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脳炎

執筆者:

John E. Greenlee

, MD, University of Utah Health

医学的にレビューされた 2020年 7月
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やさしくわかる病気事典

脳炎とは、ウイルスが脳に直接感染して起こることもあれば、ウイルスやワクチン、その他の物質が炎症を誘発して起こることもあります。炎症が脊髄に波及することもあり、その場合は脳脊髄炎と呼ばれます。

  • 発熱、頭痛、けいれん発作が起こることがあり、眠気、しびれ、錯乱をきたすこともあります。

  • 通常は頭部のMRI検査と腰椎穿刺が行われます。

  • 治療としては、症状を緩和する処置が行われ、ときに抗ウイルス薬が用いられることもあります。

脳炎はウイルスによって起こることが最も多く、具体的には単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、またはウエストナイルウイルスなどが原因で起こります。脳炎は以下のようにして発生します。

ときに細菌が脳炎を引き起こすこともあり、通常は細菌性髄膜炎に合併して起こります(髄膜脳炎と呼ばれます)。

ときに、脳の感染症、ワクチン、がん、その他の病気により誤った免疫応答が引き起こされることで、免疫系が脳内の正常な細胞を攻撃してしまうことがあります(自己免疫反応 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む )。その結果、脳に炎症が起こります。感染症に誘発された場合、この病気は感染後脳炎と呼ばれます。ときに、自己免疫反応による脳感染症ががん患者に発生することがあり、これを腫瘍随伴性脳炎と呼びます。

脳炎の種類

脳炎を直接引き起こす感染症には、人々の間で流行するものと、散発的に起こるものとがあります。

流行性の脳炎

米国で最もよくみられる流行性の脳炎は、以下の病原体によるものです。

アルボウイルスは、蚊、ノミ、ダニなどの節足動物に刺されることで人間に感染するウイルスのことです。(アルボウイルスは「節足動物が媒介するウイルス」という意味の英語「arthropod-borne virus」を短縮して名づけられました。)ウイルスに感染している動物または人間を節足動物が刺すと、その節足動物にアルボウイルスが伝播します。様々な種類の家畜や鳥が、アルボウイルスをもっています。

人間での流行は周期的にしか起こらず、蚊や感染動物の数が増加する時期に一致します。流行は、節足動物が刺す時期(蚊やダニであれば、通常は温かい時期)に起こる傾向があります。アルボウイルスは、節足動物から人間に感染しますが、人間から人間には感染しません。

多くのアルボウイルスが脳炎を引き起こします。アルボウイルスによって起こる様々な脳炎には通常、ウイルスが発見された地域名や、宿主となる典型的な動物の種類が病名につけられています。

米国では、蚊が以下のような数種類の脳炎を媒介します。

  • ラクロス脳炎は、ラクロスウイルス(カリフォルニアウイルスとも呼ばれる)によって起こります。米国中西部で特に多くみられますが、米国全土で発生します。小児の脳炎のほとんどはラクロス脳炎です。多くの場合、症状は軽く、診断されずに経過します。ラクロス脳炎への感染で死亡する人の割合は1%未満です。

  • 東部ウマ脳炎は、主に米国東部で発生します。五大湖地域で数例が発生しています。東部ウマ脳炎は主に幼児と55歳以上の人がかかります。1歳未満の小児では、重い症状が起こったり、神経や脳の損傷が生涯残ったりすることがあります。感染した人の半数以上が亡くなります。

  • ウエストナイル脳炎は、かつては欧州とアフリカでしかみられませんでしたが、1999年に初めてニューヨーク市で確認され、全米に広がりました。感染した蚊に刺されることで、このウイルスに感染する鳥が数種類います。ウエストナイル脳炎にかかるのは主に高齢者です。このウイルスは、ウエストナイル熱と呼ばれる比較的軽い感染症の原因ウイルスでもあり、こちらの病気の方がはるかに多くみられます。ウエストナイル熱の患者のうち、ウエストナイル脳炎を発症する人は1%未満です。ウエストナイル脳炎を発症した人の約9%が亡くなりますが、ウエストナイル熱だけの場合は完全に回復するのが通常です。

  • セントルイス脳炎は、主に米国の中央部と南東部の州の都市部で発生しますが、西部の州でも発生します。感染症は夏に比較的多く、高齢者では脳が侵される可能性がより高くなります。かつては約10年毎に流行が起こっていましたが、現在では流行はまれとなっています。

  • 西部ウマ脳炎は、米国全土で発生するものの、理由は不明ですが1988年以来、発症者数が激減しています。あらゆる年齢層の人に起こりますが、1歳未満の小児では、より重症化し、脳が侵される可能性が高くなります。

ダニによって感染が広がる脳炎にはいくつかの種類があり、具体的には以下のものがあります。

  • ダニ媒介性脳炎は、北アジア、ロシア、欧州でみられます。この感染症では通常、数日以内に治まる軽いインフルエンザに似た症状がみられますが、より重度の症状が(通常は50歳以上の人に)みられる場合もあります。欧州やロシアでは多くの症例が発生しているため、これらの地域ではワクチンが利用できます。

  • ポワッサンウイルス感染症は、主にカナダと五大湖地域および米国北東部で発生しています。ポワッサンウイルスはロシアで発生した脳炎の原因でもあります。このウイルスは、欧州でダニ媒介性脳炎を引き起こしているウイルスに似ています。ポワッサンウイルス感染症の症状は通常、まったくないか、あっても軽度です。しかし、この感染症は、頭痛、嘔吐、けいれん発作、協調運動障害、発話の問題、昏睡を伴う重度の脳炎を引き起こすこともあります。重度の脳炎を発症した人の約10%が亡くなります。ポワッサンウイルスは、シカダニ(ライム病の媒介生物でもあります)によって広がります。ライム病では、ダニが24~48時間付着し続けて初めて感染が起きます。対照的に、ポワッサンウイルス感染症では、感染したダニが15分ほど付着していただけで、病気が伝染する可能性があります。欧州とロシアのダニ媒介性脳炎に有効なワクチンは、ポワッサンウイルスには効きません。

  • コロラドダニ熱は、米国西部やカナダの海抜1200~3000メートルの地域で発生しています。コロラドダニ熱はインフルエンザに似た症状を引き起こします。ときに、コロラドダニ熱の患者が髄膜炎や脳炎を発症することがあります。コロラドダニ熱で死亡することはまれです。まれに輸血で感染することもあります。

脳炎の原因となるいくつかのウイルスは、かつては世界のごく一部にしかみられませんでしたが、おそらくは旅行者が増加したことで、現在では広く拡散しています。そのようなウイルスとしては以下のものがあります。

これらはすべて蚊によって広がります。

チクングニアウイルスは、最初はアフリカで発見されましたが、現在では東南アジア、インド、中国、欧州の一部、カリブ海地域や中南米、さらには北米に広がっています。チクングニア熱にかかっても、ほとんどの人は1週間以内によくなります。しかし、チクングニア熱から重度の脳炎を起こし、ときに死に至ることもあり、特に乳児や65歳以上の人ではその可能性が高くなります。

日本脳炎ウイルスは、アジアと西太平洋における脳炎の一般的な原因です。米国における日本脳炎の症例は、流行地域でこのウイルスに感染した旅行者に限られています。

ベネズエラウマ脳炎は、主に中南米の一部の地域で発生しています。ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、1971年にテキサスで脳炎の流行を引き起こしましたが、現在は米国でこのウイルスによる脳炎が発生することはめったにありません。発生するのは主に、このウイルスが流行している地域から帰国した旅行者に限られます。

ジカウイルスは、ウガンダのジカ森で最初に特定され、次いで南太平洋諸島に、それから南米、中米、カリブ海、メキシコ、フロリダに広がりました。ジカウイルス感染症では、発熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、デコボコした赤い発疹などがみられます。妊娠中にジカウイルスに感染すると、新生児に 小頭症 小頭症 小頭症とは、頭が異常に小さい状態のことです。たいていの場合、脳が小さく不完全に発達したことが原因で頭が小さくなります。 小頭症は遺伝子異常や、感染症、脳の異常など、様々な病態によって引き起こされます。 重度の小頭症がある新生児には、通常は脳損傷の症状がみられます。 診断は、出生前であれば超音波検査によって、出生後であれば頭囲の測定によって下されます。 通常は脳の異常を探すために画像検査を行い、ときに原因を調べるために血液検査を行います。 さらに読む 小頭症 と重度の脳障害が生じる可能性があります。

散発性の脳炎

過去の感染の再活性化

脳炎は、以下のようなウイルスの再活性化によって起こることもあります。

再活性化は、感染から長期間経過した後に起こることがあります。感染が再活性化すると、脳に重度の損傷が起こる可能性があります。

自己免疫性脳炎

特定のウイルス感染症にかかったり特定のワクチンを接種したりした後に、体の免疫系が 髄鞘 脱髄疾患の概要 脳の内外のほとんどの神経線維は、脂肪(リポタンパク質)でできた何層もの組織(ミエリンといいます)に包まれています。それらの層は髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる組織を形成しています。髄鞘は電気ケーブルを包んでいる絶縁体のような役割を果たしていて、この働きによって、神経信号(電気インパルス)が神経線維に沿って速くかつ正確に伝えられます。髄鞘が損傷... さらに読む (脳と脊髄の神経線維を覆う組織層)を攻撃すること(自己免疫反応 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む )があります。攻撃が起こる理由は、髄鞘に含まれるタンパク質がウイルスのタンパク質に似ているためです。この攻撃を受けた結果、刺激が神経を伝わる速度が非常に遅くなります。このようにして起こる病気は 急性散在性脳脊髄炎 急性散在性脳脊髄炎 脱髄を引き起こす原因不明の病気は、原発性脱髄疾患と呼ばれます。脱髄とは、神経を包んでいる髄鞘という組織が破壊される現象です。 ときに、ウイルスへの感染後あるいはウイルスに対するワクチンの接種後に原発性脱髄疾患が発生することがあります。おそらく、ウイルスもしくは別の物質が何らかの形で免疫系を刺激することで、免疫系が自己の組織を攻撃するようになる現象( 自己免疫反応)が関与していると考えられています。自己免疫反応の結果として炎症が起こり、髄... さらに読む と呼ばれ、 多発性硬化症 多発性硬化症(MS) 多発性硬化症では、脳、視神経、脊髄の髄鞘(ずいしょう)(ほとんどの神経線維を覆っている組織)とその下の神経線維が、まだら状に損傷または破壊されます。 原因は解明されていませんが、免疫系が自分の体の組織を攻撃する現象(自己免疫反応)が関与していると考えられています。 多発性硬化症の患者のほとんどは、健康状態が比較的良好な期間と症状が悪化する期間を交互に繰り返しますが、時間の経過とともに、多発性硬化症は徐々に悪化していきます。... さらに読む と似ていますが、症状が現れたり消えたりすることはないという点が異なります。自己免疫性脳炎に関与することが多いウイルスは、 エンテロウイルス エンテロウイルス感染症の概要 エンテロウイルス感染症は、体の多くの部分を侵し、また数種類の異なるエンテロウイルスのいずれもが原因となる可能性があります。 エンテロウイルス感染症は、様々な種類のウイルスによって引き起こされます。 エンテロウイルス感染症の症状は、発熱、頭痛、呼吸器疾患、のどの痛みなどで、ときに口の痛みや発疹がみられることもあります。... さらに読む エンテロウイルス感染症の概要 エプスタイン-バーウイルス 伝染性単核球症 エプスタイン-バーウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。 この ウイルスはキスを介して広がります。 症状は様々ですが、最も多いのは極度の疲労感、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れです。 血液検査を行って診断を確定します。 アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は発熱と痛みを和らげます。 さらに読む 伝染性単核球症 A型肝炎 A型肝炎 A型急性肝炎は、A型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が6カ月未満の肝臓の炎症です。 A型肝炎は、通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染します。 A型肝炎は、年長児と成人ではウイルス性肝炎の典型的な症状(食欲不振、全身のけん怠感、黄疸など)を引き起こしますが、幼児では症状が起こらないことがあります。 A型肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 すべての小児のほか、感染にさらされたり、重い合併症が発生したりする... さらに読む ウイルス、 B型肝炎 B型肝炎(急性) B型急性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が数週間から最大で6カ月の肝臓の炎症です。 B型肝炎は、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用した場合にみられるように、感染した人の血液などの体液と接触することで感染します。 B型肝炎はウイルス性肝炎の典型的な症状(食欲不振、全身のけん怠感、黄疸など)を引き起こし、劇症肝炎と呼ばれる重症の肝炎も生じることがあります。... さらに読む ウイルス、 ヒト免疫不全ウイルス ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 (HIV)、 インフルエンザウイルス インフルエンザ (流感) インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道の ウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。 まず悪寒が生じ、続いて発熱、筋肉痛、頭痛、のどの痛み、せき、鼻水、全身のけん怠感が生じます。... さらに読む などです。小児向けの予防接種が普及するまでは、麻疹(はしか)、風疹、水痘、ムンプス(おたふくかぜ)の原因ウイルスが急性散在性脳脊髄炎の一般的な原因となっていました。この種の脳炎は、がんやその他の自己免疫疾患のある人にも起こります。

免疫系によって作られた抗体が、N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体と呼ばれる、神経細胞の表面にあるタンパク質を攻撃して、自己免疫性脳炎が発生することもあります。この脳炎を抗NMDA受容体脳炎と呼びます。いくつかの研究により、抗NMDA受容体脳炎は以前考えられていたよりも多くみられる脳炎であることが示唆されています。この病気は単純ヘルペスウイルスによる脳炎になった後にまれにみられ、たとえ脳炎の治療が成功した場合でも発生することがあります。

COVID-19 COVID-19 コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。 しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能... さらに読む 脳炎

まれに、 COVID-19 COVID-19 コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。 コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。 これら7種類のヒトコロナウイルス感染症のうち4種類は、 かぜの症状を引き起こす軽症の上気道疾患に関係するウイルスです。 しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能... さらに読む の患者が、脳炎のような病態を発症することがあります。(COVID-19は、新たに特定された重症急性呼吸器症候群コロナウイルス[SARS-CoV2]によって引き起こされます。)この脳炎は、ウイルスが脳に入り脳を損傷することで引き起こされている可能性があります。しかし、自己免疫反応や、部分的な自己免疫反応である可能性もあります。

症状

脳炎自体の症状が始まる前に、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など消化器系の症状がみられることがあります。あるいは、かぜ(感冒)やインフルエンザにかかったかのような感じがして、せき、熱、のどの痛み、鼻水、リンパ節の腫れ、筋肉痛が起こることもあります。

脳炎自体の症状には以下のものがあります。

  • 発熱

  • 頭痛

  • 人格の変化、または錯乱

  • けいれん発作

  • 麻痺またはしびれ

  • 眠気(進行して昏睡や死亡に至ることがある)

嘔吐や項部硬直が生じることがありますが、髄膜炎に比べるとこうした症状が起こることは少なく、重症度も軽い傾向があります。

単純ヘルペスウイルスによる脳炎は、最初は頭痛、発熱、インフルエンザのような症状を引き起こします。けいれん発作も起こり、ときに異臭(腐った卵などの匂い)、鮮明なフラッシュバック、突然の激しい情動などを伴うことがあります。脳炎が進行すると、錯乱が生じ、発話と記憶が困難になり、けいれん発作が繰り返し起こり、やがて昏睡状態に陥ります。

HIV脳症は、ゆっくりとした人格変化、協調運動の障害、認知症を引き起こします。

炎症が脊髄に及んだ場合は、体の一部にしびれや筋力低下が起こります。どの部位に症状が出るかは、脊髄のどの部分が侵されたかによって異なります(図「 脊髄の損傷領域とその影響 脊髄の損傷領域とその影響 脊髄の損傷領域とその影響 」を参照)。重度の感染症では、感覚の消失、麻痺、尿失禁や便失禁が起きることがあります。

ウイルス性脳炎からの回復には時間がかかる場合があります。人によっては完全に回復しないこともあります。死に至る可能性は、原因と治療の迅速さに左右されます。

知っていますか?

  • 麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)を発症してから長い期間が経過した後に、ウイルスが再び活性化して、脳内で炎症を引き起こすことがあります。

診断

  • MRI検査

  • 腰椎穿刺

医師は症状に基づいて脳炎を疑います(特に流行時)。通常は頭部のMRI検査と腰椎穿刺が行われます。

MRI検査では、脳の特定の領域の異常を検出できることがあります。これらの異常は、脳炎の診断を確定したり、脳炎を引き起こしているウイルスの見当をつけたりするのに役立ちます。MRIが行えない場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うこともあります。MRIやCT検査は、同様の症状を引き起こすほかの病気(脳卒中 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中は、動脈が詰まって脳に十分な血液と酸素が供給されなくなることで生じる、脳組織の一部の壊死(脳梗塞)です。 虚血性脳卒中は通常、脳に向かう動脈に多くは血栓や動脈硬化で生じた脂肪の沈着物が詰まることで発生します。 症状は突然現れます。具体的には、体の片側の筋力低下、麻痺、感覚消失、感覚異常のほか、発話困難、錯乱、視覚障害、めまい、平衡感覚の消失と協調運動障害などの症状があります。... さらに読む 虚血性脳卒中 脳腫瘍 脳腫瘍の概要 脳腫瘍は、脳内にできた良性または悪性の増殖組織です。脳内で発生するものと、体の別の部位から脳に転移してきたものとがあります。 症状としては、頭痛、人格の変化(突然の抑うつ、不安、自制がきかなくなるなど)、平衡感覚の消失、集中力の低下、けいれん発作、協調運動障害などがみられます。 脳腫瘍の多くは画像検査で発見できますが、ときに腫瘍の生検が必要になる場合もあります。 治療法は手術、放射線療法、化学療法などで、これらを組み合わせることもありま... さらに読む など)の可能性を否定するのに役立ちます。これらの検査では、腰椎穿刺を行うと危険になる問題がないか確認することもできます。

脳炎の原因ウイルスを特定するために、発症中とその後の回復途中に、血液と髄液のサンプルを採取してウイルス抗体の有無を確認します。ウイルスの特定をさらに容易にするため、髄液中のウイルスを増やす(培養する)技術が用いられることもあります。一部の エンテロウイルス エンテロウイルス感染症の概要 エンテロウイルス感染症は、体の多くの部分を侵し、また数種類の異なるエンテロウイルスのいずれもが原因となる可能性があります。 エンテロウイルス感染症は、様々な種類のウイルスによって引き起こされます。 エンテロウイルス感染症の症状は、発熱、頭痛、呼吸器疾患、のどの痛みなどで、ときに口の痛みや発疹がみられることもあります。... さらに読む エンテロウイルス感染症の概要 (ポリオに似た病気を引き起こすウイルスなど)は培養できますが、ほかのほとんどのウイルスは培養できません。

多くの脳炎の原因ウイルスを特定するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が用いられます。PCR法とは、遺伝子のコピーを大量に作り出す分析法で、髄液のサンプルに含まれるウイルスの遺伝物質を検出するのに用いられます。PCR法で単純ヘルペスウイルスを速やかに特定するのは難しいため、単純ヘルペスウイルスが原因と考えられる場合は、通常は直ちに治療が開始されます。単純ヘルペスウイルスによる脳炎は破壊的な影響をもたらし、治療しないでいると死に至ることも多いため、迅速な治療が極めて重要です。直ちに治療を行えば、症状を軽減し、死亡を防ぐ助けになります。

まれに、単純ヘルペスウイルスなどの微生物が原因かどうかを判定するために、脳組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる(生検)こともあります。

ときに、広範な検査を行っても、ウイルス、細菌、その他の病原体が特定されない場合もあります。そのような場合は、検査で必ずしも確定されない自己免疫疾患や腫瘍随伴性脳炎などの病気が原因である可能性が考えられます。

治療

  • 考えられる原因に応じて、抗ウイルス薬、抗菌薬、コルチコステロイド、その他の薬剤

  • 症状を緩和する処置、必要であれば生命維持措置

単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスの可能性を否定できない場合は、抗ウイルス薬のアシクロビルが投与されます。アシクロビルは単純ヘルペスウイルスと水痘帯状疱疹ウイルスに効果的です。サイトメガロウイルス脳炎は、抗ウイルス薬のガンシクロビルで治療できます。ホスカルネットは代替薬で、単独でもガンシクロビルとの併用でも使用できます。ときに、細菌が原因である可能性を考慮して、数種類の抗菌薬も投与されます。

自己免疫性脳炎は、通常は以下の方法で治療します。

その他のウイルスとほかのほとんどの原因については、特別な治療法はありません。通常は症状(けいれん発作や発熱など)を緩和する処置を行い、必要であれば、感染がおさまるまでの約1~2週間(例えば呼吸用のチューブを用いて)生命維持措置をとります。

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