( 脳の感染症の概要 脳の感染症の概要 脳の感染症は、ウイルス、細菌、真菌のほか、ときに原虫や寄生虫によって引き起こされます。別の種類の脳疾患として、プリオンと呼ばれる異常な物質によって引き起こされる海綿状脳症という病気もあります。 脳の感染症が起こると、しばしば中枢神経系のほかの部位(脊髄など)も侵されます。通常、脳や脊髄は感染から保護されていますが、いったん感染が起こると、... さらに読む も参照のこと。)
頭蓋内硬膜外膿瘍と硬膜下膿瘍は、以下のように、脳自体の外側、頭蓋骨の内側(頭蓋内)に発生します。
頭蓋内硬膜外膿瘍:硬膜と頭蓋骨の間
硬膜下膿瘍:くも膜と硬膜の間
脳を覆う組織
脳は頭蓋骨の内部で、髄膜と呼ばれる以下の3層からなる組織に覆われています。
頭蓋内硬膜外膿瘍は、硬膜と頭蓋骨の間に発生します。硬膜下膿瘍は、くも膜と硬膜の間に発生します。 ![]() |
原因
硬膜外膿瘍と硬膜下膿瘍は、以下の原因によって発生することがあります。
副鼻腔感染症
耳の重症感染症
頭部外傷
頭部の手術
まれに血液の感染症
硬膜外膿瘍や硬膜下膿瘍は、脳膿瘍の原因菌と同じ細菌(黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus やバクテロイデス・フラジリス Bacteroides fragilisなど)によって引き起こされます。
5歳未満の小児では、通常は 細菌性髄膜炎 急性細菌性髄膜炎 急性細菌性髄膜炎とは、急速に進行する髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症のうち、細菌が原因であるものをいいます。 年長の小児や成人では、あごを胸につけるのが難しくなる症状(項部硬直といいます)が現れ、また通常は発熱や頭痛もみられます。 乳児では、項部硬直がみられないことがあり、体調が悪そうに見えたり、体温が高くまたは低くなったり、哺乳が少なくなったり、眠そうにむずかったりするだけのことがあります。... さらに読む が原因で起こります。小児の髄膜炎は現在ではまれになったため、小児の硬膜外膿瘍や硬膜下膿瘍もまれになりました。
症状
脳膿瘍と同様、硬膜外膿瘍または硬膜下膿瘍では、頭痛、眠気、嘔吐、けいれん発作、項部硬直、その他の脳機能障害の徴候が現れます。
症状は数日かけて発生することがあります。髄膜炎または脳膿瘍が発生することがあります。脳から出る太い静脈(静脈洞)に血栓が形成されることもあります。
治療しなければ、症状は急速に進行し、昏睡や死に至ります。
診断
MRIまたはCT検査
硬膜外膿瘍または硬膜下膿瘍の診断を下すには、ガドリニウムを静脈内に注射してからMRI(磁気共鳴画像)検査を行います。ガドリニウム(MRI検査用の造影剤)を投与することにより、MRI画像上で膿瘍が見やすくなります。MRI検査が利用できない場合、造影剤(CT画像上で膿瘍を見やすくする物質)を静脈内に注射してから、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。
腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む はこの病気にはほとんど役に立たず、危険を伴うことがあります。頭蓋内に大きな膿瘍やその他の腫瘤がある状況で、腰椎穿刺を行って髄液を採取しようとすると、脳が下の方に移動して、脳の各部分を仕切っている組織の小さな開口部から脳の一部が押し出されてしまう可能性があります(これを 脳ヘルニア ヘルニア:脳の圧迫
といいます)。その結果生じる損傷で死に至ることもあります。
治療
膿瘍の排出
抗菌薬、ときにその他の薬
乳児の場合は、泉門(頭蓋骨を構成する複数の骨の隙間にある軟らかい部分)から直接膿瘍内に針を刺し込める場合があり、これにより膿を排出して頭蓋内圧を下げられるとともに、診断の助けになることがあります。
硬膜外膿瘍や硬膜下膿瘍は、手術による排膿が必要です。副鼻腔または中耳の異常が原因で感染が起こっている場合は、手術時にその異常の修正も同時に必要になることがあります。
抗菌薬(セフォタキシムまたはセフトリアキソン、メトロニダゾール、バンコマイシンなど)は静脈内に投与されます。
けいれん発作を抑えるための抗てんかん薬や、頭蓋内圧を下げるための処置が必要になることもあります。具体的な処置としては以下のものがあります。
利尿薬を使用して体内の水分量を減らす
コルチコステロイドを使用して炎症と腫れを軽減する