わる速さを測定します。筋電図検査では、筋肉に小さな針を刺し、その筋肉が休んでいるときと収縮しているときの電気的活動を記録します。

具体的な原因を特定するため、さらに他の検査を行います。例えば、神経伝導検査の結果から多発神経障害が示唆される場合には、血液検査を行って様々な原因(糖尿病、腎疾患、ビタミン欠乏症など)がないかを確認します。

治療

可能であれば、しびれの原因を是正または治療します。

一般的な対策を行うことで、症状が軽減し、さらなる症状を予防できる可能性があります。しびれのある患者は、痛みに鈍感になっていることが多いため、けがの予防策が必要です。足にしびれがある場合、特に血流障害がある場合は、足に合った靴下や靴を選び、靴を履く前に中に小石などの異物がないか確認するようにすべきです。足に潰瘍や感染症の徴候(発赤など)がないか、頻繁に見て調べることも大切です。手や指にしびれがある場合は、とがった物や熱いかもしれない物を持つときに注意を払うべきです。

歩行が困難な人や、位置覚(体の部位がどこにあるのかを知る感覚)をなくしている人は、安全に歩き、転倒を予防する方法を学ぶために、理学療法が役立つ可能性があります。

このような人は、運転にも問題が生じる可能性があることを自覚しておくべきであり、運転する必要がある場合は、主治医に相談するべきです。

要点

  • しびれとは、感覚の部分的なまたは完全な消失であり、しばしば、チクチク感などの異常な感覚を伴います。

  • しびれには多くの原因があり、皮膚の感覚受容器から脳へと至る経路のどこかが機能しなくなると、しびれが発生します。

  • 警戒すべき徴候がみられる場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

  • 症状のある部位と症状がどれくらいの時間をかけて現れたかを医師に伝えると、機能不全のある部位と原因を特定する助けになります。

  • 感覚神経、神経叢、または脊髄神経根の病変が疑われる場合は、神経伝導検査と筋電図検査から、脳または脊髄の病変が疑われる場合は、MRI検査から評価を始めるのが通例です。

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