(脳神経の概要 脳神経の概要 脳神経は12対の神経で構成され、脳から直接出て頭部、頸部、体幹の様々な部位へと伸びています。脳神経には、特殊な感覚(視覚、聴覚、味覚など)を担うものと、顔の筋肉を制御したり腺を調節したりするものがあります。脳神経は、それぞれの位置に応じて、脳の前から後ろに向かって番号と名前が付けられています。... さらに読む も参照のこと。)
麻痺とは動かせなくなること意味し、部分麻痺から完全麻痺まで程度に幅があります。
共同注視麻痺で影響を受けることが最も多いのは、水平注視(横を見ること)です。上方注視に影響が出ることはまれで、下方注視に影響が出ることはさらにまれです。特定方向を見ることができないことに本人が気づくこともあります。
共同注視麻痺に対する特別な治療法はありませんが、可能であれば原因を治療します。
水平注視麻痺
水平注視麻痺の最も一般的な原因は 脳幹 脳幹 脳の機能は神秘的であり、驚異的です。思考、信念、記憶、行動、気分は、すべて脳から起こります。脳は思考と知能の場所であり、体全体をコントロールしている司令塔です。脳はまた、運動、触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚の統合も行っています。人は脳の働きによって、言葉を話して他者とコミュニケーションをとる、数字を理解して計算する、作曲や音楽鑑賞をする、幾何学的な形を認識したり判別したりする、将来の計画を立てる、さらには想像して空想を楽しむことなどを可能... さらに読む (脳の下方の部分)の損傷で、その多くは 脳卒中 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中は、動脈が詰まって脳に十分な血液と酸素が供給されなくなることで生じる、脳組織の一部の壊死(脳梗塞)です。 虚血性脳卒中は通常、脳に向かう動脈に多くは血栓や動脈硬化で生じた脂肪の沈着物が詰まることで発生します。 症状は突然現れます。具体的には、体の片側の筋力低下、麻痺、感覚消失、感覚異常のほか、発話困難、錯乱、視覚障害、めまい、平衡感覚の消失と協調運動障害などの症状があります。... さらに読む
によって起こります。多くの場合、麻痺は重度です。すなわち、眼球を中央より反対側に動かすことが非常に困難です。より軽症の人では、1つのものをあまり長く見つめていられないという症状がみられることがあります。また、眼振がみられることもあります。(眼振は、ふるえるような不随意の動きで、眼球が一方向に動いた後、ゆっくり反対方向に戻るという動きが繰り返し起こるものです。)
この麻痺は大脳前部の損傷によっても起こることがあり、これも通常、原因は脳卒中です。この場合の麻痺は、脳幹の損傷による麻痺ほど重度ではなく、多くの場合は時間の経過につれて症状が軽くなります。
垂直注視麻痺
垂直注視は加齢に伴って徐々に低下しますが、垂直注視麻痺は加齢に伴う変化よりも重い症状です。通常は上方注視が損なわれます。
垂直注視麻痺の最も一般的な原因は脳幹の最上部(中脳)の損傷で、通常は脳卒中または腫瘍によるものです。
上方注視麻痺では、瞳孔が散大する場合があります。この麻痺がある人が上の方を見ると、眼振が起きます。つまり、眼球が急速に上方に移動した後、ゆっくりと下方に戻ります。
パリノー症候群は上方注視麻痺の一種です。これは通常、垂直注視を制御している脳の領域を圧迫する 松果体腫瘍 松果体腫瘍 脳腫瘍(表 「脳の内部または周囲に発生する腫瘍」も参照)は、その種類に応じて、発生位置、好発する人、症状などの特性が異なります。 神経膠腫には、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫などがあります。星細胞腫は最もよくみられる神経膠腫です。 一部の星細胞腫と乏突起膠腫は増殖が緩やかで、初期にはけいれん発作しか引き起こさない場合もありますが、他の神経膠腫(退形成性星細胞腫と退形成性乏突起膠腫など)は、急速に増殖する悪性の腫瘍です。(退形成性とは、細胞... さらに読む や、脳卒中が原因で発生します。パリノー症候群の人は下を見る傾向があります。また、まぶたが後退し、瞳孔が散大します。