第6脳神経麻痺には、糖尿病による細い血管の損傷など、多くの原因がありますが、原因が特定されないこともしばしばあります。
麻痺が生じた側の眼は、十分外側に向けることができず、まっすぐ前を見ようとすると内側に向いてしまうことがあります。
医師は症状に基づいて第6脳神経麻痺を特定できますが、原因を特定するために脳の画像検査などの検査が行われます。
原因が特定されてもされなくても、通常、第6脳神経麻痺は解消します。
(脳神経の概要 脳神経の概要 脳神経は12対の神経で構成され、脳から直接出て頭部、頸部、体幹の様々な部位へと伸びています。脳神経には、特殊な感覚(視覚、聴覚、味覚など)を担うものと、顔の筋肉を制御したり腺を調節したりするものがあります。脳神経は、それぞれの位置に応じて、脳の前から後ろに向かって番号と名前が付けられています。... さらに読む も参照のこと。)
麻痺とは動かせなくなること意味し、部分麻痺から完全麻痺まで程度に幅があります。
この麻痺は、以下のような様々な病気によって起こります。
腫瘍
耳または眼の感染症の合併症
この神経に血液を供給する動脈の閉塞(糖尿病、 脳卒中 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中は、動脈が詰まって脳に十分な血液と酸素が供給されなくなることで生じる、脳組織の一部の壊死(脳梗塞)です。 虚血性脳卒中は通常、脳に向かう動脈に多くは血栓や動脈硬化で生じた脂肪の沈着物が詰まることで発生します。 症状は突然現れます。具体的には、体の片側の筋力低下、麻痺、感覚消失、感覚異常のほか、発話困難、錯乱、視覚障害、めまい、平衡感覚の消失と協調運動障害などの症状があります。... さらに読む 、 一過性脳虚血発作 一過性脳虚血発作(TIA) 一過性脳虚血発作(TIA)は、脳への血液供給が一時的に遮断されるために起こる脳機能障害で、典型的には症状は1時間以内に消失します。 TIAの原因と症状は虚血性脳卒中と同じです。 TIAは、通常1時間以内に症状が消失し、恒久的な脳損傷を残さない点で虚血性脳卒中と異なります。 症状に基づいてTIAが疑われますが、脳画像検査も行われます。 TIAの原因を特定するために、他の画像検査や血液検査も行われます。 さらに読む 、 血管炎 血管炎の概要 血管炎疾患は、血管の炎症(血管炎)を原因とする病気です。 血管炎は、特定の感染症や薬によって引き起こされる場合もあれば、原因不明の場合もあります。 発熱や疲労などの全身症状がみられることがあり、その後、侵された臓器に応じて他の症状がみられます。 診断を確定するために、患部の臓器の組織から採取したサンプルの生検を行い、血管の炎症を確認します... さらに読む [血管の炎症]などによる)
ときに高血圧
まれに、上気道感染症(小児の場合)
これらの病気の中には、頭蓋内の圧力を上昇させて、神経を圧迫する病気(腫瘍や脳膿瘍など)もあれば、神経への血流を阻害する病気(動脈の閉塞など)もあります。
他の脳神経麻痺を伴わずに第6脳神経麻痺が単独で起きた場合、しばしば原因を特定できません。
第6脳神経麻痺の症状
麻痺が生じた側の眼は、十分外側に向けることができず、まっすぐ前を見ようとすると内側に向くことがあります。麻痺側の眼の方向を見ようとすると、複視が起こります。
第6脳神経麻痺の人にみられるその他の症状は、原因によって異なります。例えば、頭蓋内の圧力を上昇させる病気があると、重度の頭痛が起きたり、急に頭を動かしたときに一時的なかすみ目が起きたりすることがあります。また、顔や口がしびれたり、麻痺した側の眼を他の方向に動かせなくなったりすることもあります。
第6脳神経麻痺の診断
神経学的診察
眼底検査を含む眼の診察
CTまたはMRI検査
ときに腰椎穿刺
ときに血液検査
第6脳神経麻痺は通常、 神経学的診察 神経学的診察 神経の病気が疑われる場合、医師は身体診察を行って、すべての器官系の評価を行いますが、特に神経系に重点が置かれます。神経系の診察(神経学的診察)では、以下の要素が評価されます。 精神状態 脳神経 運動神経 感覚神経 さらに読む と眼底検査を含む眼の診察の結果から容易に特定できます。ただし、原因は通常、それほど明らかにはなりません。
腫瘍など頭蓋内の圧力を高める異常の存在を否定するために、脳のCT検査か、できれば脳のMRI検査を行います。画像検査の結果が正常であれば、感染と出血の有無を判断するために 腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む を行うことがあります。
症状から血管炎が疑われる場合は、血液を採取して、特定の異常抗体(抗核抗体やリウマトイド因子など)や赤血球沈降速度(赤沈―血液を入れた試験管内で赤血球が底に沈む速度)の異常といった、炎症の徴候がないかを確認します。
医師は 糖尿病を調べる血液検査 糖尿病のスクリーニング 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む を行うことがあり、高齢、高血圧、糖尿病の家族歴、肥満などの危険因子がある場合は特にこの検査が重視されます。医師は、空腹時 血糖値 血糖値の測定 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む と ヘモグロビンA1C値 ヘモグロビンA1C 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む を測定したり、 経口ブドウ糖負荷試験 経口ブドウ糖負荷試験 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む を行ったりします。
あらゆる検査を行っても、原因を特定できない場合があります。
第6脳神経麻痺の治療
原因の治療
第6脳神経麻痺の治療法は原因によって異なります。原因に対する治療を行えば、通常は麻痺も消失します。
原因不明の麻痺や、血管の閉塞による麻痺は、治療しなくても通常は2カ月以内に消失します。