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狂犬病

執筆者:

John E. Greenlee

, MD, University of Utah Health

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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概要
本ページのリソース

狂犬病は、動物によって媒介されるウイルス感染症で、脳と脊髄に炎症を引き起こします。狂犬病ウイルスが脊髄や脳に達すると、ほぼ必ず死に至ります。

  • 通常は、人は感染した動物に咬まれることでウイルスに感染しますが、米国では一般にコウモリに咬まれることで感染する一方、イヌに対する狂犬病ワクチンの接種が義務化されていない国では、イヌが感染源になっています。

  • 狂犬病を発症すると、落ち着きがなくなり、錯乱や麻痺が起こります。

  • 皮膚生検を行えば、ウイルスを検出できます。

  • 咬まれたら直ちに傷口を洗い、狂犬病ワクチンと免疫グロブリン製剤を注射することで、感染を予防できます。

ウイルスは感染した動物の唾液を介して伝染します。狂犬病ウイルスは侵入点(通常は咬まれたところ)から神経に沿って脊髄に移動し、さらに脳に移動してそこで増殖します。そして、脳から別の神経に沿って唾液腺に移動し、唾液の中に入ります。狂犬病ウイルスが脊髄や脳に達すると、ほぼ必ず死に至ります。しかし、このウイルスが脳に到達するまでに一般的には少なくとも10日間(通常は30~50日間で、咬まれた部位によって変わってきます)かかるため、この期間中に、ウイルスの進展を阻止して死を回避するための手段を講じることができます。まれに、動物に咬まれてから数カ月または数年後に狂犬病を発症することもあります。

全世界では毎年少なくとも5万5000人が狂犬病により亡くなっています。死亡例のほとんどは、ラテンアメリカ、アジア、アフリカの農村地域で発生しています。米国では、死亡者数は毎年数人にとどまっています。

狂犬病の原因

狂犬病ウイルスは、数多くの種の野生動物や家畜の体内に存在していて、世界のほぼ全地域に分布しています。狂犬病にかかった動物は、発症してから数週間後に死亡することがあります。しばしば、その間に病気を広めます。

狂犬病ウイルスは感染した動物の唾液中に存在し、感染した動物に咬まれると感染します。非常にまれですが、感染した動物がほかの動物や人間を舐めたときに感染することもあります。このウイルスは無傷の皮膚を通過することはできません。狂犬病ウイルスが体内に侵入するのは、傷口など皮膚の裂け目に入った場合か、ウイルスを含む飛沫を(感染したコウモリが生息する洞窟などで)鼻や口から大量に吸った場合に限られます。

狂犬病は、イヌ、ネコ、コウモリ、アライグマ、スカンク、キツネなど、様々な哺乳類の動物から人間に伝染します。米国で発生する狂犬病のほとんどは、コウモリから伝染するものであると考えられています。

げっ歯類(ハムスター、モルモット、アレチネズミ、リス、シマリス、ラット、ハツカネズミなど)、ウサギ、ノウサギが狂犬病に感染することはまれで、米国では、これらの動物から人間への感染例は知られていません。狂犬病は鳥類や爬虫類には伝染しません。

米国では、イヌの狂犬病は予防接種によってほぼ根絶されていて、狂犬病の原因はほぼすべて野生動物で、通常はコウモリですが、キツネ、スカンク、アライグマから感染することもあります。コウモリによる咬傷(咬まれた傷)は気づかれないまま放置されることが多く、狂犬病による死亡例のほとんどは、感染したコウモリに咬まれたことが原因で発生しています。

イヌへの狂犬病ワクチンの定期接種が行われていない国(ラテンアメリカ、アフリカ、アジア、中東の大半の国など)では、狂犬病による死亡のほとんどは感染したイヌに咬まれたことが原因で起こっています。少数ですが、ときにペットとして飼われることのあるサルなど、上記以外の動物に咬まれて死亡する例もあります。

知っていますか?

  • 米国では、ウサギや大半の小型げっ歯類(ハムスター、アレチネズミ、リス、ラット、ハツカネズミなど)に咬まれても、狂犬病のワクチン接種が必要になることはほぼありません。

  • 米国では、狂犬病による数少ない死亡のほとんどはコウモリが原因です。

狂犬病の症状

咬まれてできた傷が痛んだりしびれたりすることがあります。コウモリの咬傷では、特に症状がみられないのが一般的です。

症状は狂犬病ウイルスが脳や脊髄に到達すると現れます。通常、症状が現れるのは、咬まれてから30~50日後ですが、この潜伏期間は10日から1年以上と幅があります。咬まれた場所が脳に近いほど(例えば顔など)、症状は早く現れます。

発熱、頭痛、全身のだるさ(けん怠感)が最初に現れることがあります。ほとんどの患者は、落ち着きがなくなり、錯乱し、強い興奮状態に陥ります。奇妙な行動がみられたり、幻覚や不眠症が生じることもあります。唾液が大量に出るようになります。狂犬病は嚥下(ものを飲み込むこと)、発話、呼吸を制御する脳領域を侵すため、のどや喉頭の筋肉がけいれんします。このけいれんは耐えがたいほどの痛みを伴うことがあります。そよ風にあたったり、水を飲もうとしたりするとけいれんが誘発されるため、狂犬病の患者は水を飲むことができなくなります。このため、狂犬病は恐水病と呼ばれることもあります。

感染が脳を広がっていくにつれて、錯乱と興奮が強くなります。最終的には、昏睡状態に陥り死に至ります。死因は、気道閉塞、けいれん発作、消耗、または広範囲の麻痺です。

20%の患者では、まず咬まれた腕や脚にチクチク感や麻痺が生じます。それから麻痺が全身に広がっていきます。この場合は、一般的に思考には影響がなく、狂犬病のほかの症状もほとんど発生しません。

狂犬病の診断

  • 皮膚、唾液、(腰椎穿刺によって採取した)髄液のサンプルを調べて検査する

頭痛、錯乱、その他の狂犬病の症状がみられる場合、特に動物に咬まれたか、コウモリと接触があった場合(洞窟を探検した際など)は、狂犬病が疑われます。しかし、狂犬病患者の多くは、動物に咬まれたことやコウモリと接触したことに気づいていません。

ウイルスの有無を調べるために、皮膚組織のサンプルを(通常は首の部分から)採取し、顕微鏡で調べます(皮膚生検)。唾液と尿のサンプルも調べてウイルスの有無を確認します。腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む 腰椎穿刺 を行い、髄液(脳と脊髄を覆う組織の間を流れる体液)のサンプルを採取します。このサンプルも調べます。

皮膚、髄液、または唾液のサンプルから、狂犬病ウイルスに特有のDNA配列を検出するため、遺伝子のコピーを大量に増幅するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の一種を行うことがよくあります。時間を空けてこれらの体液のサンプルを何度か採取し、検査することで、ウイルスを検出できる可能性が高まります。

狂犬病の予防

動物に咬まれる前

最善の対策は、動物(特に野生動物)に咬まれないようにすることです。見知らぬペットや野生動物には近寄らないようにします。野生動物における狂犬病の徴候は分かりにくい場合もありますが、典型的には以下のような異常な行動がみられます。

  • 人が近づいても、臆病になったり、怖がったりしているように見えない。

  • 夜行性の動物(コウモリ、スカンク、アライグマ、キツネなど)が日中に姿を現す。

  • コウモリが奇妙な音を発し、うまく飛べていない。

  • 挑発していないのに、咬みついてくる。

  • 脱力している、または興奮して狂暴である。

狂犬病の可能性がある動物を助けようとして、抱き上げたりしてはいけません。病気の動物は咬みつくことが多いためです。病気のように見える動物がいた場合は、引き取りや捕獲を担当している地域の保健所などに連絡するべきです。

狂犬病ウイルスにさらされる可能性が高い人は、前もって狂犬病ワクチンの接種を受けておくべきです。対象になるのは次のような人です。

  • 獣医

  • 狂犬病の可能性がある動物を取り扱う研究者

  • イヌの狂犬病が流行している発展途上国に居住または30日以上滞在する人

  • コウモリのいる洞窟を探検する人

ワクチンは合計3回、筋肉内に注射します。1回目の注射は直ちに行います(この日を0日目とします)2回目の注射を7日目、3回目の注射を第21~28目の間に行います。注射部位が痛んだり腫れたりすることもありますが、通常はほんのわずかです。重篤なアレルギー反応が起こることはまれです。

ほとんどの人は、予防接種を受ければ生涯にわたって狂犬病にある程度かかりにくくなります。しかし、この予防効果は時間の経過とともに弱まり、ウイルスとの接触が続く可能性が高い場合は定期的に検査を行い、防御抗体のレベルが低ければワクチンの追加接種を行います。

動物に咬まれた後

動物に咬まれた場合、すぐに傷口を石けんと水で徹底的に洗い流します。傷が深い場合は強い流水で洗い出します。それから医師の診察を受けます。医師は、塩化ベンザルコニウムという消毒薬で傷をさらに清潔にします。傷口がぎざぎざになっている場合はその縁を切除することもあります。

医師は、狂犬病が伝染した可能性がどのくらいあるかの判定にも努めます。狂犬病は通常、速やかに適切な処置を行えば予防できるため、早期にこの判定をすることは非常に重要です。

動物に咬まれた直後に、狂犬病ウイルスが伝染したかどうかを判定できる検査はありません。したがって、咬まれた人には狂犬病を予防するために狂犬病免疫グロブリンと狂犬病ワクチンが注射されます。狂犬病免疫グロブリンには狂犬病ウイルスに対する抗体が含まれていて、これによりすぐに防御作用が得られますが、効果は短期間しか持続しません。狂犬病ワクチンは、体を刺激してウイルスに対する抗体を作らせます。ワクチンによる予防効果は免疫グロブリン製剤よりゆっくり現れますが、はるかに長い期間持続します。

ワクチンと免疫グロブリン製剤の投与が必要かどうかは、以前に狂犬病ワクチンの接種を受けたことがあるかどうかと、かんだ動物の種類と状態に応じて判断されます。例えば、次のような点が検討されます。

  • かんだ動物はコウモリか、イヌか、アライグマか、それ以外か

  • かんだ動物は病気にかかっているように見えたか

  • かんだ動物は挑発していないのに攻撃してきたか

  • かんだ動物を観察できるか

狂犬病ワクチンの接種が必要な人

米国では、動物に咬まれたときに狂犬病ワクチンを接種するかどうかは、かんだ動物の種類と状態に応じて判断されます。

ペットのイヌ、ネコ、またはフェレットに咬まれた場合:これらのペットが健康そうに見え、10日間観察できるのであれば、その動物に狂犬病の症状が現れない限り、咬まれた人にワクチンを接種することはありません。その動物に狂犬病が疑われる何らかの症状が出現した場合は、咬まれた人に直ちにワクチンを接種します。狂犬病の症状が現れた動物は安楽死させ、脳を調べて狂犬病ウイルスの有無を確認します。かんだ動物が10日を過ぎても健康であれば、かんだ時点で狂犬病はなかったと判断でき、ワクチンの接種は不要です。

かんだ動物が狂犬病を発症した場合や、発症したように見える場合は、咬まれた人に直ちにワクチンを接種します。

かんだ動物が逃げてしまったなどの理由により、健康状態を判定できない場合は、その地域に狂犬病がみられる可能性がどの程度あるか、またワクチンが必要であるかについて、公衆衛生当局の担当者に相談します。

スカンク、アライグマ、キツネ、その他ほとんどの肉食動物、またはコウモリに咬まれた場合:米国では、その個体に検査を行って陰性と判定されない限り、これらの野生動物は狂犬病にかかっているとみなされます。通常、これらの動物に咬まれた人には直ちにワクチンが接種されます。野生動物の場合は、10日間の観察期間を置くことは推奨されません。

咬まれた人がコウモリに咬まれたことに気づいていない場合もあるため、咬まれた可能性があると考えられる場合はワクチンを接種します。例えば、目が覚めたら部屋の中にコウモリがいるといった場合には、ワクチンを接種します。

家畜、小型のげっ歯類、大型のげっ歯類(ウッドチャックやビーバーなど)、ウサギ、またはノウサギに咬まれた場合:個々の事例毎の検討が必要なため、公衆衛生当局の担当者に相談します。ハムスター、モルモット、アレチネズミ、リス、シマリス、ラット、ハツカネズミなど小型のげっ歯類、ウサギ、またはノウサギに咬まれた場合、狂犬病ワクチンの接種が必要になることはまずありません。

動物に咬まれ、予防治療が必要で、過去にワクチンの接種を受けたことがない人には、狂犬病免疫グロブリンと狂犬病ワクチンを直ちに投与します(この日を0日目とします)。可能なら、免疫グロブリン製剤は傷口の周囲に注射します。さらに3回の注射を、それぞれ3日目、7日目、14日目に行います。免疫機能が(エイズなどの病気や薬によって)低下している人には、28日目にさらにもう1回ワクチンを注射します。

過去にワクチンを接種している場合は、狂犬病の発症リスクが低くなります。しかし、咬まれた直後の傷口の洗浄と、直後および3日目の狂犬病ワクチンの接種は必ず受ける必要があります。

狂犬病の治療

  • 不快感の軽減

症状が発生した後は、助けになる治療法はありません。発症すると、ほぼ常に死に至ります。症状を緩和し、できる限り不快感を取り除くことが治療の目標になります。まれに、集中治療室で治療を受けた患者が長期間生き延びることもあります。

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